浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第50話 南国の時間

「あ、志御。あれじゃない?」

「……あ、ホントだ。あれっぽいな」

 

 出発から数時間。客船のドリンクバーなんかを味わいながらゲーミングパソコンで街作りシミュレーションを楽しんでいた3人だったが、神崎が窓の外に何かを見つけると一旦ゲームを中断する。「行くか?」と問いかけた志御に律は「はい!」とテンション高めで答え、慣れた様子で志御のスマホに移動した。

 

「いやあ、もう駄目……先生の頭の中がぐちゅぐちゅに掻き回されてる気分です、島まで保つかどうか……」

「大丈夫殺せんせー!もうちょっとだから

「凄い酔ってるね、殺せんせー」

「お、神崎に志御」

「よ」

 

 「このままずっと到着まで引きこもってるもんだと思ってたわ」なんて軽口を叩くクラスメイトに「んな訳無いだろ」と笑って答え、志御はブリッジの柵から身を乗り出す。首からわりかし頑丈なストラップで下げられた防水仕様のスマートフォンが潮風に揺れ、中の律が「おお!」と感嘆の声を漏らす。

 

「あっは!良い風だな!んであれが……!」

「ああ。東京から6時間、殺せんせーを殺す島!沖縄県普久間島だ!」

 

◇◇◇

 

「椚ヶ丘中学校3年E組の皆様、本日は普久間島リゾートホテルへようこそお越しくださいました」

 

 船着き場とビーチ直結のリゾートホテルのロビーに生徒達は荷物を運び込む。志御と神崎も自らの旅行カバンを持って行き、律の本体も南国仕様のオフロードタイヤを接続して自走しながら彼女達と共に移動した。

 

「志御さん、神崎さん、向こうでウェルカムドリンクを配っているようです」

「うーん、今はいいかな」

「だな。さっきまでリンゴジュースガブ飲みしてた。それよりも飯だろ」

「それが良さそうだね」

 

 そんな訳で3人が向かったのはホテル内の屋台村。律の本体も「ちょっとYouTubeチャンネルの撮影で」ということでゴリ押しして3人はテーブルに付いた。そして志御がアグー豚カツ丼を、神崎がソーキそばを頼む中、律はカメラやセンサーを駆使して彼女達のテンションアゲアゲを検知。機械ながら身を以て「お祭り気分」というのを体験していた。

 

「……あ、神崎。殺せんせー1班とハンググライディング始めたらしいぜ。写真送られてきた」

「ホントだ。じゃあ食べ終わったら私達も始めよっか」

「だな」

 

 そして海ぶどうを追加したりもして、少し急ぎながらも沖縄グルメを目一杯に堪能する2人。律はこっそりとその2人の顔を写真に収めた。

 

◇◇◇

 

「んじゃ始めるか」

「そうだね」

 

 水着に着替えてビーチに出た3人。黒ビキニにラッシュガードを羽織った志御と白いワンピースタイプの神崎は対照的で、ついでに画面の中の律はなぜかスクール水着。そして彼女らの手には水着に不釣り合いなエアガンが握られている。装填されているのは防衛省が研究の末に新たに作り出した「海洋生分解性対先生BB弾」、要は海にぶち撒けても分解される環境に優しいBB弾である。

 

「志御さん!こちら準備出来ました!」

「了解、試運転ってとこだな」

 

 そう言って志御は律の側面に形成された台座のようなパーツに重機関銃をジョイントする。分間数千発という途方もない連射力を実用化し、最大限引き出すために研究者が選んだ方法こそ、律に内蔵された特殊プラスチックによる物体生成機能と重機関銃を直結させることだった。律の内部で生成された対先生弾が直接重機関銃に供給され、秒間数十発のスピードで連射される。握る志御も、見てる神崎も思わず高揚してしまうほどにそれは彼女達が扱う「銃」の常識を越えていた。

 

「おーおー、これまた大層なモン手に入れたねー」

「良いな、俺も烏間先生に頼むか」

 

 そして彼女達の下に同じく水着に着替えたE組のスナイパーコンビ、千葉と速水が合流する。2人は志御や神崎とは違って酸素ボンベ付きの少し重装備。「こんなの背負うんだったら私も鍛えておけばよかったかな」とぼやく速水に志御は「一朝一夕じゃないからな」と笑って見せる。そして彼女達はエアガンを持ったままで海の中に入っていき、水深およそ3m程の沖で改めて銃を構える。少し離れた地点にはスクリューで浮く律の本体。水上での体幹のブレを修正し、それに慣れながらも画面内の律が持った的を狙う千葉と速水。志御と神崎はその妨害として律の傍らから2人へ向けて弾幕を浴びせる。彼女達が行っているのはいわば水上射撃訓練。これこそこの先の暗殺における要であった。

 改めて、浅野志御、神崎有希子、千葉龍太郎、速水凛香、そして自律思考固定砲台改め(おのず)(りつ)。この5人からなる第5班こそ、この暗殺夏期講習における殺せんせー暗殺の実行部隊である。




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