浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第51話 決行の時間

「ねえカラスマ?ガキ共どころか一般人さえいないんだけど?」

「当然だ。午後からここら一帯はE組で貸し切った。さっき一泳ぎして帰ったのが最後の一般客だぞ」

「なっ……ふざけんじゃないわよ!」

 

 そう言って花で作られた紐みたいな中々際どい水着を纏ったイリーナは悪態をつく。理由は簡単、水着デビューに失敗したからである。実はイリーナ、水着デビューに失敗したのはこれが初めてではない。寺坂がプールを破壊した際にも水着デビューを予定していたのだ。2度の失敗を経てイリーナは御立腹。烏間にちょっかいを掛けながら「ねえー!悩殺ー!悩殺したいのー!」と駄々をこねる。そんな彼女を烏間は軽く持ち上げ、そして海の中に放り込んだ。

 

「ちょっ、何するのよカラスマ?!」

「お前に一つ質問がある」

「何よこんな状況で?!」

「今回の暗殺、計画通りに行くと思うか?」

 

 海に浸かって尻餅をついたイリーナに烏間がそう尋ねると、イリーナはその目をお遊びモードからプロのものへと変えて口を開く。

 

「「計画通り」なんて行くわけないでしょ。計画書も見たけど、これだけの規模で人間が殺るんだもの、必ずどこかに綻びは出るわ。もしかして遊んでるだけに見える?これでも私はプロなの、私に都合良く綻んだなら決して逃がしはしないように手筈はきっちり整えてるんだから。防衛省(そっち)こそ、準備は出来てるのかしら?」

「……ああ、そうだな」

 

 烏間は答えながら思考していた。この暗殺夏期講習には幾つかの不安要素が存在していたのだ。ロヴロが言っていたように突如として数人の殺し屋と連絡が取れなくなり、防衛省内部でも失踪者が発生。それに加えて舞台である「普久間島」そのものに関しても怪しい噂が流れている。徐々に立ち込めてきたように思える暗雲に「彼等に何事もないと良いが……」と烏間は暮れる水平線を眺めた。

 

◇◇◇

 

「いやあ、遊んだ遊んだ。先生すっかり真っ黒です」

 

 遊び終わって日が沈んで集合時間。扇子で自らを仰ぎながらビーチベッドに寝転がる殺せんせー。ここだけ聞けば至って普通の夏の光景だが、最大の問題は殺せんせーの焼け具合である。日焼けは日焼けでも真っ黒焦げ。特徴的な三日月みたいに笑う歯まで真っ黒になっており、もはや輪郭を白線で取らないと顔が分からないほど。生徒達も思わず「いや黒すぎだろ?!」とツッコミを入れる。しかし殺せんせーは「先生を甘く見ないでください」とニヤニヤ笑う。

 

「ほら、脱皮してしまえば元通り。プルプル満月フェイスの先生に早変わりです」

「お、月一の脱皮だ」

「相変わらず便利な身体してるな」

「ヌルフフフ、本来は奥の手ですがこういう使い方も……あ」

「やらかしたな殺せんせー」

 

 事態のヤバさに気が付いた殺せんせーは脱ぎ捨てた真っ黒な皮を抱きしめて「やらかしたやらかした……」と冷や汗を垂らす。そして「もっかい着ればワンチャン……」なんて考えていたところを志御は強襲して奪い取り、「どっせーい」と海の中に放り込んだ。そんな状況に「締まんないなこれじゃ」と笑いながらも磯貝は「じゃあ暗殺の前にメシなんで」と殺せんせーを案内した。

 

「じゃ、夕飯はこの船上レストラン貸し切ってますから、ここでゆっくりと夜の海でも味わいながらということで」

 

 一流フレンチのような船内、その一番前に殺せんせーの席は用意されていた。すでにビュッフェのような形式に料理は並べられており、E組以外の人間は防衛省から派遣されて操縦を任されている、話が通されている海自隊員数人のみ。前座でありながらすでに暗殺会場のような雰囲気を漂わせる空間に殺せんせーは感心していた。

 

「なるほどぉ……夕飯と称して先生をたっぷり酔わせてからって訳ですか……」

「ええ。暗殺には最善を尽くせというのが殺せんせーの教えでしょう?」

「ヌルフフフ、良い心構えです」

 

 「余裕ぶっこく割には触手震えてんのな」とレストランの一角のバースペースでお手製モクテルの入ったグラスを揺らす志御。水色の肩出しブラウスにミニスカート、そしてノースリーブジャケットとか呼ばれるようなスカートより丈の長い大きめのベストを纏った彼女のファッションは相変わらずのフォーマルさを纏っている。彼女の目の前に座る神崎からは「もう志御はそういうファッションなんだね」というコメント。

 そしてクラス委員の磯貝の音頭でE組はグラスを掲げる。そして「かんぱーい!」という前祝いかのような盛大な掛け声が船に響いた。

 

◇◇◇

 

「さ、殺せんせー。とうとうお時間だぜ」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「結局酔い散らかしてんのな」

 

 顔を真っ青にしながらも「それで、これからが皆さんの本気というわけですか……」と少し楽しそうに笑う殺せんせー。生徒達はそれに頷き、殺せんせーを練り上げた暗殺の舞台へ招き入れる。目的地はホテルの離れ、水上に設けられた一つの小屋。それを目の前にして、殺せんせーも生徒達も一旦足を止める。

 

「ようこそ水上パーティールームへ」

「お待ちかねの暗殺だぜ?殺せんせー」




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