時刻・AM01:02
D.U.湾岸エリア、第3空港
地下物資搬入通路、海底トンネル内部、C-1区画。
無人貨車引込線、格納区間メインホール。
「先輩!! 音響・振動センサーが共に異常値を示してます!! 発生源は地下じゃありません!! 上です!!」
「!! 地上!? まさか、RABBIT達のいる駐機場に……」
「落ち着けDOG1。情報を分析しろ、音紋の照合はできるか? 振動データが示すものは何か。推測でも良い」
地下通路内で戦うSRT、FOX・DOG小隊の8名は遅滞戦闘に成功しつつある。弾薬を徹底して節約し、最小限の射撃、最大効果の戦闘。それは特殊戦として、まこと誉れ高い戦いぶりだった。
これほどの規模の敵が、完全に足止めされている。
たった8名の戦果としては見事の一言でしかない。
しかし危急の時、至る。
「……解析中……該当なし!! アンノウン!! 海中にある地下トンネルの外壁まで叩く轟音です。海上、あるいは海中に何らかの発生源があるものと考えますが……」
「爆発音ではないんだな?」
「はい、長期音です。近いものといえば……こう、何か獣の遠吠えのような……」
SRT特殊学園2年生チーム、DOG小隊は情報戦を得意としている。各種センサーを埋設、それを使って通信遮断環境でも遠隔索敵を行う。ポジションはリコン(偵察)、戦うだけが能ではない。彼女達はSRTの目であり、耳である。
2小隊がこの海底トンネル内部で白兵戦……完全な有視界戦闘を強いられていないのは、こうして音響・振動センサーを駆使して敵の動きを常に把握してきたからだ。
振動センサーがあれば車両や歩行戦車といった装甲兵器の存在を知ることができ、音響センサーがあれば攻勢に出ようと速度を上げた集団の位置を知ることができる。
巧妙に配置された各種センサーからの情報があればこそ、けして明るくはない地下での戦闘を優位にすることができた。敵はオートボットなので閃光弾に弱い。暗視センサーを閃光で潰せば行動不能にできるのだ。
SRTの生徒は暗視スコープに頼り切るほど低練度ではない、そしてFOXもDOGも獣人族の生徒で立派な耳と鋭敏な感覚がある。闇の中でこそ、最も強い。
彼女達の武器は銃だけではない。特殊部隊としての技能こそが真価。
だからこそ、その異常に気付ける。
今、地上に何かがいる。何かが……起きている。
そして異常には、対処しなくてはならない。
「クジラさんじゃあ……ないよねぇ……」
「バカねオトギ、そんなでっかいクジラなんているわけないでしょ!!」
「あの……そもそもクジラって遠吠えとかしましたっけ……」
「……何らかの異常事態が発生しているのは確かです。FOX1へ意見具申、偵察と連絡のため、分隊を派遣することを提案します」
分隊派遣、遮蔽物にしている隔壁の裏でそれを聞いたSRT生徒達が、お互いを見る。戸惑いと……迷いと共に。
8名の中から分隊を編成し2人を抜く。通信遮断で連絡が取れず、地上の様子のわからない彼女達に取れる手段は少ない、だが判断を迷っていられるほどの時間もなかった。
FOX2、ニコの具申は通常であれば……おかしなことではない。防衛目標は地上にあり、それを守る小隊は僅か1隊。そして何より自分達の戦闘は膠着し、僅かだが守勢優位にある。
こうして今、遮蔽物の裏で一息入れられる程に敵の動きを抑制できている。
だが、あまりに敵が多すぎた。通常ならこれだけの損害を出せば撤退する、常識的に考えれば侵攻は頓挫していると判断できる……しかし今夜の敵はそうではない。全く撤退の様子を見せず、味方の損害などお構い無しだ。先の見えない戦闘、弾薬も残す所僅か。
今の優位は2小隊8名の完全な連携あってのもの、数の猛威を生かさせない曲芸的な防御戦術は、誰が欠けても同じ事はできないのだ。
「FOX2、私は反対。この8人でなんとか均衡が保たれてる。2人も抜いたら突き崩される可能性があるよ。ここが抜かれたらそもそも守ってきた意味がないし、地形もより不利になる」
「なら、いっそ全員で地上に後退するというのは……」
「機銃の支援も無しに陣地転換が上手くいくわけないでしょ! 片翼のフライト(4人連携)が崩れてるのよ!」
FOX4、オトギの冷静な分析。狙撃手は状況判断が物を言う。こういう時に腹を据えた考え方ができるからこそ、後衛の要。そしてFOX3、クルミがDOG1、土佐の全員で後退という意見を一蹴する、クルミの判断は正確だった。
FOX3、FOX4共に現状維持を選択。ニコは索敵と連絡と言ったが、本質はRABBIT小隊への援護だ。危機にあるかもしれない後輩達を助けるために向かいたいという意味が強い。
一方、DOG小隊は分隊派遣に肯定的だった。しかし彼女達自身も、本当は難しいことを理解はしている。
土佐の1年生達を案ずる思いから出た全員合流案だったが、遅滞戦闘中の一斉後退など成功の見込みはない。敵に加える圧力が下がり、殿の支えを失えば一気に突き崩されてしまうだろう。追撃され、背中を撃たれる……成すすべ無く蹂躙され、全員揃って枕も並べられず討ち死にだ。
「FOX3、損害なしで後退は可能だと思うか?」
「ネガティブ。最大限の努力をもってしても損害は避けられないと判断するわ、FOX1」
前衛を担当するクルミは後退時には殿を務める。最初に前に出て、最後に退く小隊の最も危険なポジションにいる彼女が不可能だと断じれば……FOX1、ユキノもその判断に信を置く。そうでなければ、お互いの背中など預けられない……それが小隊、これがチームだった。
「けど、あの子達が……」「増援はまだなの……」
だがDOG小隊の面々は不安が隠せない。弾薬が心細いことがそれを助長した。確かに地上にはまだ事前に集積した弾薬が残っている可能性はある。しかしそれは可能性にすぎない。確保に失敗すれば構築済みの陣地と残り少ない弾薬を一気に失う……戦場の霧の中では、鍛え抜かれた学兵達といえども迷いが生ずる。
時間はない、敵は待ってなどくれない。
だから、指揮官であるFOX1、七度ユキノは判断を迫られ……決断しなくては、いけない。他の誰でもない、今この場の最上位生徒は自分自身しかいないのだ。
連邦生徒会長も、防衛室長もいない。自分に命令する者も、判断を、決断をしてくれる誰かは居ない。連邦の武器であると定めてきた自身が、今は上に立つ者として決断しなければいけなかった。
1年生チームの元へ、援護を出さないという決断を。
「陣地転換するには一撃で大きく押し返さないと後退は難しい、後退は却下する。そして戦力の分散もできない。ここは我々で支え、地上は……RABBIT小隊に任せる」
「ユキノちゃん……」
非情な決断である、しかし。
信じるとは認めること、認めるとは託すこと。
学園解散の日から短くも長く感じる日々……過ちを悔い、エデン事件を通して戦い、見違えるように研ぎ澄まされていった後輩達の姿を、思う。
「ニコ、私達のバッジを預けた、あの子達を信じよう……」
SRT特殊学園を継承する、誇らしい後輩達を信じると……ユキノは決めた。
「……そうだね、うん、きっと。FOX2、FOX1の判断に従います」
「決めた作戦手順を変えない、今はそれが最善!!」
「そうそう、案外軽くひねってるかもしれないしさ。それに増援はまず地上のほうが早いから、むしろ危機はこっちかもねー……なんたって弾薬、もうギリギリだし」
「「「「DOGチーム、FOX1の指揮権に服します!!」」」」
「……全隊、遅滞戦闘を継続する」
「「「「「「「オールコマンド、アイ・コピー!!」」」」」」」
覚悟を新たに気を引き締めたSRT達、しかしそこへ。
音が、響く。
「!! センサーに新たな反応。音紋パターン、データに……一致!! 来た!! 来ました!!」
「DOG2、音響センサーでこちらも捉えました!! 間違いないです!! 先輩!! 来ましたぁ!!」
それは、この場に満ちる敵軍団が出す音とは全く違う、そして彼女達にはある意味で、聞き慣れた音だった。
回転する何かが接地面を削っているかのような、鋭い音色。
そう、それは「疾走」する時に、こんな音を立てる。
「……間に合ったか」
トンネルの壁面を伝って響き渡る、甲高い音色……それは。
「ローラーダッシュの滑走音!!」「12使徒!!」
ユキノ達の耳でもその音を捉えるまで、そう時はかからなかった。特徴的なM14の鋭く豪快な射撃音が連続で響き渡り、数多の爆発音もある。視界の奥にいるオートボット達が次々と振り返り、迎撃しようとしている姿も見えた。
「支援射撃!! 連中の突破を援護しろ!!」
それを見逃すSRTではない。
なぎ倒される敵影、そしてトンネルを流れてくる爆煙の向こうから、それは現れた。
「ホントにきた……この数を突破して……」
「あはは……天井って走れるものなんだね」
「……そうはならんでしょ!」
トリニティ・ティーパーティーの白制服に身を包んだ、大翼の生徒が4人。そして後続に8人の黒制服を引き連れて……なんとトンネルの壁面を、天井までも使って縦横無尽に走り回り、こちらに向かってきたのだ。
12使徒、そして正実の選抜中隊、増援は12名。
トンネルの天井をジェットコースターのごとく天地逆に走りながら、敵集団を3次元に高速で狙い撃つ様は非現実的な光景だ。人間の機動力とは思えないそれを彼女達に与える機動の要、ミレニアム・エンジニア部謹製、ローラーダッシュシューズ、その甲高い疾走音が勝利の凱歌のごとく響き渡る。
敵オートボット達は天井面へ火力を振り向けられない、トンネルの崩壊を避けるためにそう命令してあるのだろう、だから12人の攻撃は殆ど一方的……。
その火力に統制があることにユキノは気づく。明らかに小隊の連携射撃、機動もランダムのようでいて隊列が整い、火花を散らして暗がりに輝く軌跡を見せるその滑走は、氷上かと錯覚させるほどの美しささえあった。
( 黒服の黒羽……正実の、選抜中隊か )
12使徒だけならばまだしも、引き連れている8名は正義実現委員会の生徒なのに、恐鳥達と同じことをしていることにユキノ達は内心驚愕していた、世間の認識よりも遥かに脅威度が高い。
キヴォトスで最も連携に優れた部隊、あの12使徒と協働できる……そこまでの高練度とは思ってもみなかったのだ。
あの連中はあろうことか、トンネルの湾曲した天井を「さかしま」に走っているのに……隊伍を維持しているのだ……異なる部隊間で連携し、射撃をしながら!! 目標を被らせることもない、1つの生物のような完成度……。
「正実の子、確か1年生……今年の子達は豊作だね」
「うちの1年だって負けてないんだから!!」
「CHEETAHの子達……今頃どうしてるのかな……」
ユキノ達SRTの陣地、メインホールへと繋がる空間へ12翼が躍り出る。眼下には無数の敵、倒された残骸と自分達の数によって動きを詰まらせたオートボットの軍団。
フロントラインを通過する瞬間、左右の壁面から天井に向かって疾走交差した2つの小隊、黒制服の8名が翼を振るって敵先頭集団に向け、何かを複数ばらまいたことをユキノ達は見逃さなかった。
それはもちろん。
「耐爆防御!!」
爆薬だ。
トンネル内の空気が一掃されるほどの爆発と圧力で一気に前線を打ち崩した12人が、まるで何事もなかったかのように爆風を優しく翼で受けて乗り、ふわりと……ショック姿勢をとったユキノ達の眼前に着陸する。
ローラーダッシュシューズを使う、それは滑るような柔らかな滑走、着地。4名の白制服が8名の黒制服を従え、一分の乱れもない所作で整列し、ユキノ達に向けカーテシーで到着の挨拶を行う。
「アポストルB小隊、セレクションG・H小隊、現着……。おまたせー!!」
「ん、健在で何より!!」「流石よFOX」「ちょいとお待たせした感じ?」
「増援に感謝する……ああ、少しは待ったが、遅刻という程じゃないさ」
「無遅刻無欠席の皆勤賞です!!」「ん? そうだっけ?」
「んなわけねぇだろ!! 全然教室居ない日とかあったろ!!」
「デイリー4回出動してた頃とか、クラスに入れてもないんだよね。完全に欠席だろ……」「そんなぁ」
ここまで来るまでに無数の敵を見た筈、それでもこの悲壮感のない、明るい会話。まるでこの程度など物ともしないと言わんばかりの平常感。だが、一切油断などしていないことは肌を刺す圧力で理解できる。
戯けているように見えて隙など全く無い。これが12使徒だ。
「ん、じゃあまずは弾薬ね、ほいよ」
全員が翼を強くはためかせたかと思うと、ガラガラと各種弾倉が落ちてくる。何処に抱えていたのかと思うほど、それは大量の弾薬だった。
「ほんとそれ、どうやって翼に格納してんのよ……」
「紐とフックで裏羽根に括っておくんだよぉ、捻って強めに羽ばたいたら外れるようにねー」「そうはならんでしょ!」
ニコはリクとクルミの会話を聞いて、選抜中隊が見せた手榴弾一斉投下の仕組みを理解する。起爆ピンに同じ細工をして、裏羽に山程抱えていたのだ。翼が大きく、羽毛の豊かな天使族にだけ許された懸架方法。CROW小隊が卒業した今、羽持ちのいないSRTには真似できない運搬方法だった。
そして各自が後腰のカバンに吊るしていたのは……。
「ほい、RPGの弾もあるよ。んまぁ、もう必要ないかもだけどね」
「ヤマネちゃん、戦車はもういないの?」
「増援が出てこなきゃね。こっちにくる行き道で、目に付く奴は全部撃ち抜いて、スクラップにしてきたしさ」
これにはSRTの面々も苦笑いである、自分達は対戦車兵器がなければ正面切って戦車の相手は難しいが……この連中ときたら小銃一発で戦車を屑鉄にできるのだ、あまりにも火力が違いすぎた。
火力・装甲・機動力、自分達と根本から違う生き物のように思える圧倒的な性能差……これで特殊戦としても一流だなどと悪い冗談である。
しかし……練度なら、技術なら、意志ならば、戦いならば。
特殊戦生徒として負けてはいないと、今なら誇らしく、そう言える。
「じゃあ反撃といこうぜ!! SRTと肩を並べることは何度かあったがよ、今夜は一味違うぜ、なあ?」
「「セレクションチーム、援護に入ります!!」」
選抜中隊までも動員されての特殊戦揃い踏みなど初のこと、本来ならば連邦と自治区の特殊部隊、穏やかな関係とは言えない……けれど、共に学兵、戦友だ。
「炭沢リク、地上の援護は? 上の戦況を知りたい。何が起きている?」
「なんかね、船? 駆逐? そんなのが出てきて、しかも変形して襲いかかってきてるんだって!! なんか竜みたいになっててさ!! がおーんって言ってた!!」
「船? 変……形……? が、がおー……?」「いや、竜ってなに!?」
まあ、訓練された学兵といえども、理解が追いつかないことはあるのだった。これはリクの説明がカスに過ぎる面もあると思います……けど、どう説明すればいいんでしょうね、これで正しい情報しかないんですよ。
「ん、まあ心配いらないよCチームがいるし、選抜も半分はあっち。RABBITのカバーに入ったから戦線も安定するでしょ。あ、そうそうRABBIT、ガチでよくやってたみたいよ」
「結構な勢いで迫られてたみたいだが、しっかり歩行戦車も潰してたみたいだしさ。ようやっとる」
「ほんとよく一隊で持たせたよ!! 流石みんなの後輩だね!!」
「そう……か」
それを聞いて七度ユキノの強張った身体から、緊張が抜けた。
安堵と、誇らしさ、色々なものが渦巻いた心中のユキノから漏れたのは一言だけ。しかし、ニコには心の内がわかる。だから彼女の強く握りしめられた拳を手に取り、そっと解す。
「よかったね、ユキノちゃん」
「……ああ」
七度ユキノの俯き、伏せた顔に……この事件の中で初めての、小さな笑みがあった。
「さあさあ、戦力万全で弾薬もそこそこあるし、はじめよっか!!」
「ん゛ん゛ん゛!! 反撃じゃあぁぁぁ!!」
「いくぜぇぇぇ!! 皆殺しの始まりだぁぁ!!」
「パワーオブドリームの時間だろ!! 一気に押していこうぜ!!」
そう、憂いは消えた、反撃だ。
必要な要素は全て揃った、ならば征くのみ。
「よし、ニコ……いや、FOX2、近くの無人貨車を全て集めてくれ。これを遮蔽物にしながら接近し、押し返すぞ。先ずは一度撃退して……」
「まどろっこしいじゃんねFOX1。プロ学兵がこれだけいるんだしさ、全員一列に並んで端からトッコんじまおうぜ。簡単だろ」
「あのねぇ!! 私達もアンタ達の後輩も、遮蔽無しで戦えるわけないでしょ!! イカれた鳥類なアンタ達と一緒にしないでくれる!? 人間は弾くらったら仰け反るし、痛いのよ!!」
「そんな……ダチョウも頑張って無い頭振りながら痛みに耐えてるのに……」
「えっ!? ほんとは痛いの!?」
「まあ……爪楊枝の尖ってないほうでちょっと押された程度には」
「それは痛いって言わないでしょ!!」「5.56mmが爪楊枝って、うわぁ……」
ついさっきまでの洗練された部隊ぶりが嘘のように、駝鳥は荒くれそのものの発想で制圧を始めようとしていた。クルミの言は尤もである、12使徒の防御力を基準にされると自分達は当然だし、おそらく選抜隊の面々も耐えられない……と思う。
この連中は、100mmクラスの戦車砲弾を翼で弾く。
自分の翼をシールドにして歩いていき、わざと銃撃を受け、装甲兵ごっことか言ってるような鳥類なので……ライフル弾とか当たったところで何も感じてない。
12.7mm機銃弾程度では掃射で浴びせても仰け反りすらしないのだ。噂ではアバンギャルドタイプのメイン武器、20mmガトリング砲を受けて平気で立っていたとも……人間じゃないだろもう。
「何いってんだよクルミ、あるじゃん遮蔽物」
「どこに?」
「ここに、4つもでっけぇのがさ」
「……は?」
「正確には8つじゃねぇのスミ」「それもそうか」
「本当に……お前達はでたらめがすぎる、ふふふ」
その意味を理解したユキノは、思わず笑った。
そう、この連中は、自分達を「遮蔽物にしろ」と言っているのだ。
「プロの学兵がこんなにいるんだ、もう小細工なんていらねぇだろ。限界特殊戦頑張った分、ここからはストレス解消モードでいこうや。戦列組んで真正面から殴り倒してやろうぜ、なあ?」
「射撃は皆のほうが上手いしね!」
「いやいやいや!? 皆さんを盾にしろって!? 嘘でしょう!?」
「ザコ・デカケツロボの火力でさぁ、私らのアーマー抜けるわけないやん。土佐は心配性だね」
「なお、わたしたちにデカケツさん達のビームはききません!!」
「ん!! 完全耐性!! ダメージ0です!!」
「メタルタコ君も明らかに頭抱えてたけどさ、絶望モンだろうなこれ……」
多くの方がご存知の通り、サバンナの鳥類はビームやレーザーに耐性があります。
正確には完全耐性ではない、99.9%カット……0.1%ぐらいは通る……通るって言わないでしょこれ。
こんなクソ生物が特に理由無く生まれ出るサバンナ、過酷な環境がすぎるだろ。生存競争にビーム耐性が必要なの、明らかに様子おかしくないですか? でもこれがサバンナとなったキヴォトスの現実。
サバンナ真実はデカグラマトン達にとても非情であり、ダチョウはビームやレーザーで炙っても火傷すらしない。つまるところ……レーザーガン主体のデカグラマトン系オートボットでは事実上、ダチョウに有効打を与えることはできないのである。
そりゃ運悪く遭遇してしまったホド君も触手で頭抱えますわ。
ビームきかねぇ、レーザーきかねぇ、機関砲もきいてねぇ。ミサイル当たらねぇし移動手段にされたり最悪投げ返してくる。挙げ句の果てに触手でぶっ叩いてもめり込んだ地面から跳ねるように即復帰してきて、反撃の拳はマジでクソほど超痛い……ほんとに人類かこれ?
遠く氷の大地から、その暴虐を見ていた三姉妹は泣きました。
「……その通りだ、全隊反撃する!! アポストルB小隊を盾にして総員横隊、掃討戦用意!!」「ほんとにやるんですか!? DOG1、ラ、ラージ!!」
「じゃあ私達は羽広げて壁になるもんで、FOX1に指揮はお任せだぁ。上手いことやってねぇ」
「動く遮蔽物、アーマード・ダチョウとなるのだ」
「127mm以上は流石に腰を入れないとふっ飛ばされる。留意してくれ」
「ん、5インチ砲は流石にちょっと痛い」
「127mmってそれ艦砲……」
「ヒナちゃんパンチは余裕で2000倍ぐらいパワーあるよ?」
「空崎ヒナぁ……」「怖い……やっぱ人間じゃないよ……」
「あの……リクちゃん前に連打くらってましたよね……?」
「死ぬほど痛かったね!」
なお炭沢リク、聖夜の死闘では一般通過生徒ならヘイロー割れてても全くおかしくない打撃をなんと乱打でくらって全身の骨をヒビまみれにされ吹っ飛んで、茶道の呼吸10秒ぐらいで復帰していたりする。死ぬほど痛いで済むわけ無いだろ、ダチョウでなければ余裕で死んでるダメージなんですが?
ダチョウをもってしてもこれなので、普通の生徒達からすればヒナの存在感が宇宙的な概念なのも仕方ない……ゲヘナの民は心がつえぇ生徒なので、このヒナちゃんを平気で煽ったりするんですけどね。無敵かよ。
空崎ヒナはダチョウの12倍のパワーとアーマー、スタミナを誇る。まさにキヴォトス食物連鎖のトップヒエラルキー……サバンナ頂点捕食者の貫禄であった。
デカグラマトン達は空崎ヒナの真のパワーを知らない……幸運にもまだ遭遇したことがないからだ。
今後も幸運が続くことを祈りましょう。
「各位、異論は? ないな? よし……総員横隊!!」
「戦列なんて組むの初めて……」「教本にもないしねぇ」
「そうなんだ? うちの正実には横隊戦列突撃があるよ?」「あるんだ!?」
「前衛の子が撃たれまくるじゃないの……特殊戦のやることじゃないわ」
「そう?これでじわじわ近づくと、かなり怖がってくれるよ?」
「そりゃ羽根シールド構えたアンタ達に押し込められたらね……処刑の前振りじゃない」
SRT8名、正実選抜隊8名。16人の学兵が一列横に並び、翼を広げ前に出た12使徒4人の背後で銃を構えた。
ようやく、どうにか隊伍を戻しつつあるオートボット達が散発的に銃撃を浴びせてくるが……そんなものが12使徒に効くわけもない。
翼に、身体に、幾つ被弾しようと全く効果はなく、銃弾は潰れ、ビーム粒子・レーザー攻撃も当たる端から霧散する。その光景は正しく遮蔽物といって相違ないもの。小銃を構えた、歩く要塞だ。
海底トンネルの照明、それを逆光に受け、並んだ20名の特殊戦生徒達のシルエットが……硝煙の中に浮かぶ。
「全隊、突撃発起用意、装備点検」
「DOGチーム、異常なし」
「セレクションチーム、異常なし」
「アポストルBチーム、異常なし」
「FOXチーム……異常なし。これより、反攻に移る。前進し敵集団を撃破、地下連絡通路を奪還、制圧したのち、地上にいる部隊と連絡を回復する。全ての障害を排除しろ」
鍛え抜かれた学兵達の、しかし今度ばかりは……力に任せた誇らしげな行進が、始まる。
「敵兵力を掃討する、特殊戦!! 前へ!!」
・ビーム耐性
サバンナの生き物は強めのビーム耐性があります。
生徒はもちろん一般市民もそれなりに高めなのがキヴォトスの標準……なのでビーム兵器は物体を全部飴のように溶かすマジでヤバい超兵器だけど、人体に影響があんまりないクリーンな兵器という風潮らしいです、怖い所だよキヴォトス。
ビーム砲(荷電粒子速射砲)は電子を加速してぶつけるものなのでRG表記も間違っていないらしいよ、熱した粒子と電子レンジとハンマーの合せ技……つまり衝撃が伴います……わりと質量武器なんですかこれ? という勢いでぶん殴られた感じで痛いとのこと……ビーム食らって痛いで済むんだ……先生ちょっとびっくりだよ。
・レーザー耐性
サバンナの生き物は強めのレーザー耐性があります。
生徒はもちろん一般市民もそれなりに高めなのがキヴォトスの標準……以下略。
・ダメージカット
サバンナの生き物は強めのダメージ耐性があります。
空崎ヒナさんのダメージカット率は全属性99%です、HPは推定「億」らしいんで、頑張って削ってくださいね。まあ数秒深呼吸されると割合回復されますけども、剣崎ツルギちゃんのノーコスト・ノー呼吸毎秒1割回復よりは有情らしいんでそこはね。