トリニティの12使徒   作:椎名丸

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・ダチョウCチーム
C1 花川カオル(はなかわ かおる)
C2 杉本サナエ(すぎもと さなえ)
C3 佐藤アキ(さとう あき)
C4 九字キリコ(くじ きりこ)

・特徴
寡黙で仕事人な鳥類が揃っている、外遊時は百合園セイア付きの近衛小隊。プロフェッショナルの集団で戦闘だけでなく潜入や警護も優れた面を見せるが、本分は「研ぎ澄まされた暴力による破砕」C2「以外は」温厚。実は統制が比較的効くチームで暴走性はそこまででもないが、破壊力は凄まじい。ダチョウ達の中でも最低の成績を誇るように、考える頭は全く無いに等しい。



間話・CチームのCはCYOU……RUI?

 

 宇沢レイサは自警団生徒である、役職はない。

 

 そもそも自警団は部活ですらないので役職も何も立場自体ない、扱いは一般生徒。しかしトリニティ自警団の腕章は正実生徒の黒染とはまた違った意味で重みのあるものだった。

 

 今代最も「強い」生徒を真似て、好んで灰色制服を着る彼女達自警団……総勢は100人に満たない。だが一般生徒というには実力者だ、自警団の鍛錬はお遊びではない、まだ1年生のレイサもいくつか修羅場を潜って相応に鍛えられている。

 

 今代最強の生徒、守月スズミに目をかけられるのは……それだけの可能性を秘めているからこそ。

 

 実際実力は伸び続け、かつて自分を鼓舞するために唱えていた「スーパースター」という自称は虚勢を超えつつある。本校防衛戦で一人最前を張るスズミの背を見た宇沢レイサは……勇気を胸に、門を出て、前へ出ることを選んだ。実力はスズミの足元にも及ばない、案じて止める同級生達の声を背に、それでも前に出た。

 

 奥歯が軋むほどに振り絞った勇気の結果は……芳しいものとは言えない、倒せた敵は少なく、受けた手傷は多い。援護するべきスズミに助けてもらう場面さえあった、だが。

 

 率先して戦ったことで、生徒達の見る目が変わる。

 

 しかし宇沢レイサ、一夜にして人気者へと格上げされた自分の立場に……困惑が勝る。これは一過性だと、自分の中の冷笑的な部分が告げている……繊細な少女は簡単に調子づけるほど、悲しいことに図太くはない。

 

 けれどこれは、強者に戦いを挑み続ける猛々しさと、クラスメイト達との距離に悩んでいた繊細さを併せ持つレイサに、自信という勇気を与えた。

 

 だから、今までなら踏み込めなかった場所にも行ける。

 

 どこか疎外感を感じ、気後れしていた場所にも……受け入れてもらえるのかもしれない。かつて競り合えたと思っている彼女と、気がつけば遠い先に行ってしまったと感じてしまったあの子と、また対等に……そんな願いと勇気が。今までなら手をかけようとしても手が伸びなかったそのドアノブを、掴ませた。

 

 偽物から本物になる、宇沢レイサの決意は今。

 

 

「こんにちわーーーーー!! 杏山カズサいますかーーーーー!!」

 

「よォ……宇沢かァ……」

 

「ほげぇぇぇぇぇーー!!」(卒倒)

 

 

 開幕ヤバい鳥類と目があって消し飛んだ。

 

「レイサちゃんこんにちってええー!?」「普通に入ってきなさいよ、騒々しいったら……」「ドアバーンから自分もバーンのスピード感、やるね」「宇沢さぁ……あんたねぇ……」

 

 ドアを開けたまま卒倒したレイサに慌てて駆け寄る栗村アイリ。派手な登場と退場に機嫌の悪い伊原木ヨシミ、そして柚鳥ナツ。呆れた様子の杏山カズサ……そして最後に。

 

「宇沢……しっかりせェ、おい」(レイサ、大丈夫?) ※諸事情で副音声が付きます。

 

 レイサが勢いよく開けた放課後スイーツ部部室ドアの眼の前にいたのは、白制服を清楚に纏っているのに隠しきれない威圧感を誇示する大翼の生徒。ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高いその名は12使徒。小隊長、ナンバーC1……名を、花川カオル。

 

 ドアを弾き飛ばす勢いで開けたそのままのスピード感でひっくり返ったレイサを優しく抱き起こして揺するカオル。そこだけ切り取れば倒れた後輩を案ずる優しい先輩といった光景……だが、カオルの空気がわりと「その筋の人」なのがノイズだった。

 

「ぅぅ……」

 

「そろそろ慣れなさいよ、カオル姉さんだって見てわかんないのアンタは」

 

「昔サナにボコされたのがトラウマになっちまったよな、無理もねェが」(サナにお調子台詞とセットで殴りかかるのは……でもポッキーはやりすぎだよぉ)

 

 中学時代、不良更生中(特戦研入り)のカズサに今までのようにスケバン相手のつもりで突っかかったレイサは、ダチョウに〆られていた。

 

 本当に運のないことに当時出くわしたのは恐鳥達の中でも最も凶暴で容赦がない一匹、杉本サナエ。あの羽つきは最近噂の暴力集団、新しい不良グループとカズサがつるんだと思い込んだ中坊レイサは道を正すべく襲いかかるも……骨折のお祭りにされて無事月へ……勘違いが生んだ悲しい初遭遇だったのである。

 

「サナエさん、そんなにだったんですか?」

 

「ナツがカオル姉さんのつもりでちょっかいかけたら終わりだと思うな」

 

「おそろしい……あれは死んでしまうところだった……」「って経験済みなの!?」

 

「しぶてぇェな、ナツ」(わぁ……才能あるよ)

 

 カオルとサナエ、雰囲気からして怖そうなのはカオルだが……実際にはカオルは温厚で優しく、サナエがマジを超えてガチでヤバい鳥類なのは罠だった。

 

 カオルはレイサを翼でおくるみにして背負うとスイ部での定位置に戻る、なんと定位置がある程度には後輩達の根城に馴染んでいた……この雰囲気で。

 

「レイサめ、私の羽根ソファーを独占する気で……これが目的だった……!! うおーゆるせん!! うおー!!」「あんたのじゃねぇでしょ、座ってろ」

 

 ボスっボスっと、おくるみレイサと化したカオルの翼に突撃し、弾力に跳ね返されるナツ。カズサはそれに視線すら向けず、卓上に持ち込まれたレアなお菓子のパッケージをぐるぐると回りながら確かめていた……ナツは何時もなら、しばらく悪戯を続けた後にカオルの片手アイアンクローで頭から持ち上げられる流れだ。

 

「シバかれたくてやってるんじゃないかとさえ思うわ」「仲良いよね」

 

 当初こそカズサが連れてきた先輩にビビっていたヨシミとアイリの二人も、既に慣れた。そもそも今日、道行くダチョウを捕まえて部室に連れてきたのは日常の象徴のような少女アイリ。

 

 カオルがいるだけで「その筋の人の事務所」みたいになってしまうので、放課後スイーツ部への来客は限られる。龍が如くみたいな部室とか怖すぎて入れないだろ。

 

 雰囲気が怖めのカオルはダチョウの中では多くの生徒に恐る恐る接される方なので、本人的にお誘いはとても嬉しいことなのだが……外から見ればヤバい枠のダチョウを自然体で捕まえていくアイリの評判は「恐れ知らず」に入りつつある。いよいよ部活とメンバーも本当に日常系?と疑われているのだが、実際部員の一人が「元・中等部特戦研部長」なので、変な絡み方をすれば無事には帰れない、死ぬ。

 

 特殊戦研究会……それは12の恐鳥が中1に始めた姉妹の戦闘集団だったが、翌年以降は複数校の中等部生徒達で組織されるようになった広域部活……今も健在だ、ダチョウの特殊戦技能は継承され続けている。

 

 杏山カズサは恐鳥達がトリニティに進学した後、特戦研を12人より預かった元特殊戦生徒。城島ツバメの後を継いだ第二代、特戦研部長……今は隊を離れ一般生徒となってからも鈍ってなどいない。

 

 そんな日常系?部活の放課後スイーツ部、一部関係者の存在感が重すぎるあまりスイーツ目的な新しい部員が現れそうにない。このままでは来年以降もこの4名のままになりそうであった。

 

 というか最近、部室に現れる面子が本当にヤバい。

 

「……」(この歩調は)「あ、来たかな」

 

 カオルが身を起こすと殆ど同時にカズサの耳が動き、来訪者を捉える。

 

「私達全然わからないんだけどさ、一体何で判別してるの?」

 

「「足音」」「特殊戦仕草ー」

 

 放課後スイーツ部の面々が今日、来訪を待っていたのは宇沢レイサではない、アイリがテンション高めにカオルを捕まえてきたのも、あるレアなスイーツを入手し、それを長らく求めていた「先輩」を一緒に迎えるため……そして特殊戦生徒二人以外にはわからない、しとやかな足音の主がドアの前に立ち、控えめなノックの音の後に現れたのは。

 

「ごきげんよう、皆様お待たせいたしましたね」

 

「あっサクラコさん!!」「待ってましたぁ!!」

 

 シスターフッド首座、歌住サクラコ。

 なんとトリニティの暗黒卿その人。

 

 あの歌住サクラコが自ら足を運ぶ? 一体何が行われて……放課後スイーツ部の活動とは? とか思われても無理もないのだった。だが、サクラコの真意は……。

 

「お誘いに感謝いたします……これが、あのミラクル5000。感激です、この目で見られる時がくるとは」

 

 限定のレアなケーキ!ミラクル5000は希少品だ、サクラコとて手に入れるのは容易ではないし、人前でスイーツを貪れない地位なのもあった。

 

「ずっと楽しみにしてましたもんね!!」

 

「ええ……このような立場にあると、どうしても販売車に巡り合うことは難しく、うれしいです。皆様に深い感謝を」

 

「いえいえ!! どうせなら皆でと思って!!」「サクラコ様大げさすぎだって」「へへへ……サクラコのためにとっといたもんね」「ナツ、あんたはまた調子乗って呼び捨てとかさぁ……目上ってモン考えな」

 

 とはいえシスターフッドの長という地位は君主、桐藤ナギサに並ぶ二人の生徒会長と実質的に近しい地位。一般生徒からすればガチの天上人……しかし実は甘いものに目がないという意外性は、暗黒卿としてキヴォトスに名高いサクラコをスイーツ部で歓迎するに足る理由。

 

 それに存外、話してみると結構……親しみやすい感じだ。何処か抜けてる人柄もあり、優しい人だと判る。

 

 洗脳がどうとか噂されているけど……変な勘違いをされやすい所、カオルさんと似てるなとアイリ達は思った。実際空気感はともかく、サクラコの人間性はキヴォトス人にあるまじき聖人だし、カオルは12使徒の中で二番目ぐらいに穏やかな鳥類と身内から評判である。悲しいことに雰囲気があれだし、いざ戦うとなったら一個大隊余裕で薙ぎ倒せる二人ではあるが。

 

「ひとつ……やりましょうや」(サクラコ様、うれしそう)

「ええ、折角ですから私がお茶を淹れますね」「うおー!! サクラコティー!!」「だからなんなのよそのテンションは……」「てか宇沢はまだ寝てんの?」

 

「さあ切り分けますね!!」

 

「宇沢の分も、頼めるか」(レイサも起きたら食べたいだろうからね)

 

「もちろんですー!!」

 

 その筋の事務所感ある部室でトリニティの暗黒卿に給仕をさせる1年坊という、外に漏れたらヤバさしか感じない行為が部屋で繰り広げられていたが、全員が笑顔になる平和で温かな空間がそこにあった。

 

 放課後スイーツ部の放課後が、今日も始まる。

 

 

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 227号温泉旅館……隔離学級227号の現在の姿である。ダチョウ曰くガチの犯罪生徒を収監する施設兼、労働させて外貨を稼ぐレッドウィンターの観光地。

 

 北に位置するレッドウィンターは大学園の中では暮らしづらい土地である、夏でもわりと雪深いという試される大地なので何をするにも燃料がいる、そのためこの地に暮らす生徒達にとって温かいお湯というものは大変な贅沢だった。他校生だけでなく自校生徒も多く利用する、それだけの規模の温泉地……温泉郷。

 

 色々あって一度は爆発四散したが、また色々あって再建されており、湯量枯渇問題も遠方の源泉地からパイプラインで通す(維持は安い労働力227号生の気合)解決策が功を奏し、復活を見た。

 

 レッドウィンターの観光地は他にもあるが、寒い土地で入る温泉はまた格別ということで……。

 

「……うひー」

 

「どうだサナ、我らがレッドウィンターの名泉は!!」

 

「わるかないねー……」

 

 溶けたダチョウが湯で漬け物になっていた!!

 

 意外に思われるかもしれないが、ダチョウは寒さに弱い。いやリアルサバンナのダチョウはそうでもないらしいんですけど、キヴォトスのダチョウは羽毛があっても寒い土地は避けがちだった。

 

 しかも全土的には季節は夏、つまり夏毛なので豊かな羽毛を蓄えた大翼も、冬毛に比べれば若干軽い。しかしレッドウィンターは夏でも雪が残る、夏服だと普通に寒いのだ。

 

 まあダチョウは風邪などひかない生物なので、ただ寒いだけで特に問題はないが、それはそれ。呼ばれて来たけど寒いんで帰るぜ、みたいなことを言い出したダチョウを、レッドウィンターめぐりの前に帰らせるわけないだろと騒ぐ池倉マリナはとりあえず温泉に漬けることにした。

 

 尚、丁度来訪時にお昼寝タイムだったチェリノは置いていかれたので、寝起きにトモエから、折角来たサナエをマリナが速攻で温泉に連れてったという報告を聞いた結果、粛清が待っている。

 

「トリニティには温泉文化なかったしさ、B連中は温泉開発部と色々してたから結構入って回ってるんだよな、今はリクが督戦か」

 

「レッドウィンターもそうだぞ、去年まではほぼ水しか出ないようなシャワーとかだったしな!!」

 

「この寒さで水シャワーとかやべーな赤冬、一般生も? 監獄かよ……」

 

 学園全体が概ねそんな感じなので、レッドウィンター生の屈強さはキヴォトスでも一段階上。そらこんな過酷な大地で暮らして、インフラもその有り様じゃ強くもなるわ。

 

「温泉の復活を祝ってチェリノ会長がインフラを整えられたのだ!! 偉大なことだと思わないかサナ、会長はレッドウィンターの皆に温かい湯をもたらされた!! それに今では全学生に夕食後プリンが2つ下賜される……これまでとは比較にならない、圧倒的な豊かさを得たんだ!!」

 

「赤冬でのプリンってなんか特別なポジションだよな、トモさんもなんか経済指標? とか言ってたし、やっぱ温泉すげーな」

 

 去年度までは夕食後にプリンを2つ食べられるのは生徒会長だけの特権だった、一般生徒は薄められたプリン1つで耐えねばならず、貧しさを感じさせていたが……今は違う。拡大した経済力が全学生徒にプリンを2つ配給できるほどに強靭化されていた。

 

 今年完成した温泉だけでこれほどの経済効果が? そうではない。

 

「サナエちゃん、実は温泉で得られた豊かさではないんですよ」

 

「サナ!! 来ていたのなら私に挨拶しないか!! 二人で先に行くとは!! しゅくせーだ!! マリナはしゅくせー!!」

 

 迎えついでに温泉に入りに来た二人の姿、チェリノとトモエが湯煙の向こうから現れる。サナエを驚かせようという登場の仕方、目に頼ってない鳥類は入ってきた時から気づいていたが、そうとは見せない。

 

「や、トモさん。それにチェリノ」

「チェリノ会長ー!? これには理由が!! サナエが寒いから帰るとか言い出して!!」「ダチョウは寒がりなんね……羽毛あっても寒い……」

 

 トモエの言う通り、これは温泉がもたらした豊かさではない。

 

「キヴォトスは常に何処でも建築ラッシュですからね、新築から撤去に解体、補修に改築……工務部も腕の振るい甲斐があることでしょう」

 

「ミノリの奴、中央で姿見ない週ないけど、繁盛してるのね」

 

 なんとレッドウィンター、キヴォトス全土に土木技術者を派遣しまくっていた。絶え間ない仕事に満たされる安守ミノリ達工務部は、資本主義の至極真っ当な需要による供給……労働を余儀なくされている。

 

 どう考えてもキヴォトスの環境がサバンナになったせいで、常に何処かが毎日廃墟にされてるからなのだが、こんな形でレッドウィンターに影響が出てるとは思わんでしょ。

 

 何処でもミレニアム製の自動建設システムが使えるわけではないし、建物や地区の景観を「こうしたい」というデザインの希望があるなら規格品前提のミレニアム・デザインは前衛的すぎる。無限の需要に各地の土木業者が活躍する訳だが、中でもレッドウィンター工務部は最も腕の良い学生職人集団という名声を欲しいままにしていた。

 

 プロレタリアート安守ミノリ、自治区に戻る暇が惜しいほど各地の現場を監督して回っているのだ。

 

 ミノリも過重労働と思えば何らかのネタで速攻デモでもして革命の狼煙を上げているところなのだが……労働者の権利(お賃金)が山程入ってくるし、さらなる保証(福利厚生)が確約されている現在、働けば働くほど良くなる待遇と適度に休める「絶妙な仕事量」で、中々趣味のデモができなくなっていた。労働者の権利と保証が何故か日々向上しているのでストライキの理由があまりないジレンマ。

 

 あからさまにどこかの事務局の関与があるのだが、暴発しない程度の過負荷を与え続けて労働者の権利を満たし続けてやればよいと、どこかの秘書室長がひっそり手を入れた、これまたどこかの茶会を参考にした操作の結果だったりする。

 

 参考にされたのは茶会のやり方じゃなくて、過労で身動きとれなくなった茶会生徒の姿なのでは? 諸説あります。

 

 サバンナで鍛えられたお机勢が本気になったらこういうことをしてくる、後始末に尻拭いばかりだと思ったのか? ダークサイドに片足突っ込んでるお机勢は結構強かなのだ。

 

「うむ!! よく働いているな工務部は!! 今月3つ目の労働勲章に値するぞ!!」

 

「彼女、何時も権威の首輪などいらないって辞退するんですけれどね」

 

「らしいけど笑っちまうな、スケバンかよ」「チェリノ会長からの勲章を断るなど!! なんてやつだ!!」

 

「それよりサナ!! 温泉から上がったらレッドウィンターめぐりだぞ!! 私自ら遊園地を案内してやる、こーえーに思うのだ!!」

 

「あいよ、羽根に乗ってくか?」「乗る!!」

 

「劇場もありますから、本場の観劇で歓待しますね」「うれしいね」

 

 中央の生徒が聞いたら「???」とかになるのだが、イカれ学園レッドウィンターは芸能が盛んである。最も有名なのは文学だが、踊りや歌も負けていない。過酷な暮らしの中だからこそ絵や文字を書き、歌を歌って踊る生徒達の文化成熟度の高さは……実は中央よりよほど高水準。

 

 そして何より……頭のおかしい生徒しかいないと思われているが、平均成績はキヴォトス全体でも上位層……なんでだよ、おかしいだろ。

 

 しかし例としてミノリなどはキヴォトス国語科目の全土トップタイである、なんと浦和ハナコに並ぶ。文学誌に寄稿文も寄せていて、今週の銘文に選ばれること複数回……こういう謎の生徒が多数いる。

 

 連邦生徒会にレッドウィンター出身生徒が複数いるのは、単純に成績優秀者の母体数が多いという現実があった……なんでだよ、おかしいだろ。

 

「毎日クーのイカれ学園って話だったのに、やたら文化芸能強いよね赤冬、凄いわ」

 

「チェリノ会長の権威に逆らうとは……なんてやつらだ!! 許せん!!」

 

「オメーも定期的にクーしてるだろうがよ……頭ダチョウかよ」「ひどすぎないかそれは!!」

 

 誰かが何時でもクーデターしてくる学園、マジで頭おかしいなとサナエは思った、しかし……。

 

「ひでー土地だとは思うけど、レッドウィンターすごいよな」

 

「そうだろう!! すごいだろうレッドウィンターは!!」

 

「ああ」

 

 このダチョウ、怒らせるとマジでヤバいが誠実に接すれば素直に応えてくれる。

 

 芸能を喜び、自然という苦難に耐える校風がそうさせるのか。良くも悪くも全身全霊の生き方、全体的に素直で実直なイカれかたをしている赤冬生徒の気風はサナエの裏表のない気質と合った、妙にレッドウィンター生に受けている。マリナを始め、近い生き物という説もあります。

 

「本当にすげーよ、皆よくやってる……クーも文化ってのはやべーと思うけどさ、皆このクソ寒い土地でも……生きて、暮らしていけてるもんな」

 

 それは素直な感想であった。レッドウィンターにはスラムがない、生徒の大多数がマイルドスラムみたいな生活してるので、水準が低い分全体を広くカバーしている……方向性は違うが、貧しい土地ながら取りこぼしの少ない、間違いなく「成功」している自治区。

 

 少ないリソースで多くを拾うやり方(に見える)に、杉本サナエはわりと感心していた。

 

 

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「どうかの?」

 

「……気が乱れてる、妙だ―――前、整えた筈」

 

「やはりか、しかしな……これでも以前よりはずっと体調がいいのじゃ、香を焚かずともおられる時間が比べ物にならん程にの……身体も、思う通り動く……本当に感謝しておるよ、アキ」

 

「治ってから聞きたい、それは」

 

「ふふ……ぬしは本当に良い娘じゃ、アキ」

 

 遠く外周圏の山岳地方にある自治区、山海経。閉鎖的な自治区と知られ、外部生……特に中央の生徒が足を運ぶことは稀とされている土地に今、中央生徒、それもトリニティの白制服が生徒会玄龍門の本拠、六和閣に滞在している。

 

 六和閣に他校生が足を踏み入れるなど初めてのことではなかろうか、それも総領主の私室だ。玄武商会を始め他校生を受け入れている観光を許された土地は、山海経の表層に過ぎない。玄武の裏門より奥は他学生立入禁止。

 

 トリニティの紋章が刻まれた制服で入れる場所ではない……のだが今宵、そしてこの生徒は別。中央の祭典晄輪大祭で接触した「医術」が、この六和閣の主、竜華キサキを劇的に回復させたことから、請われて招聘された生徒が一人……。

 

「この香、必要量は守るべき。あの薬師もそう言ってた―――乱れを抑えてる、いい出来―――」

 

「そうしよう、香りは気持ちも落ち着かせるのでな。サヤはよくやってくれておる……しかし、そなたの医術ほど劇的ではない。驚きよな」

 

「北斗神拳は医術じゃない。でも、それでいいか―――」

 

 北斗神拳、銃と青春の世界でなんてもん使ってんだという気配の薄い生徒。最近蒼森ミネが習いだしていて危険が危ないそれを扱うダチョウの名は。ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高きは12使徒。ナンバーC3……名を、佐藤アキ。

 

 香の焚かれた総領主生徒会長……門主の私室で、アキはキサキの治療中。

 

 彼女がこの六和閣の最奥に来るまでは当然一悶着あったが、全て近衛ミナが物理的に黙らせていた。門主の薬師を兼ねている薬子サヤの「継続すればイケるかも!!」という後押し、そしてキサキ自身の強い要請で実現した……トリニティへの正式な依頼の結果だ。

 

 当初は蒼森ミネが救護騎士団と共に同行するつもりでいたが、これはセイアの強い要望「私の体調が芳しくないので頼むよ(震え)」というセイアの体を張った救護要請で実現しなかった……。

 

 当たり前だろ、こんなストレスフル環境を団長が目にしたら、玄龍門の構成員ごとボコボコに救護しまくって全部破壊してしまう。六和閣が……倒壊する姿が目に浮かぶ……!!

 

 山海経の門主を救護? 外交問題じゃすまねぇわ。

 

 ダチョウも大概外交問題起こしがちなのでは? それはそう……しかしアキはダチョウの中ではかなり自制してくれるタイプの穏やかな鳥類……もちろんです、プロですから。

 

 落ち着いた声音で患者を労るように優しく指圧する姿は、16歳の少女のわりに妙に場馴れしていて熟練の姿だった。実際その業は達人のそれで、時折くたびれきった先生にも施術している。

 

 北斗神拳の秘技とか一体どうやって? 戦犯は姉妹の一人、羽沢エイカ。このダチョウ「前」の創作物に登場する技を実現してしまうガチのやらかしダチョウで、北斗の拳はシリーズ読破していて秘孔と効果も一通り記憶していた……前の名前と性別も思い出せないのに秘孔覚えてるのなんでだよ、もっと他に覚えとくもんがあったろお前は。

 

 もちろんそのままでは大して役には立たない、エイカはツボ治療など未経験だし、按摩と針は資格のいるような高度技能……なんか姉妹に一匹、プロっぽいのが混ざってるな?

 

 エイカの雑学とアキの技能が合わさって……キヴォトスに北斗神拳が降臨する!!

 

 もちろん生徒は爆発四散などしない、秘孔に気を送り込まれた結果「あべし!!」とかいう断末魔を上げるのは同じながら、リタイア(再起不能)するだけであるし、普通に殴ったほうが早い……どちらかというと利用方法は医療だ。

 

 暴力として生かされるのは、ついでに伝来させた南斗聖拳のほうである、ダチョウは南斗鳳凰拳が好き。ちなみに奥義・天翔十字鳳は聖夜にヒナにも使われた……普通に破られたが。ヤバすぎるぜ空崎ヒナ。

 

 頑丈なキヴォトス人に高度治療が必要な例は少ないが、風邪といった病気はもちろん、歩けないような状態の生徒もいる。死なないわけではないし、治療も必要……生徒は無敵ではない。しかも神秘形質が由来の不調や、毒素で変化した身体からくる治療の例はあれども、治療法は少ない。

 

 これに刺さる、北斗神拳が。

 

「ぁぁ……よい……よいな……身体の底から熱く、何かが登ってくるようじゃ、心地よい……ぅ、ぁぁ……なんとしたことか、ふふ……」

 

 患者服をはだけ寝台に身体を預けた、キサキの熱のある吐息と表情は下江コハルが見たら「エ駄死!!」しそうな雰囲気であるが無理もない。大祭でキサキの不調を見抜いたアキが、ミナを押しのけて施した秘孔・安騫孔が何年かぶりに全身から湧き出すような活力を与え、劇的な回復を見せた……これを体感してはもう、主治医になってもらうしかない。

 

 不調で霞んでいた思考が晴れ、思ったことが思うようにできる……この喜びは何にも代えがたい。この霞の晴れた心身なれば……山海経をより先へと導くこともできよう。キサキの心に、余裕が生まれ始めていた。

 

「茶道の呼吸も合わせる―――深くなくていい、今は静かに―――そう」

 

 キサキの呼吸が静かに、そして整っていく。キヴォトスに持ち込まれて以来猛威を振るっている、ナーフされない超技「茶道の呼吸」も、香と共に凄まじい効果を彼女の身体にもたらす。

 

 香と呼吸は不可分、整えられた気と胸いっぱいに満たされた医の香がキサキの身体を明確に癒やしていった……。

 

「背の筋から経絡を流す―――ゆっくり吐いて、そう……止める」

 

「ぉ……おお、雷が流れたような……!! これ、は……!! いいの……ん……とても、良い。この礼は、尽くさねばな……」

 

「気にしなくていい―――」

 

「ふふ、そう言うな。ルミとは仲がよいのだったな? そちらもよいが、妾の自慢の……品も、振るまわねばの。同行の者達にも、勿論……な」

 

 イマジナリー下江コハルが大暴れするような空気のキサキ私室より大きく下層、六和閣の応接間では同行のトリニティ生徒達と玄龍門の幹部達が交流の最中だ、本来なればキサキも同席するのだが、治療が先とミナに送り出されていた。

 

 百合園セイア奇跡のスーパーセーブの傍ら、どうせ六和閣に行くのなら使者をということで、派遣される生徒は救護騎士団ではなく外務の長、安藤となった。

 

 トリニティの外務はダチョウのせいで死ぬほど経験値を積んだだけあって、鎖国的な自治区の面々との交流も慣れている……こういっては何だが、内に固まるあまり外交経験の殆ど無い玄龍門の生徒など、幼子のように扱えるのだが。ナギサの方針からして対外協調路線で事を進めるようになって久しい、安藤は慎重に、衣を一枚ずつ剥がすようにして距離を測りながら立ち回っていた。

 

 手持ちのカードも門主の治療という強力なものだ、強い手札がある時ほど余裕が生まれる。信用させ、信頼させ、襟を開かせる……手練れの外交官ぶりをみせる安藤は静かに、そしてゆっくりと山海経という学園の厚い天幕を風で揺らしている。

 

 魔境の政治部1年生時代、激闘にして地獄の2年生時代、そしてお祭り騒ぎな3年生の今、ずっとトリニティの外務を支えてきた安藤はナギサが絶大な信頼を置く存在。総務の藤沢、そして今秘書として側に仕える久留島と並んでナギサを側で支える生徒、トリニティの支柱の一角。当然警護には12使徒か正実選抜中隊がつけられる。護衛は選抜G小隊、率いるは正実の「両小藤」の片割れこと藤堂。

 

 どこかの世界線では彼女はティーパーティーに居ないのだと、ナギサがもし知れば……卒倒してしまうような腹心の中の腹心である。尚、その世界では藤沢も久留島も居ない。向こう側のナギサがもし……こちらの自分の持つ「人の輪」を観測できたとしたら、ロールケーキを両手に握ってキレ散らかすレベルの落差……。

 

 それは玄龍門も同じだった、トリニティ・ティーパーティーの人材層の厚さ、能力の純度、そして自己判断能力の高さを知ったキサキは、言葉には出さないが自校山海経・玄龍門の頑なさ、前例主義、判断力の低さのわりに暴走しがちな性質と、ため息が出るばかり。

 

 信を置く者達はよくやってくれている、変化を嫌う多くも山海経に愛着あればこそとわかってはいるが……同じ大学園の君主でありながら、桐藤ナギサの作り上げた環境、育てた人との差を感じ、キサキも思う所があった。

 

「少しずつでよい、しかし変化の兆し……掴まねばな」

 

「その前に自分の身体が大事、忘れない」

 

「ふふ、そう言ってくれるか、嬉しいことよの」

 

 この機会を逃すべきでない、近くあるレッドウィンターとの交流も、上手く物にせねばと竜華キサキは、心地よく整えられていく経絡を気が流れる快感に身を委ねながらも、決意を胸にしていた。

 

 

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「ハッチャーァァ!! なんでぇぇぇぇ!!」

 

「コユキよわ……」

 

「弱い!? 私が!? キリコさん!! このままじゃすませませんからねぇ!!」

 

「ふっふっふっー、キリコで躓いてるようじゃユズには到底勝てないね!!」

 

「キリコはゲーム部でも最弱……です!!」「リアルファイトしたら最強だけどね!!」

 

「そんなどこぞの四天王みたいに……」

 

(私への挑戦権って、そんなの一体いつから……) ※ユズinロッカー

 

 ミレニアムゲーム開発部はゲームを開発する部、なのだが普段はコンシューマーゲームを遊び倒す家庭用ゲームセンターみたいな勢いがある。部員4人で対戦したり、それぞれ別ハードで好きなことをしていることも多々、ゲームセンターに通い通すこともある……学業大丈夫なの?

 

 遊びも全力、研究も全力、何かお出しすれば全キヴォトスが驚愕、それがミレニアム・サイエンススクール……学業はまあ、ええやろ。そんなヤバい学園の生徒達は、必要に迫られないと興味がない分野の学業は中々やらない。その時が来たら「やれてしまう」連中だからミレニアムでやっていけてるのだという点はあったが。

 

 モモイやミドリもまあ……それなりにはできる。しかしゲーム部は本当にゲームやってばかりだ、そしていざゲーム作る時には缶詰、アリスに抱えられての強制風呂食事移動以外はずっと引きこもっていることも……。

 

 ユウカが忙しい中、ご指導に現れるのも無理もない連中。そんな面々に一人足される時がある、外部からの生徒……なのだが、ミレニアムの生徒は既に誰もがその生徒を外部生とは思っていない。

 

 なにせ正規の学生証持ってるからな……。

 

 ミレニアム・サイエンススクール1年生、ゲーム開発部……ではなくトリニティ2年生。ティーパーティー直属、特別保安警務隊。別称使徒(アポストル)隊……名高きは12使徒。ナンバーC4……名を、九字キリコ。

 

 そう、2年生。

 

 だがミレニアムでは1年生だった、留年どころか学年下がってるじゃねぇか!! という早瀬ユウカ渾身のやらかしの結果、1年生として最近休日をよくミレニアムで過ごすキリコは……完全に馴染んでいた。

 

 マジで馴染んでいる、道行く生徒達からもキリコちゃん呼ばわりの人気者……何処のクラスなんだろ? とか思われている。所属クラスとかあるわけないだろ、強いて言えばトリニティ本校2の16組だよ。

 

「で、でたー!! ヤクザファイター4名物!! ケジメバスケ!!」「ガード読み違えたね、コユキちゃん」「順番は中段・下段・中段です!! コユキ、もらったら終わりなので次頑張りましょう!!」

 

「ぅぅぅ……!! またハメ……!! 卑劣!! 卑劣ですよ!?」

 

「弱者に人権ないから」

 

 そして今、新たな一人をゲーム部は迎えていた。黒崎コユキ、元セミナー……正しくは一応まだ席はある、やらかし生徒。

 

 ゴールデン・フリース号沈没事件に前後した、ミレニアムを傾けたウルトラやらかしの結果反省室収監となってた彼女だが……定期的に抜け出しては遊んでいた。キリコとは船でボコされた時から面識があるので、ゲーム部にやってくるのも必然。

 

 実のところ、コユキは最近先輩のユウカとノアがやたらと口にするその名前に、色々思うところがあったのである。

 

 怖い先輩ではあるがなんだかんだ可愛がられている意識があっただけに、なんともいえない感情があったのは確かだ……というかキリコってトリニティじゃなかった? なんでミレニアムの1年生になってるんです? おかしいですよ!!

 

 それにゲーム部? 私カードゲームなら得意ですし、ボコされた恨みをゲームで返してくれるわ!! と、意気込んだはいいが、解錠要素あるようなのならともかく、対戦でゲーム部に勝てるわけ無いだろ……ということで全員にボコされていた、九字キリコは城島ツバメとは違う、後輩に手心加えてくれるような優しさはないタイプの鳥類。

 

 死ぬほどハメてくる、これは初心者狩り(バトル)ではない……講習(セミナー)だ。ゲーム部の基準で鍛えられたキリコは普通にプレイヤーとして強化されていたので、無惨なことになった。

 

「なんなんです今の!?」

 

「何って……下敷きハメだが?」「あー……あれ自分の射撃も跳ね返しちゃうからね、判定が変わるよ」「見たら即投げにいかないと」「キリコがクナイ・ダート投げた瞬間終わりでしたね!!」

 

「汚い……こんな汚い手ばっかり使って!! 大体忍者師範って強キャラじゃないですか!! 初心者相手に使います普通!?」

 

「忍者は卑劣な存在だから……汚いは褒め言葉」

 

 百鬼夜行の忍術研部長が聞いたら泣きそうな台詞だ。

 

「10タテ乙、まあまあだった」「うあぁぁぁ!! なんでぇぇぇぇ!!」

 

「かわいそうだけどこれがゲーム部の通過儀礼!! さあコユキ!! 貴女もゲーム部に入って私達とゲームしたりゲーム作ったりしよ!! 今フリーなんでしょ?」「ボコされ勧誘とか聞いたことないですよ!!」

 

「フリーっていうか……セミナー追い出されたんだっけ? 一体何したのコユキちゃん……ユウカが怒るって相当だよ」「追い出されてはないですー!!」

 

「キリコとネル先輩がボコボコにしたって聞いてます!! アリスも知りたいです!!」

 

「守秘義務」「「えーー!!」」

 

 ノリで生きてる九字キリコだが、特殊戦活動の内容を明かしたりはしない。そういうガチのプロな側面がユウカのさらなる依存を生んでいるのだが、闇の生徒とはそういうものというプロ意識は友情より規律だ。

 

 というかユウカの依存が本当に酷い、最初こそ他校生でそれも12使徒と気を使っていたが、一回手助けされてからはタガが外れ、何かあるとキリコを突っ込ませたがるようになっている。C&Cは? ネル達には派手目な仕事にいってもらってます、適材適所!!

 

 んほー!! 完全無音痕跡ゼロで「何もなかった」ことにしてくれるキリコ最高だろ!! 威圧に制裁から軽いシバき、人や物の奪還から奪取まで全部こちらの思う通りにしてくれる……こんなのたまらねぇぜ!! こんな子が1年生に……もう来年だって怖くない!! 会長達や桐藤さんが卒業しちゃったら破滅確定だと思ってたけど……これなら!! きっと!!

 

 ストレスと過負荷でおかしくなった早瀬ユウカは悲しいことに記憶改変まで始まるような負荷を、頼もしい後輩がいてくれるという妄想でどうにか耐えていた……かわいそうすぎる。

 

 ユウカも大概だが、ノアも地味に危険な感じだった。そもそもノアも正常な状態なら、他校生を二重学籍で置いたり、羽毛布団にしようとはしない。

 

 キリコを寝室に持って帰ろうとした日、実はミレニアム号2番艦の件で連邦に詰められてた翌日の事である……そりゃノアもキリコの学籍証明にいけない書類を用意するし、案件に「今すぐキリコちゃんをよろしくネキさせましょう、ユウカちゃん」とか言い出すわ……セミナーに結構限界が近づいていた。

 

 リオ? 生き生きしてますよ!! 理解者と友を得て……我が世の春ってやつだ。必ず殺してやるぞ無名の司祭……命乞いの瞬間が待ち遠しくてたまらねぇぜ!!

 

 見てろ……このミレニアム号に続く究極超兵器の完成をもって、お前たちの最後を彩ってくれるわ、月面でな!! そうだろ!! ウタハ!! ヒマリ!! チヒロ!! そしてナギサ!! 私達が……ミレニアムだ!!

 

 ミレニアム・サイエンススクールの叡智を結集し、やらかし生徒達の結束(悪ノリ)が、ユウカが何もご存じないままに生み出されようとしている究極超兵器、それは……。

 

「……?」

 

「反省部屋に叩きこまれてたんだから、それなりのやらかしだと思うけど……? ノック?」「珍しいね、会長じゃなさそう、誰だろ……はーい!! ちょっとまってー!!」

 

 ゲーム部への来訪者はリオを除いてノックなどしないし、リオなら先に連絡があるのでこれも違う。

 

 しかし、キリコには外にいる人物に心当たりがあった。足音は一人分、しかし気配からして人数は3人、そのうち一人は素人で、二人はプロ。

 

 同じ闇の生徒だ、しかし普通ミレニアムで出会うような面子ではない。先日の晄輪大祭の一日目夜、ナギサとリンの茶会を警護していた時に、自分達CチームとC&Cと共にホテルタワーの警護をしていたので、ないことはないが……珍しい手合。

 

 連邦生徒の幹部だし、警護であの二人もついてくるのは不思議ではないけど、ミレニアムに用事って珍しいな、何だろ? キリコは本当に不思議そうにモモイが開ける扉の先を見た。

 

「はーいこちらゲーム部で……どちらさま?」

 

「こんにちは、はじめまして……私、連邦防衛室の不知火カヤと申します。こちらに黒崎コユキさんという生徒はおられますでしょうか?」

 

 目の据わった連邦防衛室長官が、SRT・FOX小隊二名を連れて立っていた。

 

 

 





Cチームでした。
あとコユキちゃんはカヤちゃんさんにインタビューされました、乙。

Cは意外に統制が効く面々で、プロフェッショナル感がある面々です、ダチョウは全員が同じ挙動ができるまで鍛えぬいた精鋭ですが、個別の技能がないわけではなく、それぞれ得意なスキルは別にもっています。リーダーの指揮、リョーコの特殊戦技能、エイカの技開発にヤマネの電子戦。そしてアキの秘孔治療などです。しかし12人完全連携戦闘ではあまり生かされません、全員が1つの生物と化す、12マブ戦術が最強形態だからです、サバンナの生物に12匹完全連携されたら生き延びることは不可能に近……ヒナさん?

時間がかかりましたがこれにてダチョウ12名の個別エピソード終了です。
各地でそれぞれコミュとってることでダチョウは色んなところに出没します、ソロだとあんまり暴れませんが……何かあると暴れ決めるのは変わらないので色々大変です、後で主に茶会が。

いよいよ最終編、ダチョウ最終章「あまねく奇跡の月への旅」が始まります。

数多くの感想、評価、ここすきを頂き、本当にありがとうございます。
多くの方に支えられ、最終エピソードの一歩前までたどり着きました、ここまでこれるとは正直思ってなかったですね……。

ちょっと仕事が人数減りすぎて大変なことになっているので、ペースアップがちょっと難しくなっています……3人減るともうね、どうにか継続していきたいと思っておりますので、応援頂ければ幸いです。

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