宝石の国Any%RTA フォス生存&月人消滅チャート   作:あじまる

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#13.5 我想う故に我あり

 

 

 

 

 

 

「…フォス、今回ばかりは許可できない。戻るまで学校から出ないこと。皆、でるぞ!!」

 

「待ってください、先生!」

 

 

 僕にも何か出来ることが…

 

 

 続けようとした言葉はあわただしく出発した皆の足音でかき消され、僕は一人教卓の前に取り残された。月人の襲来を報せる鐘が鳴り響く中、それでも諦めきれずに前池まで出るも、既に先生達は遥か彼方へと離れ、僕にはとても追いつけない。集団の中には、昨日文字通り身を焦がしながら僕を助けてくれた後輩の姿も見える。

 

 

「ホワイト…」

 

 

 呟いた声は一陣の風にかき消された。彼は強い、それに先生もいる。霞の向こうに見える三器を相手取ったとしても負ける事は無いだろう。いくら言い聞かせても、僕の内側からふつふつと不満が湧き上がってくる。

 僕よりも若いのに、特別な力を持って生まれてきたホワイト。僕が何も出来ないまま無為に過ごしている内に、いつの間にか彼は戦争に出るまでに成長していた。いや、そもそも最初から僕が間違っていた。彼はダイヤモンド属、生まれながらに恵まれている。後輩といって守ってやる必要なんてなかったんだ。役立たずの僕なんかとは違う、特別な子。僕は……

 

 こんな事を考える自分に嫌気がさす。彼はとてもまっすぐで、僕の事も、王様のことも大切だから戦ってくれたんだ。そんな彼に対して僻むなんて、正真正銘のクズじゃないか。

 

 …でも、それでも。僕は特別になりたかった。誰かから頼られて、褒められて、認められたかった。ホワイトが持っているものが欲しかった。ダイヤの言っていたことが少しわかった気がする。ホワイトの事が大切なはずなのに、彼の事を考えるとどうしようもなく苦しくなってしまう。

 

 

 その時、遠方に見える三器が一瞬で引き裂かれるように霧散した。金剛先生が倒したんだろう。いけない、こんな事考えてちゃホワイトが帰ってきた時に合わせる顔がない。目を瞑って頬を張り、気持ちを新たに瞼を開く。せめて先輩らしく、後輩の前ではかっこつけたい。そう思った僕の目に奇妙な光景が映った。

 

 

「……えっ?」

 

 

 先程先生によって霧散したはずの器が、巨大な雲に姿を変え、地上へと吸い込まれるように移動し始めた。見たことの無い光景にたじろぐまもなく、空が破れ黒い染みが溢れ出した。

 

 

「まさか、連続で月人が出るなんて…で、でも、先生がいるなら」

 

 

 不安を掻き消すように呟く。しかし僕の想いは裏切られた。現れた器の内、小さい方がすごい速度で地上を掠め、北へと飛び去っていく。器の下には橙の輝きが吊り下げられており、それを追うようにして地上の霧から黄色の閃光が飛び出した。

 

 

 まさか、ジルコンとイエロー?先生がいるのに、なんで……ホワイトは!?

 

 

 そう思ったのも束の間、霧から火柱が上がり、煌々と輝く火の玉がイエローたちが向かった方へと飛び去っていった。

 

 ホワイトはイエロー達を助けに行くつもりだろう。先生がいながらジルコンが攫われ咄嗟に後を追って駆け出そうとした足は、学校の外を踏む前にゆるゆると止まった。

 

 どうせ、僕が行ったって出来ることなんて無い事は僕が一番わかってる。それに、イエローとホワイトは強い。僕が何かしなくたって、上手くいくはずなんだ。そうに決まってる。

 

 僕はいつだって見てるだけだ。

 

 

 

 

 

『しんぱ、い?』

 

「……えっ?」

 

 

 急に声を掛けられ、驚いて周囲を見渡すも、辺りには人影一つ無い。そりゃそうだ、今学校内に居るヤツなんて極小数、それに声に聞き覚えがない。一体誰が……

 

 

『おー、い。ここ、ここ。腕のとこ』

 

「どこだよ……って、もしかして…?」

 

 

 腕から振動を感じ、視線を落とせば、先程レッドベリルにつけられた腕輪が見える。も、もしかして…

 

 指先で腕輪をつついてみる。

 

 

『ひびくー』

 

「……まじか」

 

 

 最近の僕やばくね?

 ナメクジの次は輪っかから声が聞こえ出したよ。真面目にルチルにバラしてもらうことも考えた方がいいのか?

 

 

『ねえ、あの白い子のこと、しんぱいなの?』

 

 

 困惑する僕に輪っかが声をかけてくる。

 

 

「…えっと、そりゃ心配だけどさ、行ったってしょうがないよ。僕は剣すら持ち上げられないんだぜ」

 

 

 そう、しょうがないのだ。僕だって皆の役に経ちたいけど、実際何かが出来るわけじゃない。これまで何をやったって上手に出来たことは無かった。だから今回だって……

 

 

『それじゃ、ぼくが手伝ってあげるー』

『いくぞー』

『わー』

 

「えっ、なになになに!?おわぁ!!」

 

 

 腕だけでなく、足の輪っかからも声が聞こえたと思えば、手足が僕の意志とは無関係に動きだし、そのうち凄いスピードで走り出した。

 

 

「ちょっ、まって……!やばいって!」

 

 

 ぐいぐいと手足を動かす輪っかに抵抗しようと試みるも、僕の方が砕けそうになり断念する。そのうちどんどんと速度が上がり、気づけば学校は遙か後ろへと遠のいていた。

 

 

「ストップ!自分で動くから、一旦止めて!」

 

『はーい』

 

「え?うわーっ!」

 

 

 唐突に輪っかの動きが止まり、支えの無くなった僕の体は顔面から地面に倒れ込みそうになる。慌てて突き出した手は、水面に刺さり飛沫を跳ねさせた。いつの間にか北の沼まで来てしまっていたようだ。僕の足ってこんなに動いたっけ?

 

 

「てか、腕だけじゃなくて脚もかよ!きみら一体何なのさ?」

 

『僕は僕だよ』

『そうそう』

『輪っかだよ』

『くしろともいうー』

 

「…どうやって僕の身体動かしたんだよ」

 

『ぼわぼわー』

『つかんで』

『はねる』

 

「は?何言ってんだこいつ」

 

 

 問いかけに対して手足の輪っかからまばらに声が上がる。なんなんだこいつら、言ってることがまるで分からん。さらに続けようとした質問は遠くで上がった轟音と炎によってかき消された。

 

 

「ホワイト!」

 

 

 弾かれたように身体をおこし、燃え上がる火をめざして走り出す。ここまで来てしまったんだ、例えできることが無くたって、囮ぐらいの役には立てるかもしれない。少しでもホワイトの助けになるなら…

 

 

『手伝うぞー』

『おー!』

 

 

 声と同時に輪っかから僕の手足を支えるような力を感じ、身体にかかっていた重さが薄れる。

 

 

「お、おお?なんか軽い!」

 

『支えるよー』

『ぐいぐい』

 

「なんか、これなら……!」

 

 

 普段から身体を動かした時に感じていた、反動で砕けそうになる感覚が、今は無い。地面を蹴る力を強めると、これまでの僕の脚じゃ無いかのように身体をぐんぐんと前に押し出した。

 

 

「すっげ、僕の脚って結構力あったんだな!」

 

 

 いままで感じたことが無い、身体を自由に動かせる快感に突き動かされるまま、先程炎が上がった場所に見える二人の人影へと駆けようとして、僕は咄嗟に木の影に隠れた。

 

 

『ぬお』

『ぐえ』

『どうしたのー?』

 

「……あ、ああ…」

 

 

 輪っかからなにか聞こえてくるが、空を見上げた僕は力無く口を震わせることしか出来なかった。

 先程から見えていた月人の両脇に、さらに二つの黒点が出現し、空を徐々に塗りつぶしていく。見る限りでは五閃、それが三器同時……

 

 不意に、身体を矢が貫く感覚、遠ざかっていく学校が、頭をよぎる。

 

 

「い、いや!!」

 

 

 脚が震え、立っていられなくなった僕は木に縋り付くようにしゃがみ込んだ。向こうからは炎の上がる音やイエローとホワイトの怒号が聞こえてくるが、手足が棒にでもなったかのように僕の身体は動かない。いま、僕の心は海上に引き上げられた時に感じた恐怖に塗り潰されていた。

 

 だ、大丈夫だ。イエローもホワイトも強い、それに僕が出ていったら、足手まといになる。大丈夫、絶対に何とかなる。海の時だってホワイトは助けてくれた。イエローは大ベテランだ。だから、僕が出ていく必要なんて無いんだ……!

 

 必死に自分に言い聞かせる。そのうち、戦闘音は遠のき、ただ布を引き摺る音だけが聞こえるようになって、ようやく手足の感覚がもどってきた僕は、よろよろと立ち上がった。

 

 音も止んだ。きっと、イエロー達が勝ったんだろう。でも、今更どんな顔して合えばいいんだ?のこのこ顔を突っ込んで、いざ大変なことになったら動けない臆病者。また、いつもみたいに茶化しながら出ていくのか?ホワイトもイエローもそれに怒る事は無いだろう。でも、本当にそれでいいの?

 

 

 ……だめだ。

 どうしても、彼らに顔を合わせる勇気が出ない。彼らが戻ってくる前にここを離れよう。そうすれば、何も無かった事になる。僕はここにはいなかった。後輩の危機に震えて蹲っているだけの先輩なんていなかった。それでいいじゃないか。それで……

 

 

 

 

 

「ホワイト、にげ」

 

 

 踵を返した僕の足を、叫び声と甲高い音が止めた。うそだ、そんなはずは無い、さっきまであんなに静かだったのに!

 

 

「やめろぉぉおおおッ!!!!」

 

 

 たまらず振り返った僕の目の前で、僕を慕ってくれた後輩は異形の化け物に喰らいつかれた。四つの顎から無数に生えた緑色の牙が後輩を貫き、その身を空中に縫い止めている。狂気的な新型の月人に気圧され動けない、何も出来ない。ホワイトの目が見開かれ、その瞳が未だ見ているだけの僕を射抜いた。

 

 僕を見つめた彼が口を開こうとした瞬間、その身体から眩い光が放たれ、今までと比較にならないほどの爆炎が放たれた。

 

 

「うっ、ぐあぁっ!」

 

 

 たまらず吹き飛ばされ、地面を転がる。うつ伏せになった僕の背中を、炎が舐めるように伝っていくのが分かる。王様に溶かされた時に感じたような強烈な熱、でもこれならあの化け物だってタダでは済まないはず。この炎が落ち着けば、月人が現れる前にホワイト達をどこかに隠さないと!

 

 そうして地面にしがみつき耐え、ようやく熱が落ち着き、僕は勢いよく顔を上げた。

 

 

「……あ、ああ……」

 

 

 霞の向こうに、焦げ跡一つ無い新型が口の下に袋を広げ宙に浮いていた。新型の口が開かれると同時に粉々になったホワイトが袋へと降り注ぎ、そのうち器の中へと取り込まれてしまった。

 

 怖い、どうしようもなく。

 

 イエローも、ホワイトもやられた。

 僕なんかがどうにか出来る相手じゃない。いま、気づかれていないうちに…

 

 

『にげる?』

 

 

 腕輪から聞こえた声によって、逃げ出そうとしていた身体が止まる。

 

 

『さっき白い子が言ってたよ』

 

『せんぱいをたすけてあげて、って』

 

『てつだうよー、どうするー?』

 

 

 僕は……

 

 

 

 

 

 

「…う、あああっ!」

 

 

 木の影から飛び出し、地面に突き刺さったアゲートの剣を目指して走る。柄に飛びついた僕は無我夢中で剣を引き抜き抜こうと力を込めた。先程学校で剣を持った時とは違い、拍子抜けなほどすんなりと剣は持ち上がった。呆気にとられてたたらを踏むも、しっかり握り直して真横に振り払った。まるで手に吸い付いたかのように馴染む。

 晴れつつある霞の向こうにある新型の影を見据え、僕は恐怖を振り払うべく声を上げた。

 

 

「バケモノめ、僕が、相手だ!!」

 

 

 

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 霞が完全に晴れると同時、大口を開けた新型が僕の眼前へと迫ってきた。

 

 

「ひっ……う、うわあっ!」

 

 

 威勢よく叫んだものの、迫り来る大顎に身体が強ばる。咄嗟に後ろに転がった瞬間、先程まで僕がいた場所を緑色の刃が抉った。へたりこんだ僕を再び砕こうと、新型が地を這うように喰らいついてくる。瞬間、僕の身体が勝手に動き、新型の顎を飛び越えるように跳ねた。

 

 

『てつだうぞ!』

『おっしゃー!』

『あわせる』

 

「おっ、おまえら!」

 

 

 それぞれの輪っかから声が聞こえたかと思えば、四肢が浮き上がるような感覚を感じ、僕の体は空中でくるりと身を翻し、新型から距離を取った位置に着地した。

 

 

『白い子からのおねがい。すこしつかれるけど、がんばっててつだうよ』

 

「えっ、お前もかよ!」

 

 

 さらには手元からも声が聞こえ、異様に軽い剣が更に軽くなる。

 もう訳がわからん!輪っかの次は剣まで喋るとか、僕の頭マジでやばいのか!?

 

 

『くるよー』

 

「っ!……やってやる、やってやるぞ!」

 

 

 頭上から迫り来る新型を、正面に突っ込むことで躱す。輪っかによって支えられた手足は、自分でも驚くほど俊敏に動く。これまで身体を動かす度に感じていた、今にも砕けてしまいそうな不安感が無い。

 

 再び器の正面に戻った新型の四つ顎がそれぞれバラバラに動き出し、上下左右から薙ぎ払うようにこちらに迫る。

 

 

「ううっ、こわっ!……びびるな僕!」

 

 

 左右から交差した顎を飛び越えるように躱し、袈裟懸けに振り下ろされた二つの顎を、地面を左右に蹴って躱す。

 

 

「うごけてる、たたかえてるぞ!頑張れ僕!」

 

 

 これまで幾度となく妄想した戦争。みんなに憧れてこっそり飛んだり跳ねたりして見た事もあった。しかし僕の体は無茶な動きには応えてくれなかった。何度目かの粉砕によってルチルにこっぴどく叱られてから、力いっぱい動いたことなんか無かった。

 でも、今は違う。

 

 

『いいかんじ』

『がんばれー』

 

「…最後まで頼むぞ!君らだけが頼りだかんな!」

 

 

 輪っかの支えによって、いつかの妄想のように自由自在に動き回ることが出来る。身体の不安は無い。新型の動きに合わせ、陸地を跳ね回って攻撃を躱して器との距離を縮める。

 しかし、いくら走っても黒雲との距離は縮まらず、じりじりと離れているようにさえ見える。

 

 

「くっそ、近づけない……!」

 

 

 このやろー、このまま先生達から引き離すつもりか。このまま追いかけっこをしててもジリ貧だ。追いつく為には生まれてこの方やったことの無い「全力」を出すしかない。

 

 体から無意識に抜いていた力を意識し、全身に込める。

 

 

「ぅおりゃあああ!!」

 

 

 こちらを砕こうと大口を開けた新型を見据え、頭上を飛び越えて器に近づくべく大地を蹴った。

 

 

「…えっ?」

 

 

 一瞬景色が溶けたかと思えば、ぼくの身体は空中に投げ出されていた。何が起こったのか分からず首を回すと、先程僕の前に居たはずの新型が遥か下方に見える。

 …もしかして、力込めすぎてめっちゃ飛び越した?

 

 

「いやいやいや、僕のインクルージョン怪力すぎでしょ!てか落ちるぅぅぅぅ!!」

 

 

 僕の身体が発揮した異常な力に驚く間も無く身体が落下を始める。ど、どうしよう!こんな高さから飛び降りた事ない!このままじゃ粉になる!

 

 

「輪っかぁ!何とかしてぇ!!」

 

『ぼくじゃたりないよ。きみもぼわぼわをつかんで』

 

「はあ!?ぼわぼわってなんだ、よ…?」

 

 

 訳の分からないアドバイスを一蹴しようとして、ふと身体をなぞる風とは違う、不思議な感覚を感じた。まるで、海中を歩いた時に感じた水の動きに似ているような、波のような揺らぎが、空中に漂っているのがわかる。ぼわぼわって、まさかこの「波」の事か!?でも掴むってどうやって…やばい、地面が近づいてくる!もう分からんけどやるしかない!!

 

 

「うおおお!止まれぇぇえええ!!」

 

 

 全身に力を込めて何とか空中にある「波」を掴もうともがく。しかし目にも見えないものを掴めるはずもなく、落下は止まらない。僕が空中で踊っている間にもぐんぐんと速度は上がり、もう間もなく地上に叩きつけられる。

 …ダメだ、僕が砕けたら、ホワイトやイエロー、ジルコンが連れ去られる。そんな、そんなのは嫌だ。勝手に限界を決めてんじゃないぞ、フォスフォフィライト!!最後の最後まで考え続けろ!!

 

「波」に触れる感覚はわかる。しかし、僕はどこで「波」に触れている?目を閉じて意識を集中する。身体の表層ではなく、「波」がなぞる輪郭にそって意識を這わせる。僕の身体を形作っている結晶、その一つ一つが波になぞられているのを感じる。段々と意識が加速し、胸の内側へと引っ張られる感覚を覚える。柔らかい感覚に引かれるまま薄荷色の光の中を落ちていく。そのうち、僕が曖昧になり、光と混ざり合うような感覚を感じると同時に全身の感覚が溶けた。

 

 

 僕は、いままで何処にいたの?

 

 ここは、どこ?

 

 身体が、わからない。

 

 ぼくは、だれ?

 

 わからない。

 

 ふわふわする。

 

 …あれ、なにかきこえる?

 

 

「………けて」

 

 

 なんだろう、こえがきこえる。

 

 

「たすけて、誰か…」

 

 

 かなしそうな、こえ。

 

 そとがわからきこえる。

 

 ……ねえ、あなた。

 

 

「…だれ?」

 

 

 どうしたの?…つらいことでも、あったの?

 

 

「…怖いの。皆に認めて欲しくて、勇気をだして見たけど、月人を倒すなんて、やっぱり僕には無理だったんだ。僕はただ褒めてもらいたかっただけの弱虫で、誰かを助けてあげることなんて出来ないんだよ……誰か、僕を助けて……」

 

 

 …うーん、ざんねんだけど、ぼくではきみのことはたすけてあげられない。

 

 

「…誰か……」

 

 

 ねえ、あなたはどうして、こわいのにたたかったの?

 

 

「……誰か僕を、褒めて…認めて………許して…………みんな…」

 

 

 ……やさしいね。

 

 

「………えっ?」

 

 

 こわくっても、みんなのためにたたかったんだよね?

 

 

「ち、ちがう!僕はそんないいヤツじゃない!僕は…」

 

 

 じゃあ、みんながきずついてもへいき?

 

 

「……いやだ、そんな悲しいこと、いやだ!」

 

 

 ……そうだよ、あなたにはほめられたいきもちもあって、みんなをまもりたいきもちもある。どっちも、あなたなんだよ!

 

 

「……どっちも、僕……」

 

 

 だからかなしまないで!

 あなたには、いろんなきもちがあるかもしれないけど、だれかのことをおもってあげれる、とってもやさしいこころもある!だから、あなたはあなたのままでいい!

 

 

「……僕は出来ないことも沢山ある。それでも?」

 

 

 うーん、あなたがかなしくないならそのまんまでもいいけど…

 

 

「…いやだ、助けを求める誰かを、見捨てたくない」

 

 

 じゃあ、できないことをできるようにしよう!

 

 

「簡単じゃない。苦しいよ。やったって出来ないかもしれない。いままでやったことある仕事は全部失敗したんだ!ずっと、このままなのかも……」

 

 

 うん、気が遠くなる程の時間がかかるかもしれない。けどね、最近いい言葉を聞いたんだ。それはね……

 

 

「全ては、変わりつつ在る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼を開く。

 まるで分厚い布を取り払ったかのように、全身がこれまで以上に鮮明に感じ取れる。手脚の先の結晶まで、その全てが僕であることがわかる。

 

 風を感じる。ああ、そっか僕、落ちてたんだった。

 

 眼下に迫り来る水面には薄荷色の光が反射している。

 

 でも今なら、輪っかの言っていたことがわかる。「波」を掴むには…

 

 

「身体の内側、『波』を受けて動くナニカ、それを、"掴む"!!」

 

 

 本来動かすことが叶わないはずの、けれど確かに存在している、結晶の中のナニカ。意識を集中し、『波』に揺られてバラバラに動いていたソレを掴み、曲げる。

 

 

「ぁぁああああ!!!!」

 

 

 砕ける寸前まで全身の力を込めるが、意外な程すんなりと僕の身体は反応した。全身の感覚が切り替わり、今まですり抜けるだけだった「波」は、まるで柔らかい水のように僕を支え、速度を削いだ。そのまま勢いを調整しつつ、くるりと体を捻って水面に足をつく。

 つま先が水に触れると、水底がうねり水面に不思議な模様を描き出した。

 

 

 

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「…この模様、「波」の感じに似てる?僕の身体からも「波」が出てんのかな?」

 

 

 水面を見つめる僕に陰が差した。顔を上げれば追いついてきたのだろう新型が僕に食らいつこうと四つの顎を大きく開いているのが見える。

 

 

「こんにゃろーめ、散々やってくれたな!浮いてりゃ安全だと思うなよー?」

 

 

 改めて全身で「波」をとらえる。輪っかが支えてくれていた時とは比べ物にならない程に身体が軽く感じる。もう、力を込めても反動で砕ける事は無いだろう。深く身体を沈め、これまでならば脚が粉になっていたであろう力を込める。

 

 風切り音が聞こえると同時に大地を蹴る。解き放たれた力は、新型の顎が僕の身体を挟み込むよりも早く僕の身体を直上に打ち上げた。

 獲物を捉え損なった新型はすぐさま身を翻し、黒雲の遥か上に飛び上がった僕を追撃してくる。

 それには少しも構わず、僕は目を瞑って友人の姿を思い浮かべた。

 

 水底へとキラキラと差し込む光、ゆらゆらと波間に揺れるピンク色の身体、僕を受け止めてくれた柔らかい腕。そして、水中を自由自在に舞う動き。

 

 

「集中!イメージ!「波」を掴んで、王様のように、空を泳ぐ!」

 

 

「波」を弾く様に内側から「波」を放つ。飛び上がった勢いで上昇を続けていた僕の身体は、反転し急激に下方向へと加速した。上昇している僕を追っていた新型は距離を誤り、加速して急降下する僕を捉えられない。

 すり抜けた勢いそのまま、穴だらけの本体を切り裂くために剣を構え、「波」を放ち加速する。

 今にも切りかかろうと剣を振りかぶった瞬間、穴の中で何かが光った。

 

 

「…っぶね!何いまの!?」

 

 

 咄嗟に横方向へ「波」を放って穴の直上から身体を逸らす。瞬きをする間もなく、直前まで僕の体があった場所を、穴から放たれた白い紐が貫いていった。

「波」をとらえて空中に留まりながら距離をとり、本体を観察する。穴の中からは新型を支えている紐に加え、さらに数本の紐が伸びてきた。無数の玉が連なったような構造のそれは、うねうねと動く度に硬いものを擦れ合わせるような音が鳴らしている。

 

 

「…あの紐、もしかしてめっちゃ硬い?」

 

 

 も、もしあの紐全部が僕の身体より硬いなら…!

 巻き付かれたり叩きつけられたら確実に砕ける!

 

 

「やばっ、うおおお!」

 

 

 怖気に従い上に「波」を放ちすぐさま地上へ向けて加速する。同時に、天高く伸ばされた紐が僕を叩き壊さんと振り下ろされた。

 

 落下の勢いも合わせ、背中に向けて振り下ろされた紐を躱して本体を支える黒雲の下に潜り込む。

 しかし、一本を避けても、続けて二本三本と逃げ場を埋めるように紐は襲い来る。それらを剣で受け流し、足で蹴り飛ばしながら、風に吹かれる木の葉のように空中を飛び回る。衝撃によって、右足が砕け、左腕が開き、グローブとソックスの内側を跳ね回るのを感じる。何とか動く手足でいなし続けるも、やがて紐は僕の周りを取り囲み、渦を巻いて逃げ道を塞いだ。高速で動く紐からは硬質な物が擦れ合うけたたましい音が鳴り響く。巻き込まれれば確実にすり潰されるだろう。空中で留まりながら上を見上げれば、器の黒雲を遮るように新型が大口を開けており、確実にこちらを砕くために狙いをつけていた。

 

 詰みだ。

 

 結局僕一人では、こんな怪物相手に勝つなんて無理だったんだ。

 

 そう、一人だったならば。

 

 

「ねえねえ剣さんや」

 

『なにー?』

 

「一人でも動けそう?」

 

『うーん、すっごくがんばれば!』

 

「じゃあ、中に入ったらくるくる回って、根元ぶった斬ってね」

 

『はーい!』

 

「たのんだよ…」

 

 

 けたたましい音が止み、紐の動きが止まる。

 刹那、四つの顎が閉じ、緑の牙が僕に届くよりも迅く、だらりと下げた手を振り上げ、剣を直上へと投げた。

 

 

「そぉいっ!!」

 

 

 僕の全力に加え、掌と輪っかから放たれた「波」により、高速で打ち出された剣は、四つ顎の中央に座す花を散らし、黒雲に突き刺さった。

 瞬間、僕の身体に刺さる寸前で牙が動きを止めた。少しでも動けば砕ける程の距離で顎が止まり、僕は手を振りあげたままの姿勢で固まった。

 今この場に動く者はなく、ただ、剣によって散った花弁だけが、はらはらと落ちゆくのみ。

 

 そうしてどれくらいの時間が経っただろう。不意に黒雲が崩れ橙、黄、白の光が雨のように降り注いだ。同時に新型と、僕の周りを囲んでいた紐が霞のように溶け、支えを失った牙は地上へと落ちていった。

 

「……何とか、なった……」

 

 

 きらびやかな光の雨に当たり身体が砕けてしまわないよう、距離をとってゆっくりと下降し無事な左足を軸に地上に降り立つ。

 

 空を仰げば黒雲は散り散りになり、晴れ間からは先程放り投げた剣が落ちてきた。最大の功労者を地べたに叩きつけるのは忍びなくて、掌から寄せる「波」を放ち、剣をとらえる。「波」に引かれた剣は、軌道を変えてふわりと僕の手に収まった。

 

 

「はぁ〜っ、ほんとにありがと。僕だけじゃどうなってたかわかんないや。輪っかも、色々教えてくれてありがとね」

 

『ちかれたー』

 

『おやすみー』

 

「えっ?ちょっとー?おーい」

 

 

 剣と輪っかの重さがずしりと身体にかかり、思わずバランスを崩す。

 

 

 ……えっ、もしかして寝た?

 嘘だろ、ここは健闘を讃え合う流れじゃないの?抗議を込めて剣と腕をブンブンと振るも、うんともすんとも言わない。

 

 まじ?これまた僕の頭がパーになったって思われるやつじゃん、輪っかと剣が喋ったなんて誰が信じてくれるんだよ。

 

 

 その時、途方に暮れる僕を覆うように影が差した。嫌な予感に顔を上げれば、五つの黒点がじわじわと空を侵食している。

 

 

「……まじかよ、まだ来んのか…」

 

 

 バラバラに散らばったホワイト達の欠片を拾い集める暇は無い。

 折れそうになった心を奮い立たせて「波」を身体に纏わせ、砕けた手足ごと全身を支える。こっからは正真正銘の一人だ。覚悟を決めろ、フォスフォフィライト。

 

 

「ちっきしょー、来るなら来やがれ!」

 

 

 黒点から出現し始めた器に狙いを定め、根元を斬り飛ばすために剣を構える。脚に力を込め、全体が出てきた瞬間に飛び込む為に身体を沈める。

 

 

「もう二度と奪わせない…!月人!博物誌担当にして大先輩、フォスフォフィライトが相手だ!散らされたいヤツからかかってきやが「ハァッッッ!!!!!!」

 

 

 恐怖を誤魔化す為に叫び、飛び込もうとした瞬間、叫び声と共に五つの黒点は消し飛んだ。急な大声に驚いてつんのめった僕は、水面に顔を叩きつける直前に優しく抱き止められた。

 

 

「先生…」

 

 

 僕を抱いた先生はこれまで見た事がないほど目を吊り上げて空を睨みつけていた。あまりの形相に僕はそれ以上声をかけることが出来なかった。静けさの中、しばらく先生の腕に身体を預けていると、突然頭を撫でられた。

 

 

「わっ、先生?」

 

 

 僕の頭に手を置いた先生は、先程の顔とはちがう、困ったような笑顔で頭を撫で始めた。

 

 

「……本当は、言いつけを破ってここにいるお前を叱るべきなのだろう」

 

「あっ、の!そのぉ……」

 

「……だが、私が来るまで、よく耐えてくれた………頑張ったな」

 

「あ、あはは……」

 

 

 そうか、僕は守れたのか。

 急激に力が抜け、砕けた手足がダラりと垂れ下がる。驚いた先生にもたれかかった僕は顔を服に埋めて叫んだ。

 

 

「怖かった────!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「報告!金剛が包囲網を突破しました!現在作戦区域へと高速で北上中!」

 

「拘束部隊を金剛へと集中!!ヤツが自由になれば作戦は破綻するぞ!」

 

「ダメです、止まりません!四機撃墜!!」

 

「偵察部隊の偽装解除!全隊で突撃せよ!宝石達はいい、なんとしてでも時間を稼げ!!」

 

 

 管制室内に指揮官の怒号が飛び交う。

 全軍を投入した作戦は、当初順調かに思われていた。金剛並びに脅威度の高い宝石の拘束、ホワイト・ダイヤモンドを集団から分断。こちらも少なくない被害を負ったものの、耐火装備の新型機によってホワイト・ダイヤモンドは沈黙、炎によって散じた者達も回収を完了した。更にフォスフォフィライトが単独で現れるという好機。

 

 戦闘力を持たない、真珠の器たる彼の出現に私は興奮を押し殺し、新型の撤退を止めてフォスフォフィライトの回収を指示した。ホワイト・ダイヤモンドの助命を引き換えとしてフォスフォフィライトに真珠を取り込む様誘導すれば計画は大きく進歩する。

 

 

 その欲こそが、誤りだったのだろう。

 

 フォスフォフィライトの動きはこれまでの記録から考えられないほど機敏で、回避に徹する彼を新型は捉えきれずにいる。そのうち、金剛が包囲網を突破した。やつに同じ手は二度も通じないだろう。直ぐに新型を撤退させ無ければ……

 

 

「こ、これは!?交戦中のフォスフォフィライトから強力な磁界が発生しています!!…は、速い!離脱出来ません、敵の速度は新型機を超えています!」

 

「飛んだ!?何の能力も無い宝石じゃ無かったのか?やむを得ん、短期決戦で仕留めろ!」

 

「了解、全兵装展開!………ダメです、目標健在!指揮官、指示を!」

 

「奴は脆い!無事では無いはずだ!囲い込んで確実に仕留めろ!」

 

「これは!?……新型からの信号が、途絶、しました…」

 

「馬鹿な、相手はフォスフォフィライトだろう!?くそ、至急偵察部隊を動かせる!ホワイトダイヤモンドだけはなんとしてでも回収…」

 

「撤退だ」

 

 

 指揮官の肩を掴んで落ち着かせ、私は皆に向けて告げた。静まり返った管制室の中で、偽装を破った偵察部隊の信号が消失した事を伝える警報がただ鳴り響いている。

 

 

「金剛が作戦区域へ到達した。これ以上の戦闘は無意味だ」

 

「ですが……!」

 

「もう一度だけ言う、全軍を引き上げさせなさい」

 

「もっ申し訳ありませんっ!わたしが失敗したばかりに……!」

 

 

 新型機を操作していたパイロットが悲壮な表情で声を上げる。それを遮るように私は口を開いた。

 

 

「誰の謝罪も必要ない。フォスフォフィライト回収の指示を出したのは私だ。今まで戦闘に出てこなかった、低硬度の宝石故に簡単に砕けるものと判断したが……私の判断ミスだ。フォスフォフィライトの戦闘力を侮っていた」

 

「王子…」

 

「作戦は終了、撤退が完了次第、全軍事行動を一時停止する。詳細については追って通達する。皆、ご苦労だった」

 

 

 徐々に喧騒を取り戻していく管制室を去り、執務室へと戻ってきた私は机に突っ伏した。

 

 今回ホワイト・ダイヤモンドの炎によって焼かれた者は20名。全員回収し安定ケースを割り立てたが、作戦に参加したものの士気は大きく乱れた。事実後半になるにつれ、指揮官の指示は冷静さを欠き、現場では場当たり的な行動が増えていた。死ぬことの無い我らにとって所詮軍事など永き時の中の暇つぶしでしかなく、市井との差は無いに等しい。故に、本来ありえない脅威を目の当たりにし、それでも平静を保てるような者は存在しない。

 自責に耐えかね酒を流し込むが、鉱油の合成品は私の理性を侵すことは無い。どれだけ飲んでも酔うことなど無いのだが、飲まずにはいられない。

 20名!自らの判断で犠牲になった、その上ホワイト・ダイヤモンドも取り逃がす始末。一体この不始末をどのようにして贖えば良いというのか。

 

 

「……それにしても」

 

 

 想定外の事象が多すぎる。ホワイト・ダイヤモンドの炎に加え、フォスフォフィライトが見せたあの現象。これまでの観察からフォスフォフィライトが特殊な能力を持っているといった様子は見受けられなかった。事実、彼はこれまでの300年間、集団の中で何らかの役割を担う事は無かった。ましてや戦闘など以ての外だったはず。

 

 手元の端末を操作して、新型機が記録していた戦闘データを表示する。戦闘の序盤では、これまでの情報と似つかわしくない、軽やかな動きで新型の攻撃を回避しているが、運動能力に一般的な宝石生命体との差異は見受けられない。いや、この時点で違和感を持ち、退いておくべきだったのだ。宝石達は、学習によって技術を身につけることはあれど、基本的な身体能力が急激に変化する事は無い。

 何度目かの攻撃を行った時、フォスフォフィライトが画面から消えた。映像を止めて偵察部隊の観測データと同期させると、新型機の後方に凄まじい速度で飛び去っていくフォスフォフィライトが確認できる。

 これだ、イエローダイヤモンドに並ぶ高速移動。ダイヤモンド属と違い素体の脆いフォスフォフィライトがこのような動きを行える筈がない。

 映像を進め、遥か彼方の水辺に降り立ったフォスフォフィライトへと画面を移す。

 

 

「これは……?」

 

 

 新型及び偵察部隊の観測データが、強力な磁場の発生を示している。磁界の起点は、フォスフォフィライトだ。表示されたデータが大きく変化すると、フォスフォフィライトの体が宙に舞い上がり、新型との交戦を始めた。

 

 

「…まさか、自身の磁力と地磁気を利用して空中を飛んでいるのか。だが、あの大きさの鉱石が浮くほどの磁力となると……それにフォスフォフィライトは常磁性、あのような融通が効くような物では……」

 

 

 いや、この考察に意味は無い。

 インクルージョンは物理法則を突破する。

 シンシャの水銀やウォーターメロン・トルマリンの電撃など、既存の鉱物が有する特徴を引き継ぎつつ、本来の能力からかけ離れた影響を発生させる例が幾つも観測されている。

 インクルージョンが、海に溶けだした遺伝子情報から人間を模倣、再構成したように、寄生した鉱物の物質的特徴を模倣し、拡張しているのだ。

 

 

「…どうしたものか」

 

 

 フォスフォフィライトが計画の要として有用だったのは、無能だったからだ。進化への渇望を有する彼だからこそ、貪欲に他の鉱物を取り込み、人間に至る可能性を秘めていた。だが、彼は自力で成長を始めてしまった。内省が出来るほど聡明にも見えなかったが、起こってしまったことは仕方がない。

 

 変化は始まってしまった。しかし、依然フォスフォフィライトは器足り得る。力を手に入れた彼は集団に認められるだろうが、それは際限ない渇望の始まりに過ぎない。一度得た信頼を失わない為に、もっと力を、もっと強さを、と自ら深みに堕ちてゆくのだ。私はそれを促すだけで良い。

 

 

「……む?」

 

 

 端末が震え思考の沼から引き摺り出される。

 点灯した画面は、技術局主任からの連絡を伝えている。

 身なりを整えて応答ボタンを押すと、白衣を着た気怠げな男が画面に写った。

 

 

「…早いな、バルバタ」

 

「よう、相変わらず辛気臭い顔だな、エクメア。二点ほど報告しておくぞ。まず、先行して軍部に提供した耐火装甲についてだが、量産ラインは半年ほどあれば整う予定だぞ」

 

「わかった。完成まで通常戦力での攻撃は行わない、確実に進めてくれ」

 

「……あー、ということはホワイト・ダイヤモンドは逃げたか。まあ気を落とすなよ、誰もお前を責めやしないさ。そんであと1つだが、擬似インクルージョンについてだ。現状の進捗だと簡易的な命令を実行させる事が限界だ。アドミラビリスの筋肉を解析出来たのが良かった。だが宝石達のように自律行動させることはかなり難しいな。データを送るから一旦精査してくれ」

 

 

 通信が切れた画面に、送付されてきたデータが表示される。数十ページにも渡るデータを確認した私は、飲みかけの酒を捨てて眼鏡を掛けた。

 

 

「……これ以上、犠牲は払えない……」

 

 

 拡大した画面には、実験室でうねうねと蠢いている金と白銀の合金が表示されている。

 

 

「だが、人間は道具を用いて困難を乗り越えた」

 

 

 合金内の擬似インクルージョン回路にアクセスし、頭を「王子」から「研究者」へと切替える。

 

 

「我らも存分に「道具」を使うとしよう」

 

 

 私の操作に合わせ、画面の中で鈍い金色が波打つように蠢いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






☆コメント返しのコーナー
⚠︎⚠︎⚠︎不明な干渉を検知⚠︎⚠︎⚠︎

#.5なので走者に変わって投稿者が返信させていただきます。
※返信の際、投稿者の脳内に棲むエクメアが出てくる場合がありますがご了承ください。


〇さすが政治家、屁理屈がうまいぜ

皆を纏めるには最もらしい理由が無ければならないのでね(エ)



〇ホスホス先輩が完全にヤムチャしやがってってなりそうな展開だから少し心配やなぁ……
まぁ愛と絆の力で無双タイム始まってほしいぜ
体調には気を付けて投稿頑張ってください(o´・∀・)o
応援してますq(*・ω・*)pファイト!

ありがとうございます!
今回は無事に撃退出来ましたが、次回はどうでしょうね?エクメアにも何か策がある様ですし、冬を無事に超える為には一入の準備が必要になりそうですね。



〇……エクメアの返答を読めば読むほど「外道」どころか魔物の類にしか思えなくなってきた。
他者の祈りで「無」になることができたとしてもそれは本当に月人以外にとっては幸せなのかな?
そもそもの話、金剛先生が祈るのをやめたのって大乗仏教でいうところの「菩提心」に目覚めて「人間が作り出した機械仕掛けの菩薩」じゃなくて「生きとし生けるものすべての幸せのためにある本物の菩薩」になったからとも解釈できますからねー。
祈り続けたら月人以外の人間を祖に持つ者たちまで消えるとか普通にアカンですし。
多分、「無になる」ことを月人は「成仏や極楽往生」としてとらえていたんでしょうが仏教的テクストで解釈すると「他者の祈りだけで成仏するとかありえない」わけで……
無になるって下手すると「本当の意味で成仏する機会を失い永遠に孤独なまま苦しみ続けることになる」とかそういうぶっちゃけ無間地獄とかになるんじゃなかろうか。

お答えしよう。(エ)
まず無限地獄についてだが、まさに今我々が晒されている現状がそうだ。終わりを選ぶ権利を与えられなかった我々は、金剛によって分解されることでしか、本当の意味で「休む」ことが出来ない。我らの文明は活用可能なリソースを余すこと無く利用し、発展の果てに停滞を迎えた。寝ても醒めても事態は進むことなく、されど我らの内の人間性が、停滞に甘んじることを許さない。変わらない現実と変化を求める本能によって精神を引き裂かれた者は少なくない。

祈りの際、三族諸共になることについてだが、金剛の修復並びに同型機の建造が不可能である以上、必要な犠牲として考える他ない。それに、祈りが果たされなければ、生を終えたアドミラビリスの魂や宝石達の記憶がこの星々に堆積し、やがて澱み、変質し、ゆくゆくは……となり………………(通信が途絶しました)




〇永劫時間があったなら、金剛説得と並行して修理できる技術を確立するなり、新しく金剛を作ればよかったのに…
金剛だって所詮は人類の被創造物だろう
人類の歴史と、月人となってからの時間なら多分月人歴の方が長いだろうに

兄機の反乱以降の機械不信により、旧文明のテクノロジーはほぼ全て消失した。我らの技術は月に漂着した後に発達したものゆえ、金剛を構成する技術とは根本から異なっている。
一言で言えば互換性がないのだ。金剛が引き起こした事象を解析することは出来ても、金剛の内部構造を完全に把握することは出来ない。
そして、人間たちが暮らしていた頃と比べ、現在の世界は隕石の衝突によって多くの資源が消失している。
金剛内部に有機的なパーツが使用されている場合、我々の持つ資源ではそれを再現できないのだ。(エ)



〇なんだこのエクメアお気持ちカーニバルは、たまげたなあ
宝石の国の月と月人って六道のマイナス面全部乗せなところあるけど、地獄道ぽさは不思議とないんだよな…
こいつらが予定してる「無へ至る方法」、実は全部ミスリードで本当は「地獄道に至る方法」でした~☆みたいなことねーかなあ…

投稿者もおっぱげてます。なんでホモくんよりエクメアのセリフの方が流暢に出てくるんでしょうね?誠に遺憾です。
無に至る方法についてですが…………(error)



〇Face the fear build the future(恐怖を見つめ、未来を作れ)
なんというか今のフォスにピッタリの言葉だと思いました(小並感)
がんばれ~ふぉす~

(フレーズが)アツゥイ!!
フォスの今後にご期待ください。


〇フォスに原作と違う新しい能力つくのかなぁ〜と考えながら読んでいます。それにしても月人の攻め方が多すぎじゃね。蹂躙という漢字でいいのかな?
エクメアのホモくんに対する感情って「敵」ていうより「害獣」って気がする

そもそも宝石達はどうやっても「敵」にはなれないですね。剣で武装した土人に対して、月人は科学技術で武装した不死身の軍隊、どれだけ戦闘技術を高めようが脅威にはなりません。そんな土人共の中から変な病原菌を撒き散らす奴が出てきたら、いくら不死身といえど本腰入れて対応せざるを得ませんね。
というわけで新型機を複数投入した大規模作戦でしたが、エクメア判断ミスにより新型はフォスによって撃墜。他の部隊は金剛の足止めを担当しましたが、ワンパンで吹き飛ぶ為全軍が霧散するのにそれ程時間はかかりませんでした。




〇> 「……バケモノめ、僕が、相手だ!!」

黄金ならぬ薄荷色の精神だ、美しい……

「勇気」とは「怖さ」を知ることッ!
「恐怖」を我が物とすることじゃあッ!





〇極楽地獄の長い箸というお話がありますが
入室するものに人間属性を付与
互いに成仏を祈るまで出られない部屋
を用意しても
月人は誰も出られない気がするんだ...
味方してくれた赤金剛石を粉微塵→これで祈れるな!祈って♡したんだよな...

幾らこちらの事を想い、心を砕いてくれる宝石がいても、肝心の金剛が祈らないのでは致し方無し。(エ)



〇イエローとジルコンが粉々になってるんですがそれは
ホワイトも焼失したしここから入れる保険ない…なくない?

空飛ぶ薄荷色のガガンボと化したフォスによって何とかなりましたね、よかったです。(辛辣)(他人事)





☆現在のステータス


name:フォスフォフィライト


硬度:3.5/10
靱性:4/10
HP:75/75
INT:4/10
POW:3/10
DEX:1/10

特性:玉石混淆、磁界共鳴←NEW

装備:釧



特性:磁界共鳴

電子スピンの性質を模倣・再現したインクルージョンにより、磁界を展開、操作する。スキル「磁力操作」を獲得する。


「磁力操作」
1.地磁気を利用した立体機動の解放。
2.体組織内の磁性体への干渉による動作補助。
3.一定以上の習熟で「砂鉄操作」「因果律」を解放する。







次回
新たなる力によって月人を退けたフォスは、しかし戦いの素人であることに変わりは無い。
修復したホワイトと共に呼び出されたフォスに、金剛が告げる。

「博物誌編纂を一時停止とする」

驚く二人を見据える金剛の意図とは何か。




ご期待ください。
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