トリニティの12使徒   作:椎名丸

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・ダチョウBチーム
B1 炭沢リク(すみさわ りく)
B2 羽沢エイカ(はざわ えいか)
B3 雪風ヤマネ(ゆきかぜ やまね)
B4 川澄スミカ(かわすみ すみか)

・特徴
奇跡のアホ、ダチョウらしいダチョウが揃っている。際立った暴力性と最高の暴走性を併せ持つ。
アポストルBチームはミカの近衛小隊でもあり、外遊時などには側付きとして警護を拝命し側に侍るが、普段と別人のようなプロ学兵ぶりで友人達から違和感を持たれる程度に落差がある。テンションも口数も他2小隊と比べ明らかに高くて多く、個体識別が容易。その分やらかしも多い。



間話・BチームのBはBAKAのB

「作業終了!! 温泉宿完成!! おつかれっした!!」

 

「「「「「おつかれさまでしたー!!」」」」」

 

「やったね!!」「テルマエ君の操作もだいぶ慣れてきた」「ミレニアムやっぱすげーな、未来に生きてるよ」「見た目以外の欠点ないよね」「なんでこんなデザインなんだろね? 変なの」「ダサいけど便利ー」

 

「ハーッハッハッハッ!! これでまた一歩、キヴォトス健康ランド計画が毎秒前進だぞ!!」

 

「毎日温泉開発できて最高だねっ部長!!」

 

 ゲヘナで最も危険なテロリストと名高い温泉開発部部長、鬼怒川カスミの毎秒温泉開発は今、過剰な表現などではない。なぜなら彼女達はきたるキヴォトス全土を温泉郷にするという野心的プロジェクト……キヴォトス健康ランド計画の要、マジでずっと温泉開発中。

 

 そうキヴォトスは空前の温泉開発タイム!

 

 温泉開発部は国家的と言えるこのプロジェクトで「自分達の判断で建設地を定め、開発して良い」という凄まじい権限が与えられ、ほぼ自由に温泉開発をしている。

 

 頭おかしいんか?レベルな本計画、なんと冗談ではない。何故ならばこのプロジェクトはゲヘナ・トリニティ両校の後援とミレニアムの出資がある公共事業なのだ。

 

 キヴォトス全国規模のテロリストとか言われているような温泉開発部が、ほぼフリーハンド、冗談キツいだろ。

 

 つまり、名だたるテロリストである部長……鬼怒川カスミが、キヴォトス温泉開発の実務責任者ということになってしまった。イカれてる、冗談じゃないぞ……マジで何が起きるのかわかったもんじゃない。

 

 こんなことをすればキヴォトス各地は爆破されまくって、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図となる……筈だった。

 

 

「やったねカスミちゃん!! メグパイ!! このペースなら冬の前には皆で温泉ランドだよ!!」

 

 ダチョウが督戦してなければね。

 

 

「うむ!! 中々のペースだぞ!! リクもよくやってくれているな!!」

 

「リクちゃんやっぱりすごいねー、殆どちっちゃい重機だもん!! お手伝いありがとうね!! テルマエ君も凄くて、温泉開発はかどっちゃうよ!!」「えへへ!!」

 

 だがダチョウは馴染んだ、そのうちの一匹はカスミにしれっと丸め込まれ、温泉開発部員と同じ枠で作業させられている。それで違和感ない程度の生き物だったので普通に混ざっている。

 

 皆が楽しそうにしてるので自分もやってみよう、というわけで気軽に名誉温泉開発部員となったティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高いその名は12使徒。小隊長ナンバーB1……名を、炭沢リク。

 

「すごかったよねリクちゃん、ビル素手解体だもん」「竜巻旋風羽根って何?」

「ほとんど重機じゃんね、また皆も来てくれないかな」

「Bチーム揃ってた時作業捗ったよね!! アリウス廃墟片すの早いこと」

 

「ハハハ……いや、二人以上いると私死んでしまうな……」「部長?」

 

 ドーザータイプの鳥類と化したダチョウは平和利用できれば素晴らしい人型重機なのだが。コントロールは至難の業なのでカスミはそうとは見せず、細心の注意を払いながらリクを扱っていた。

 

 ダチョウは確かに頭が悪い、しかし主人とその盟友に「これ」と定められたルールは頑なに守ろうとする。

 

 今回の場合マコトから示されたのは「場所決まったら連絡して、万魔殿から地上げする人(直喩)送るから勝手に始めんなよ、あと無駄に迷惑かけてる感じの開発してたら制裁な」だ……結構曖昧なので、リクが「んー……? これダメそう?」とか思ったら終わりだ。

 

 ナギサなら絶対にこんな危険すぎる命令は出さない、ダチョウにフワフワした指示を出したが最後、大体悲惨なことになる。スイッチが入ったらマジで終わりなのだ、処刑は免れない。

 

 温泉開発の全工程においてどこかで「だめかも?」みたいにリクが感じた瞬間「カスミちゃんはおしまい!!」となる。ダチョウは容赦などしないので、カスミの月旅行は確定だ。

 

 今こうして楽しそうに部員達と歓談していても、スイッチ入った瞬間全てを潰しに来るのだとカスミは我が身でよく知っているのだ。明るく朗らかなリクでさえ、マジで怖い存在なのである。

 

 だが炭沢リクはダチョウの中でも気質はマシなほう、素直だし……カスミ的にもコントロールは難しいができなくはないタイプ。

 

 温泉開発を楽しそうと思ってくれ積極的に参加してくれるし役にも立つ、お楽しみ爆破解体RTAが難しくなる以外に問題は少ない……イトとスミカはだめだ。特にイトなんかは何をどうしても襲いかかってくる、空崎ヒナが「私も混ざっていい?」みたいなノリで隣にいることも……。

 

「マコトちゃん様もきっとお喜びになるよ!!」

 

「リクもだが、皆マコト議長と仲がいいね、驚くよ」

 

 羽沼マコト。それは温泉開発に寛容な指導者ではあるが、一定ラインを越えるとヒナをけしかけてくる存在だった。専門家を尊重してくれる(全投げともいう)ので細々した些事で煩わされることはないが、全く油断ならない相手……今もこうして12使徒を平然と使ってくる存在。

 

「マコトちゃん様は寛容?で寛大?な総領主だもんね!!」

 

 こいつ意味はわかってないなと思うカスミだった。

 

「しかし議長も大きいことを考える。頼もしいじゃないか、ハーッハッハッハッ!!」

 

 しかしこの計画、その正当かつ強固な支持を得ているゲヘナ君主の主導である。

 

 ダチョウから楽しそうに語られた本計画に、その場のノリでのったゲヘナ総領主議長にして生徒会長、羽沼マコトの「温泉にイブキを連れて巡る、最高だろキキキ!!」というテンションのまま……マジで実行に移された。

 

 聖鉄骨連休中のトリニティ・ティーパーティーは限界状態で「温泉!? 今私達それどころじゃないんだけど!!」というミカの仕方ない感じの全投げで勝手に両校主導(ということになった)この計画……。

 

 バカみたいなノリで発動した割に、マジでクソほどでかい公共事業なのである。

 

 そして羽沼マコトはアホのようなテンションで軽々しく物事を決める割に、やると決めたら信じられないほど有能だった。

 

 キヴォトス各地ということは、その温泉作成地は別学園の領土や連邦の直轄地である筈、それを勝手に開発など本来不可能……を、可能にするのがゲヘナの総領主。今のゲヘナとマコトの権勢、トリニティとナギサの名前(勝手に使ってる)……そしてエデン同盟とETOの影響力を背景に政治の場に持ち込めば、好き放題できる。

 

 温泉地をエデン同盟の管轄する「飛び地」にすることで、ゲヘナの影響力を各地に保持し、事実上の領土とするのだ。開発された温泉はETOが防衛……ある種の基地化、つまり実効支配地。

 

 えっ!? マコトってこんな凄い計略できるような生き物でしたっけ? 意外かもしれませんが……やればできるんですよ。

 

 一見、勝手に温泉を作られる側は土地の搾取による不利益だけに見えるが、そう思わせないのがマコトの総領主たる腕の見せどころ。

 

 温泉宿の面積などしれているから自治区にとって痛手は少なく、何より温泉のオーナーこそゲヘナだったが、経営権は自治区にあり、地元に収益が見込めるのだ。

 

 派遣された衛士学兵が温泉利用がてら、その地域ごと守衛するので治安も向上し、建設費用はエデン同盟持ち……零細自治区ならば文句など出ようはずがない。元々トリニティから正実が派遣されているような自治区の例がある通り、派出所が温泉旅館に変わっただけ。

 

 ゲヘナの影響力拡大、温泉のオーナーであることによる上前、現地の治安向上、派遣学兵達の福利厚生……正直言ってマジで凄い手腕だった、今のマコトの権勢なら格下に要求を飲ませるのにさほどの苦労はないとはいえ、連邦生徒会以外から文句など出ようがないお政治。

 

 この流石の手腕には後々ナギサからも感嘆の声が漏れたほど。トリニティの方針「地域安定化」にも合致している。ゲヘナの影響力増強といっても同盟学園であるトリニティ側も増すし、派遣学兵は両校から出る。

 

 元々これまで派遣していた正実学兵達には負担を強いているという思いがあったため、福利厚生の充実も兼ねた本計画の完璧さに、復帰後改めてナギサは追認を出した。

 

 いずれかの世界であればゲヘナの生徒にも名前さえ知られていない知名度しかなかったマコトは。ヒナと競り合う必要が無くなったことで、その手腕を如何なく発揮し……今や多くにゲヘナの議長総領主、生徒会長として認知され、一部からはしっかり敬われる、圧倒的な存在感に至っていた。

 

 ゲヘナを恐怖ではなく「自由と利」によって支配する存在……それは、ともすれば。

 

「中々悪くない……だが果たして彼女は「雷帝」を超えられるかな?」

 

 キヴォトス支配者への挑戦、その道は険しい。

 羽沼マコトは雷帝を超えうるか、鬼怒川カスミの興味は今……そこにあった。

 

「カスミちゃん? どうしたの?」

 

「いやぁなんでもないさ……んんんん??? リク!? それは!?」

 

 リクがいつの間にか引っ張って転がしてきたのは……いつだか見覚えのある……。

 

「? ハムスターローラーだよ? カスミちゃんと一緒に走ろうと思って!!」

 

「何故!? どうして!?」

 

「マコトちゃん様がね「キキキ、リク。奴は定期的に回転させておけ、負荷を与えれば良い仕事をしてくれるぞ(声真似)」って言ってたの!! 流石マコトちゃん様は見る目があるよね!! さあカスミちゃん私と加速しよ!! 2000rpmから行こうね!!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーっ゛!!」

 

 温泉開発の旅はまだ始まったばかり……長く険しい旅路となるだろう。

 

 

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「ん」「ん!!」「……ん?」「ん!!」

 

「シロコ先輩とエイカ先輩、マジで何してるの……?」

 

「自転車のベアリング・グリス比べらしいですけど……えーと……「このグリスどう?」「悪くない」「ちょっと硬いかも?」「硬めが好き」かな?」

 

「アヤネちゃん凄くない!? なんでわかるの!?」「動きと雰囲気……かな」

 

 その日、アビドス高校の一室は来訪者を迎えて賑やかだった。

 

 変わらず全校生徒5名という零細校であることに変わりはないが、エデン以降のアビドスには来客が増えた。学外の存在がアビドスとの接触を求めて訪れる理由は様々、好ましからざる客も多い……だが今日この日の来訪者は違う。

 

 アビドスの門を通るなり「この門をくぐる生徒、制服を着替えるべし」とかいうシロコの寝言を真に受けたダチョウの一匹、羽沢エイカはアビドス制服(羽根部分カット済)に着替えさせられ……今日も速攻で教室になじんでいた。

 

「ベアリングも大事、けどグリスも大事」「ん」

「負荷が大きいと消耗も早い、硬めにして……抵抗分はパワーで解決」「ん!! 長持ち!! ロングライフ性能!!」

 

「いや……200キロは自転車で走る距離じゃないですよ……」

 

「? 時速100キロで走れば2時間、程よい感じ」「ん!!」

 

「そうはならんでしょ!!」

 

 持ち込まれたお互いの自転車、そのベアリングとグリスの打ち替えとかいうマニアックな遊びをしている二人はサイクリング仲間でもある。

 

 ダチョウは飛べる上にローラーダッシュシューズもあり、正直自分の足で走ったほうが早いまであるのだが……のりもの枠である自分が乗り物に乗るという事に謎の面白さを見たのか、シロコに付き合って走り回ることが増えていた。「前」で見たチャリ漫画の記憶の影響も少しある。

 

「チャリはいい……アヤネも筋トレになるよ?」「ん」

 

「お二人についていくのは無理です……」「残念」「ん……」

 

 不幸なことに、そのツーリングの過程で「発見される」不良生徒・ダークサイド大人達は二人に轢かれた。

 

 この謎の覆面サイクリスト二人組(ダチョウはバケツ被る)の噂は最近、マジでヤバい連中がいると噂になっていた。自転車ひったくり強盗ならぬ、自転車暴力強襲団だ。ダチョウに影響されたシロコも、パワーと倫理観が……かなり不味い領域に達しつつある。

 

 ホシノが止めなければ今にも自転車で悪党を引きずり回し「パレード」を始めかねない……そんな狼と駝鳥は妙に波長が合ったので、遠征とか言って外周圏までチャリで走っていき、手配犯の賞金を咥えて戻って来ることもあった。

 

 毎日そんだけ賞金首が湧き出すキヴォトスもキヴォトスだが、狩ってる連中も大概だろ。何なんだよこの国はよ。

 

「今週の稼ぎは凄く良かった、多めに返済しても余裕がある……ちょっといいベアリング買った、だからグリスも厳選」「チャーシュー多めにもできる」「ん!! 倍チャー!! 替え玉!!」

 

「エイカ先輩……本当に、ありがとうございます……こんなに余裕ができるなんて、今までじゃ考えられないです。トリニティの支援がこれほどだなんて」

 

「私がやってるわけじゃないよ。けどそんなに? ヘリとか足の補助だけじゃなかった?」

 

「その「足」が凄く重要なんです……それにエイカ先輩が狩ってくれる賞金分もありますし。収入的には2000%ぐらい向上ですね……完済の目処、もしかしたら立つかもしれないです」「おー……景気の良い数字」

 

「そんなに!? アヤネちゃんほんとなの!?」

 

「この異様なペースが続けば、ですけどね……セリカちゃん、私達もがんばろ」

 

「とーぜん!! 先輩達に獲物取られてばっかりじゃないんだから!!」

 

 というか獲得賞金の額がそろそろヤバくて、アビドスの財政に若干どころか余裕が出ている。エイカは賞金を「アビの制服着てる時の狩り、アビに入れるのが筋」とかいって分前を受け取らない。

 

 もうかなりホシノが絆されてきてるのに……お前そんなことのたまってたらマジでアビドスの子にされるぞ、という危機感のないダチョウの名は。ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高きは12使徒。ナンバーB2……名を、羽沢エイカ。

 

 セリカとアヤネに大翼をモフられながら、シロコと自転車を二人でこね回しているダチョウは、共にホシノとノノミの帰りを待っていた。二人が外周圏への出張で、ちょっと額の大きい賞金首を複数仕留めたのだという。

 

 そう、出張。

 

 中央や外周圏の3大学園から遠いような小自治区はどうしても治安が悪く、各地から逃れた賞金首が根城にすることが多々あった。特に僻地となれば現地に置かれるヴァルキューレの数も知れている。悪さをする連中の巣窟にされがち……。

 

 そんな中、春風号という重武装のガンシップを得たアビドスは、中央だけでなく外周圏への出稼ぎを始めたのだ……いくらトリニティの支援があるとはいえ、僅か5人でそんなことできるアビドスのレベル桁違いすぎるだろ。

 

 今日のドライバーはノノミ、そしてフロントマンがホシノ。

 

 バルカン慣れしているノノミは春風号の両舷に設置された20mmガトリング砲のサウンドを楽しみつつ、外周圏環状鉄道を襲う強盗団を花火にしていたし。ホシノが単騎降下して拠点を襲っては賞金首達をボコし、命乞いさせていた……。

 

 二人で犯罪集団壊滅とかさせるんすか? そら稼ぎも良いでしょうよ。

 

 外周圏までひとっ飛びできる速度と航続距離を合わせ持つ春風号の存在が、アビドスの機動力を様変わりさせていた。本来零細学園が保有できるようなレベルの機材ではない、だが春風号も雨雲号も維持費はトリニティ持ち……。

 

 中央の治安が良くなるにつれて、近場での獲得賞金額が目減りしてきた悩みを一挙に解決する、まさに入れ食いの状況に傭兵学園アビドス高校は空前の好景気だった。

 

「財政もですけど、環境も全然違います。通信インフラも整いましたし、学校の設備だけじゃなくて周辺の施設もどんどん回復してきてるんです……土地の買い戻しが上手く行けば、小身でも自治区としての復興も夢じゃない、ここまでこれるなんて……」

 

「ん、頑張ろ……セリカ、アヤネ。エイカも一緒、アビドスバンザイ」「「はい!!」」

 

「私トリニティ」「ん゛!! アビドス!! 学籍詐称!!」

 

 だから、この出張遠征活動がちょっと妙な事態になってることに一応中央所属のアビドスは気づいてなかったし「順調に返済できているのですね、よかった」とか言ってる、全く関係ないと思い込んでたトリニティ総領主もご存知なかった……だが。

 

 春風号の「元」がトリニティのティーポットであることは周知。

 

 アビドス廃校騒動とエデン事件の顛末は報道されまくって全土に知られている。少数精鋭のアビドスがどういう学園で、トリニティとの関係も皆ご存知。アビドス廃校騒動はカイザーとトリニティの代理決戦という側面もあり、12使徒が全投入され、空崎ヒナすら共同するという破壊的なインパクトでかなり耳目を集めていたから当然だ。

 

 全面抗争になりかねないので砲兵投入こそ疑惑で公然の秘密だが、12使徒の全投入は「貴方には消えていただきます」と言っているに等しい、桐藤ナギサの何時にない断罪の宣言。

 

 アビドス騒動……実はキヴォトスの潮目が変わる一大事だったのである。

 

 どんな弱者も見捨てないというトリニティの明確な方針が天下に示されたこの事件。騒動の前と後というほどに、キヴォトスの勢力図や空気は違う。

 

 その渦中の学園アビドス……トリニティの虎の子ティーポットを寄与された上で、機体を学園色の濃紺に染めることも許された連中だ、関係の深さを物語るに十分。アビドスのエンブレムと共にトリニティの紋章を誇らしく刻むその機体が……外周圏に蔓延る悪党をぶちのめして回っている。

 

 どう考えてもトリニティの意向と見るのが当然だった。

 

 外周圏の面子に配慮し、先ず支援している子飼いの傭兵学園を派遣してきていると思われているのだ。そう……いよいよトリニティの、桐藤ナギサの慈悲が外周圏にも示され始めたと。

 

 ならば、この次にやって来るのは、名高き白の12翼を従えた……その主。

 

 君主の到来は近い……!

 そういうことになった。

 

 だが今はアビドスもトリニティもご存知ない。

 

 半ば諦めていたアビドスの再興が……託され、挫折し、苦悩と後悔の中で苦しんできた果てに今。未来を後に託せるかもしれない……道が開けつつあると感じているホシノは、我武者羅に走り続けていた。

 

 小鳥遊ホシノ、現キヴォトスの獲得賞金王は獲物を求めて天地を駆ける。

 

 今日の稼ぎはざっと1000万だ。振り込まれた数字をノノミと共に見て笑顔になったホシノは、愛しい後輩達の待つアビドスへと帰りを急ぐ。これで借金もまた大幅減額、今日は美味しいものを沢山食べさせてあげられるだろう。

 

 カスを昇天させた報酬で柴ラーに行こうぜ!! 倍チャーシューメンが待ちきれねぇよ!! という蛮族の感覚で生きている生徒達の日常は、今日も青く輝いていた。

 

 

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「ユウカやるね、超パンプアップ感じる」

 

「なんのこと!? 不穏すぎるんだけど!?」

 

「100キロまで増やしたって聞いた、忙しいのに筋トレ凄いね」

 

「あれはハッキングされたのよ!! 嘘に決まってるでしょ!! この体型で100キロもあるか!! というか貴女2トンの車とか羽根で持ち上げてるのに、私のこと重いって言ったか!?」

 

「荷重は誤差だけど、立派なフトモモじゃんね……これは仕上がってる」

 

「ヤマネーッ!!」

 

 ゛ヤマネ、そういうのはよくないよ。゛

 

「うす……」「なんで先生には素直なのよ!!」「先生は先生だし……」

 

 シャーレ今日の担当はミレニアムより早瀬、トリニティより雪風。当番生徒は一日の人数が決まってるわけではないので、定期当番以外も必要な場面や状況で適切な生徒が追加で呼ばれる。

 

 伝票を片しつつ巡回が必要という意味わからんスケジュールを組まれた先生は、忙しいのがわかってるからあまり無理はさせたくないので頻度の低い、当番日のユウカ(本人はもっと呼んでほしい)と、連れて歩くだけでトラブルの方が逃げ出す12使徒より空いていたダチョウを1匹ピックアップ。

 

 最強の抑止力とは力こそパワー、暴力そのものが街を練り歩いてれば皆裸足で逃げ出すぜ。そんな恐怖の存在ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高きは12使徒。ナンバーB3……名を、雪風ヤマネ。

 

 じゃあ巡回行くね……後よろしく、と。シャーレに置いていかれそうになったユウカはキレ、それはナシだろと泣いた結果……ヤマネの翼に抱えられながらタブレットをバシバシ叩き高速で処理しつつ同行していた……が。

 

 限界状態が約二ヶ月続いた結果、キリコの羽根ソファーに慣れきったユウカは今、道行く往来で自分がどんな姿になっているか自覚があまりなかった。12使徒を羽根椅子にして抱えられながら仕事しつつ、ヤマネの後ろを歩く先生と対面で話しながら移動をダチョウに任せてる光景……様子おかしいだろ。

 

 ゛ごめんねユウカ、なんだか変なことになっちゃって……。゛

 

「そう思うならもっと早めに呼んでください!! 巡回と同時とかスケジュールおかしいですよ!!」

 

「斬新すぎる……でもお机勢は中々借りれないからさ」

 

「ティーパーティーからは無理でしょうね……うちはノアがいてくれるから、なんとかなってるけど」「ノアち最強すぎるわね」

 

 尚、ミレニアム中から「困ったらノア」(困らずともユウカ、も同時発生)されている本人は笑顔のままヤバいぐらいストレス溜め込んでるので限界は近い筈だが、今現在は不穏な空気も漏らしていない……これあとが怖いぞ。

 

 なんのかんの言って大体どうにかしてしまう最強の二人を抱えるミレニアム・セミナーは、純粋な性能差で窮地をのりきってきた。

 

 会長のリオは当然として一般通過セミナー生達、事務の佐川といった目立たなくも特化した手練れの生徒達がいるのも大きい。元々研究学閥のミレニアムは事務手続き周りが煩雑で多く、これを処理するため歴史的にデスク周りの人員は精鋭で数も多い。その上でこの二人がいるので余裕があるのも頷ける運営体制。

 

 だが……今は違う。

 

 ゛けどユウカもノアも忙しいからね、できるだけ頼らないようにしたくて……エリドゥもそうだけど、ミレニアム号とかも色々大変だったでしょう?。゛

 

「それはまぁ……ですけど……それとこれとは事情が違います!! 先生は一人しかいないんですから!! 会長も普段はちゃんとしてますから……普段は……」

 

 ゛リオ……。゛

 

 かつて思い詰め一人でエリドゥした調月リオは今……死ぬほどハジけていた。

 

 後始末をする側から、やらかす側となったのだ。マジでヤバいってこれ!!

 

 エリドゥ以降急速に仲良くなった白石ウタハと組んで、マジで好き放題している。ただでさえヤバかったエンジニア部がリオの力で超強化されており、考えられない代物が平然と送り出されるばかりか「量産」されてしまう。

 

 ヒマリちゃん先輩助けて!という願いは通じない。なぜならヒマリちゃん先輩も元々やらかす側の生徒だからだ。ヴェリタス元部長に何を期待している? リオと方向性の違いで下水トークしてるだけで、大目標は同じだぞ。

 

 頼れるのはもう……チヒロちゃん先輩しか……。(過労死)

 ミレニアム唯一のストッパーと化したチヒロは倒れた……無理もないです。

 

 だからマジで好き放題している……!! しかも余裕がある!! 温泉開発部に温泉開発メカ「テルマエ・ロマエ君」が、話の半日後に提供されたあたり、心身だけでなく財政的・時間的にも余裕が感じられる、不味いですよこれは。

 

「温泉マシン大好評だったよ、会長のパワーでキヴォトス温泉ランド進捗万全だね」

 

「飛行戦艦にくらべたら誤差みたいなものだから良いけど……部品も余り物の再利用だし」

 

 ゛でも先生、やな予感しちゃうな……。゛

 

 極めつけが飛行戦艦ミレニアム号だ。地上を火の海にできる特大ビーム兵器を山程積んだ、全身電磁装甲で実弾もビームも効かない無敵の存在……空崎ヒナとか聖園ミカ(鉄骨)でもなければ撃沈などできようのない……いや、戦力評価戦艦より上って、ヤバいなあの二人。

 

 そんな1隻でキヴォトス全土を相手にできそうな超兵器が……今うっかり2隻ある。

 

 2隻……? 

 

 2 隻 。

 

 連邦衝撃の真実こと、秘密の未完成な2番艦の存在がバレたので……開き直って公然と建造再開・艤装(武装取り付け)を始めたのである。ウ、ウソやろ……こんなことが……こんなことが許されて良いのか。

 

 いいわけねぇだろボケ!(by連邦生徒会)

 

 というわけでノアが笑顔を失った迫真の表情で「これはあくまで自衛できる民生用途の飛行船であり、攻撃的意思のある物ではないです」(欺瞞!!)という苦しい弁論法的解釈バトルに突入していたし。裏金でこんなレベルの超兵器が飛び出してしまうガバをさらなるガバチャーでどうにかするハメになったユウカも床でのたうち回るしかなかった。

 

 問題は、それで終わらない。

 

 リオ達のレベルが違うミレニアム仕草を目の当たりにした一般ミレニアム生達は……目を輝かせた。

 

「会長……凄すぎるだろ!! なんか堅苦しい感じでデザインセンスもカスだと思ってたけど……それでこそ私達の長だよ!! すげぇぇぇ!! 負けてられねぇぜ!!」となった……。

 

 キヴォトス研究会概念が形となった学園の……タガが……!! 外れ……!!

 

 地獄学園ミレニアムは今「ミレニアムの技術超つえぇぇぇ!! このまま科学の力で全てを「解明」していこうぜ!!」となっている。

 

 正直ゲヘナより怖い、この世情で一番安定してるのがゲヘナって終わってるだろキヴォトス。

 

「そういえばヤマネ、ハレからの荷物何だったの?」

 

「新しい電子戦装備、これでニヤ子を追い詰めるぞー、月旅行のチケット当選をお知らせしないとね」

 

「程々にしてよね、前みたいにEMP爆弾とかされたらミレニアムにも苦情来るんだから。ヴェリタスが何かしてると思ったら貴女達と共謀してるなんて!! 何時から繋がってたのよ!!」

 

 ティーポットの無い場所で本格的な電子戦支援なんてヤマネ一匹でできるわけないだろ。ダチョウがどうやって通信落として、隠れた悪党共を探し出しては啄んでたと思った? トリニティの電子戦部隊・諜報力だけじゃないんだなぁ、これが。

 

「期待しててね」

 

「話聞いてる⁈ あーもう!キリコは素直で良い子なのに!」

 

「姉妹をミレニアムから解放しろ!学籍偽造!許されない!」

 

「何言ってるの?キリコはうちの生徒なの……一年生で……ゲーム開発部で……困ったら何時も一晩よろしくネキさせておけば翌朝には解決、安心して休めるのよ……誰が何と言おうとミレニアムの生徒なの……入学式だって私が花束を渡して……」

 

 ゛ユ、ユウカ……。゛

 

「記憶が改竄されてる……」

 

 過負荷のあまり妄想と現実が混ざり始めた限界のユウカを慮り、先生は今日の仕事を止め、カウンセリングすることに決めた。今日はこの子のために一日を使おう、そう思った先生はヤマネに目配せする。ダチョウもこういった時には察してくれる。

 

「ちょっ⁉︎ ムギューッ!!」

 

 キュッと締まった翼がユウカを封印。さあユウカ、お仕事は終わりだぜ。先生の仕事? 今日のことは明日考えよう!! なんとかなるだろ!! たぶんな!!

 

 今夜、先生の「24時間働けますか」が始まる……。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 守月スズミは息を潜めて慎重に動く。

 

 自警団の中核生徒と名高い彼女は強者だ、並み居る豪傑揃いのトリニティ総合学園においても明確に上位の生徒。それもただの生徒ではない……12使徒と名高いかつての特殊戦研究会と共に、中学時代に凄まじい戦いを潜り抜けた真の精鋭。

 

 それがこうも息を潜めて行動するのは「本気」の合図だった。平時なら存在感を誇示したほうが抑止力になる、騒乱者は力でボコせばいいというのはスズミもダチョウと同じくする思考だ、閃光弾は手加減でもある。

 

 だがスズミをして今日の相手は難物だ、ここまで気配が読めない手合は12の友人達を除けば久方ぶり。

 

 ダチョウと殴り合ってきた彼女の実力は正実生徒が束になってもどうにもならない領域にある、メンバーでこそないが特殊戦研究会のオブザーバーとして共に競り合い心身を磨いてきた。十二分に特殊戦のできる精鋭生徒……12使徒不在時のトリニティを守るのは正実の精鋭達だが、後輩たる選抜中隊すら遠く及ばない実力を備えたスズミの存在は、公でないため秘密兵器に等しい。

 

 実際エデン事件では、ユスティナが迫るトリニティの正門を事実上たった一人で守りきった。本校に残された生徒は1年生が多く、戦い慣れていない一般学生も多いことを考え、援護に徹させての……覚悟の仁王立ち。

 

 その実力にふさわしい隠形も備えた実力者、それをして慎重にならざるを得ない存在……なるほど。

 

「スズミ殿、頂きました」

 

 これが忍者。

 

「参りました、見事な隠形ですね」

 

 影に潜んでいた忍の握る銃剣が、スズミの背中にそっと添えられていた。

 

「お褒めに与り光栄です!! ニンニン!!」

 

「スズでも捕捉されるとか、これは本格にヤバいなぁ……やるねーイズナちゃん」

 

 突然闇から横に湧いた存在に二人は驚きもしない、この場にいるのはそういう面々だった。

 

「ありがとうございます!! とっても学びになります!!」

 

 守月スズミと久田イズナ、そしてダチョウの1匹はトリニティの庭園……庭園っていうかもうこれ自然保護区だよ、みたいな空間でステルス鬼ごっこをしていた。

 

 ステルス鬼ごっこ、それは隠形の訓練として行われるお遊び。

 

 ルールは簡単、見つからずに相手を仕留めろ。鬼も見つかったらアウト(意味深)のストイックな心身を鍛えるエクストリームスポーツ。

 

 この競技、追われる側も鬼を見つけたらぶちのめして良いというルールなのでかなり暴力的だ。ただし闇討ちしなければならないので結構難度が高く、一般学兵の訓練メニューにはない、選抜中隊……つまり特殊戦生徒達が嗜むようなスポーツである。

 

 そして今日、普段にない生徒が遊びに来ていたついでに誘われ、参加している。

 

 守月スズミと……百鬼夜行の忍者、久田イズナだ。

 

「ウッチもかなり健闘したけど、まあ相手が相手か……注意するなら何処だったと思う?」

 

「はい、気配を殺しすぎました、逆に目立ったかなと」

 

「正解、ウッチのとこだけ「何も無い」感じになってた、市街地ならまだしも自然の中じゃ目立つわ。植物も生きてるから、根本だけ「無い」ってのは不自然だよ、他の皆も概ねそう……昔はずっと市街戦だったし、あんまり機会がなかったから場数が足りないもんな、今度野戦の訓練しよっか」

 

「「「「「はい!! 姉さん!!」」」」」

 

 クラスメイトがみたら「誰?」とか言いそうな、凶暴な鳥類にあるまじき理性的な指導の姿を見せるのは、ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高きは12使徒。ナンバーB4……名を、川澄スミカ。

 

「スズどうだった?」

 

「私はそれほど隠形が得意ではないですから、けれど凄いですね。銃剣をイズナさんが握り直すまでわかりませんでしたし」

 

「!! 驚きです!! 音は出していませんが、おわかりでしたか!!」

 

 ということは、銃剣を背に受けたのは単に抵抗しなかっただけで、スズミが背後に迫るイズナへ反撃するには十分な時間だったことを意味する。そして一度反撃を始めれば……。

 

「流石にスズとガチるのは分が悪い?」

 

「ちょっと無理だと思います!! 試合もご一緒してました!! だからそっといきました!! 噂も凄いことになってましたね!!」

 

 相手は2ダチョウパワー……イズナ一人では絶対に勝ち目はない。

 

 2ダチョウパワーとは、12使徒が12人揃っている状況で自分がくたばるまでに、ダチョウを「2匹」撃墜できることを意味する。

 

 少ないように思えるかも知れないが……現実の難易度は1匹でも激烈という言葉すらヌルい。12人連携状態だと火力12倍のダチョウが一糸乱れぬ動きで追い詰めてくるのだ、撃墜どころか生き延びること自体が不可能に近い。

 

 12使徒は12人揃うことで最強の部隊、空崎ヒナを除いて連携戦闘を食い破れた者は居ないのだ。

 

 だが、スズミは閃光弾を使えば2匹落とした上で戦場から離脱もできる。残る使徒の反撃から逃れることは、あの剣先ツルギでさえできなかったというのに。

 

「? 私噂なんてされてます? 皆ほど活動してはないと思いますが」

 

「地元(外周圏)の皆もエクストリーム野球見てましたから話題一杯ですよ!! 私も試合ご一緒できてよかったです!! 今度は部長とも一緒に遊びたいですね!!」

 

「千鳥ミチルか……ヤバそうすぎて楽しみだよね」

「ああ、あの方……遠目でお姿は、気配の感覚がちょっと不思議でしたね」

「わかる? あの完全に周りの空気に溶け込んでたの」

「ええ、まるで……単なる一般通過生徒みたいな、恐ろしい偽装ですね……あれでは紛れ込まれたらわかりません、高度な技に感嘆します」

 

「部長は「紛れる」のが上手いんです!! 簡単には見つからないと思いますよ!! ニンニン!!」

 

「こわー……何処にでも「居る」ってことじゃんね」

 

 未だ謎の多い百鬼夜行忍術研究部の長、千鳥ミチルの謎めいた巨大な存在感が少しずつ……キヴォトスの強者達の間に広まりつつあった。後輩、久田イズナと大野ツクヨの能力を考えれば、最早警戒するなというほうが不可能な存在だ。

 

 これほどの特殊戦に1年生を仕上げられる指導力、想像でしか無いが二人を上回る戦闘力、そして市井に溶け込める隠密力……百鬼夜行諜報部の長であろうことは容易に想像がつく。

 

 あまり表に出てこないのは、機能不全になって久しいとされる百花繚乱の代わりに、何かしらの活動をしているのではないかと目されていた。実際それを扱っているだろう事実上の生徒会長である陰陽部の天地ニヤは、百鬼夜行を空中分解させず勢力を保持している……実力を疑う余地はない。

 

「んじゃあ、今度は私がスズとチェンジして参加だ。私がその部長と隠形でやりあえそうか、改めて測っておくれよイズナちゃん」

 

「はい!! それではイズナ!! 闇に忍びます!! ニンニン!!」

 

 宣言と同時に二人してスッと気配が消え、後ろに下がりながら木々の影に溶けるようにして消えていく。

 

 12使徒は一度、久田イズナとやり合っている。かつて百鬼夜行への外遊に出た室長安藤と共に赴いた際……遭遇戦となった。相対したのはアポストルB小隊、B3とB4。闇に潜むその姿を看破した時、その暗闇の先にいたのが戦化粧の艶やかな忍者、イズナ。

 

 警護が主任務であるから、煙と共に去るその姿を深追いすることはなかったが、姉妹が二人いて撃破できなかった事実は感嘆に値する。1年生にして既に恐るべき力……キヴォトスは各地に実力者がまだまだいる。

 

 外周圏の実力者達が躍動する時は、近いのかもしれなかった。

 

「さあ皆さんも、休んでいては訓練になりませんよ」

 

「「「「うす!! スズさん!!」」」」

 

 大内達選抜中隊に厳しくいく守月スズミはしかし、正実でもなければ使徒でもないトリニティ自警団。孤高の白銀だとか、閃光だとか呼ばれる彼女だが……仲間が居ないわけではない。

 

 最近目をかけている後輩の宇沢レイサという子もいれば、激しい日々を共にした12姉妹と、こうして「躾け」済の後輩達もいる。修羅みたいな生き方をしていた中学時代を考えれば、文明的な暮らしと言えるだろうか。

 

「ステルス鬼ごっこでは閃光弾を使う機会はありませんね、後でスミカと組み手でもしましょうか」

 

 消えた友人の気配を感覚で追いながら、スズミは今日もそれなりに充実していた。

 

 





Bチームでした。

掲示板で会話してるせいで集まってると基本寡黙なダチョウ達ですが、B小隊は結構喋ってるので明るく朗らかと評判。その分やらかしの規模と速度も最高なのでマジでヤバいです。

必要でない思いつきで定期的にやらかしては保護者のミカちゃんが酷い目にあいます。ミカのゲヘナヘイトが正史ほど高くない最大の理由はこの連中の存在。

どうしてこんな奇跡のバカ×4を側に置かないといけないんですか? ミカちゃんが思わずお世話して「余計なこと」できなくしまうからですね。無自覚ヘイトコントロールギミック。愛嬌の塊のような連中ではあるが、マジでヤバイ鳥類である事に変わりはないので油断すると「カスミちゃんはおしまい!!」状態に突入してゲームセット。

・「トリニティの12使徒」雑談スレその6
https://bbs.animanch.com/board/5127133/?res=102

またスレッド頂いてます、いや6スレ目て……そんなに語って貰えるほどとは作者の目をもってしても……ありがとうございます。

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