浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第56話 スニーキングの時間

「キッツ……」

「大丈夫か?杉野」

「なんとかな……助かるぜ、竹林」

 

 バスタオルを枕にし、床に寝かされた罹患者達。彼等の看病を任されたクラスの中でも理科強者にあたる竹林と奥田は、せめて熱で脳にまでダメージが行かないように、とホテルから借りた製氷機で氷袋を量産し、倒れ伏せているクラスメイトの頭に乗せていく。

 

「腹痛に吐き気、頭痛……何よりみんな熱がすごいことになってます……!」

「ああ。ウイルス性の食中毒かとも思ったけど、それにしては症状が酷い」

「あ、あの……!それだけ強いウイルスなら、私達だけじゃなくて島中に広がっちゃうんじゃ……?」

 

 作業しながらも疑問符を浮かべた奥田に、竹林は「それはないと思う」と答える。

 

「犯人曰く「感染力は低い」らしいし、多分空気感染じゃなくて経口感染……どこかで食事か何かに混ぜられた可能性が高いんじゃないかな。少なくとも、赤の他人にバシバシ感染るものじゃない。一応、皆にもそう伝えたけど……」

「そう……なんですね……」

「……氷はこんなところか。奥田さん、少し待ってて。ホテルの方に経口補水液が無いか探してくる」

「あっ、はい!お気をつけて!」

 

 そして竹林を送り出し、クラスメイト一人一人に声を掛けていく奥田。彼女の頭には、その感染経路について、決して無視できない疑問符が浮かんでいた。

 

◇◇◇

 

「中は……ちょい豪華なくらいで普通のホテルだな」

「はい。推測するに、このフロアなどは偶然にも紛れ込んでしまった不幸な一般客などが使うものだと思われます」

 

 最大限の警戒心を抱きつつ階段を登り、2階に足を踏み入れた志御は呟き、それに律が答える。振り返った烏間は他のクラスメイトも皆登ってきていることを確認すると、次の段階について説明を始めた。

 

「さて、これで大きな難関は突破した。ここでようやく君達に普段着のままに来てもらったことが役立ってくる」

「……あ、もしかしてお客さんのふりをするってこと?」

 

 不破の言葉に「ああ、その通りだ」と頷く烏間。しかし、「ちょっと待ってくださいよ!」と菅谷は手を上げて反論した。

 

「ここって悪い奴ら御用達みたいなホテルなんスよね?俺等みたいな中学生の団体なんか怪しさMAXじゃないスか?」

「にわかには信じがたいんだが……話を聞く限りでは決して少なくない。特に芸能人や成金連中のボンボンなんかがな。蝶よ花よとまるで王様のように甘やかされた彼等は、義務教育さえ終えぬ前から親の金で決して表に晒せない遊びに手を付け始める。酒やタバコなんて序の口、それ以上のものに嵌まるなんていうのも日常茶飯事だと」

「はい。決して望ましくない現実ではありますが、せっかくですし利用させてもらいましょう」

「利用?どういうことだ?」

 

 問いかけた志御に、未だ完全防御形態の真っ最中である球状の殺せんせーは「そんなものは簡単ですよ」とニヤニヤ顔で言う。

 

「調子に乗ってください」

「……は?」

「調子……?」

「はい。それはもう調子に乗りまくって、世の中ヌルゲーだと舐めてる感じで。自分が未だ敗北を知らない生まれついての勝ち組だと思い込んで歩いてみてください」

 

 そんな殺せんせーの指示に生徒達は顔を見合わせる。そしてコクリと頷いた彼等はさながら輩のように、それはそれは大層オラついた感じで歩き始めた。顎を上げ、腕を組み、眉を吊り上げ、目つきは悪く。「そうそうその調子!皆さん悪の素質がありますよ!」とまるでボディビルのコンテストのようにコールする殺せんせーに、志御は「私もやった方が良いのか?これ」と尋ねた。

 

「言っちゃなんだが、私普段からこんな感じだろ」

「そう?結構ちゃんとしてるよ、志御」

「……あ、でしたら志御さんと神崎さんはとことんお淑やかな感じで行きましょう。こういう集団に混ざってる大人びた人間というのはとても恐ろしく見えますからねぇ」

「……ま、善処するけど」

 

 志御はそう答えてブラウスの袖のリボンを結び直す。彼女のスマホの中の律も、それに応えて少しフォーマルな装いに。こうして見ると、理事長の娘に違わない気品の良さを漂わせているものだった。

 

「というわけで皆さん、我々もまだ敵の顔を知らない状況です。存分に警戒しながら、世の中は舐めつつも敵のことは舐めない、そんなスタンスで先へ進みましょう」

「「「……はい!」」」

 

◇◇◇

 

「流石にホテルの全面協力とは行かないが……要点は問題なく押さえられた。万が一の時の迎撃準備も問題ないな?ガストロ」

 

 そう言って、彼は少しラリった目で「銃うめえ」と銃口をしゃぶっている男に声を掛ける。彼は「問題ないっスよ、ボス」と梅ジャムの袋を切りながら答えた。

 

「取引に応じるなら、奴らはエレベーターでここまで来るでしょう。そうなったらフロントから連絡が来ます。もし使わずに忍び込もうもんならこの部屋までは長い長い一本道、「スモッグ」が発見して仕留めますよ。俺達ゃ政府より高いカネもらってんです、プロなりに仕事はさせてもらいますよ」

「ククク……ああ、それは何よりだ」

 

 そして、男は「梅ジャムと銃相性やべぇ」と再びラリった目で銃口をしゃぶった。




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