浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第29話 秘密の時間

「……あー……はずかしい、はずかしい……」

 

 教室を直し終えた殺せんせーは黒板の方を向いて、ひたすら「はずかしいはずかしい」と呟きながら顔を隠していた。机を戻しながら生徒達はあれやこれやと話している。

 

「ねえ、あれ何?」

「さぁ……?殺せんせーなんかいっつも変なことしてるし……」

「違います」

「うわしゃべった」

「先程先生、あろうことか大変シリアスな展開に加担してしまいました。先生どちらかといえばギャグ時空のキャラクターなのに」

「いやその自覚あるんだ?!」

「カッコよかったね〜?「どこで触手(それ)を手に入れたッ!!それをッ!!どこでッ!!」って」

「いやああ!!やめて下さい狭間さん!っていうかそれが初セリフで良いんですか?!」

「でも実際珍しいくらいのシリアスだったわね」

 

 なんやかんやで生徒に混ざって机を運ぶイリーナが口を開いた。

 

「まさか、アンタ以外にも触手を出せるのがいたなんて」

「……」

「……なあ。教えてくれよ、殺せんせー。あいつは何で、殺せんせーは何なんだ?」

 

 超至近距離。教卓に身を乗せた志御がぶつかりそうなほどに顔を近づけ、殺せんせーに問い掛ける。生徒達も机を運ぶ手を止め、「俺達も知りたい」と殺せんせーを囲んだ。

 

「教えてよ、あの二人との関係」

「今までさんざんはぐらかされてきたんだ、そろそろ聞かせてもらうぜ」

「私達殺せんせーの生徒なんだから、もっと殺せんせーのことを知る権利、持ってるはずでしょ?」

「……仕方ないですねぇ」

 

 そして殺せんせーは教壇に立ち、生徒達をまっすぐ見据え、そして口を開いた。

 

「……実は先生、人工的に造り出された生物なんです!」

「……」

「……」

「……いや、知ってたけど」

「うん、それで?」

「にゅやッ?!皆さん反応うっす?!いやいや、これ本来最終盤とかで開示するタイプの重大発表、衝撃告白ですよ?!」

「いや、マッハ20のタコとか自然発生するわけないしな」

「うん、地球育ちって言ってたしね」

「ならイトナは殺せんせーの後に作られた個体かな」

「触手だけ取り付けた感じじゃね?見るからに本体ぽかったし」

「皆さん察し良すぎませんか?!」

 

 あれこれと話す生徒達の推論の正確さに殺せんせーは思わず少女漫画の如く白目を剥いて驚愕する。そんな中で生徒達の中から上がった一本の手。渚のものだった。

 

「殺せんせー、これはそこから先の話なんだけど、どうして殺せんせーはイトナ君の触手を見てあんなに怒ったの?」

「……」

「殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何のために、何を思ってE組(ここ)に来たの?」

「……残念ですが」

 

 渚の酷く真剣な言葉に、殺せんせーは触手でバツを作った。

 

「今それを君達に話したところで何の意味もありません。先生が地球を爆破してしまえば、何を知ろうとも全ては塵芥になってしまいます」

「……っ!」

「逆に皆さんが私を殺して地球を救えば、君達は後からいくらでも真相を知る機会が手に入るわけです。そうくれば、君達なら何をするべきか分かるでしょう?」

「……ああ。卒業までにブチ殺してやるよ」

「ヌルフフフ、模範解答です、志御さん。そう、皆さんで私を殺してみなさい。先生と君達は先生と生徒であると同時に、それ以上に暗殺対象(ターゲット)と殺し屋なのですから。君達がその刃で、私から確かめてみるのです」

 

 そう言って、殺せんせーは「今日はこれで解散とします」と教室を去っていく。最後に「はずかしいはずかしい」と一度か二度、顔を抑えた。そして解放された生徒達は、揃って外に向かった。

 

◇◇◇

 

「烏間先生」

「……なんだ、君達か。どうしたんだ、こんなに揃って」

 

 外で部下とともに作業をする彼の下に向かったE組一同。彼等の代表としてクラス委員の磯貝が口を開いた。

 

「……俺達にもっと教えてほしいんです。暗殺を」

「……?今以上にか?」

「はい。今回の件で思ったんです。志御の言う通りでした。せっかくE組(ここ)で殺せんせーと会って、教えられてる、なら俺達が、俺達の手で殺せんせーを殺したいって」

「今後ヤバい殺し屋が出てきて、それで先に殺せんせーを殺されるとか、そういうのは嫌だからさ」

「うん。限られた時間だけれど、殺れる限り私達で殺したい。私達の担任を」

「……はい、俺達の手で殺して、俺達の手で見つけたいんです。その「答え」を」

 

 なるほど、良い理由、良い言葉、そして良い目だ。烏間はフッと小さく笑った。部下もそれを静かに見守っている。「良いだろう」と烏間は口を開いた。

 

「では本日より、希望者には放課後、追加訓練を行う。今まで以上に厳しくなるが良いな?」

「……はい!」

「では早速新設したこの垂直20mロープ昇降、始めッ!」

「はっ、良いぜ!」

 

 大木に垂らされたロープ、志御はそれに先陣の誉れ、魁と言わんばかりに真っ先に手を掛けた。「絶対に、私がブチ殺す」、そんな強い意志を目に宿し、彼女は手に力を込めた。

 

◇◇◇

 

 追加訓練が終わりを告げたのは17時半程。日が徐々に傾き始めた頃だった。解散し、E組を去っていく生徒達。そんな中で、志御は烏間に「少し良いか?」と呼び止められた。

 

「ん?どうかしたか?烏間先生」

「いや、昼間のことを聞かせてほしくてな。君がイトナ君を退けた」

「ああ」

 

 志御はジャージの汗を拭い、その場に座り込んだ。

 

「良いぜ。……ってもあんまり実感も無いけどな」

「いい。聞かせてくれ」

 

 そう言って手帳を開いた烏間に、志御はあの時の感覚を言語化出来る限りに詳細に伝えた。脚が動かなかったこと、妙に冷静だったこと、感情に動かされたこと、そして勝つ確信があったこと。そんな志御の口述をまとめた烏間は、口を開いた。

 

「……なるほどな」

「な?曖昧だろ?」

「いや。……もしかしたら、君には類稀な才能があるかもしれない」

「類稀?何が?」

「……「意志反射」」

 

 んだよそれ、と首を傾げる志御。烏間は話を続けた。

 

「簡単に言えば、相手の感情の種類、強さに応じて身体能力を引き出す力だ。俺も噂でしか聞いたことがないが、「神兵」と呼ばれた伝説の傭兵も似たような力を持っていたという。昼間の君はあの膨大な殺意を感知して、その力を引き出したのかもしれないな。……あくまで、推測になるが」

「感情……はっ、そこそこ面白いじゃん」

 

 そう言って志御は立ち上がり、ぐぐっと背伸びする。「あいつ殺すなら力は多いに越したことはねえしな」とニッと笑う彼女に烏間は「そうだな」と頷いた。

 

「そうだ、せっかくだしもう少し稽古付けてくれよ」

「いいだろう。1時間程度になるが」

「はっ、十分だ」

 

 そして温い風が吹き抜ける校庭で、志御は構えた。




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