あつまれ!! 略奪の島!!
ここは南っぽい群島でたぶんトロピコみたいな感じの自治区にできるポテンシャルがある土地です、貴女はこの群島にいる野生のマジでヤバい鳥類を集めながら、迫りくる略奪者をボコして物資を集め、生徒達を奴隷にして労働させ、理想の国家……もといリゾートを作るのです。
勝利の秘訣はマジでヤバい鳥類のダチョウと、覆面水着団というマジでヤバい強盗団を味方につけられるかどうかです、失敗すると死にます、全てを失います。超頑張ってダチョウと強盗団をコンプしてくださいね。
「それでは仙崎さん、これから3日間よろしくお願いしますね」「よろしくねー!!」
夏の某日、トリニティ総合学園中央駅貴賓室に白制服を纏った生徒達の姿があった。4名はトリニティのティーパーティー白制服、そして1人はハイランダー鉄道学園のもの。
「はいナギサ様、ミカ様。この仙崎が御身をお預かりいたします」
「硬いなぁ……一応旅行みたいな感じだし、リラックスしていこうよー」
「お召し列車にお二人を乗せて何かあったら終わりですよ……だからこそ私が主運転士復帰なわけです。流石のCCCもナギサ様の意に反して運転士を送ってくる度胸はないようですね……私としてはご信任頂き、ありがたさしかありませんが」
「車窓の旅、できれば気心のしれた貴女を……と思ったのですが大事になってしまい、苦労をおかけします……」
「いえ、ご指名とても嬉しいですナギサ様。ですが今の貴女を普通列車に乗せようとするハイランダー生徒がいたら驚きですよ、何処へ行ってもお慕いする生徒達に群がられて出発もままならないと思いますね」
「けど専用列車はともかく重装甲列車はやりすぎじゃない?」
「CCCの焦りが垣間見えます、まあエデンの時の事もありますから、わからなくはないですが」
「外周圏の沿線を回るだけの筈が、どうしてこんなことに……」
ナギサの自覚に難があるが、現実として慈愛の君が普通列車のホームに居たら何が起きるのかは自明だった、そのためにこういう貴賓室と専用ホームが駅にあるのだから。
企業私鉄を除き、路線と駅はどの学園領土の中にあろうとハイランダー鉄道学園の領地。このような貴賓室と専用ホームが備えられた駅校舎は大学園しかないが、トリニティだけはハイランダーの様式ではなく、トリニティの学園様式で統一されている。
理由は一つ、路線を預かる最上位生徒がトリニティ総領主生徒会長に心服しているから。所属こそハイランダーの学籍だが、ナギサのお召し列車を預かる中央駅長仙崎の自認はトリニティの生徒だった。
ハイランダーは何処の自治区領内でも自分達のルールで物事を進めるため、現地生徒会と連携が取れていない線区が多い、しかしここでは違う。
「あらゆる列車が麻痺してしまいますよ、ご容赦ください」
「お願いしたのはこちらです、良きに計らってください」
何事も起きない平和で利益率の高いトリニティ路線は、彼女達の意思疎通が密な関係をもって作り上げたもの……仙崎の扱いはティーパーティーの幹部並だ、必要とあれば首長茶会にさえも出席を許されていた。だからこそ彼女の忠誠は自校よりナギサに向いている。
「客車内にお供させて頂く生徒は皆、ご存知のトリニティ線区生徒です、助運転士は重富、後程ご挨拶に参ります……ですが護衛につく重装甲列車の運転士だけはCCCより参りました。双子の橘姉妹と申しますが、その……これが1年生なのです」
線区がほぼ独立した学区となるハイランダーの特異な運営体制においても、中央統括する生徒会相当の組織はある、それがCCC。だが学区線の長たる仙崎との関係は少々微妙だ、最も利益率の良い線区ではあるが独自行動が強すぎることをCCCは警戒している。忠誠が他校の生徒会長に向いていることも察していたし、エデン事件での独断専行は問題にもなった。
そして次第に勢力を広げつつある。下手につつけばトリニティの庇護の下に独立しかねない線区……首輪は付けたい、しかし監察官を送り込むのは「露骨」に過ぎる、そうして送り込まれたのが……。
「1年生で幹部とは、優秀な子達なのですね」
「はい、ですが少々言動が……よりによってどうしてあの二人に……腕前は確かです、思い切りも腕っぷしも良い。ただ態度が些か、失礼がなければいいのですが……」
「そう、ですか……心配ですね」
ナギサの懸念は自分が失礼を働かれることではない。他学1年生の子に対してそれほど狭量ではないつもりだし、元気のある子で済ませられる。
だが自身の近衛たる12使徒は違う。
特に側付きのA1、城島ツバメは礼儀に厳しい鳥類。普段こそ穏やかな気質であるものの「弁えない者」への指導は激しいものになる、言葉遣い程度ならともかく態度に出してしまうと……指導は確約と言ってよかった……12使徒の長が放つ威圧感はモノが違う。
「後は、外周圏環状鉄道の「掃除」が済んでいることを願うばかりですね、アビドスが6人総力体制で暴れまわっておりましたので、大事はないと思いますが」
「アビドスって5人じゃなかったっけ? まいっか、心配しすぎだって、12使徒の子達もいるんだしね☆」
「そうあってほしいものです……道中、よろしくお願いしますね」
仙崎の言葉に、ナギサとミカの両翼に控えていた2人の生徒が言葉無く完全に統一されたカーテシーをもって、それに答えた。
ナギサとミカが外周圏を巡る車窓の旅、警護は当然……12使徒、A小隊だ。
・ ・ ・
「それではナギサ、くれぐれも12使徒の側から離れないでくれ。生徒会長クラスと単独で会わないように、下手に焼くと不味い。ミカがいれば最悪どうとでもなるだろうが……何も起きないに越したことはない。皆、ナギサを頼んだよ」
専用ホームに二人を見送りに来たのは、総領主館に残り生徒会長仕事をするセイアだった。流石に三日間も全員で外周圏に出向くのは不味かろうと留守を預かったセイアはミネの厳しい体調監視の元、政務に励むことになる……生徒会長生徒に純粋な休みはない。
「? (焼く?) 大丈夫ですよ、一人になることはまずないでしょうし。それよりセイアさん、暫くの間一人にしてしまいます……本当に心配ですが、どうかミネさんと穏やかに……」
「穏やかになる未来は全く見えないが……まあいいさ、最近は随分問題も減ってきた。これが続けば良いね、心から」
「帰ってきたらセイアちゃんも一緒に旅行いこ旅行!絶対だからね!」
「期待して待っておくよミカ、久しぶりに私の車でも出すか……エデンで最近それどころじゃなかった。不本意だが斯波に整備を頼まないといけないな……時間だ、では無事に帰ってきてくれよ、良い旅を」
「ええ、それではいってきますね」「いってきまーす☆」
トリニティの学園旗を掲げた豪奢な列車が二人を乗せて走っていく姿をセイアはホームから見送る。
遠く先にテールランプが消えたことを見届けると、セイアは深い溜め息をつきながら踵を返し、捧げ銃で主と姉妹を見送った自分の側付き12使徒、C2こと杉本サナエを伴って学園への道を戻る。
セイアのため息、サナエはそれに対して何ら反応を示さない。警護の任についている時の12使徒は主人から問われない限り空気となって側につく、サナエもその例に漏れず、一言も発することはない。セイアにはその距離感が望ましい、いちいち言葉で問いかけてこないこの距離感が。
だが百合園セイア、今誰に聞かれようともため息も出る。ナギサは常にこちらを心配してくれるが、心配と言うならセイアにとってナギサのほうが大事だ。
そう思い、移動時間ぐらいは二人で静養と口八丁でどうにかミカを同道させることに成功したセイアだが、向かう先が外周圏でなければ自分がついて行った、今回……行き先が問題なのだ。
「さて……どうなるか、何事もなければいいが。またぞろ誰かを誑かしたら拗れるぞ、やはり私が付いていくべきだったか……いや、しかし……」
ナギサは世間で慈悲深い完璧で理想の君主、慈愛の君のイメージだが……あれで結構、突拍子もないことをやらかすこともあるのだとセイアはよく知っている。
ちなみにここ数年で一番の「やらかし」は12匹もいる恐鳥の飼育。
一体何をどうしたらあのマジでヤバい連中を「いけると思います」とか言ってしまえるのか……当時セイアは「死ぬんじゃないか? よしときなよ」とか思いつつ流していたのだが……成功したんですよこれが、マジかよ!! 今でこそダチョウとか言ってるけど当時は恐竜だよ? 目があったら即挽き肉にされてもおかしくない、そういう領域の生物だったので本当に驚いた。
ナギサには、こういう極限の賭けを常に勝つ頼もしさがあった。
まあ結果は今ご覧のとおりだが、学園もキヴォトスも……一応良い方向には進んでいる……筈。とはいえ大型鳥類の多頭飼いは本当に苦労するのだ。
しかし結果としてナギサの強制ティーパーティー・ホストが確定、というかナギサ以外にもう首席生徒会長は務まらなかった……ダチョウに言うことを聞かせられる存在が、彼女しかいないのだから。
得難い盟友である、しかしどうも妙なところで隙が多い、自分を含めた周囲の手助けが必須だった。立場と役割を迫られれば無理をしすぎてしまう少女、桐藤ナギサは苦しくとも一人で責任を全うしようとする……それは認められない……友として。
だからセイアは今回、かなりナギサが心配なのである。
武力面では良い、12使徒が4人1小隊もいればたとえ相手が1000人の兵隊だろうと5分と保つまい。しかも今回はミカもいる。そのミカに至っては本来の護衛B小隊が誰もついていないが、呼び戻そうかとしたら全力での「そのまま遊ばせておいて」だったので、A小隊を分隊にして警護についてもらうことになった、が……。
ミカはまあ……何が来ても大丈夫だろ。それに今回も一応「保険」をかけた。
問題は外交「お付き合い」なのだ、お政治面での補佐が居ない。外務の安藤が外周圏から疲労困憊になって帰ってきて即轟沈しているので、今のナギサは右手が無いも同然だった。茶会から数名生徒を付けたが、安藤ほどの安心感はない。
( ミカが上手く捌いてくれることを信じるしか無いか……こんなにもあの子を頼りにする日が来るとは、いや……わからないものだね )
1年生だった頃を思えば、感慨深いセイアだった。
( まあ殆どの自治区は通過するだけ、生徒会長級の集まりも集会形式でかつ列車の中だ、旅行なのに悪いけれどね…… )
二泊三日の車窓の旅……外周圏環状鉄道を使って遠方の自治区を巡る、その名目こそナギサの夏の静養だが実質外遊である。
外務の安藤が外周圏を走り回った結果……知らないうちに地獄みたいなマジでヤバい事態が発生していることが判明し、茶会生徒達は椅子から転げ落ちる勢いだった。
まあ大祭のあたりから兆候はあった、異様に外周圏の小規模学園自治区からの支持が集まっていたのである。あれから茶会への接触も我先にと求められていて、受付する生徒達が目を回すような有り様だった。中央のトリニティに何故? 今まで全く関係なかったろ? そう思っていたのはトリニティ・ティーパーティーだけだ。
よくわからない玉突き事故(アビドス荒稼ぎ)のせいで、知らないままに気がついたらヤバいことになっていた外周圏の支持をより強固にしていたことなどナギサ達は全くご存じなかったのだ、だが事態の収拾を図らねば……もっと不味い事態を引き起こす。
具体的には連邦生徒会長の選挙とかしたほうがいいんじゃない? 何時まで代行体制なの? とか集団で言い出したら本当に不味い。外周圏の小学区も数が集まれば無視できる勢力ではないのだ。
そんな彼女達の要望をずっと無視し続けることは得策ではない、ようやく連邦生徒会が半身不随から手足の強いしびれ程度に改善してきたのに、ここで下手を打つわけにはいかなかった。要望をできる範囲で叶え、ガス抜きをしなくては……。
そうガス抜き、しかし外周圏にある膨大な数の学園の支援などしていられない、いくら大学園トリニティでも限度はある。パンとサーカス論理と言ってもパンの数には限りがあり、できる範囲の負荷のない程度で要望を満たすといっても中々難しい……が、実はサーカスの方ならアテがある。
一人の生徒が現地に向かえば良い、それも長々いる必要もない。それこそ近くを「通過」するだけでも十分に効果はある。そう、何故なら外周圏自治区達は……。
桐藤ナギサへの、行幸を切に求めているのだ。
こうして、ナギサの短くも長い旅が始まることになった。
「もう一生徒が向けられる重さの限度を超えているよ、そういうのは連邦生徒会長にお願いしたいところなんだが、やれやれ……二人なら上手くやってくれると思うけれど、困ったことだね……そう思わないかい、ミネ」
「ええ、お戻り次第、直ちに救護いたします。いえ、もし必要と見れば私が直接騎士団を引き連れ、すぐに現地へと向かいます、可及的速やかに」
駅のVIPゲートで迎えの車と共にセイアを待っていた救護騎士団の長、蒼森ミネは鋼の意思でナギサの救護を宣言した。
「優しめに頼むよ……まず疲労困憊だろうからね……」
「救護はセイア様も対象です」
「よすんだミネ!! 私に秘孔治療は必要な……ん? 電話だ……これは……」
その時、セイアには予感めいたものがあった。中央駅への見送りに行っていることを知っているティーパーティー、法務の2年生伊藤からの電話……まず緊急事態と思って間違いない、もういい加減慣れたので、そういう直感が働く。
「私だよ」
< セイア様!! 大変です!! 12使徒の子達が!! リゾート開発地で暴力と略奪の限りを尽くしていると、カイザー系列企業のオクトパス・トラストからクレームが!! >
「……フゥゥゥーーー………」
百合園セイアは呼吸を整え、スマホの通話画面を見直す。短い戦いとなろう……賠償が必要になっては敗北、謝罪が必要になっても敗北、許されるのは「そのような事実はありません」で完全スルーのみだ。よってダチョウやらかしのあれこれを全部カイザーに押し付け、もってコールドゲームとするしかない。
ふざけるんじゃあないぞ、夏休みに入って即これだよ!!
「サナエ……何か知ってるかい? 君の姉妹は今何をして? 何人が何処にいるんだい?」
「どこかの島でリゾート開発バトルロイヤルだそうです」
「??? すまない、もう一度言ってくれないか? リゾート開発が、なんだって?」
完全にアンマッチな言葉の羅列にセイアの理解が追いつかない、まあそれはそう。
「リゾート開発バトルロイヤルですセイア様、一番凄いリゾートを作れたら優勝で全取りできるそうで、今は準備期間だから参加者全員で殴り合い、物資を略奪しまくる時間なんだとか、合言葉は奪えば全部」
「なんでリゾートにバトロワ要素が出てくるんだい!! 準備期間は略奪する時間!? 頭がおかしいのかい!?」「リゾート開発に、どうして略奪の時間が……?」
これには流石のミネでも困惑だった、それはそう。意外かもしれないが蒼森ミネという少女は救護的要素が絡まなければ心優しい常識人である、中々信じてもらえないのであるが。
「参加してる姉妹は5人です、B小隊とC1が現地に。それぞれ個別勢力に誘われて参加していましたが、アビドスと百鬼夜行の百夜堂が合流して姉妹も集結、全員で全勢力を平らにしております」
「5人も!? なんでそれもっと早く言わないんだい!! リゾートどころじゃないだろう!! 全部真っ平らにしたらだめだろうそれは!! というかまたカイザーの土地なのかい!?」
無駄に喋らない側付きが好ましいとかそういうこと言ってる場合ではないセイアは叫んだ、聞かれないと喋らないということは、つまりこうなるのである……何事も程々が大事だった。
通常ダチョウが5匹もいたら、一般的自治区は半日かからず数時間で壊滅だ。リゾート予定地が何処の島だか知らないがまず火の海……今にも話を収める難易度が秒ごとに上昇してることを感じたセイアだったが。
「あと、さっきゴールデン・フリース2世号をシージャックしたとか言ってました」
「は?」
唐突な奇跡の客船強奪実績解除に驚愕した。
「オデュッセイアが客船で来てたんで、行き掛けの駄賃に船ごと頂いたんだとか、百夜堂の店主が嬉しさのあまり震えながらひっくり返ってるそうですよ」
それは絶対うれしいからひっくりかえってるわけでもないし、痙攣してるからただ震えてるわけじゃないんだよな。
船で港に乗り入れて丸ごとリゾートしてるってことは、この船も頂いて良いんだよな? 奪えば全部だもんな!! そうだよねシズコちゃん!! いくぜぇぇぇ!! この激アツな豪華客船を百夜丸にしてやっからよぉぉ!!
ということで沈んだオデュッセイアの豪華客船、先代ゴールデン・フリース号の代わりに就役したゴールデン・フリース2世号はダチョウ5匹に襲われてシージャックされる運びになり、お祭り船「百夜丸」に急遽改名……勢いがありすぎるだろ。
ちなみにマジでヤバい略奪鳥の噂を聞きつけて「ヤバいぜこれは!!」ということで緊急脱出しようと機関始動した矢先のことである。
ギリ間に合わなかったオデュッセイア生徒達は船を壊される前にと土下座で降伏したので客船と共に無傷、そのままゴールデン・フリース2世号改め百夜丸の船員に再就職した……判断が早い。
というのも「ダチョウはどうやっても無理!! 船団旗艦クラス一隻ともなればそのうち上で話がまとまるやろ、私らは船が沈まないようにすればええで!!」という的確な判断によるものだった。オデュッセイア生徒は本当に優秀ですね、教育が行き届いてる……他所の学校も見習えよ。
ということで、後ほどオデュッセイア海洋学校の本校艦から「ちょっとお時間いいですか?」のご連絡が確実である、誰に?
それはもちろん……百合園セイア次席生徒会長にして総領主代行にですね。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ゴホーッ!!」
「セイア様!? 救護!!」
・
・
・
とまぁ、色々あったわけですが。
「……一体、何故こんなことに?」
「さあ……どうして、ですかね……どう思います? これ……」
゛シズコ、しっかり……。゛
最終的に群島を完全制圧し、パラダイス・リゾートバトルロイヤルに参加した全学校・全企業・全勢力を粉砕、超巨大リゾート企業「超・百夜堂」の代表となっていた河和シズコは、疲労困憊の表情で砂浜に撃沈したままの姿で連邦生徒会長代行・七神リンの疑問に疑問で返した。
「お察ししますよ……お疲れ様です」「あ、カヤさん、どうも……」
まあこれくらったら疲労困憊やろうなと察した連邦生徒会長代行次席・不知火カヤが、シズコに労いと同情の言葉をかける。無理もないなぁとはカヤは思った。
そう今明かされる衝撃の真実「実はここ、連邦生徒会の土地だから。何勝手に売り買いして暴れまわってんだよ、立ち退きな」という、何故か直接やってきた現連邦生徒会のナンバー1と2からの、とっても悲しいお知らせである。
シズコは倒れた、力尽きて浜辺にヤムチャみたいな姿で沈んだ、無理もなかった。
ここまでやって全部徒労は心折れますよ、誰がこんな酷いこと強いたんやろな……まあ、商機じゃん!! 忍術研借りれたし勝てるかも!! チャレンジいったるわ!! したのはシズコ自身なので、誰かのせいにしたいが自分の顔しか浮かばない。
お祭り自体は盛況だった、実はこのバトルロイヤルは本土に「放送」されていて、参加者も概ね楽しんだが、本土で見ていたお茶の間も最高のエンタメに大喝采だった。これがキヴォトスの娯楽だ、野蛮極まるね……先生ドン引きだよ。
およそ60校に30企業と10勢力は参加していたパラダイス・リゾートバトルロイヤルは死屍累々な世紀末の様相を呈していたが、そこは「敗者に人権ないから」と「暴力は全てを解決する」のがキヴォトス。
その中でシズコは「真っ当」にリゾートの体をなんとか維持していた場所を保持し、制圧した以上は面倒みなくてはいけないので……自分の店を切り盛りしつつ、55時間フル回転でフィーナとウミカ経由で人を動かし、開発指示を各地に出しまくっていた。
暴れまわるダチョウとアビドスに最低限度のオーダーを叩き込んで自分は援軍にやってきた修行部と忍術研を直掩にして要塞化。普通に参加者が利用者になるためお店は営業中、看板娘を自分とチセで回しまくる……これがリゾート開発? なんの冗談だよ? みたいなバトル・トロピコ国家運営RTAをしていた。凄すぎるよシズコ、連邦生徒会に興味ない?
全土制圧クライマックスあたりでよくわからん寝言を言って襲いかかって来たカイザー営業をバトロワの流儀の元にボコし、元豪華客船今お祭り船の百夜丸を得た今、本戦が始まれば船を使って本土から大量の客入りが見込める……勝ったでこれは!! 優勝もろたで!! の、瞬間……リンちゃんさん代行のエントリーである。
これだけやって全部「無」、そりゃ倒れるでしょ。
カイザーPMC元理事、今営業(主任→課長、接収には失敗するも資材売買その他で売上ドン・ドンにつきランクアップ)を即席の十字架に吊るし、特戦研部歌「この世を暴力」を斉唱しながらのBON踊りを、アビドス+温泉開発部+忍術研+修行部+チセとフィーナとしているダチョウ達の地獄みたいな光景を背景に……シズコの野望はここに潰えたのである。(ウミカは全土制圧を見届けて先に轟沈、海の家でお休み)
こんな酷いエンディングあるかよ、気が狂いそうだよ。
労しい姿となったシズコを優しく抱き上げる先生、その胸の中でシズコは泣いた、縋りついて泣いた。それでも嗚咽は漏らさないのが商売人、百夜堂店主たる河和シズコの矜持であった。
「その、お疲れだとは思うので、撤収は時間をかけても構いません。半ば放棄区画でもあったので原状復帰の必要もありませんから……」
「はい……」
これだけの準備を撤収させるのは酷く手間がかかる、このくたびれきった子に今すぐを要求するのは酷であろう……という、思いやりが持てるようになったリンの、時間指定は曖昧、原状復帰は求めないという妥協点であった。
しかし、そんな「扱いの緩い」土地だというのならば。
「……あー、それなんですけどねリン代行……いっそ、このままにしませんか?」
「「え?」」 ゛カヤちゃん?。゛
そこで、清貧(悲哀)のヴァルキューレと付き合い長いがゆえに、わりとお金で苦労してる防衛室長兼任の代行次席から助け舟が入った。
「思ったんですけど、連邦生徒会としてもここは別に何かに使ってるわけではないでしょう? 直轄の管理区画というだけで……だったらこのままリゾートとして運営してもらって、上納金だけ連邦に入れてもらえばいいのでは? こっちで使ってないんですから、使ってもらえばいいでしょう? 施設も各地整備を態々「してもらった」わけですからね」
「それは……」
「何か使うご予定あります? 私にはないですね、そんなことしてるリソースも今の連邦にはない……だから放置された区画だったわけで、どうです? アオイさん、多少は国庫の足しになるんじゃないですかね?」
< ええ、その通りね。素晴らしいわ、最高よ >
「!? アオイ、いつの間に通信を?」
< ついさっき、突然そちらからオープン回線が繋がるから何だと思ったけれど……良いアイデアだわ。こちらからは土地しか持ち出さないのだからリソースは最小限……カヤ室長、必要な手続きはこちらに回してもらって構わないわ、これだけ話題になっているのだもの……期待できそうね、それではまた後で >
「だそうです。さてリン代行、どうします? 最終決定者は貴女ですが」
゛リンちゃん……。゛
「……ええ、土地の利用を許可します。河和シズコさん、詳細は商工・法務・財務室とお話を。代行権限にて、この場で一連の許諾を出します」
「そ、それって!!」
「ですが連邦生徒会として明らかな略奪行為は認められません、略奪した物品のうち返還できる物、必要なものはそれぞれ協議し、かつ参加した学園・企業等に運営への参画を要請します。この規模を百夜堂だけで営業はできないでしょう、貴女にはこれら群島リゾート商工会のまとめ役をお願いすることになりますが、よろしいですか?」
゛ありがとうリンちゃん!! カヤちゃん!! やったねシズコ!!。゛
「あ゛あ゛あ゛り゛がどうございま゛ずぅぅぅぅ!!」
全てが物にとはならずとも、奇跡の大逆転劇で得るものを得たシズコは今度こそ号泣した、艱難辛苦が報われた男泣きならぬ少女泣きであった……。
その、女シズコ勝利の雄叫びにダチョウ達が気づく。
「あ!! リンちゃんさんとカヤちゃんさん!! どうしたの? リゾートに遊びに来たの? お客様第一号と二号だね!! いらっしゃいだよ!!」
「いえ私達はすぐ帰らないと……」「いいからいいから!! 普段頑張ってるもんね!! ゆっくりしていってね!!」
「ん!! 奪い尽くして全部した!! 完成したこの超・百夜堂で疲れを癒やしていくといい!!」
「記念すべき初客が連邦生徒会長代行ワンツーとは名誉じゃんね、BBQしようぜ!!」
「おうよ、売るほどあるもんね!! 今宵は星を見ながら焼き肉ってこった!!」
「略奪品だがなァ……まぁ、いいだろ、この島にいる皆で楽しめば良い、な?」
「ハーッハッハッハッ!! なら盛大にお祭りといこうか!! 温泉も出た!! 旅館も立った!! 今夜はお腹いっぱいにして温泉だ!! さあメグ!! 火力がいるぞ!!」
「やったぁ!! じゃあすぐ準備するね!! さあみんな!! ありったけのボンベ集めて!! 鉄板!! 鉄板探そ!! 大きいの!! 皆でお肉焼けるの!!」
「百夜丸の外板ひっぺがすか?」「それはやめてぇぇぇぇ!!」
その夜、群島全体を上げてのバトロワ参加者達による盛大なお祭りが実行された。
略奪の限りは尽くされたものの、結局総取りではなくそれぞれ参画できるし、船のような消費されなかった大物は返還されるので一番「丸い」まとめ方である、さらっとそういう話にもっていけるリンがやっぱ凄いということになって、代行の株もちょっと上がった。
そう、実は打ち上げ含めたシズコちゃん号泣シーンとか一連の様子もまた、引き続き全土配信中だったんですね。
バチバチだったって聞いてたけど連邦生徒会3閥長結構仲良さそうじゃんということになったし、あまりにも楽しそうなそれにパラダイスリゾートに利用希望者が全土から改めて殺到したりした、それはもう大変なことになるのだが。
それは……残念ながら、しばらく後の話となった。
・
・
・
「それにしても驚きました、まさかあんな提案をされるなんて」
「そうです? 使ってないなら使ってもらえば良い、それだけのこと。土地を使わせているのですよ? お金を入れてもらうのは当然じゃないですか」
リンとカヤは翌朝、迎えの大型ヘリに乗って本土への帰路についていた。ヘリにはパイロットとコパイの生徒二人の他は……誰も居ない、客室にいるのはリンとカヤの二人だけだ。
「こちらの労無く上納金が入るならアオイさんも満足でしょう? 最近色々と「いらない気遣い」をさせてしまっているので、ここらで労っておかないとですからね」
「苦労をかけているとは、思います」
「まあ私達が組んでしまった以上、アオイさんが連邦役員会3閥の中では劣勢です。私達に言いたいことがあっても、中々言えなくなってしまいます……考えたものですね、リン代行」
「私は、そんなつもりではありません」
だが実際、リン達連邦生徒会長派とカヤ達桐藤派が共同すると最大与党だ、何をするにしろ役員会の合意が取れる……皮肉なことに、一挙に機能不全が解消された最近の連邦生徒会は目に見えて機能を取り戻し始めていた。
連邦生徒会長に戻ってきてもらいたいリンと、桐藤ナギサを連邦生徒会長にしたいカヤという、目的の違う派閥の長の二人が協力することで……。
だが、二人の最終着地点は相反する。
……相反するのだ。
だから、リンにはわかっていた。
あのパラダイス・リゾートバトルロイヤルを制止するために、規模的に連邦生徒会長代行が直接赴かねば止めることは不可能……と見て、不知火カヤ連邦生徒会長代行・次席の出張を要請した時、カヤは。
「いやー、12使徒が5人ですよ? 私一人ではとても……ここは二人で行きましょうか」
そう言ってリンの同行を望んだ、不知火カヤの目的が。
随員はいない、パイロット達は隔壁の向こうにある操縦席でこちらの様子を伺うことは出来ない……今この場に、余人は誰も介在しない。
「さて……ようやく、二人きりになれましたね……リン代行」
「……やはり、そうでしたか」
本当にRTAと化して燃え尽きるところまでいったシズコちゃんフォーエバー。
さあここでオリチャー発動した不知火カヤちゃんさんの勝利への道筋とは……導火線に火が付くか、それとも……。
「トリニティの12使徒」雑談スレその9
https://bbs.animanch.com/board/5449568/?res=104
またしてもスレッドを頂いています、感謝。
こういったスレッドだけでなく、感想やここすきも沢山頂いております、本当に嬉しいです、体力的に感想への全件返信ができないのが心苦しいのですが、全て見て、グッドいれさせてもらっております。支えそのもの……ただただ感謝。