宝石の国Any%RTA フォス生存&月人消滅チャート 作:あじまる
#0 人より出でて人に染まらず
「おーい」
「さいたよ〜」
今は無き蒼い星から十万億土、光に満たされた誰も知らぬ星。
地平を埋め尽くす一面の蓮の花、その少し開けた場所に集まった「石ころ」たちは、蝶のような生き物に乗ってやってきた「1番小さい弟」を暖かく出迎えた。
「ほんとだ〜!おねがい、もうちょっとちかくでみせて〜」
今しがた咲いたであろう、花托に結晶を頂く美しい蓮の花に見惚れた弟は、自らを乗せた蝶のような生き物に頼み、もっと近くで見ようと身を乗り出した。
「わ〜すご〜い、もうちょっとだけちかくで…………あ」
パキン!
蝶から滑り落ちた弟は、花托の結晶にぶつかりその脆い体は2つに砕けた。
2つに割れた体の、一方は花托の中に落ち、もう一方は今しがた出迎えてくれた石ころの上に落ち、数も数えられないほどに粉々となった。
「とっても、軽くなったねぇ」
「うん」
石ころ達が声をかけ、目に見えないほどに小さな粉になった弟は朗らかに返す。
虫達はこぞって集まり、花托に落ちた欠片を探したが、欠片は影も形も無くなっていた。
それを見て得心がいった石ころが、弟に声をかける。
「君の破片、新しい宇宙を見に行った。きっと大きな、きれいな、彗星になっている」
弟は再び、朗らかに答える。
「そっか」
「だれかのきぶんをあかるくしてるといいな」
祈りを受けたものは宇宙の外で混ざり合い泥となり、いずれ蓮の花と成って、新たな宇宙を宿す。
弟の欠片は蓮へと潜り、新しく生まれた宇宙へと旅立って行った。
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草原で寝ていた僕は、夜に似つかわしくない強い光に当てられて目を覚ました。
「……?ふぁ、あ。……なんだろう?」
目をこすって眠気を取り、夜空を見上げる。
「うわぁ〜っ!!綺麗〜!!」
そこには、空を埋め尽くさんばかりの薄荷色のほうき星があった。軌跡から溢れる淡い光がまるで雨のように降り注いでおり、見たこともない美しい光景を作り出していた。
「フォスフォフィライト、何処を探しても居ないと思えば、緒の浜まで来ているとはな……。
夜とはいえ月人が出ないとは限らない。迂闊に出歩かないように。」
「あっ先生!みてみて、この空、僕と同じ色だよ!」
先生が迎えに来てくれたみたいだ。
「そろそろ戻るぞ。」
「えぇ〜もうちょっと見てたいです!こんな空もう見れないかもだし、先生が居てくれたら月人も怖くないし!」
「……少しだけだぞ。」
何故だかもう少し、この風景を見ていたくて先生におねだりする。
空を見上げた僕たちは、しばらく降り注ぐ光を眺めたあと、学校へ戻った。
背を向けて歩き出した僕たちの後ろで、ひときわ大きく輝く光が浜に落ち、すぐに見えなくなった。
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「…生を……るんだ。」
「なんで………がうの?………がい〜。」
「……が………ても、……を守っ…ね。」
「……なに会い…い……」
身体の中からたくさんの声が聞こえる。
「だれなの?なんていっているの?」
ボクは虚空に問いかける。
途端に声たちは絶叫になり、同時に溶岩の中にいるのと錯覚するほどの強烈な「欲望」が、ボクの心に叩きつけられた。
「……っ、う、あ!
い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
あらん限りの叫び声を上げ、苦しみから逃れようともがくも、手足はまともに動かない。
だんだんと「怒り」が湧いてくる。自分が溶かされそうになる。
「あ゛あ゛……いや、いや、たすけて、だれか、たすけて……」
地震のような「感情」の衝撃で砕けそうになる心を、必死に繋ぎ止める。
その時、永遠に続くかに思われた暗闇に、一筋の光が差し込んだ。
同時に、暴れ狂っていた「感情」が嘘のように静まり返り、世界に残ったのは淡く光る薄緑の結晶だけだった。
「だいじょうぶだよ」
結晶が声を発する。
「みんな、こわかったんだね。だいじょうぶ、だいじょうぶ」
淡い光が体中に染み渡る。
叫び声はもう聞こえない。
なんだか、すごく、眠くなって……
「みんな、いっしょにせかいをみにいこう」
薄荷色の光に包まれて、安心したボクはゆっくりと眠りについた。
誕生の時は近い。