トリニティの12使徒   作:椎名丸

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・ある日の連邦ヘリパイロット生徒達

「パラダイスリゾートへ? お二人揃ってですか? 了解ですー!!」
「警護が誰も付かないって、大丈夫なんです? FOXチームは?」 

「今日は戻らない? バーベキューに参加? 私達もいいんですか!? やったー!!」
「いいんだろうか……なんかお休み貰ってしまった感あるんだけど」

「あははは!! たーのーしー!! おーいしー!! あっノドカちゃんシグレちゃん久しぶり!!」
「へえ、中学の……温泉旅館が出来たから立ち上げに来た? 赤冬からは遠かったでしょうに」

「たべすぎちゃった!! 朝イチで帰還ですね? りょーかいですー!!」
「これ、美味しいですね甘くて……なんて飲み物なんですかシグレさん、甘々? へー」

「ふわ……なんだか眠たいね……操縦気をつけないと」
「………オートパイロットがあるでしょ……でも、なんだか異様に、眠くて」

「…………ぐー」
「………………」

CH-47 チヌークさん「パイロットが両方とも居眠りしたと聞いて、私は確かこう言ったと思います。なんて事だ、もう助からないぞ」



【航空機事故の】メーデー!!【真実と真相】

 

奇跡の60時間の真相……それは。

 

 

1000:名無しの12使徒

いくぜぇぇぇ!! いざ焼き討ち!! こいつは夢と希望のファンタジーだぜ!!

 

 

 

 

「ああ、カヤ、起きたのですね」

 

「リン!? 貴女も……いやまずここは? あれからどうなって?」

 

 ラブにホバークラフト艇内のガンルームに案内されたカヤを迎えたのは、共にヘリに乗っていたリンだった。こちらも連邦の制服ではない、丈の合っていない制服姿……よく見ればそれはラブの着ているトリニティの改造灰色制服と同じ物、おそらく彼女の予備であり……体格差のためか、全体的にパツパツだった。

 

 カヤ自身は身長の近い子が他に居たのか赤い上着の別制服で、こちらはサイズが合っているので特に支障はない。幸いでもないが、不知火カヤは平坦であった。

 

「海面に着水したあと、ヘリが沈みかけていた所で彼女達に救助されたのです」

 

「そうでしたか……ヘリが墜落したところまでは覚えていますけど……」

 

 カヤはヘリの高度がやけに下がっていることに気が付き、シートベルトを外してコックピットの様子を見に行こうと立ったところで着水。衝撃で派手に飛んで頭を打ち、気絶していた。

 

「何も無い海上で急に高度下げてるヘリがいるなって、うちの子がレーダー見てて気づいてね。事故かもしれないし行ってみようって話になったのよ」

 

「本当に、心から感謝します……」

 

「いいって、海の上で遭難なんて命に関わるんだから、助けるのはあたりまえのことでしょ?」

 

 なんで不良やってるんでしょうね、この子。そう思うカヤであった。

 

「ラブさん、私からもあらためて感謝を、ヘリが沈まないうちに来ていただけたのは幸いでした……」

 

「な、なんかむず痒いなぁ……ま、全員たいした怪我がなくてよかったわ」

 

 乗っていた大型ヘリのCH47チヌークは短時間なら水面に浮かんでいることができる構造だ。波は穏やかで、着水の角度も急ではなかったので幸い大破せずに停止し、暫く浮いていた……が、ダメージはあり浸水はするので、そう長く持ったわけではない。

 

 SOSの信号、メーデーなど発信できているわけもないので、そのままならカヤと気を失っていたパイロットの生徒二人を掴んで脱出したリンも、水上で掴まるものがなく……長くは持たなかった可能性があった。

 

 本当に幸いだったのは偶然、高度が不自然に下がっていくヘリの姿を、近くの島に上陸していたラブ達ジャブジャブ・ヘルメット団の面々がレーダーで見ていたからである。

 

 ラブのホバークラフトは速度の出る水陸両用艇、急げば間に合う距離。レーダーからヘリが消えたことで、事故かもしれないと急いで向かった先で見つけたのは……やはり墜落し、まだ水上に浮かんでいるヘリの姿だった。

 

 そうして4人を救助したあと、ギリギリ浮かんでいるヘリにフロートを取りつけて曳航し、今いる島に上陸していた。事故からそう時間は経っていない、まだ昼前といったところか。

 

「そういえば、他の二人は?」

 

 墜落の事情を知っている筈のパイロット二人の姿が見えないことに、カヤは訝しむ。

 

「ああ、一緒だった子達なら、ウチの子達と物資の調達に行ってるわ。でも働いてないと気がすまないって、連邦の子はちょっと病的じゃない? ヤバくない? 大丈夫なの?」

 

「自分達が事故の原因という思いが、そうさせるのかもしれませんが……」

 

「え? あの二人の操縦ミスだったんです?」

 

 カヤからすれば驚く内容だ。パイロットの生徒、神田と栗原は知らない二人ではない。連邦上級生徒の移動を選任で任される、統括室の連邦生徒2年生。所属こそリンの部下ではあるが、無派閥の生徒でカヤとの仲も悪くない。

 

「操縦中の居眠りって話だったけど、何かひっかかるんだっけ?」

 

「ええ……たとえ3徹していても操縦ミスをするなど考えられない二人です。聞けば意識を失うようにして眠ってしまったと……二人同時にです、訝しいと思いませんか、カヤ」

 

「……盛られましたかね、これは」

 

「おそらく……」

 

 真っ先に疑うべきは昨日のバーベキューである、参加者が多すぎて、特定は難しい。生徒だけでなく大人も多数いたのだ。

 

 パラダイス・リゾートの存続保証をしたのはリンで、提案をしたのはカヤだ。二人を消してあの場で利益を得る者は居ない筈であるが……。

 

 安定のカイザー? 自分が磔にされてた十字架を背中に括り付けられたまま、焼き肉食いつつ真面目な営業トーク活動してきていたカイザー営業課長(元理事)の様子をみれば、カイザーの謀略の可能性は……低いと思う。

 

 となると推定犯人は別にいることになるが……。

 

「やれやれ、またユキノさん達に仕事を頼まねばなりませんか……いや、その前にこの有り様を知られたら怒られてしまいますね、警護を外すのやっぱだめって。そういえば連邦に連絡は? 迎えのヘリはまだ来ませんか?」

 

「あー……その、ねぇ……」

 

「カヤ、落ち着いて聞いて下さいね……私達は今、遭難しています」

 

「はい?」

 

「とりあえず近くの島に上陸してはいるんだけど、ここから動けないの」

 

「故障ですか? それなら修理すれば……」

 

「燃料がないのよ」

 

「は!? 燃料!? どういうことなんです!?」

 

「色々あって元々少なかったんだけど、あんた達を助けにエンジン吹かして行ったら……もう最寄りの港に辿り着ける分、残ってなかったのよね……」

 

 カヤは知らなかったが、ホバークラフトは燃料消費の激しい船舶。パラダイスリゾートに関連した抗争で、根城にしていた入江を追われたラブは、残った燃料で辿り着けそうな港を目指していたところだった……そこにヘリの墜落だ。

 

「救難信号は出してもらっていますが、殆ど燃料がないのでエンジンがあまり動かせずにいて出力が弱く、途切れ途切れで……。主要な航路から外れているため、誰かが気づいてくれるのかは、なんとも」

 

「……そぉ、ですかぁ……」

 

 それを言われるとカヤはもう何も言えなかった、ラブ達は遭難覚悟で救助しに来てくれたのだ。

 

 海上で燃料が尽きるというのは端的に危機だと言えるが、そんな中でも後先考えず、人命救助を優先したのは彼女の善性の賜物だった。そんなラブだからこそ、貧しくても団員達はついていくし、今もこうして島から動けなくなっても皆して楽観的。

 

 この現状をそこそこ楽しむ余裕すらあった。そう……他のヘルメット団員達はパイロットの二人を連れて、食料調達に向かっている。完全にサバイバルする気でいて、マジ逞しいがすぎますね。

 

「とりあえず、皆が帰ってきたらお昼にしましょ。持ち出せる分は全部持ってきてるから、暫くはなんとかなるわ」

 

 状況は端的に遭難だが、陸地にはたどり着いているので絶望的というほどではない。

 

 ヘルメット団は横のつながりがあり、抗争をするスケバンとも一定の付き合いがある。拠点から追い出されたラブ達が何処にも戻らない、連絡もつかないとなれば……連合が所在の確認をしてくれるのだ。場所が海だけに、スケバン達も命に関わる事態と認識すれば力を貸してくれる。常日頃抗争はすれども、そういう関係があるのだ。

 

 この艇は普段から住居にしているので、水も食料も備蓄に余裕があった。リゾート関連の物資もあったので普段より余裕があるぐらいだ。またホバークラフトには太陽光発電設備があり、電気分解システムで真水も作れた。食料なら魚介類はいくらでもとれるし、見える範囲にレモンがあることから、島の木々からも果実が期待できる。

 

 そして何よりも、真水が作れるということは、シャワーも使えるということ……つまりサバイバルというにはイージーモードと言っていい。何なら連邦生徒会での最近の有り様よりも、ずっと文明的な暮らしができるだろう。

 

 国家の中枢にいながらサバイバル環境以下ってあんまりだよね。

 

 ということで、リンとカヤの強制島休暇がここに始まってしまったのであった。

 

「きっと大丈夫よ。2週間も連絡つかなければ、流石にヘルメット連合の誰かがスケバン達から話を聞いて、探しに来てくれるだろうし」

 

「救助のアテがあるならまぁ……けれど2週間も無人島にいたくはありませんねぇ……仕事がどれだけ溜まってしまうやら、どう思います? 首席代行のリンさん」

 

「考えたくもありませんね……」

 

「航路から離れてるっていっても、全く船が通らないってことはないでしょ。ま、のんびりしましょ。連邦生徒って忙しいんでしょ? たまにはゆっくりしたら?」

 

「そうですね……まあちょっと僅かにヤバい事態になるかもしれませんけど、崎守さん達が普段から実務回してくれてますし。アオイさんもいますしね、なんとかなりますか。お頼りするのもなんですけど、トリニティも上手いことしてくれる筈です。ナギサ様は外周圏に外遊ですが、セイアさんが残ってますからね」

 

「アオイやアユムに負担をかけてしまうのは心配です、早く戻らないと……」

 

「ジタバタしても始まりませんし、アオイさんならなんとかしてくれてますよ、あれで結構政治力あるんですから、夏休みだし案件も少ない(感覚麻痺)ですしねぇ」

 

「だと、いいのですが……」

 

 

 ……全然大丈夫じゃないんだよ!! 

 

 

 自己肯定感低いのに最近勢いでゴリ押ししがちな七神リンは、なんとか回ってる連邦生徒会の仕組みが、この場の自分達の存在ありきである自覚が薄かった。

 

 必要な時に足元が見えてない少女、不知火カヤは普段から自分が細々した実務をしてないからこそ、他人に期待し過ぎであった。

 

 責任者不在で回る組織などない。何が起きても異常官僚力で処理しきるリンと、コネと口八丁で丸く収めてくれるカヤの安心感があったからこそ動けていた側面が大きいのだ。

 

 ドラスティックな官僚力・政治家力の『暴れ』を繊細な計算で成立させていた功労者のアオイは最近政治力の行使どころの騒ぎではなかったし、別分野2人分の仕事を財務しながらできるはずなどない……アオイちゃんへの信頼が重すぎる!! 信頼っていうか盲信だよそれは!!

 

 二人揃って無意識に頼りにしてるアオイちゃんは今にも死にそうなメンタルなんですよ。

 

 事態を完全に理解した今から数時間後のアオイちゃんは真っ青になって、捜索部隊を組織してお前らのために半泣きで方方走り回る感じの未来なんだけどね。「お願い、二人とも無事でいて……」なんて気弱な台詞を大窓によりかかりながら呟いてる、最高に可哀想な状態。

 

 一部からは代行二人を消してトップに立とうとしてる? とか疑われ、敬愛する上司が急に消えて抑えの効かなくなった連中が、クーの高まりとか言ってヤバい動きを見せ始めていて大変なんだよ!!

 

 ナギサ達トリニティへの信頼溢れるカヤはもちろん、ナギサへの頼り切りを良しとしない心意気を持つリンも、外遊ついでの旅行中なナギサは大丈夫だろうし、残ったセイアが超頑張る分には……まあええやろという、セクシーなFOXも流石のブチギレという雑な扱いで割り切った。

 

 二人はまさか今、色々大惨事がピタゴラ連動していてお祭り騒ぎになっているとは、夢にも思っていなかったのである。

 

 過激な連勤の日々と事故の衝撃による、致し方ない判断力の低下が招いたミス……まあ認識できたところで出来ることは何もないが。

 

 連邦生徒会会長代行失踪事件、それは始まる地獄のカーニバル。あまねく奇跡の月への旅へのプロローグ。ここは地獄の一丁目、キヴォトスに訪れる試練の時、その序章……。

 

 奇跡のピタゴラスイッチ、その最初のスイッチが自分達だったことなど……全くもって、ご存知無かった。

 

 そしてこの後、暫く時間の経過した外周圏では……。

 

 

 

 

27:名無しの12使徒

見ろよ!! 駅前のビルがドミノしていくぜ!! 最高のショーだろ!!

 

28:名無しの12使徒

吸血ビルに相応しい末路ですわ。

 

29:名無しの12使徒

前から不思議だったんだけど、ヤヤイナカエリアの駅前ってさ、なんでこんなに消費者金融のビルが多いんだろ? 中央でも郊外に行くとわりと見るよね。

 

30:名無しの12使徒

外周圏は殆どの駅前で吸血ビル見るね、ここ一応自治区中央駅なんだけど……地方は中心レベルでもヤヤイナカエリアってことなんかな。

 

31:名無しの12使徒

ヤヤがついてないイナカだとビル自体ないけどな……そいや百鬼夜行とかは景観条例があるから排除されてたろ確か。

 

32:名無しの12使徒

いや、あれは見た目が長屋になってるだけで、あるにはあるってカホさんが言ってた気がする、あんまり良い存在じゃないけど存在潰す根拠もないから困ってるとかなんとか。

 

33:名無しの12使徒

ん、丁度いいじゃん。これを機会に駅前の吸血ビルを全部薙ぎ倒すってのはどう?

 

34:名無しの12使徒

街の美化に貢献だね!! きっと皆喜んでくれるよ!!

 

35:名無しの12使徒

金を簡単に借りれる所があるから無駄に借りてしまう連中が出るわけだからな、吸血ビルは焼いとくに限る。ここは一つ、クリーンキャンペーンで善行といこうやリーダー。

 

36:名無しの12使徒

そうするか。どうせ元締めはジモのヤクザだ、今回の目標には違いない。ビーム輝くフラッシュバックしてやらねぇとな。

 

消費者金融系のビルを副次目標に追加する。弾薬残数に注意、可能な限りアメミットかビーム1発でドミノさせて弾薬消費を抑制しろ。

 

37:名無しの12使徒

Aコマンドユニット、アイ・コピー。

 

38:名無しの12使徒

始発列車での奇襲は大成功だね、連中慌てるばかりで、まだ迎撃にも出てこない。

 

39:名無しの12使徒

外周圏のヤクザはブラックマーケットレベルの人員装備って聞いてから気合入れて無線封止したんだけど……大したことなさすぎるわ、なんか肩透かしだ。所詮は過酷な生存競争に晒されてこなかったヌルい連中ということか、カイザー系列やブラマ、企業連が見たら呆れそうだな。

 

40:名無しの12使徒

中央の人達は訓練されすぎだと思うから……。

 

41:名無しの12使徒

この街も、ハイランダーの装甲列車が砲撃しまくってるのに未だに警報すら鳴らない。呑気な連中だ……中央の連中なら3発目が着弾するぐらいにはもうサイレンが鳴って迎撃か退避始めてるぞ、やる気あるのか?

 

42:名無しの12使徒

夜討ち朝駆けは基本だろ。訓練の不備を感じるわ、だめだろそんなんじゃ。ガチでヤバいテロリストとか来たらどうすんだよ。

 

43:名無しの12使徒

避難マニュアルや迎撃の指揮系統が構築されてるかも怪しい。外周圏はもしかしたら外敵がやってくるかもしれないところなのに……こんなんじゃ、いざ侵略とかされたら危険が危ないじゃ済まないぞ。

 

44:名無しの12使徒

アビドスさんちが最近エーカも連れて襲いまくってたんだろ? それでまだこんなレベルじゃイカンでしょ。

 

45:名無しの12使徒 

お前達に足りないものが一つある……それは危機感だ。

 

自分だけは襲われないとでも思ってたのか? 呑気にも程があるわ、こんなレベルでもヤーさん達が自治区を食い物にできるってあたりで、外周圏自治区の貧しい内情が察せられるな。

 

46:名無しの12使徒

ホシノパイセンは抵抗するなら基本皆殺しだけど命乞いはきいてくれるし、わりとスマートというか賞金首だけ綺麗に狩っていくタイプで、暴れが激しいのはどっちかというとシロとノノミだよ。シロは命乞いを大喜利だと思ってるから、聞き終わったら昇天させるからね。

 

47:名無しの12使徒

アビドス2年組の無法ぶりにサバンナ世代を感じる……。

 

あ、あの……自治区生徒会の子達が騒然としてるけど、これ本当に通達周知されてます? 大丈夫なの? 話通ってるんだよね、ノゾミ?

 

48:名無しの12使徒

ノゾミ「パヒャヒャ!! うん、伝えてあるよ!! 正確に、簡潔にね!!」

 

ナギサ様の列車を爆破しようとしたカスが潜伏してる『可能性がある』場所は見える範囲全部焼き討ちしますって言ってある。無線封鎖してたから、駅に到着した瞬間だけどな。

 

49:名無しの12使徒

あ、あの……それって全然警告になってないんじゃ……。

 

50:名無しの12使徒

出迎えに来てた現地生徒会長がホームでイッチに縋り付いてるが、ナギサ様とミカ様はまだお休みしてるんでお目通りは許されないぜ!! 後にしてくれよな!! 

 

そう心配することはないって、駅前の一等地をカス共に占拠されて困ってたんだろ? 綺麗に整地してやるからよ!!

 

51:名無しの12使徒

再開発に必要な地均しってやつですわね。

 

52:名無しの12使徒

は、はい……ダチョウ、ロードローラーになります……。(パンコロー)

 

お、やっと戦車が出てきやがった。欠伸が出るほど遅いわ。

 

53:名無しの12使徒

カイザーインダストリの重戦車Type893だ。ジモの生徒会がタンケッテしかないのに高級モデルもってるあたり、ヤクザ側の裕福さを感じるわね。

 

ちょっと1発が勿体ないけど、ここはビームライフルで抵抗は無駄ってことをアピールしとくかな……ほなサイナラ。

 

54:名無しの12使徒

真っ赤に溶けて 大 爆 発 !! 貫通した先のビルも良い感じに吹っ飛んでて気持ちいいぜ!!

 

55:名無しの12使徒

乗員のヤクザさんが月まで吹っ飛んでいったね!! ビーム浴びるのは中々できない体験だと思うから、武勇伝にしてほしいよ!!

 

56:名無しの12使徒

どんな物体もビームライフルの前には無力!! 全部貫通!! なのに人体には完全無害のクリーンな安全性!! すげぇぇぇぇ!! こんな人道的な超兵器ありかよ!!

 

57:名無しの12使徒

最強!無敵!ビームライフル!やっぱミレニアムは最高だろ!!

 

58:名無しの12使徒

ミレニアムで思い出しましたけど、そういえばそちらは? マアンナ号は修理できそうなレベルですの?

 

59:名無しの12使徒

無理無理!! 船体木っ端微塵だもん!!

 

60:名無しの12使徒

艦首と艦尾の先がかろうじて原形留めてるかなってぐらいで、ほぼ跡形もないわ。原形とどめてるっていっても主砲は全部バーベッドから脱落してるし、まあ爆沈って感じ。

 

61:名無しの12使徒

リオ会長に連絡したら、主砲のコア部品と浮力機関だけ回収するからそのへんに集めて転がしておいてってさ。沈んだことには「そう……」だけで特にコメントないの笑っちゃう。

 

62:名無しの12使徒

浮力機関? エンジンとは別だった? というか残ってんの?

 

63:名無しの12使徒

廃墟から発掘したオーパーツらしい。墜落しても無事なように炉心格納容器に入ってるから無事だろうって。なんでも重さを無くす変なガスを発生させるとかなんとか。

 

64:名無しの12使徒

あそっか……よくよく考えたら、あの武装と装甲とサイズで普通の飛行船作って浮かぶわけねぇわな。なんで浮いてるのかまでは皆特に気にしてなかったけど、そういうギミックが。

 

65:名無しの12使徒

お値段5ユウカの戦艦が就役式典前に爆沈したってのに、マジで微塵も動揺してないリオ会長強すぎて草。ユウカの方はそのお電話の背後で転がってのたうち回ってる感ある絶叫が聞こえてたのに。

 

66:名無しの12使徒

そらあんだけ揉め事片付けて、ようやく送り出した戦艦が一晩でパーだぞ? 発狂してもおかしくないだろ……かわいそうに。

 

67:名無しの12使徒

皆で頑張ったけどアカンかったで、すまんて……。

 

68:名無しの12使徒

モエはさぁ……いや、強奪防いだんだから殊勲は殊勲なんだけど……。

 

69:名無しの12使徒

グラスラに点火して丸ごと吹っ飛ばすやつがあるかよ!! 驚愕だよ!!

 

70:名無しの12使徒

ダチョウも震撼する思い切りの良さ、有望な1年生だなおい。

 

71:名無しの12使徒

FOX達も褒めて良いのか、シバいていいのかって感じだったね……。

 

72:名無しの12使徒

いや、守りきれなかったのは私らの落ち度だ。モエの趣味はともかく失態をカバーしてくれたんだから褒めの一択だろ。むしろSRT3小隊、私ら2小隊、選抜が一個中隊いてみすみす船を奪われそうになってる不甲斐なさこそ問題だろうがよ。

 

73:名無しの12使徒

1年坊にカバーしてもらったと考えると普通に情けないわな。

 

74:名無しの12使徒

そうね……だがデカケツ、かなりの強敵だった。コクマーとかいったか、見事な戦術だったと思う、あの巨体でよく私らを振り回してみせたわ。しかも陽動して工作部隊を送り込んでる手際の良さだ、油断ならん。

 

75:名無しの12使徒

残敵は掃討したけどコクマーは逃がしちまった。目的失敗を悟ったら速攻撤退するあたり、割り切りもいい……こいつは次の機会が楽しみだな。

 

76:名無しの12使徒

楽しくなってまいりました!! 次はこんな恥ずかしい姿はお見せしないよ、期待しててね!!

 

77:名無しの12使徒

火耐性を得て、更にパンプアップしたダチョウの姿をお見せしなくてはな。

 

 

 

 

「へえ? じゃあ連邦って寄合世帯みたいなもんなんだ?」

 

「そーなんですー、私はレッドウィンター自治区出身ですね!! 地元は連邦に沢山生徒を出してて、馴染みの子も多いんですよ、ねー?」

 

「そういえば、意識してなかったけど結構いたかな? 甲斐もたしかそうだし……真面目な子とイカれた子の比率が半々だけど」

 

「レッドウィンターって毎週クーがおきる、とんでもないイカれ学園って聞くけど……連邦に入れる生徒が多いってなんか不思議だわ」

 

「イカれてないよー!! それにクーは毎週じゃなくて、毎日だよ? 週に一回は成功するの」

 

「やっぱイカれてんじゃん!!」「意味わかんねぇよ……怖いよレッドウィンター……」

 

 連邦生徒とヘルメット団生徒が煮詰めた貝汁をジュース代わりに持って仲良く談笑する様を、ラブとリンとカヤはパラソルの下でビーチに並べた椅子から眺めていた。

 

「仲良くなっちゃってまぁ……」

 

「連邦生徒なんてお高く止まってるもんだと皆思ってたけど、そうでもない感じだしね。というかあんた達ったら学畜ぶりが異常すぎてドン引きよ!! ヘルメット団以下の暮らしとかどうなってるの!? せめてちゃんと食べなさいよ!!」

 

「あまり時間がなくて……ナギサさんからも改めるように言われているのですが……」

 

「基本サンドイッチで、ちょっと時間があるならコンビニ物かカップメンですもんねぇ。私も外回ってる時は車の中で済ませてますけど、出先の生徒会がお菓子くれることが多いんで、まあそれで」

 

「うわ……そんなだから背が伸びないんでしょ? もっと食べないと……」

 

「今私のことチビでザコって言いましたか!?」

 

「いや、そこまでは言ってないけどさ……」

 

 しれっと全員水着であった。体格の良いリンだけ水着になっても色々とパツパツのままだが、意外と借りた予備の服が馴染む面々は、立場を気にせずに今の穏やかな時間を過ごしている。

 

 というか、ヘルメット団に馴染みすぎだった。なんなら日差しが強いからヘルメット被る? 予備あるよ? の申し出に、ありがたくお借りしていたりもした。

 

 ジャブジャブ・ヘルメット団の姉妹組織、連邦ヘルメット団の結成である。

 

 ヘルメット団以外の生徒は知らないことが多いが、サマーヘルメットはバッテリ充電式の空調が入っていて、紫外線完全カットの上で実は見た目に反して涼しかったりする。尚、ウィンターヘルメットには熱線の暖房だ、ヘルメットの誇りだけで被っているわけではない、実用性もあった。

 

「2日連続の焼き肉に貝のスープ、豊富な果実……なんだか贅沢ですねリンさん」

 

「いいのかしら、こんなことしていて……」

 

「いーのよ、傷みやすい食材は早めに食べる、基本でしょ?」

 

 艇の冷蔵庫は電力節約でパワーが下がっているので、生肉類は早めに消費しておこうという判断の連続焼き肉祭りである、コメもあるぞ。

 

 水産物が簡単に手に入る良質な環境、フルーツの多い木々の実り。ホバークラフトに生活用品が全てあるので、もう完全に海に遊びに来たぐらいの感覚だった。

 

 そう、完全に休暇を満喫しているのである。

 

「あ゛ー……なんか癒やされますねぇ。ホテルアラバでの強制休養も悪くなかったですけど、ハイネが朝早いし結構喋りますし、派閥の子もひっきりなしにきてたもんで……少人数でぼやっとする時間、そんなでもなかったんですよね」

 

「もう随分前のように感じますね……温泉はありがたかったですが」

 

「温泉開発部の正しい使い方って感じですね、そういうのでいいんですよ、そういうので……」

 

「行政生徒って大変なのね……」

 

「そうなんですよー……わかってくれます? まあ学籍無くした生徒よりは全然マシですよ、そちらも大変でしょう? 色々と」

 

「学籍のない生徒達の暮らしを、殆ど支援できていないことは申し訳なく思っています……ですが」

 

「あーいいから、今はそういうのいいから。リン、あんた真面目すぎるって。私達は私達なりの理由があってこういう暮らししてるんだから……いいのよ。それに昔よりはずっと良くなってる、それでいいじゃない」

 

「……」

 

「全部一人で抱え込む必要なんてないでしょ、話聞いてたら無茶苦茶だわ……」「ですよねぇ」「いや、カヤ……あんたも大概だからね?」

 

 連邦生徒とヘルメット団、相反する立場のそれを『気にするな』と言うラブの心遣いに、リンは頭が下がる思いだった。こういったこぼれ落ちた子達を見捨てざるを得ない連邦のリソース不足、自分達の力不足を考えないではなかったからだ。

 

 抱え込みすぎるなという言葉も、誰が口にしたかで意味合いが変わってくる。行政から見捨てられている立場にいる生徒から、そんな言葉をかけられるとは、夢にも……。

 

 勿論、これはある程度余裕があるラブ達だからこその反応だった。ナギサの慈愛が示され続けてきた今のキヴォトスは、以前と以後で生きるか死ぬかのラインが全く違う。そういう意味では、幸いな出会いだったと言える。

 

「というか、ラブさんはトリニティの出でしょう? なんだってヘルメット団に?」

 

「まぁ色々あってね……入ってそんなに経たず抜けちゃったから。ダチョウが大暴れしてた時期だし、謝肉祭ぐらいまではいたほうがよかったかな? って思うけど、まあいいのよ……あの子達のこともあるしね」

 

 ラブ自身はトリニティを中退したつもりだったが、実はティーパーティーの図らいで、学籍は休学扱いで保留されていることを知らなかった。なのでもし復学すると、1年生から再スタートです。君は留年してるんだよ!!

 

「だんちょー!! 摘んできたオレンジ絞ってみたんですけど、どうすかー!!」

 

「もらうー!! 100%ジュースが自給できるんだから良い島よね、あんた達も飲むでしょ?」

 

「ええ」「頂きますよ」

 

 

 

 

「……ミカさん?」

 

「……ん? あー……おはよ、ナギちゃん」

 

 桐藤ナギサはお召し列車の寝室、寝台で目を覚ます。

 

 自分ではない羽毛の感触が手の中にあった。幼い頃のように同じベッドで寝たミカの温度を感じ、声をかけると、まだぼんやりした声が返ってくる。

 

 就寝は数時間前で、眠りは足りず、しかも慣れた寝台でもない。清々しいとは言えない寝起きだが、ミカの羽毛とその体温がナギサの心に安心感を与えていた。

 

 時刻は9時半といったところか、本来の予定では今日最初の行幸する自治区の駅に到着する時間だったが……。予定は変更されると聞いている、場合によってはこのままトリニティへの帰路につく可能性もあるが、流石に自治区へ全く顔も見せずというわけにはいかない。

 

 途中で起こされていないということは、トラブルも以後は無かったということなのだろう。

 

「ミカさん、起きてください……予定がどうなるかはわかりませんが、人前に出る準備はしておかないと……」

 

「んー……はーい……」

 

 やや寝ぼけているミカの身支度を、自身と並行しつつやっていくナギサだった。列車に走行中らしい揺れはない、どうやら停車しているようであり、締められたカーテンを通して僅かに明るい日差しが透けて見える。

 

「? 何の音でしょう」「……なんだろねー……」

 

 だがナギサは、ミカの髪と羽を梳かしながら訝しむ。何か……外から音がしている、それに僅かだが振動があった。

 

 ドン、ドン。それは静かで重い音……砲術委員会を指揮下にもつ、トリニティ総領主生徒会長として、その音には心当たりがあった……大砲だ。

 

 礼砲でもされているのだろうか、そうなれば自分達が出ないわけにはいかない、答礼もしなくてはいけないし……そう思って手早く身支度を終えたナギサはミカを伴って部屋を出て……。

 

 窓一面に広がる光景を見て絶句した。

 

 

 炎上する自治区!! 黒煙が立ち上る暴虐の嵐に晒された街の姿!!

 

 

「な、なーー!? これは!? なぜーー!?」「!? ど、どうしたのナギちゃ……って、ええーー!?」

 

 燃え上がる炎が駅前のビルを幾つも包んでい……!! って倒れた!! バタバタとビルがドミノみたいに倒れていく!! 何がどうなって!? 寝起き開幕一発目の光景としては心臓に悪すぎるホラー映像!! だが実写だ!! これは現実!!

 

「ナギサ様、ミカ様……」

 

 絶句の二人の横に音もなく現れた黒羽の生徒がスッと平伏する。こういう役目は何時もならティーパーティーの幹部なのになぁと思いつつ、まことに申し上げにくいことを、お伝えしなくてはなりません構文を私がすることになるかぁ……という、気分サゲサゲな仲正イチカのエントリーだ。

 

「イチカちゃん!!」

 

「!? イチカさん、これは一体!? 一体何が!? まさかあの子達が!?」

 

「はい……誠に、まことに申し上げにくいことを、お伝えしなくてはなりません……。仲正はこの件について、ただお詫び申し上げる他にありません、どうか……どうか平に、平にお許しください……現在、12使徒が襲撃の実行犯を匿っていると『思われる』勢力を攻撃中です」

 

「思われるって何!? それって誰か判ってないってことだよね!?」

 

「そうっすね……なので、目についた反社会的勢力を端から攻撃中っすよ……んん、攻撃中です」

 

「まってください、じゃあこれは!? 今鳴り響いてるこの砲撃音は……ハイランダーの砲列車が!? 自治区に向かって砲撃中なのですか!?」

 

「攻撃の主導は、ハイランダー鉄道学園の装甲列車『大隊』ですナギサ様……夜明けの最初の停車駅以降、次々に合流してきて……今や装甲列車が25両編成っす。沿線を走りながら撃ちまくってます、この自治区に来るまでにも既に7つの街が……その……」

 

お召し列車の防音が完成度高かったことで、ナギサとミカは夜明けから既に数時間、いくつもの自治区を巻き込みながら進行していた暴虐の嵐を知ること無くお休みしていたのだった……。

 

「 」

 

「ナ、ナギちゃーん!! しっかりしてー!!」「ナギサ様!?」

 

 ドターッと床にぶっ倒れたナギサは意識が遠のきそうだった、考えるまでもなくヤバい事態である。目標が曖昧すぎて、確実に無辜の民も無茶苦茶にしているのが確定だからだ……こ、こんなのどう収拾つければ……!!

 

 何が一番不味いのかというと、12使徒が暴れているだけでなく、ハイランダーがこれ幸いと自分達にとっての邪魔者をぶっ潰しているだろうことだった。沿線の反社会的勢力はハイランダーの鉄道運行業務の邪魔者だ、12使徒の暴れに混ざって、一緒に消すつもりなのだとナギサにはあたりが付いた。

 

 ハイランダーは別学園であり、この攻撃はあくまで協力要請を受けてのことでナギサに命令されてのことではない。ハイランダーを止めるためにはハイランダーにも折衝がいる。

 

 そして何より……。

 

「ナギサ様……各自治区の代表者が御目通りを願っております……この自治区を含めて通過した自治区の生徒会長達が、客車にてお待ちになっていて……」

 

 ですよね、そら開幕火の海にされてる自治区側としては驚愕だよ。ナギサ襲撃の犯人は自分達ではありませんと潔白を証明しつつ、ダチョウとハイランダーを止めてくださいと懇願しにきているのだ。

 

「……すぐに会います……先触れをお願いできますか、イチカさん」

 

「はっ……仲正、直ちに」

 

 イチカが足早に去る中、ミカに抱き起こされたナギサは強めに差し込むような痛みを訴える胃を押さえた。まさか正体も判っていない敵を探して自治区を焼き討ちして回っているなど、寝る前には想像もしていなかったのである。

 

「ど、どうしよナギちゃん……」

 

「……生徒会長達とは、私が話します……ミカさんは……あの子達を連れ戻してください……お願いします……」

 

「う、うん……でも、止まるかなぁ……」

 

「どうにか、どうにかお願いします……集めさえすれば私が話しますから……」

 

 言って簡単に止まるようなら今日この日まで、こんなに苦労はしていないのだった。

 

 そもそもナギサに手を出されたのが問題だ。昨日の時点では冷静そうにみえたので失念していたが、城島ツバメ以下A小隊の面々は表情に出さないだけで全ギレだったのだ。でないとこれほどまでに容赦のない破壊を振りまくことはない……。

 

 ハイランダーもなんか異様にノリノリというか、装甲列車は有事にしか出さないのに、なんと25両も集結している。

 

 各地の基幹駅や整備基地から、パーティーの始まりだとばかりに続々と集結してきたのである。普段から運行の邪魔をするダークサイド勢力にストレス溜め込んでいたハイランダー生徒達は、これ幸いと自分達が『ぶっ潰したかった勢力』目掛けて、全力で砲弾をブチ込んでいる。ナギサの予想は概ね当たりだった。

 

 流石にこれだけ暴虐の嵐をしていると、相手も反撃を試みるのだが……今までにない苛烈な火力の投射と、ダチョウという信じられない存在が車列を守りながら暴れ回っていて反撃どころではない。

 

 外周圏の人々はこれが初めて実物を肉眼で目にする、ダチョウの考えられない暴力と暴虐であった。こいつら機関砲どころか戦車砲食らってもよろめきさえしねぇ!! なんなんだよこれは!? というかホントに飛んでるしビーム撃ってくるぞオイ!!

 

 カイザーPMCとかなら「まだ1小隊でかつ散開してるじゃん、これで音を上げるのはえーだろ? 訓練不足か?」とか言い出す状態だが。それはカイザー達中央のダークサイド大人が訓練されすぎているだけであり、人外のモンスター集団と陸の戦艦と化した長大な装甲列車列を相手にするとか、考えたこともないシチュエーションだ。

 

 そうして既に7つの自治区の駅周辺は壊滅、一等地を占拠していたダークサイド外周民も壊滅。無辜の一般市民も劫火の中逃げ惑う、炎に包まれた沿線を増やしながら、車列は外周圏環状鉄道を侵攻していた。

 

 恐怖に凍りついた侵攻先の自治区ダークサイド民から鉄路の破壊工作も無論受けたが、ハイランダーは保線中隊と鉄道整備中隊、レール敷設車両を伴っていて、レールを少々壊されたところでその場で修復しながら侵攻してくる恐怖現実。

 

 気がつけば各地の鉄橋はハイランダー鉄道警備隊の生徒が固めていて、もう橋への工作は不可能だ。外周ダークサイド民は、レールを進んでくる『死』を前に恐怖に怯えながら、遅すぎる逃げ支度を急ぐ他になかったのである。

 

 だが、これは実のところ彼らの自業自得であった。

 

「あっ、ナギさんミカさんお目覚め―? おはようございまーす!!」

 

「ノゾミちゃん!? あ、そうだねおはよ……って、ちょっとこれどうなってるの!?」

 

「ノゾミさん……おはようございます。その、これは一体……」

 

「んー? 焼き討ち? 襲撃の犯人が判ったから、制裁ついでにクリーンキャンペーンだよ」

 

「犯人わかったの!?」

 

「デカグラマトンなる勢力ではないかと聞いていましたが……」

 

「デカグラ? パヒャヒャ!! 違うよー、外周圏のダークサイド連合がさー、ナギさん達が来たらヤバいからって、鉄橋落として自分達のシマに来れないようにしようって感じだったらしいよ? 私達の鉄橋落とそうだなんてナメたマネしてくれるよねー」

 

 

 そう、ナギサ襲撃の犯人は……普通に現地のダークサイド大人であった。

 

 

「桐藤ナギサが来たらシマのシノギが大変なことになっちまう……かもしれねぇ、ダチョウはテレビで見たけどマジでやべーなあれ、人間か?」

「なら列車止めちまえばいいんじゃねぇかな? 帰るしかなくなるだろ」

「天才かよ!!」

 

 真相は本当に、何の裏もなくただそれだけ。

 

 短絡的な思いつきが生んだ……とってもタイミングの悪い鉄橋爆破が、全キヴォトス驚愕の導火線に火をつけたのである。

 

 つまりあの夜……鉄橋周辺に伏せられた戦力などない。鉄橋が通れなくなれば帰るしかないだろという、中央のダークサイド大人が見たら呆れそうなヌルい思いつきによるラッキーヒットにしてアンラッキーヒット。

 

 

 

 そう!! 誰も!!

 

 キヴォトスを転覆させるような策謀など!! していないのである!!

 

 

 

 デカグラマトン? いやあれは単にマアンナ号が放置されてるって聞いて急いでやってきただけで……それに外周圏ってよく知らないし……別に生徒会長を態々旅行中に襲うとか、そんなことする必要もないし……欲しいのは船だよ? なんでダチョウがいるところに行かないといけないの? 船も壊れちゃったし、私もう帰るね……。

 

 カイザー? 生徒達は夏休みかも知れないが我々大人は普通に仕事があるのだ、世間は休みでもビジネスに休みはない。我が社の休日は土日の他は振替休日、有給は必ず規定の日数を取りたまえ。長期連休は年末年始とオーボンだ。うむ、もうそのオーボンが近いな……夏ボーナスを支給する、家族サービスを忘れるな。

 

 内海達ダークサイド生徒? そんな暇あるわけないでしょ!! 忙しいんだよぉ!! 色々利権ないかなーって情報収集がてら他部署の仕事手伝ってたら、何でもできる子みたいに思われて、あらゆる業種の仕事が飛んでくるようになっちゃったよ!! こんなのってないよぉ!! 黒澤ちゃぁん!!

 

 尚、常に冷静な黒澤の反応は「課長、仕事増やさないでくださいよ」の一言だけだった、草ですよね。実際やってる内海ちゃんもだけど、こいつも大概だよ。

 

 各事件の関係者の皆様のコメントの通り、ヘリの事故も、マアンナ号強奪の襲撃も、ナギサへの攻撃も……何一つ連動などしてはいない、完全な偶然!! 奇跡のピタゴラスイッチ!! こんなことあるのっていう奇跡のカーニバルだった。

 

 その真実をクズノハに爆笑見どころポイントとして紹介された百合園セクシーFOXセイアはブチ切れ、怒り狂いながら転げ回りつつ叫んだ。

 

 

 ポンコツかよ!! バカじゃないのかい君らは!?

 タイミングが最悪なんだよ!! なんで一斉にやらかすんだよ!!

 なにがしたいんだぁぁぁ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

 

「外周圏ダークサイド連合って結構広域の組織なんだよね、だから目に付く端からボコしてる感じ、んじゃ……もう暫くしたら次の駅に向けて発車しまーす、パヒャヒャ!! お乗りのお客様は座席にお座りになるか、手すりにお掴まりください」

 

「ちょっとまってください!? ま、まだ現地の方と話が……!!」

 

「? 沿線の生徒会長はまとめて会合するんじゃなかったっけ? そう聞いてるから全員乗車してもらってるよ? 隊長さんが「後でナギサ様からお話あると思うっすからー」って片っ端から列車に乗せてたし」

 

「それって拉致したっていいませんか!? イチカさん!?」「イチカちゃーん!?」

 

 仲正イチカ、迫真の「もうこんなの私の手には余るっすね……ナギサ様にお願いしよ」発動であった。

 

 わりと平時は目上を立てた真面目な感じに繕ったイチカだが、想定外の連打でパニック的な極限状態になると「もうどうなってもいいや」タイムに突入し、荒くれ全開のダチョウ近似生物と化す……つまり政治とかシラネ、である。

 

 正実中隊長はトリニティの主力暴力装置だ、拳は考える頭を持たない……ということでイチカはナギサに全てを投げた。

 

 今はお召し列車の防護だけ考えとけばいいや、後のことはなんとかなるやろという、こいつもしっかりダチョウと仲良く暮らしてきたサバンナ世代だったなという順当な結果。

 

「ぅぅ……」「ナギちゃん、しっかり……」

 

「大変そーだね、何か手助けできそうなら手を貸すから言ってね。パヒャヒャ!!」

 

「後ほど……お話ししましょうね……」

 

 こうなっては女桐藤ナギサ、覚悟を決めて超頑張るしかない。

 

「ミカさん、外を……お願いします」

 

「は、はーい……いってくるね……」

 

 ヨロヨロと立ち上がり客車へと向かうナギサを見送るミカ、心配ではあるが踵を返し、列車を降りようとしたところで……。

 

「? モモトーク……じゃない? 緊急承認信号? メッセージ? ……セイアちゃんから?」

 

 

 

 

120:名無しの12使徒

よーし、これでこの地区も制圧したかな。

 

121:名無しの12使徒

良い感じに焼けたみたいだし、十分に命乞いも聞けた、次行こうぜ次。

 

122:名無しの12使徒

戦車の『開き』とビルだったもののオブジェ作りすぎて、現地無辜の市民も恐怖に凍りついてるけどね……。

 

123:名無しの12使徒

戦車を素手でパカるのそんな珍しいパフォーマンスかな? ミネ団長とかパカるよりもヤバい、裂けるチーズ化してるじゃんね。

 

124:名無しの12使徒

超硬度板でもダンボールみたいに千切れる、団長の握力に驚愕しちゃうね!!

 

125:名無しの12使徒

北斗神拳に適性があるの、たぶんそのへんだと思う。

 

126:名無しの12使徒

ヤクザさんが一番恐怖に凍りついてたの、88mm高射砲ブチこまれたユイが微動だにしてねぇ時だったと思うけどね。

 

127:名無しの12使徒

あれ初速が速いから避けづらいだけで、威力は大した事ないし……。

 

128:名無しの12使徒

ユイとキリは私らの中でも特にかてーからな、羽で防ぐ必要すらねえってやつだ。

 

129:名無しの12使徒

単射の徹甲弾とかより機関砲のほうが面倒だよね、服が汚れちゃう……。

 

130:名無しの12使徒

炸裂する弾は概ね服を汚してくるので私らの敵だ、伊藤にシバかれる……。

 

131:名無しの12使徒

榴弾とか散弾とか、効くわけないんだからやめてほしいな、徹甲弾なら白刃取りチャレンジで遊べるし。

 

132:名無しの12使徒

ツルギパイセンの三方向から同時に飛んできた戦車砲弾を掴む超技、憧れがあるよね。

 

133:名無しの12使徒

『前』でもリョーフとかいう古代中華のレジェンド武将がやってたらしいけど、リョーコはどう? できそう?

 

134:名無しの12使徒

古代中華にも戦車砲とかあったのすごいよな、4万年の歴史やべーわ。

 

私はわりときっついな、砲弾三方向同時って2発は指で掴んでビタっと回転止めないとだめでしょ、結構シビアだわ。

 

135:名無しの12使徒

4000年じゃなかったですっけ? 一桁多くないです? そういえばヒナ様はできますわよ。というか風紀委員の訓練にありますしね、砲弾白刃取りというか、砲弾掴み。

 

136:名無しの12使徒

そういやイオリも37mmドアノッカーの弾掴んで投げ返してたし、砲弾掴みはゲヘナっ子の嗜みっぽいな。

 

137:名無しの12使徒

銃弾は避けないスタイルだけど、砲弾は掴んで止める。ゲヘナでは自分に向かって撃たれた弾を慌てて避けるのはダサいという風潮があるらしい、不良文化圏のゲヘナでダサいは許されることではないからな。だったら耐えるか掴む、そういうことなんだろう。

 

138:名無しの12使徒

流石ゲヘナだ、筋金入ってるぜ。

 

139:名無しの12使徒

サクラコ様達が銃弾切ってるのかっこいいってゲヘナ民に評判だったね。

 

140:名無しの12使徒

シスフの皆は完全にジェダイ化してて空気が別モンになってら。連携とかはしないけど、ソロ状態があまりに強くて、突っかかったお不良さんチームがボロ切れにされてるの毎度お笑いなんだよな。

 

141:名無しの12使徒

エデンでマジでヤバいって世間様に広く知られただろうに、何故シスフのシスター服を見てカツアゲがイケると思うのか……。

 

142:名無しの12使徒

一般通過シスターの旗崎ですら銃弾かすりもしねぇのに、聖堂騎士にお調子こくのは自殺願望だろ。サクラコ様とか常時無双転生状態だぞ、360度全周から撃たれても一発も当たらん。

 

143:名無しの12使徒

お、信号弾だ。手仕舞いかな?

 

144:名無しの12使徒

Aチーム、撤収だ。残敵は捨て置け、十分恐怖は刻んだだろう。

 

145:名無しの12使徒

Aコマンドユニット、アイ・コピー。

 

146:名無しの12使徒

ん? ミカ様からお呼び出しだ。お目覚めになったか、ということはナギサ様もだな。ご報告に上がらねば。

 

147:名無しの12使徒

ミカちゃん様にゴミ掃除の結果をお知らせだね、きっと喜んでくださるよ!!

 

148:名無しの12使徒

とんでもねぇカス共の稚拙な策謀だったが、まあいい。ゴミ掃除の予定が早まっただけだ。

 

149:名無しの12使徒

しかしまさか、道を塞げばこれんやろ作戦だけだったとはな、タイミングがよすぎて焦ったぜ。鉄橋の時は正直かなり警戒したが、なんてことはない……やっぱり犯人はこっちで、向こうは関係無しだったと。

 

150:名無しの12使徒

でも、色々偶然というにはできすぎなんだよね。本当に黒幕居ないのかな……。

 

151:名無しの12使徒

まあそこらはこれからお調査が入るだろ、とりま実行犯を端からかたしていけばいいで。

 

152:名無しの12使徒

ん!! 最終的に全員潰せばいいのだ!!

 

 

 

 

253:名無しの12使徒

Aチーム集結完了、ミカ様はどこかな……。

 

254:名無しの12使徒

気配的にはあちらにおられますね。

 

255:名無しの12使徒

車両格納庫かここ、廃墟感ある。

 

256:名無しの12使徒

今は使ってないのかもしれないね。

 

257:名無しの12使徒

お、いたいた。ミカちゃん様ーー。

 

あれ? それもってきてたの?

 

258:名無しの12使徒

列車のほうに敵は流さなかった筈だが、ミカ様に武装させちまうとは、こいつは不覚やね。

 

259:名無しの12使徒

お召し列車に積んでましたっけ? 聖なる鉄骨。

 

260:名無しの12使徒

セイア様が保険がどうとか言ってたから、たぶんそのことだったんだな。まあ確かに持ってれば無敵だし、身を守るには一番の装備だわ。

 

261:名無しの12使徒

ミカ様「ごめんね皆、急に呼び出したりして……ちょっとしなくちゃいけないこと、お願いしなきゃいけないことが、できたから……」

 

何でもお命じくださいませミカ様。

 

262:名無しの12使徒

んだ、我らがお姫様のお願いを聞くのは誉やんね。

 

263:名無しの12使徒

お願いする事ってなんでしょうかミカ様。

 

264:名無しの12使徒

強襲か? ミカ様のお手を煩わせることはねぇぜ。私らで速攻ケリつけにいかないとな。

 

265:名無しの12使徒

聖なる鉄骨の君の出番は最後の最後、お姫様を開幕トッコませるわけにはいかねぇぜ、なあリーダー!!

 

266:名無しの12使徒

そういうこった。ミカ様、ぶん殴る必要がある奴がいるんですね、どこに?

 

267:名無しの12使徒

ここに? どこどこ?

 

268:名無しの12使徒

? あ、あの……ミカ様?

 

269:名無しの12使徒

ミカちゃん様?

 

270:名無しの12使徒

……あー……廃墟、お呼び出し、聖なる鉄骨。何も起きないはずがなく……。

 

271:名無しの12使徒

どういうことだヤマちゃん?

 

272:名無しの12使徒

シバかれの時間ってこった、あばよAチーム。

 

273:名無しの12使徒

!?!? ミカ様ア゛ァ゛ーーーッ!?

 

274:名無しの12使徒

ちょっ!? なじぇ!? ミカちゃん様ァ゛ァ゛ーー!?

 

275:名無しの12使徒

ミカちゃん様「ナギちゃんが超頑張ってどうにかする間、皆大人しくしててね……」

 

 





・ミカ、たのんだ。

ミカ、このメッセージを見ているということは……たぶんもう色々終わってる感じの状況だと思う。私も電話とかモモトークとかできる状態にはないということだ、残念だね。

そこで私は事前に、ボタン一つで君に連絡と準備をさせるための物を作らせた。あらかじめ決めたメッセージの内容を送信し、ある物の封印を解く解除キーの送信機だ。

列車に持ち込ませた品の中に、長いケースに格納された「学園旗М」というものがある、この信号の送信と共にロックが外れている……中身は……見れば判るだろう、これは保険だったが、この時点でもう使わねばならない状況だろうから、納得しがたいだろうが使ってくれ。君はそれさえあれば誰にも害されない、その力でナギサを守ってやってくれ……。

君ならば、その力を正しい形で使えると信じている……頼んだよミカ。



・ご挨拶

トリニティの12使徒を応援して頂きありがとうございます。

これが今年2025の最終投稿となると思います、投稿開始からおよそ1年半、どうにか2周年を迎えてしまう前に完結へともっていきたいところです。投稿ペースも色々と事情が重なり下がってきておりますが、7897件もの皆様の感想というご声援と、1484件という高評価でなんとか継続できております……深い感謝を。今後も支援いただけば幸いです、本当にもうあとはモチベーションなので……なんとかエンディングへと走りたいところです。

それでは来年2026年も、よろしくお願いします。よいお年を。
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