宝石の国Any%RTA フォス生存&月人消滅チャート   作:あじまる

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#5.5 玫瑰のジレンマ

 

 

「いるだけで迷惑、か。…生まれてから役立たずの僕の上をいくとはやるじゃない……!」

 

 …ん。誰だ…?

 

 目を薄らと開け顔を起こしてみれば、洞穴の岩壁は夕陽を受けて真紅に染まっていた。まだ仕事に出るには早い。しかし、今しがた聞こえてきた話し声が気になる。こんな遅くに虚の岬まで来るとは何事だ?

 未だ睡眠に戻ろうとする身体に気合いを入れ、起き上がって上へと耳をそばだてる。

 

 

「期待も心配もされず、褒められもしない仕事なんて、いみわかんない。やめちゃえばいいんだ。」

 

「せんぱいは、ほめられたいの?」

 

「うん?そりゃあそうだよ!学者先生は偉大な発見をして〜、先生やみんなに褒められて〜、戦闘センスもすごいとなり、見回り組のエースに抜擢、そしてさらに褒められるのだ!」

 

 

 

 

 この声は……思い出した、いつぞや見た三半か。確か以前は先生にべったりとくっついて離れようとしなかった様に思うが、何故こんな場所に来ている?

 それに、もう一つの声に聞き覚えは無い。新たに産まれた仲間だろうが、三半と産まれたてとは、一体どういう組み合わせなんだ。

 

 

 

 

「うーん、なんでほめられたいの?」

 

「なんでって、それは…それは……あれ…?」

 

 

 虚の岬まで来てする事が井戸端会議とは呆れる。一体いつまで居座るつもりだ?俺が出る時にばったり会うのだけは勘弁して貰いたいものだが。

 いやそれはまだ良い。ここでべらべらと喋り続け、そのまま寝てしまったなら非常に面倒くさい事になる。俺に馬鹿二人を引き摺って学校まで戻るほどの腕力は無い。

 

 ……さっさと追い払うに限るか。

 

 さて何と声を掛けたものかと、ゆるゆると崖を登りつつ考えていた俺の眠気は、空に浮かぶ黒点を認識した瞬間に完全に吹き飛んだ。

 

 

 

 弾かれたように崖の縁を飛び越した俺はその勢いのまま三半と産まれたての前に滑り込む。

 

 間髪入れずに腕から毒液を放ち、矢を受け止めるが、一体この量はなんだ……!

 

 毒液を増やして迫り来る矢の嵐に耐えながら、後ろでへたりこんでいる連中を怒鳴りつける。

 

「こんな黄昏時に出るなんて、と思ったら……三半と、誰だお前は!」

 

「きらきら!」

 

「シ、ンシャ」

 

 

 馬鹿丸出しの返事に苛つきながら、頭の冷静な部分で考える。

 月人好みの薄荷色とはよく言ったものだ。まさか夕刻にまで月人が出るとはな。学校から離れた上に、抵抗する力を持たないコイツは格好の獲物だろう。

 産まれたての方は三半を庇うような動きを見せているが、武器も持っていないのではまともに戦えるとは思えない。

 

 

 つまり、この場を切り抜けるには、俺がやるしかない、という事だ。

 

 

 くそっ、コイツらがここに来さえしなければ。

 

 

「ああ、どうして、俺が息をするだけで、土も草も死んでいくのに」

 

 

 俺が守らなければコイツらは連れていかれる、だが、俺が戦えばこの辺り一帯は死ぬ。

 相反する思いに身体が引き裂かれそうになる。俺の苦しみに呼応するように毒液が身体中から噴き出し、目元から出る毒液で視界が歪む。

 こんな、見るに堪えない、嫌だ。

 

「これ以上、汚したくない、見られたくない、こんな恥ずかしい、戦いたくない、戦いた、ふ」

 

 身体の中をかき混ぜられるような不快感、喉元までせり上ってきた毒液を堪えきれずに吐き出す。

 喉奥から溢れる毒液は留まらず、ボタボタとこぼれ落ちたソレは足元の草花を穢した。

 怖気に耐える様に我が身を抱きしめる。

 

「シンシャ!」

 

 やめろ、見るな。

 お前らのせいだ、俺は、戦いたくなんか

 

 

「ない、のに」

 

 

 岬に降り立った月人共が投げた槍が降り注ぐ。

 霞む目でそれを見据え、震える身体に鞭打って毒液に意識を集中する。

 

 俺の意識が深く入り込んだ事で、毒液が無数の人形へと姿を変える。強く意識を向けると人形の軍勢は津波のように躍りかかり、一瞬の間に投げられた槍ごと月人の群れを飲み込んだ。

 

 その勢いのまま、毒液の波に押し上げられるようにして岬を飛び出し、宙に浮かぶ器を飛び超える。

 飛び上がった俺を見上げ、雑共が矢をつがえるがもう遅い。

 

 両腕を突き出して新たに毒液を放つ。

 布を掛けるかの如くぶわりと広がった毒液は、器を頭上から包み込み、押し潰した。

 

 

 

 終わった。

 そして俺が汚した陸と海も、長く死んだままになるのだろう。

 

 霧散した月人の霞を突き抜けて海へと落ちながら、崖の縁を掴もうと手を伸ばす。

 伸ばした手は縁に触れたが、俺自身が出した毒液によって滑り、俺の身体を支えることが出来なかった。

 でも、いいか、このまま海に落ちるのも。

 俺が出した毒で俺が落ちるなら、御誂え向きだ。

 守りきった安堵感と、穢してしまった罪悪感で力が抜ける。

 

 

 赤い空を見上げて、落下を受け入れた俺の目の前に、薄荷色の光が差し込んだ。

 

 さっきまでへたり込んでいたハズの三半が、毒液で汚れるのも厭わず、崖から身を乗り出して、俺へ画板を差し出していたのだ。

 

 毒に塗れても、俺の為に手を差し伸べてくれた。

 俺の体は考えるより先に差し出された画板を掴んでいた。いや、掴んでしまった。

 

 パキン!と音を立て、画板を掴んでいた三半の両腕がへし折れた。

 

 

 再び落ち始めた俺の頭の中で色々な想いが渦巻く。

 俺の為に汚れるなんて馬鹿なヤツだ。

 違う、俺はなんで期待したんだ。俺が期待したから、俺が、考え無しに掴んだせいで三半は割れた。

 力も無いのに手を差し伸べた馬鹿が悪い。

 

 ああ、お前が来なければ、こんな思いをする事、無かったのに。

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい!シンシャ!…っあ゙あ゙あ゙あ゙!」

 

 鋭い叫び声が思考を断ち切る。

 そういえばもう一人いたな。全部終わってから焦るとは、ボンクラも良いとこだ。叫んだ所で何が出来る。俺は、もう、誰にも期待しない。

 

 

 そんな俺の決意は、身を乗り出した白い宝石の後ろから、空を覆わんばかりの勢いで噴き出した金色の光で吹き飛ばされた。

 

「なんだ!?」

 

 

 渦を巻くように金色の液体が崖から溢れ出す。

 その光景に驚く間もなく、その液体は毒液を吸い込みながら腕の様な形に変形して、凄まじい勢いで俺へと迫ってくる。

 

 なんだあれは!わからない!怖い!

 

 強ばった身体から毒液が溢れるが、その腕は毒液ごと、意外にも優しく俺の身体を海に落ちる寸前で抱き止めたのだった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸へ引き上げられた俺は、金色の腕が産まれたての背中から突き出ている光景を二度見し、それが風に吹かれて砂のように散っていくのをただ呆然と眺めていた。俺の横には海に落ちたと思っていた三半の両腕が転がっている。白粉が落ちていない所を見るに、コイツが空中で受け止めたのか。

 

 

 先程の摩訶不思議な現象を引き起こした張本人は口をポカンと空けて虚空を見つめて動かない。そういえば赤くなったアレキがこんな感じだったか?

 

 

 

 

「……なんなんだ、お前」

 

 

 沈黙が気まずくなってつっけんどんに声をかける。

 阿呆面を晒していた産まれたては、声をかけてしばらくしてから、ハッとした顔でこちらを振り向いた。

 

 

 

「……あ、はじめまして!ホワイト・ダイヤモンドです!よろしくおねがいしま!」

 

 阿呆丸出しの挨拶にげんなりする。本当になんなんだコイツは。あの現象について問いただしたいが、この様子ではまともな答えは帰って来なさそうだ。

 傍らに転がっているもう一人の阿呆へ声をかける。

 

 

「おい、三半。コイツはなんだ。明らかにダイヤモンド属じゃないだろ」

 

「…」

 

 だんまりか。腕がもげて記憶も混濁しているのか?

 

 

「何とか言え…。チッ、揃いも揃って余計な事を……」

 

 

 俺は助けろなんて頼んでないのに。それで腕を無くしかけるなんて馬鹿だ。

 そもそも俺は落ちても問題なかった。あの程度の落下で開くほど身体を鈍らせた覚えは無い。

 

 

 むしゃくしゃして、グローブをはめたあと、横に転がった三半の腕を拾い、産まれたてに差し出す。あの金の腕があるなら両腕と三半を抱えて帰るのも苦では無いはずだろう。

 

 

 産まれたては毒液で汚れた三半の腕をまじまじと見て、飛び上がってこちらを見た。

 

 

「あ!!そうだ、どくえきにきをつけないといけないんだった!」

 

 

 

 

 産まれたての言葉で、胸を抉られたような気持ちになる。

 つまりコイツらはハナから俺を目掛けて来ていたという事だ。それも、誰かから俺の体質について聞いた上で、この馬鹿共はそれを忘れていたってわけか。

 

 

 道理で、俺なんかに手を差し伸べるはずだ。賢いやつはわざわざ毒液に入り込んだりはしない。

 俺に毒液がある以上、誰も、心の底から俺に歩み寄ってくれるヤツなんて居ないのに。

 わかりきっていることなのに。

 なのに、俺は期待していたのか。なら、一番馬鹿なのは俺だ。

 

 

 産まれたての顔を見れない。

 今俺はどんな顔をしてる?

 勝手に期待して、勝手に裏切られて。こんな、惨めな………

 

 

 

 

 

「シンシャつらそう!もしかしてどくえきくるしい?たいへん!」

 

 大声が聞こえたと思ったら、世界がひっくり返っていた。

 産まれたての小脇に抱えられている事に気がついた頃には、反対側には三半が抱えられており、虚の岬は最早見えないほどまで遠ざかっていた。

 

 

「な!?やめろ、触るなっ…バカ!はなせ!」

 

 

 全力で走り始めた産まれたてに振り落とされないように、三半の腕を抱きしめて必死に体を丸める。

 

 

「きゅーかーん!」

 

「本当に、なんなんだ、お前!くそっ、コイツもダイヤモンドか!全然話を聞かない!おい、三半!何とかしろ!」

 

「…あきらめよう。僕らに出来る事はない」

 

 

 

 

 散々待たせて俺への第一声がそれか!この能なしが!

 

 

 

「このバカども!俺はどこも割れてないし、毒も問題ない!離せ!」

 

「うおー!」

 

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

「じゃあね、ホワイト。あした朝一番に前池に集合ね」

 

「はーい、おやすみなさー」

 

 

 

 ホワイトを部屋に送ったあと、自室へと戻り、掛け布を被って横になる。

 

 明日は早起きしてホワイトを送らなきゃだし、さっさと寝よう。

 

 

 

 ……まいった。どうにも目が冴えてしまって眠れそうにない。今日は、色々な事がありすぎた。

 先生から博物誌を任されたのはいい。上手くできるかは分からないけど、いつも通りやってみるだけだ。

 でも、まさかホワイトと組む事になるとは思わなかった。

 

 そう、僕の唯一の後輩。三十年もの間、外に出ることが許されなかった末っ子。

 以前出会った時から不器用そうではあったけど、まさか僕に負けず劣らずのレベルだとは思わなかった。木工、製紙、鋳造何をやっても失敗続き。

 でも、絵は上手いんだよなぁ。青の森で見せてもらった画板、文はむちゃくちゃだったけど、今日僕が教えた事は全部書いてあった。

 

 

(でも、きょう、はじめてみるものばっかり!ぜんぶだいはっけん!)

 

 ホワイトは、自分の為に博物誌を描いてるんだ。多分、ペリドットも、レッドベリルも、スフェンもオブしーも、自分の得意なこと、やりたい事が、皆の為になる仕事になってるんだ。

 

 

 …僕は、博物誌で大発見をして、皆を見返してやりたかった。僕にも凄いことが出来るんだって、それで他のことにも挑戦させて貰えるようになって、それで、それで、……それで?

 

 

(せんぱいは、ほめられたいの?)

 

 ほめられたいよ。

 

(なんでほめられたいの?)

 

 僕は……

 

 

 そうだ、僕は不安なんだ。

 

 何も出来ない役立たずのクズ、はっきりと言ってくるやつは少ないけど、きっと皆そう思ってるんだろう。何もしてない、させて貰えない僕は、ずっと、ここに居てもいいのかって不安で、怖かったんだ。

 

 だから、皆に認められたい。愛されたい。

 おまえはここに居てもいいんだよって、安心させてもらいたいんだ。

 

 

 

 なぜだか、ストンと納得できた。

 ホワイトに聞かれた時、うまく答えられなかったけど、多分、僕はこわいんだろう。生きててもいいのか、ずっと、心の端っこで不安に思ってたんだ。

 

 

 

(これ以上、汚したくない、見られたくない、こんな恥ずかしい、戦いたくない)

 

 

 ふと、声が聴こえた気がした。

 

 シンシャ、もしかして君もそうなの?

 居ても良いのか、生きててもいいのか、怖いの?

 

 

 

 

 ……もう一度君と、ちゃんと話したい。

 

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 

 

 最後の見回り箇所を歩き終えた俺は、徐々に白んでいく空から逃げるように虚の岬へと急いだ。

 産まれたてに医務室へと連行されたあとすぐ、三半の腕を放り出して見回りに行ったが、ルチルには悪い事をしたか。

 

 

 

 ……心の片隅では、本当は夕刻の月人は俺を迎えに来たのではないか、という暗い期待が燻っていた。だが、結局この夜も月人は現れ無かった。

 

 いつも通り、一人きりの仕事。

 もう孤独には慣れたはずだったのに、久しぶりに他人と話したせいか、今日の仕事はいつもよりも静かで、寂しく感じた。

 

 

 朝焼けが淡く空を染めた頃、俺は自分の寝床へとたどり着いたが……

 

 俺がこぼした毒で草花が死んだ岬、汚れた地面との境目あたりに人影が蹲っているのを見て、俺は歩みを遅めた。

 近づくと朝焼けに照らされて、薄荷色と乳白色がきらめいているのが見える。

 昨日の今日でまたここに来るだと?…本っ当に馬鹿だ。大馬鹿だ。一体なんの用事があって俺をつけ回しているんだ?

 

 足音を立てないようにゆっくりと近づくと、話し声が聞こえてくる。悪口だったらこのまま蹴り飛ばしてやる、と意気込んで耳を澄ませる。

 

 

「おー、せんぱいのえ、すきだよ」

 

「おうおう!皮肉とはやるじゃない。ほら、あんた、描きな、さい!」

 

 雑草を引っこ抜いて眺めていた三半が、産まれたてに何やら画板を押し付けている。すんなりと受け取った産まれたては、鉛筆をくるりと回したあと、凄まじい速度で手を動かし始めた。

 

「できた、ぶんしょうはねー、ざらざらー、ぷっくりー、もじゃもじゃー」

 

「わかった、わかったわかった。いいかいホワイトくん、この文章で先生に提出したら僕ら大目玉だ。というわけで協力しないか。文章は僕が考えるから、君が絵を描く。どう?」

 

「たのしそう!」

 

 

 

 なるほど、植物の調査や記録のようなものか。おおかた誰かから俺の事を聞いて、草花に詳しいのではとアタリをつけ、ここまで来たわけか。誰だ、こいつらに要らんことを吹き込んだのは。

 

 しかし、よりによってこの二人に任せるとは、先生は一体何を……ああ、それしか出来る仕事が無かったのか、こいつらは。何の役にも立たない仕事だが、少しでもこいつらの気を紛らわせられれば、と考えての采配だろう。

 そういう意味ではこいつらも俺も変わらない。夜に閉じこもった俺と、意味の無い仕事を任された二人、必要とされない者ばかりがこの岬に集まっているわけだ。

 

 話し込みながら何事かを書き続けている二人にゆっくりと近づき、声を掛ける。自分でも驚く程低い声が出た。

 

 

 

「おい、懲りてないのか」

 

 

 三半が飛び跳ねて画板を取り落とし、こちらを振り返る。

 

 

「仕事だよ。そっちこそ、なんでまたここにいんだよ。ヘリオもさらわれた危険な場所なんだろ?」

 

 

 喚き散らすかと思ったが、案外冷静な反応が返ってくる。

 少し驚いて、帰れと怒鳴りそうになり、夕刻に手を差し伸べてきたことを思い出して、やめた。

 いつまでも追いかけられるくらいなら、

 

「……そうだ。俺はここで、攫われるのを待っている。月でなら、俺に価値を付けてくれるかもしれない」

 

 つとめて冷静に話すよう心がけるが、声色は自然と固くなる。

 

「ずっと待っているが来ない。おまえらはいいな。敵にすら愛されて」

 

 吐き捨てるように言って、目を逸らす。八つ当たりなのはわかっているが、無遠慮にこちらに踏み込んでくるこいつらには、言わずにはいられなかった。

 

「それが、シンシャのしたいことなの?」

 

 不意に産まれたてが口を開く。思わず顔を上げ、白い宝石を見つめる。長い前髪から覗く瞳は射抜くようにこちらを見据えている。

 

「ほんとうに、つきにいっちゃうの?」

 

「……」

 

 産まれたての目は俺から外れない。まるで心の奥底まで覗き込むような視線に、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。

 お前らに何がわかる。

 俺は、ただそこにいるだけで周りを傷つける。だから、だから俺は皆と一緒に居れない。誰も俺に寄り添ってくれない。なら、いっその事消えてしまうほうがマシだ。それが、一番良いはずなんだ。

 

「シンシャ、ほんとうに、いいの?」

 

「黙れ!!!!」

 

 

 堪えきれずに叫ぶ。

 

 

「……俺だって、夜から出たい!先生と、みんなと一緒にいたい!月になんて行きたい訳ないだろ!!」

 

 

 感情任せに捲し立てる。目から毒液が滲み出す。

 

 

「でも、でも俺の毒が全部ダメにしてしまう。俺が居るだけで皆は傷つき、生き物や草花も死んでいく!!俺はここにいちゃいけないんだよ!!」

 

 

 産まれたてが息を飲み後ずさる。

 

 

「もう嫌なんだよ!俺の毒が誰かを傷つけるのも、皆に怖がられるのも、……誰かに期待するのも。……苦しいだけだ」

 

 

 そこまで言い切ってからハッとする。俺は、産まれたばかりの仲間相手に、何を言ってるんだ。

 いよいよその場に居ることが苦しくなり、振り返って走り去ろうとして、産まれたてに腕を掴まれる。

 

 

「触るな!」

 

 

 馬鹿が、毒液で汚れた事をもう忘れたのか。腕を振りほどこうとして揺さぶるも、グローブをはめた産まれたては俺の手を離そうとしない。

 そのうち俺の腕の方が割れそうになり、力を抜く。俺が抵抗を止めると、産まれたては手を離し、ぽつぽつと話し出した。

 

 

「……ぼく、なんにもわからないの。シンシャのこと、せんぱいのこと、みんなのこと、なにをおもってるのか、なにがすきなのか、わからないの。だから、いつもしつもんしてばかり。……つらいこと、おはなしさせて、ごめんなさい。」

 

 

 ……本当はわかってる。

 こいつや三半は、俺を笑う為にここに来た訳では無く、俺の知識を頼ってくれたのだということも。夕刻に手を伸ばしたのは、純粋な気持ち故だった事も。

 

 それに比べてどうだ。俺は裏切られる事を恐れ、俺へと手を差し伸べてくれた仲間に散々恨み言を吐き出しただけ。本当の毒は、俺自身だ。

 罪悪感と自己嫌悪でとうとうその場から動けなくなった俺は、せめて、こいつらの仕事の助けになるならと口を開く。

 

 

 

「…………南の浜で2種、双の浜で3種、間の原で1種、白の丘で1種。…大発見かどうか知らんが、名前も無い、役に立たない植物を見た事がある。……俺への用はこれで済んだろ。もう、邪魔するなよ」

 

 

 今度こそ振り返って歩き出す。これ以上は、目から出る毒液を抑えられそうにない。

 

 

「手伝って!!…ほしいんだ」

 

 歩き始めた俺の背中に、次は三半から声が掛かる。俺は、振り向かない。

 

 

「断る」

 

 

 足を進める。

 

 

「君が!生きててもいいって思えるような、そんな方法を、僕たちが、必ず見つけてみせるから!!」

 

 

 止まる訳には行かない。

 

 

「だから、月に行くなんて言うな!」

 

 

 期待したら、苦しくなるだけだ。

 

 

「なあ!」

 

 

 追いすがる声は、もう遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人分の足音が遠のいてからしばらくして、風の音に混じり、ばさばさと何かが擦れ合う音が聞こえて、俺はうんざりとしながら洞穴を出て様子を見に向かった。

 

 崖を登りしばらく歩くと、先程まで二人がいたであろう場所に画板が落ちており、留られた紙が岬に吹き付ける風に合わせてはためいてる。

 

 

 忘れていったのか。あいつら、どこまで能天気なんだ。

 

 

 捨ておいて帰ろうとして、少し、ほんの少しだけ、アイツらの事が知りたくなって、画板を覗き込んでみた。

 

 産まれたてが書いた紙は、三半が言っていたように絵は上手いが内容はめちゃくちゃだ。端の方に三半が書いた注釈があるが、こちらは字が汚くて読めたものでは無い。

 まじまじと眺めていると、一際強く吹いた風が紙を捲り上げ、一番下の頁があらわになった。

 その紙を見て、俺の目は釘付けになった。

 

 その紙の左半分には、何も書かれていなかった。しかし右半分には、俺が掴んだ時についたのであろう、べったりとした手形があった。

 

 俺は、落ちてもいいと思っていた。思っていたはずだった。だが、結局最後になって、俺は三半が差し出したコレを掴んだのだ。これは、俺の願いの証だ。

 

 

 俺だって、夜から出たい。

 

 でも、無理だ。俺が生きている限り、周りのもの全てを傷つけてしまう。

 

(君が!生きててもいいって思えるような、そんな方法を、僕たちが、必ず見つけてみせるから!!)

 

 三半の叫びが脳裏に響く。

 

 信じてない。そんな方法ある訳ない。先生にも見つけられなかったんだ。あんな奴らにどうにか出来るわけない。

 

 目から毒が溢れ出る。不安と期待で胸をかき混ぜられる。

 

 再び風が吹き、紙がはためいて手形が見えなくなる。擦れ合う音は一層強く聴こえるようだ

 

 

「…くそっ、こんなもの」

 

 

 差し出され、そして掴んだ証を、どうしてもそのままに出来ず。

 画板を拾いあげようとして、これ以上汚さないように思い直し、俺はグローブを取り出して着ける。

 

 吹き付ける風は目元の毒液を拭いとって、吹き抜けていった。

 




☆コメント返しのコーナー
〇最高に面白い(@ ̄□ ̄@;)!!
宝石の国は鬱展開がすごいからオリ主の補正で愛されハッピーエンド期待してます!!
エタらず頑張ってほしい(o´・∀・)o
応援してます!!

ありがとナス!
動画編集大変過ぎて、こう言うコメントは大変支えになっております。




〇立ち絵のホモ君くそかわ

やっぱ好きなんすねぇ!(ありがとうございますの意)

どうしてもRTA動画じゃ倍速ばっかりで、じっくりとホモくんを嘗め回す機会が無かったので、ご用意させていただきました。




〇シンシャを前に合金引くのはbiim兄貴リスペクトを感じて草。

正直おっぱげた(白目)
マジでここのセクションはあっさりと済ませたかったのに、ホモくんが暴走しすぎて(完走までの)タァイム延びた?伸びない?
これ一応RTAなんですがそれは……(困惑)



〇そんな…俺達のクラゲ鑑定士が…

─────────────────────
生活スキル:クラゲ鑑定士

照明クラゲがポリプから出芽する際、二体に分裂する兆候を見分ける事が可能になる。それ以上の事は無い。
─────────────────────


〇まって?じゃあ今回合金引かなかったら、特性取得方法の開示はもっと先だったんですか?

パート2でもお話しましたが、元々意図的に使う予定は無かったので、完走まで登場することは無いはずでした。全部ホモくんの暴走のせいです。
ちなみに、あくまで「司銀」を永続獲得する方法なので、別の特性を獲得するには別の方法が必要になります。



〇おー…ええやん、思わず一気読みしちゃったよ
ホワイトダイヤモンドくん、性質的には最終編の石くんたちに近いように感じますな
なんというか、他人を否定せず、どこまでも寄り添って理解を目指す感じ

確かに、ホモくんの行動の端々には、原作の岩石生命体のような印象が見て取れますね。

しかし、仮に岩石生命体だとしたら、彼らの言語は宝石達には理解出来ないはずですし、不活性な部分もあるとはいえ、体内にインクルージョンで活動している点など色々矛盾が出てくるんですよねぇ。夜に動ける点に関してはそういう体質としか言えませんが…
性質に関しても、石たちのような寄り添う感じじゃなく、もっとこう、引き摺ってでも、対話する!的なパワー感を感じますね。

もし彼の来歴が分かるとしたら、RTA開始前の、ホモくんが発生する段階に何がヒントがありそうですね。走者はゲーム画面以上のことを観測する術を持たないので、私がそれを調べることは出来ませんが…







☆ステータス
name:シンシャ

硬度:2/10
靱性:4/10
INT:8/10
POW:7/10
DEX:8/10
 
特性:賢者の石、司銀



 
特性:司銀
自身のインクルージョンに連なる水銀を操ることが出来る。有用な物には得てして不都合な面もある。

1.水銀への完全耐性獲得。
2.「スキル:水銀操作」解放。



特性:賢者の石
大気中の水銀の凝結及び、体内での水銀の精製を可能にする。これらにより発生した水銀には自身のインクルージョンが含まれる。かつて丹穴を手に入れた人間は巨万の富を得たという。物の価値とは、つまるところ時の運に依るものに過ぎない。


1.「スキル:水銀凝結・ 水銀放出」解放。

2.この特性は属性「七宝」を持つ。






☆現在の友好度
フォス
6→7/10

シンシャ
0→1/10
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