浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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Q(クエスト).4 最強剣士、烏間惟臣!

「良いか、まず正しい剣の構え方はこうだ」

 

 そう言うと烏間はE組の生徒達の前で腰に携えた鞘から抜剣し、剣を構える。王国騎士団団長にして、王国どころか大陸中に名を馳せる剣豪である彼。なんと落ちこぼれであるはずのE組にそんな大人物が剣術を教えてくれることになったのだ。

 そして「いいか、よく見ておけ」と烏間は僅かに力を込めると、その剣を離れた山の方へ振り抜いた。

 

烏間の二連斬り!

 

 そして放たれた二つの斬撃。一つは山の上を滑るようにして木々の全てを刈り取って丸裸にし、続けざまに飛んでいったもう一つの斬撃が山を袈裟懸けに斬り飛ばす。「わぁっ!」と歓声を上げる生徒達。志御もにわかに目を見開きながら「『E組は驚愕している!』」とメッセージウィンドウを掲げている。そして現れた魔王は「ヌルフフフ」と笑った。

 

「いいですか、皆さん。あれが大陸最強の剣士、烏間惟臣です」

「ああ、ホントバケモンだなあれ」

「うん、とんでもない人だよ」

「ですが、そんな剣豪にも愛して止まない物があります」

「愛して止まない?」

「はい。犬です」

「え犬好きなの烏間先生?!」

 

マジで?!

 

 さっきよりも驚きの顔で聞き返すE組の生徒達。しかし烏間はそれを裏付けるように、E組の校庭の片隅で身を寄せ合う何匹かの迷い犬に目を惹かれていた。そしてエサとして骨付き肉を持ってゆっくり、ゆっくりと歯を見せた笑顔を浮かべて近づいていく烏間。しかしその笑顔は笑顔というよりもおおよそ威嚇であり、 何がひどいって緊張で力が入ってしまっているせいか血管バキバキに浮かんでいるのである。僅かに配慮した志御は「『笑顔下手すぎだろ』」と控えめにメッセージウィンドウを構えた。そして案の定烏間の接近に気がついた野良犬は酷く驚いたように顔を上げた。

 

「ああもういわんこっちゃない……」

「待って、でもワンちゃん達烏間先生の方行ってる!」

「マジじゃん」

 

志御は驚いている!

 

 なんと鳴き声を上げて烏間の下へ駆け寄っていく野良犬達。愛は世界を救うのかとE組に若干感動的な雰囲気が漂う中でとうとう烏間と野良犬が接触する。これはHAPPY ENDかと手に汗握ったところで野良犬は烏間を襲撃した。烏間の身体にガブリと齧り付いたのだ。志御は「『失敗!』」とメッセージウィンドウを掲げた。

 

「エサだけ持ってかれちゃった……」

「かわいそう……」

「……ああ、癒やされたな」

「いやOKっぽいぞ?!」

「マジで?!」

 

 そして顔やら手やら足やらから血を流しながらも「中断してすまなかったな」と戻って来る烏間。続けて彼は剣を構えると、水溜りを一刀両断してみせた。意味が分からなかった。「なんで液体が斬られてんだよ」とツッコむ志御だったが、烏間は「剣術を極めれば斬れぬ物などない」と断言する。「『ヤバ』」と志御はメッセージウィンドウに本音を零した。

 

「……やばいな、烏間先生」

「でもそんなすごい人に教われるんだもん!ありがたいよ!」

「それに結構かっこいいし!」

「そうそうっ!これを機にお近付きになりたいな〜!」

 

 そんなこんなで人気を集める烏間。そしてそれに羨望の目を向ける生物一匹。誰か、もちろん魔王である。キーッとハンカチを噛んで「私から人気を奪うつもりですね烏間先生?!」と抗議する魔王だったが、烏間は「違う」と魔王へ向けて剣を振り抜いて答えた。

 

「本当なら俺がこの手でお前を討つところだ。……俺に、バグがあったのならな」

 

 難なく躱されてしまった刃。チッ、と舌打ちすると、烏間は生徒達に目を遣った。バグが無ければ魔王を倒せない、つまり魔王を倒すにはバグ持ちであるE組(彼等)を育てるしかない。「よし、素振り30回!終わったら打ち合いだ!」と生徒への指導を再開する。その傍らで人気で負けてしまった魔王は木陰にしゃがみ込んでいた。

 

「どうして……どうしてですか……私の剣術の授業は生徒にも大人気だったのに……」

「嘘を付くな嘘を」

「馬鹿にすんのも大概にしろ」

「あんなん受けれるわけ無いだろ」

 

魔王は非難轟々だ!

 

 ブーブーとクレームを入れる生徒達に「そんなにだったのか?」と烏間は「『魔王は非難轟々だ!』」「『ふざけんな魔王!』」とメッセージウィンドウ二刀流で抗議する志御に問い掛ける。「ああ、ヤバいぜ」と彼女は説明し始めた。

 

◇◇◇

 

「では今日から皆さんに剣術を教えていきます。よろしくお願いします」

 

 そう言って剣術の授業を始める魔王。だがどれだけ見た目がコメディチックでトゥーンな魔王であろうとも魔王は魔王。生徒達はものすごく悪い予感がしていた。

 

「今日から皆さんには先生直伝の魔王流剣術を叩き込んであげましょう。その名も「地獄剣」!ヌルフフフ、カッコいいでしょう」

 

 「先生が考えたんですよ」と少し誇らしげに言う魔王に「『厨二臭い!』」とメッセージウィンドウを叩きつける志御。カルマも「なんか遅れてるよねー」と追撃する。魔王はその不評は想定外だったらしく「にゅやッ!」と声を上げた。

 

「確かに改名したのは先生ですがルーツは魔王に代々伝わる最強の剣術なんですよ!きっと皆さんの魔王討伐にも役立ちますから!」

「魔王流剣術が魔王に?!」

「自滅じゃねえか!」

「さながらドラゴンタイプといったところね……!」

 

 そんなこんなでなんとか押し切った魔王。「それでは始めますよ」と魔王は剣を構えた。それも、8本。

 

「さあ、地獄剣は基本的に八刀流です!それをまんべんなく広げる感じで!もちろん慣れてきたら10刀流、12刀流とバシバシ増やしていきましょう!」

「いや人間の腕は2本だけど?!」

「そして八刀流から繰り出す地獄剣の奥義がこれ!」

 

魔王は地獄の火炎を吐いた!

 

 一切剣の関係ないドス黒い炎を吐き出す魔王。「何が剣術だ!」「人間に出来ると思うな!」「『まず生物の勉強してこい!』」と生徒達から抗議が殺到する。そして、その火炎は山を1つ消し飛ばした。

 

◇◇◇

 

「……っていうわけだ」

「なるほど、それは災難だったな」

「一応これくらいは出来たんだけどな」

 

志御は地獄の火炎を吐いた!

 

「待って志御さん出来たの?!」

「いやメッセージウィンドウ出しただけだ」

「便利すぎない?!」

 

 素振りをしながらも話していた志御達だったが、唐突に鳴ったバキッという音でそれは中断された。

 

「どうしたの、茅野さん」

「いや、剣が壊れちゃって……」

 

 そう言って茅野は地面に落ちた刃を拾い上げる。そこには根本からバキッと逝った1本の剣があった。だが、よく見ると関係のないところまでボロボロ。「どうかしたのか?」と烏間が尋ねると彼女達は答えた。

 

「E組が差別されてるのは知ってると思うけど、実は装備とかもちゃんとしたの支給されないんだよねー」

「うん、僕のもそろそろ寿命かなって」

「……なるほど、理解した。魔王を倒すのにそんな装備じゃ良くない。午後は街で装備を調達しよう。金は国から出す」

「え、良いの?!」

 

 烏間からの提案にE組は沸き立つ。そしてそれを見た魔王は再びハンカチを噛んだ。




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