浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第31話 謀略の時間

「暑い中お疲れ様〜笑」

「せいぜい20分もたせろよなww」

「期待してるよー」

 

 中は、既に女子バスケ部がウォーミングアップで見せるパフォーマンスに少し温まっていた。そんな中で会場である体育館を訪れたE組を出迎えたのは、そんな薄っぺらい言葉。注目は野球部対E組男子の方へ集まっていたが、それはそれとして十二分にこちらにも人が集まっている。ニヤケ面で野次を飛ばす本校舎の生徒達に、気の短い岡野は「何様よあいつら」と舌打ちした。

 

「まあまあ、好きなだけ言わしておけば良いよ」

「そうそう、負け犬は良く吠えるって奴だな」

 

 完全なアウェーゲーム。言葉も、態度も、空気も、相手も、何一つ想定を越えてこない。敢えて聞こえるようにそう言った志御にオーディエンスはクスクスと笑う。どうやらE組と見くびっているらしい。「ちなみにああいうのはアリなんだよな?」と志御が近くにいた教員に尋ねると「ああいった声出しもスポーツ観戦の醍醐味だよ」とニヤニヤ笑いながらの返答が来た。「オッケー」と志御は軽く答えた。

 幾分か見知ったA組の人間は殆どグラウンドの野球場の方へ出張っており、彼女の本校舎の知り合いは殆どいない。志御は「兄さんほど顔広くなくて助かったな」と思いながら近くの進行を務める教師から拡声器を強奪すると「あーあー」と声を入れた。

 

「お前等の中で「自分はE組に成績で負けるはずがない」とか思ってる奴手ぇ挙げろー」

 

 観客席からは冷笑が溢れる。当然だ。「自分はE組に落ちてないのだから、E組より成績が悪いはずがない」、そんな優越感の下に彼等は生かされているのだから。「これだから馬鹿は面白いんだよな」とケタケタ笑い、志御は再び拡声器で告げた。

 

「ちな私中間4位だから全員E組未満な」

 

 その冷笑が騒然に変わる。瞬く間に体育館に満ちるざわめき。「お前等の顔最っ高だな!」と嘲笑う志御。その間に他のE組女子はミーティングルームの方へ移動し、最後の作戦会議に励んでいる。

 

「E組に成績も運動も負けたらお前等なーんも残んねえな!それともワンチャン狙って私達と校舎入れ替えてみるか?道中で情けなくブッ倒れそうでクッソ情けないけど!」

「あいつ、E組のくせに……」

「……あ、あれ浅野学秀の妹じゃないか?」

「浅野学秀……ってAのあいつの?!言われてみれば結構似てるような……」

「でもどうせE組だろ?なら女バスに勝てるわけないって」

「それもそうだな……頼むぞ……!」

 

 ああ、ダッセ。志御は心の底から、満面の嘲りとともにケタケタと笑った。志御には自負があった。この空間に私より強い奴はいない、と。そしてこの数ヶ月で培ったE組への信頼は、彼女に絶対的な確信を抱かせる。「負けるはずがない」と。

 

「じゃあなお前等!噛み締めるハンカチ用意しとけよ!」

 

 一通りを煽り終えると、志御はミーティングルームの方へ消えていった。空気は、先程よりも一層張り詰めていた。

 

◇◇◇

 

「よ」

「お帰り、志御さん」

「いやあ、煽りに煽るわねー。思わず惚れ惚れしちゃうくらい」

「まあな。……それで、準備大丈夫か?あと少しすりゃ始まるぞ」

「もちろん」

 

 そう言って、片岡は試合前の最後の確認に入る。志御のPC内の律が開いているコートのマップと選手データを元にして彼女は口を開いた。

 

「まず、相手のメンバー5人の平均身長は178cmで、全員が4番のパワーフォワードと5番のセンター、つまりは全員がバリバリに点取ってくるタイプってことね」

「やっぱり、ガッツリコールドの50点狙いに来てるね〜」

「そういうこと。でも……」

「はい。集めたデータでは皆さんダンクをメインウェポンとしていて、反面シュートの精度はそう高くありません。ゴールの周り、3ポイントラインの内側にさえ入れなければ十分に耐えられると思います」

 

 そう言ってパソコンの画面に相手の諸々のデータを表示する律。彼女の言う通り、フィジカルを活かしたダンクなどのスコアはずば抜けているがシュートなどは普通より少し上程度。しかもこのエキシビションマッチの特性を考えれば彼女達は得意技のダンクを狙ってくるはず。その対抗策としての高密度ディフェンスである。

 

「それで、その体制で耐えるのが10分まで。1ピリオドが終わったタイミングで、原さんと志御さんを入れ替える。コートでの司令塔は私が続ける感じで」

「ああ。それまでは野次飛ばしてるぜ。集中力もぐっちゃぐちゃにしてヘイト買いまくってやるよ」

 

 「修学旅行レベルでな」と志御がケタケタ笑うと「あれすごかったもんね〜」と茅野が答え、神崎も「凄い才能だったね」と笑う。序の口だ序の口、と志御は頬杖を突いて言った。

 

「それで、ここからがこの作戦の肝。……第2ピリオドからは志御を主軸にして一気に仕掛ける。目標は「相手にバスケットボールをさせない」。良いね?」

「うん!」

「もちろん」

「落ちこぼれだって努力すればエリートを超えられるってところ、見せてやろうじゃないの」

「吠え面かかせるぞ〜」

 

 そして間もなく試合開始。立ち上がった片岡が音頭を取った。

 

「E組、絶対勝つよ!」




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