「ああ、リンさん……ご無事でよかった。カヤさんも……お二人共、行方不明と聞いて心配していたのです、お怪我がなくて幸いでした。無事発見と合流の一報を聞きはしていましたが……本当によかった……」
「ナギサさん……ご心配を、おかけしました」
「ありがとうございますナギサ様、幸い揃って怪我もなく……ですが、ここに来るまでに、話を聞いたのですが……キヴォトスの危機が?」
「ええ……実は私も一体何がどうなっているのか、まだ何も……」
「それはこれから説明するわ」
「リオさん、ごきげんよう……と言える状況ではなさそうですね……」
「ええ、ナギサ。状況は伝えたとおりよ、早急に情報の共有……連邦会議の招集をお願いするわ、リン」
「わかりました……。カヤ、準備をお願いします。私は会議までにナギサさんと、リオさんと話すことがあるので」
「えっ!?」
「ニャハハ……というわけで貴女はこちらへー……よろしくお願いしますねー……頼みますよぉー……色々と……」
「ち、ちょっとォ!?」
百鬼夜行連合学園に存在する、古風な城郭はいくつかある。
中でも陰陽部がその拠点とし、百鬼夜行連合の盟主たる立場で差配を行う陰陽部本館は観光用のお飾りな城ではなく、実際に防御力を備えた城塞。連合の調停と言いつつも、実態は国政を担う陰陽部。その実質的な連合生徒会長の城なのだから当然と言えた。
景観条例のある百鬼夜行では目につきやすい場所に防空兵器などは見つからないが、国会議事堂に等しい施設で、かつれっきとした城なのだから当然ある。
今、瓦屋根が展開し、珍しくも物々しい機銃塔や防空ミサイルランチャーが顔をのぞかせている姿は、多くの連合生徒や観光客達に違和感を感じさせていたが……それを遥かに上回る異物が、百鬼夜行で最も大きな城の天守閣に取り付いている光景は多くの人々の興味を引いた。
それは白い巨大な船体を誇示する、飛行船。
飛行戦艦ミレニアム号。全長400mに達するキヴォトス最大の航空機であると同時に、学生自治国家キヴォトス最強の兵器にして今や頂点たる戦艦が大地に影を落とす。
百鬼夜行の和風な景観の中で異質なデザインのミレニアムサイエンススクールの紋章が輝く飛行船が、船体に比すればあまりに小さく見える天守閣の鯱鉾を繋船柱として……係留索で繋がれ、威圧的な存在感を浮かべ周囲を睥睨していた。
「大きいですね……」「お城が小さくみえちゃうよ」
外周圏の生徒達や市民が、自分達の目で初めて見る、あまりにも巨大な飛行戦艦に驚きの声を上げながら写真を取っている姿を横目に……修行部の水羽ミモリと勇美カエデは不安そうな声を上げた。
ミレニアム号の暴れぶりはクロノスの配信を通して外周圏でも知られている。そんな噂の飛行戦艦が陰陽城に横付けしている光景は、昨夜あったばかりの不審火と、今赤く色の変わった空と合わせて、何らかの有事を予感させるに十分である。
2人は知らなかったが、陰陽城こと本館の天守は陰陽部部長の自室というわけではなく、会議の場であったり、有事にはこうして飛行船を横付けして閣僚脱出のための桟橋でもあるので、実は本来の使われ方だった。
「…………」
それを知っている修行部部長は、ミモリに手を引かれながら眠りの中なので、それを2人に語ることはないが。ほぼ夢を見ながらも、実は警戒はしているのだということも2人は知らない。
健康と健やかな暮らしのために睡眠を修行と定める修行部の長、春日ツバキは……今陰陽城本館に来ている友人を通し、これから何かが起きると、知っている。だからこそ……三人であそこへと向かっているのだから。
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陰陽部本館、大広間大会議室は何時になく緊張感漂う厳かな空間だった。本来この場は百鬼夜行連合を構成する各学園の生徒会長以下閣僚を集めての会議が開催される場である。連合学園に上下はなく、横並びの立場とされているので、この場には一段高い段差、上座はない。
しかし今、百鬼夜行に集う生徒達には明確な上下が存在した。
6人の生徒、最上級生にして6大学園の生徒会長達。そしてこのキヴォトスの首班たる連邦生徒会、その長……の代行。
このキヴォトスにおける大領主を意味し、複数の傘下学区をまとめる地位にある生徒は総領主と呼ばれる。大領の主にして一国の長たる生徒会長の地位は、生徒であれども隔絶した権力者。
桐藤ナギサを例にすれば、君主である。
だが、生徒会長7名中1人は総領主ではない。
それに準ずる立場……という微妙な立ち位置。百鬼夜行連合学園は代表生徒会長を据えない特異な土地柄なので、百鬼夜行連合本領に腰を据えた調停組織、陰陽部の部長がそう扱われる……のだが、これが結構微妙なのであった。
百鬼夜行連合はトリニティのような君主を頂点に据えた連合学園ではない。名目上横並びの組織が連帯した存在なので……強権を常に振るえるような立場ではないのである。
そんな微妙で繊細なポジションの百鬼夜行、そして陰陽部が『この会議の開催地たる立場』という感じで進行している現実、この手の会議は中央で開催されるので、常日頃は何かしらの理由をつけて『欠席』してきた天地ニヤは、スーッと自分が会場の仕切りを投げられている現状に横転しそうであった。
「いやぁ……きっつ……そりゃあ必要ですし? そういう立場なので否はないですけどぉ……」
なんせ気がついたら、総領主級生徒が各地から続々と百鬼夜行を目指して集まってきた。となれば待機時間のおもてなしは当然開催地の仕事だ。
そういうのは中央でやってくれよ……という祈りも虚しく、キヴォトス大会議の準備と調整にカホ共々走り回るはめになったニヤは、自分自身も会議の席に着くのでわりと必死。来賓と関係者への宿やら何やらの手配もあるが、集まって顔を合わせるとなると別の問題もある。
長机を並べるだけでは済まない。席次の並べ方一つで揉め事になるので、この手の調整は大変なのだ。トリニティ・ゲヘナ相手には一度やらかしているので尚更だった。しかしそこはニヤ、調停組織陰陽部の長の本領発揮で、超速で整えて急遽開催に間に合わせた。
流石に今回は自身が動かないわけには絶対いかない、なんせこの大会議のメンバーたるや……。
連邦生徒会、七神リン。随員は防衛室長兼代行次席、不知火カヤ。
トリニティ総合学園、桐藤ナギサ。次席、聖園ミカ。警護、城島ツバメ。
ゲヘナ学園、羽沼マコト。万魔殿、京極サツキ、棗イロハ、元宮チアキ、丹花イブキ。
ミレニアムサイエンススクール、調月リオ。セミナーより早瀬ユウカ、情報部として明星ヒマリ、エンジニア部より技官、白石ウタハ。
レッドウィンター連合学園、連河チェリノ。補佐、佐城トモエ。
山海経高級中学校、竜華キサキ。護衛、近衛ミナ。
そして百鬼夜行連合学園より、自分こと天地ニヤ。そして桑上カホ。
その他随員だけでも100名を超えている。飛行船で来たミレニアムサイエンススクールはともかく、夏休みで旅行客が多いのに、全員上級生徒なのでそこらの安宿に分けて案内するわけにもいかない。なのにゲヘナは好き放題してくる、トリニティはトリニティで扱いが難しい……。
怪異騒ぎもあったのでマジで忙しかった上に、既に中央から総領主級生徒2人を随員ごと抱えて、しかもそのうち一人は好き放題要求していて最悪だ。もう一人は超絶VIPの慈愛の君、しかも聖鉄骨の君がセット、こちらは自分達の不手際で色々とあり……。
とにかく神経を使ったニヤだった。
「間に合った……随員の配置も考えないといけないの、頭が爆発しそうなんですけどぉ!! なんだっていきなりこんなに集まってきて……」
まあその、なんとなく世界が崩壊しそうだからなんですけどね。
天地ニヤさん、今日この日にいたるまで誰にも何も説明されていないので、何も存じなかった。
というか寝てない。執務室でのたうち回ってたので、空が赤くなったこともお気づきでなかったし。廊下の移動中に横目に空を見て、疲れてるのかな?とか思ってスルーしていた、それどころではなかったのだ。
気がついたら百鬼夜行連合以外の外周圏自治区からも生徒会生徒がナギサ目当てに大挙してやってきて、これらの対応も陰陽部の仕事になってしまった。マジで上から下まで大騒ぎで、過負荷も良いところ。
ここ数日は、ナギサ随員のティーパーティー生徒達から微笑ましい目で見守られる地獄の日々だった。
見守られている理由はトリニティ仕草というわけではなく、残念ながらティーパーティーではこの程度の混乱は日常であるから。デイリー陳情の桁が違いすぎる、第二の連邦生徒会扱いな茶会にいる彼女達は、悲しいことに鍛えられようが違いすぎる。これは本家連邦生徒も同様です。
ニヤは会議出席者なので、どんなにくたばっていようが責任者として逃走は許されない……自領開催ですしね。
そして、いざ開催日となった瞬間……。
「何故本館に? ミレニアム号の会議室を使うので、本館会議室は使いませんが」
とかいわれて横転した。
「へあぁぁぁ!?」「ニヤ様!?」「ニヤ様しっかり、どうかお気を確かに……」
という、ちょっとした伝達不足から来る事故はあったものの……キヴォトス超会議ならぬ、現体制になってから初めてに近しい……総領主会議が改めて開催された。
地味に歴史的会談だが、以前体育の祭典で似たようなことしていたので、参加者の一部を除いて、あんまり気張っていない。
ご挨拶もそこそこに一同艦内へご招待。
しょぼくれたニヤを含む最上位生徒達を随員共々迎え入れたミレニアムサイエンススクールの叡智と暴走の結晶は、ほぼSFの世界な飛行戦艦。
係留された巨大飛行戦艦ミレニアム号の内部には大会議室がもちろんある。
ブリーフィングに使用されることも想定した、中央大型スクリーンとその左右に部屋の両端に至るまで並んだ数多のコンソール。ミレニアムの生徒が座席を埋め、情報の処理をする様は、宛ら司令室の様相。
間違ってはいない、この場はそのためにこそ据え付けられた施設。今この場がキヴォトスの頭脳、中枢だった。既に投影されている情報はキヴォトスの現状を伝えるもの。
立体映像を上方に投影する長大なデスクを介して、各学園の長が座り、次席達がその横に座るか背後に立って補佐の構え。まさに作戦会議という様相。
で、その議題ということでまず調月リオから一言。
「結論から言うと、キヴォトスは滅亡するわ」
「何がどうなってるんですかねぇぇぇ!?」
全てから蚊帳の外だったニヤはフルスロットルの急展開にまるでついていけておらず、リオの開幕滅亡宣言で普通にアバっていた。
一方同じ外周圏の総領主、チェリノとキサキは「そうなんだ?」みたいな感じで全然余裕の様相である、何故か?
「え? 連絡と概略は既に行っているものと……カヤ?」
「私も船で資料受け取ったばかりなんですが??? 私がしてるわけねぇでしょうが!!」
「どなたかニヤさんに連絡をされたりは?」「誰か仲良い子いなかったっけ?」
「いえ、百鬼夜行には忍術研以外に伝手が……私が陰陽部に? 面倒ですし……チアキ?」「しらないでーす、サツキ先輩は?」「観光課の窓口しか存じませんしぃ、それに連絡って使徒の子の秘匿回線で直通の筈では?」
「? ミレニアムからの情報も、外周圏へ向けてキリコを通じて概略は流している筈よ、伝わっていなかったのかしら」
「妾にはアキから話があったからの、伝わっておるよ」
「うむ、こちらもサナエから私とトモエにあったぞ」「はい、概ね理解しております……ニヤさんには誰からも?」
全員訝しむ参加者一同。ナギサが背後の城島ツバメに目線を送るも、首を傾げられたので状況不明。集結地点に指名された百鬼夜行の長に連絡がいっていない? そんな筈は……。
「キキキ、なるほどな……悲しい現実じゃないか……」
マコトの全て理解したという頷きで、場が「あっ……」という雰囲気に固まる。
諸々の連絡が「会議します、百鬼夜行で。用意しといてね」しか伝わっておらず、以後も無茶苦茶な勢いに押し流され状態だったこと、キャパオーバーで確認が漏れた事もあるが……伝達ミス、その真相は。
フレンドダチョウの有無だった。
そう……ダチョウは12匹中、誰もニヤの連絡先をご存知なかったのである。
そして多くの上位生徒達もトップ直通でフランクに話が直行する現状に慣れすぎていていたので、連絡は既に行っているものと思っていた。12使徒が各学園の上位生徒と伝手を持っていることで、それを経由して秘密の回覧をしていたのが常習化していたのだ。
何だかんだ相性が良かったのか、各地に1匹はダチョウが上と伝手を作っていたことが、こうして会議に集まる連帯の要因、その一つだった。
だが、百鬼夜行陰陽部に伝手ができたのは……昨日だ。
それに中央3校の上層は勿論、外周圏2校とも総領主同士が『晄輪大祭』を経由して繋がりができている。
直接話すには政治の面が多分に出てしまう場合「これを見て(知ってて)欲しいってさ」という、気さくな交友の体(本人は理解できないので重要情報を回覧してる自覚なし)でダチョウを介してワンクッション置いて話が回っていた。どうしてこの流れにニヤが入っていないのかというと……。
ニヤは晄輪大祭において、いわゆる総領主部屋に入っていない。
立場上、実質ではあっても生徒会長ではないし、本人も面倒事になりそうだから立場を主張して立ち入ることもしなかった。百鬼夜行の特殊性のせいでもあったが、これが後に響く。
事がコトなので、大々的にオープンな回線で回して良い話ではないという理由もあったが……外部とのコミュ不足が祟ったのだ。というか全員が伝手はあるものとだと思い込んでいた、だって百鬼の話題は普通にダチョウから出ていたし……。
調停者として評判高いニヤらしからぬ手落ち……いや、流石に連合内部で精一杯ですよ!? 学外の上にまで手を伸ばしたりは無茶振りでは!? そういうのは外交部の仕事で……!! というのは茶会の辣腕に慣れてしまったキヴォトス中央の常識では通じない、悲しいすれ違い。
B4、川澄スミカが「なんかヤバいかもだぜ!!」とか話した百鬼夜行の友人は、春日ツバキだった。
治安維持協力者で陰陽部と伝手があると思われていたからだ。だが彼女は陰陽部ではないし、実のところ陰陽部の上位生徒に話を直接伝えられる立場でもない……修行部は一般生徒。イズナだったらミチル経由で伝わったのに……。
そんなツバキは当初寝ていたのでメッセージを見るのが遅れ、今陰陽部本館へと登城の最中で、大事な会議中だからとアポを蹴られていて受付で足止めだった。
よって何もご存知無かったニヤ様……かわいそう。
「これじゃ私がボッチみたいじゃないですかぁ!! 大事なことなら陰陽部に直接連絡くださいよぉ!!」
「か、会長ぉ……不味いです、もの凄く失礼なことですよこれ!!」
「そう……失礼をしたわ。貴女には繋がっている子が居なかったのね」
「言い方ぁ!!」「会長ぉ!!」
「なんか馴染んでて何も考えてなかったですけど、リョーコやイトが万魔殿や風紀の本部に結構な頻度で居て、直接茶会とやりとりができるのに慣れちゃってましたね」
「そういえばキリコがいるから忘れていましたね、毎度あの子が来るたび持ってくる茶会からのお手紙って本来は親書では?」「? 来る? ヒマリ部長、キリコはうちの生徒ですけど……」「えっ!?」
「キキキ、まあ人徳の差だな……これを機会に交友を広めるが良いぞ天地ニヤ、キキキキ!!」「マコトさん!!」
「ニヤ先輩、イブキと仲良ししよー!!」
「……ぇぇ、ぜひ、そうしましょうねぇ……」
別にハブられていたわけではないとは理解はできるが、イブキの優しさが辛くなるニヤだった。
< 必要なことは今伝えれば良いだろう、それでいいかな? 時間が惜しい。そうだろう、調月リオ >
「そうね」
スクリーンを通じて、この場に居ない生徒も会議にリモートで参加する。それは当然事情を知っている、トリニティ、百合園セイア。
< 記録し、情報を整理しますね >
ミレニアムサイエンススクール・セミナー書記、生塩ノア。
< 何が始まってしまうのか、そしてどんな策を示せるかワクワクしますねぇ!! >
山海經、玄龍門より宮内カナエ。
< 急展開にも程があるわ……とにかく、方針を定めないと。動くにも準備が必要よ。サンクトゥムタワーから退去してしまったから、何をするにも人手が必要……急いで情報を頂戴 >
連邦生徒会より、扇喜アオイ。
「こんなのあんまりですよぉ!!」
゛ニヤ……落ち込まないで、これから皆と仲良くなろう、ね?゛
そして、連邦捜査部シャーレより……顧問として、先生。
「それでは皆様、お手元の資料をご覧ください。リモートの方には暗号回線より配布資料の解錠パスをお送りしました」
司会が務まるのかやや不安を抱えつつも、しっかり準備怠りない早瀬ユウカの言葉で、ニヤの嘆きを他所に話が進む、時間がないのは本当なのだ。
全員、さっと一読……まあこの場にいるのは、警護のダチョウを除いて概ね超絶成績優良生徒ばかりなので理解は一瞬である。
「情報の共有はできた、現状の認識もな……概略も既に聞いておる。資料にあるキヴォトス上空の高エネルギー波形というのも、これを見れば危険度が理解できる……その上で聞くが、色彩とはなんぞや? 敵を知らねば判断を時に誤ろう」
「それを説明してくれる専門家をお呼びしていたのですけれどね……」
゛黒服? 今何処にいるの? 皆待ってるんだけど?゛
先生がちょっとイラつきながらお電話とモモトークを送るが、返信なし、折り返しも無し。黒服はレスポンス最速人種のビジネスダークサイド大人なので、先生からのお電話にコール3回以内で出ないのは異常事態である。
゛でないね……。゛
黒服は研究所の被害状況を調べに一度戻っていた。
すぐに戻りますよクックックッとのことだったので、楽観視していたのだが……よく考えたら色彩への対抗機関の長なので、引き続き狙われていてもおかしくない。既に一度襲撃されているのだ。
それに気づいた会議室に緊張が走る。
「……先生、少し不味い事態かもしれません」
゛マエストロにも連絡してみるね……。゛
「敵の正体については一旦置きましょう、これからの方針を定める事が先決です。迎撃と防衛、これは既定路線ですが。問題はそれをどう行うか……セイアさんが観測した未来視の詳細はこれだけですか? 追加の情報はありませんか?」
< ないね。七神リン、言っておくがこれ以上は探れない……潜れる限度一杯だったのもあるけれど、クズノハにも止められているよ >
< セイア様が潜ろうとすれば即座に救護します、決して許可できません >
< まつんだミネ!! しないと言っているだろう!! >
「ク、クズノハ!?」「大預言者クズノハ様ですか!?」
クズノハの名に反応するニヤとカホ。その名は百鬼夜行では重要な意味を持つ……どういうわけか、接触したという記録が過去累々存在するので、生きている存在なのかはともかく、存在はすることがわかっているからだ。
< 大預言者かどうかは知らないが、性格の悪い白狐だよ >
「なんだってトリニティの生徒と接触して……百鬼夜行では伝説の人物なんですよぉ!? 百花繚乱の初代部長と伝えられる存在でぇ……」
< もうかなり長い付き合いなんだが……まあ今それはいい、色彩は見る毒、触る毒だよ。わかっていることは資料以上のものはない……実際の敵はそれを誘導して、キヴォトスに接触させた存在だ。プレナパテス……そしてアヌビスと呼ばれている……らしい、これとは別にもいるらしいがね >
「らしい、ばかりですねぇ?」
゛黒服がそう言っていたけど、殆ど説明せず帰っていったから……。゛
< ゲマトリア情報だからね、それ以上はなんともさ……向こうの出方もまだ不明。わかっていることは少ない、それでもキヴォトスが溶けるほどの何かをしてくることは明白だ >
「観測したエネルギー波形は時間毎に強大化しているわ、私はこれを空間に何かが実体化する前触れだと考えています」
「電波観測は?」「レーダーには反応しません、量子観測には微弱な反応があります。質量も増大中、これは未知の……」
「トモエー、難しすぎて何もわからない……」「大丈夫ですよ、チェリノちゃんの仕事はここに座っていることだけですから」「そうか、なら安心だ……ん?」
「先ず防ぐべきは質量攻撃ということですが……連邦生徒会、サンクトゥムタワーに直接攻撃がある……これは退避が完了しているので、落着と同時に調査ができますね」
゛危ないところには行ってほしくないよ……調査は遠隔でできないかな?゛
「勿論よ、セイアの情報から生徒が直接接触しないように、調査ドローンを向かわせる予定です」
< そもそも落下する物体の迎撃はできないの? どの程度の質量かわからないけれど……サンクトゥムタワーを失う事は避けたいのよ、連邦の受ける痛手は大きいなんてものじゃない >
< 見た感じ、サンクトゥムタワーの尖塔そのものに見えたけれどね。あの質量の迎撃は流石に難しいだろう…… >
連邦生徒会の本拠である連邦ビルの真上に浮遊している超巨大な尖塔、これこそが実はサンクトゥムタワーと呼ばれている物の本体である。オーパーツではあるが補修も増築もしてきた設計図のあるものだ、その来歴は定かではないが……歴史は古い。そのサンクトゥムタワーと同質量となると少なく見積もっても数十万トンはある。キヴォトス現有のいかなる兵器でも迎撃は難し……。
「そんなことはないわ」
……くは無かった。
<<<「「「「「「「「え?」」」」」」」」>>>
「こんなこともあろうかと、私達ミレニアムサイエンススクールは叡智を結集し、対抗手段を建造していたの」
「こんなこともあろうかと、いい言葉だ……まさにミレニアムの心意気だよ」
それを言うのが宇宙戦艦の副長なら頼もしいが、この場の2人、リオとウタハが言い出すと不穏の極みでしかない。
「またですか!! また何かおかしなもの作ったんですか貴女は!!」
< 冗談じゃないわ!! 一体今度は何を出してくるというの!? >
カヤちゃん、アオイちゃん、話を聞く前に爆ギレ。まあ前科があまりにもあまりなので仕方ないよね。
「その……リオさん、建造していたということは、その……この船のような?」「イカれてるじゃんね……」
「キキキ……頼もしいことだな?」(怖……イカれてるだろこいつら……)
「ミレニアムサイエンススクール、噂は聞いておるが、随分と……のう」
「連邦法を違反するのはだめなんだぞ!! 強すぎる兵器は危ないのだ!!」
「一体どこからそんなリソースひねり出してるんですぅ……?」
総領主勢、ガチのドン引き。こんなこともあろうかとで、超兵器がポンポコ飛び出してくるのは様子がおかしすぎるんよ。だが、これがミレニアムサイエンススクールだ。
「ほらぁ!! やっぱりドン引かれてるじゃないですか会長ぉ!!」
「ユウカ、これはキヴォトスの未来のために必要なことだったのよ。初撃に間に合いはしなかったけれど……以後の攻撃に対しては、皆が必ず間に合わせてくれるわ……ウタハ、状況は?」
「完成度90%と言いたいところだけれどね、センサーとの連携と『砲身』と『弾頭』の調整段階……技術的観点からすれば、撃てはするけど静止目標相手でも現状では有効距離でも命中率は60%を切ってしまうかな。弾道弾の蓄積データがあるからこれでもマシなほうだよ、リオ」
「そう、貴女達が急いでそれなら、やはりこれ以上は無理ね……初撃は受けることになるでしょう」
< 間に合わない、未完成ということは、サンクトゥムタワーの防衛はできないのね…… >
「いやいやいや!? 話終わらせないでくださいよ!? そもそも何なんです!? その秘密兵器感溢れてる何かは!? 砲身と砲弾!? 何を作ったんですかミレニアムは!!」
「秘密ではあるけれど攻撃兵器ではないわ、防御機構よ」
あからさまに不穏な文言にカヤちゃんの不安が募る、というかまぁ、もうその時点でクソヤベェ代物が確定なのだが。
「説明しましょう、これが私達ミレニアムサイエンススクールの叡智を結集して作り上げた、キヴォトス防衛のための超兵器……」
「兵器って言っちゃってるじゃないですか!!」
今明かされる、ミレニアムサイエンススクール脅威のメカニズム……!! それは!!
「120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲……ハイパーベロシティ・レールカノン……『パワーオブドリーム君』」
<<<「「「「「「「「120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲!? 『パワーオブドリーム君』!?」」」」」」」」」>>>
「を、搭載した移動要塞……スピリット・オブ・エリドゥよ」
投影される立体映像に映るのは、6本の巨大な足に支えられた……ゆっくりと歩いてる移動要塞!! その頂点には1本の長大にすぎる板状2本で構成された砲身を持つ、1基の超巨大な旋回式と思しき大砲……。
あからさまにレールガンなのだ!!
あからさまに移動要塞なのだ!!
その場の全員が絶句!! 移動要塞!! レールカノンを積んだ、移動要塞!!
< 馬鹿じゃないのかい!! レールカノン!? 移動要塞!? 120cm!? な、なな……なん……ほぎゃあぁぁぁぁ!? >
< セイア様!? 救護!! >
「セイアちゃぁぁん!?」「セイアさん!?」
百合園セイア、撃沈。蒼森ミネの胸の中へと落着。
あまりの衝撃にセイアは耐えられなかった、キヴォトス防衛の前にキヴォトスを支配してしまえる超兵器の唐突な登場に血圧が限界を超えてしまう。当然だがこんなもの発砲された日には大破壊のお祭りである。
「何時作ったんですかこんなの!! イカれてるんです!?」
ドオッと椅子から転げ落ちるカヤだった。マジで何なんだよこれはよ!!
「要塞都市エリドゥが破壊されて以降、建造作業はずっとしていたの、中央ブロックはそのまま再利用よ」
< そうじゃない!! 移動要塞!? 連邦法をなんだと思ってるの!? >
「連邦法に移動要塞を作ってはいけないという記載はないわ……それに、これはキヴォトス防衛用の遠距離砲とそのプラットフォームであり、攻撃的要素のない完全な防衛設備よ」
「そんなもん通るわけねぇでしょうがーー!!」
安心!! 完全!! 危険はない!! 完全に合法……欺瞞!! 120cm砲、1200mmのレールカノンとか出てきて「これは兵器ではありません」は通らねぇだろ!! ミレニアムサイエンススクール!!
「こ、これは……」
「うわぁぁぁぁ!? トモエ!? 歩いてる!? 要塞が!?」「これは、予想してませんでしたね、流石に」
「うわぁ……ついに移動要塞とか出てきた……」
「スーパーロボから飛行戦艦と来て、いつか出てきそうだなと思ってたけれど……」
「ちょっとまちゃれ、移動要塞何時かでそうとか思われてたのかぇ……?」
「すごーい、大きいのにあるいてるー!!」
「キキキキキ………え? いや、マジ? マジなの?」
「ミレニアム怖いよ……何なの……リクちゃんが怯える筈だよこんなの……」
ガチのドン引きのドン引き……だが、これがミレニアム真実。
移動要塞、スピリット・オブ・エリドゥ。
全長1800m、全高300m。レールガンだけでなく、対艦ミサイルVLSまで備え、ビーム砲含む数多の火砲と防空ミサイルシステム、近接防御火器に守られた、ガチの移動要塞……。
その主砲は宇宙を穿つと謳う、120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲……実体型レールガンだった。対空を超えて対宙兵器だ、実際リオの開発コンセプトも大気圏外からの脅威に対する迎撃システムである。
実体弾を採用した理由は、ビーム兵器は防御手段が存在するため、質量という最も防御困難な物理をもって目標に有効打を与えるためである。また実体弾は弾道軌道をもって地平線の向こうにも到達する、ビームではなしえない特徴の優位性のために採用された。
ミレニアムの誇る優秀部活、超電磁研究部と先進素材研究部が中心に、リオとウタハ達エンジニア部を含めた多くの部活達と、持てる全てを費やして開発した、キヴォトス最大最強の火砲であった。
リオの指揮の元、際限無く投下されるリソースによって誕生した、キヴォトス防衛用要塞、スピリット・オブ・エリドゥは……なんと移動する。この最強火砲『パワーオブドリーム君』を抱えて!!
抱えたレールカノンにより発射される、120cm砲弾をキヴォトスの何処にでも届けるために、毎時2キロで移動する……機動する城塞だった。
「………スゥーッ……なるほど。これが、秘密兵器、ですか……」
女桐藤ナギサ、総領主生徒専用スキル『どんな時でもポジティブハート』で乗り切ろうとマジ頑張る。気が抜けたら卒倒しそうだ、しかし現実はかくも厳しい……。
「ええ、破壊された要塞都市エリドゥ……その中央ブロックと資材を再利用した移動要塞。主砲のパワーオブドリーム君は射程1200km……弾道軌道によって、キヴォトスの大半の地域を射程に捉えることが可能よ」
「…………」「ナギちゃん!! しっかりして!!」
射程1200kmということは、キヴォトスの大半が射程距離であり、120cmの砲弾の破壊力は一発で自治区に大破壊を齎すに十分な代物だ。流石に連邦法違反なんてレベルではない。パワーオブドリーム君の保有者はそのまま、キヴォトスの支配者たり得てしまう超兵器だった。
この時点ではまだ見ぬ雷帝の遺産とやらが霞んで見えますねぇ!!
「キヴォトス防衛兵器がキヴォトス自体を射程に入れてる矛盾に気づいてくださいよ!! 完全に兵器でしょうがこれは!!」
「あくまで防衛用の設備よ、本来の用途は対空砲と考えて頂戴」
「まあ……大砲なので山なりに飛ぶし、対地攻撃もできますけどね……」
「ようは使い方だね、120cm砲弾はその質量自体が徹甲弾となりえるから、大半の物体は撃破できる……色彩恐るるにたらずさ、期待してくれ」
ミレニアム面の発露極まった超兵器の唐突な登場に期待とかそういうのを超えてドン引きの面々であったが……もう一人、絶句している生徒がいた。
「あの!? ちょっとまってください会長!? 私!! レールカノンのことは聞いてますけども!! 移動要塞とか聞いてないんですが!?」
早瀬ユウカ、衝撃の真実……彼女がクソ頑張って確保した予算は上のレールカノンだけである、聞いていた話もだ。発射台になるプラットフォームのことは「エリドゥを使う」としか聞いていなかった……。
だが、お出しされたのは……移動要塞!!
懲りろよ!! 飛行戦艦で!!
「ユウカ……まず謝っておくわ……ごめんなさい。ウタハが「大砲自体が移動できれば、射程外にも有効打が見込める、ここに巨大物体を移動させるためのプランがあるんだ」と言うので……」
「やっちゃったんですか!? どうしてそういうことするんです!?」
「何、資材は廃材の再利用が殆どだし、何より射程外で役立たずでは意味がない……ここは一つ、技術屋としては最善を尽くすべきだと思ってね」
「言ってくださいよ!! なんで毎回私に話がないんですか!?」
「すまないユウカ……これは技術的挑戦であり、浪漫なんだ」
「ウタハ先輩!? そういう話してるんじゃないんですよ!! 言えってんだよ!! 経理に!! まず先に!! 思わずやっちまったぜじゃないんですよ!! どうすんですこんなのの固定資産税!! 計算してないんですよ!! 私の計算にないんですよ!! こんなのは!!」
「ユウカ、これは動産だから、税金は別枠よ」
「か、会長ぉぉぉぉ!! は、はぅ……ぁ……」
「!? ユウカ、しっかりしろ」
ドオッと床に転げるユウカ……あまりにも可哀想……。駆け寄ったツバメに抱き起こされるも既に轟沈、この事件が始まって最初の犠牲者となってしまうことに……いや、セイアちゃんがトップバッターでしたね、いつもの流れだ。
頭を抱える連邦生徒、ドン引きの総領主達、ウキウキのミレニアム生徒。場の混乱は混迷を深めていた……ぜっんぜん会議も進んでいかない。
< 会長、ウタハ先輩 >
その場に、冷ややかな声音が響いた。
「「!?」」
< 後ほど、お話があります >
生塩ノア、キレる。当然だろ。
「!? まって、ちがうのよ」
「まってくれ、これはどうしても必要な機能だったんだ!!」
「だから言ったじゃないですか……話通しとけよって……」
ヒマリちゃん先輩のド正論であるが、テンション上がって電子戦システム組みまくってたのは自分もである。こんなのお漏らしたら多分キレられるしと黙っていたのはヒマリもだ、罪を2人に擦り付けようとする邪悪な行い、卑劣な保身……。
まあ、それ以前にこんな壮大な計画が経理部に隠し通されていたのだから……スピリット・オブ・エリドゥ計画に参画している数多のミレニアム生徒全員がグルである。なんならセミナーの部下にも裏切り者がいるはずだ。
だが、ミレニアムサイエンススクールでは『ハジけ』が全てに優先される。セミナーから裏切り者が出るのは当然と言えた……。
たまんねぇだろ!! 唐突に移動要塞が完成してたら!! こんなの面白すぎる!! 流石だぜ会長!! 一生ついていきます!! 全ての傘下部活の活動費を水増しの上でハネて予算つけようぜ!! 皆の分全部集まれば……いけるやろ!!
世間一般的に、これは横領と言う。
よくもこんな計画秘密のまま進められたな、イカれてるぜ。
ちなみにその細工をしたのは、ヴェリタスに電子陽動をさせてガチったヒマリちゃん先輩である。リオが本気出すんなら私も負けてはいられませんね……の結果、ユウカがギリギリまで絞ったミレニアムのおサイフは見えないところでペラペラだった。
だがこの事実が明らかになった以上、ノアの脳内で記憶にある数字のアレコレが全て組み立てられ……協力者に当たりがつく。
< ヒマリ先輩からも、詳しくお話が聞きたいですね >
「!?」
もちろんそれを察しているノアは容疑者リストを既に洗い始めていた。
まあキレるでしょうこれは、一応今回は話通ってて、ミレニアム総協力体制の上での計画だったはずである。これを現場で突拍子もなく「移動要塞とか……いけるんちゃう?」「天才ね」とかされては、マジで困る。
「守ったら……負けるの!! 攻めるのよ!!」
< そうですか……それで? >
「時に攻撃は最大の防御なんだ!! それに見てくれ、なんという壮大な光景……素晴らしい……私たちの総力を結集した姿……まさにミレニアムの精神が形となったかのような……」
< その総力に、私達経理と書記の力は入っていましたか? >
「「!?」」
説教確定の2人を尻目に、会議は遅々として進まなかった……。
「何なのだ、こいつら……」
「何を見せられてるんじゃ、妾達は……」
< 門主様ぁ……中央、様子おかしいですよ…… >
「いや!? 中央を一括りにしないでくれますかね!?」
< 会議が……進まないわ……とにかく、方針だけでも決めないといけないのに…… >
有力情報元、セイア撃沈。司会のユウカも撃沈。ミレニアムからのフレンドリーファイアで早くも幹部二名が脱落という現実……刻一刻と外敵の脅威が迫る中、アオイは焦るがどうしようもない、が。
「……既にある兵器に関しては代行権限にて限定的に運用を認めます、キヴォトス防衛のために全力を尽くしてください。ミレニアムサイエンススクールは事後の説明責任を負いますが、現時点では不問とし、活用可能なリソースを今後も全て提示してください」
< リン先輩!? >
七神リンは覚悟を決めている、今更ミレニアムが何を作っていようが、有効であるなら関係ない。
ミレニアムの超兵器は後で連邦法の改正でシバくとして、今来る脅威に有効なのであれば、とりあえずはそれでよい。キヴォトスを守るため、『彼女』の帰ってくる居場所を守るため、リンは覚悟を決め、腹をくくっているのだ。
「……フゥーッ……まぁいいでしょう、防衛に役立つ兵器というなら、今まさに必要な物ですしね、防衛室としても黙認します……後で覚えとくんですよ……」
超兵器? だからなんだ? それどころじゃねぇんだよ、いいから守備につけ。そういうリンの気迫がカヤ達に冷静さを取り戻させていき、主導権を掴んでいく。
「実戦配備を急いでください、敵の第二次攻撃には間に合いますか?」
「試射をもって調整が必要だけど、間に合わせてみせるさ。今も現地では皆が頑張ってくれているからね」
「結構です、第二次攻撃以降の襲撃場所が不明のため、適宜反撃となります。臨戦体制を構築するためにも緊急事態宣言を発令し、全自治区に対して防衛と避難誘導の……」
リンの決断は代行として重い、越権と言われてもおかしくない領域にある……しかし、この場ではその即断すらも後手に回った。
「!? 大変です!! 上空のエネルギー波動、急激に拡大!!」
「……位置は? 座標知らせ」
「D.U.中心部……サンクトゥムタワー上空!!」
「敵の第一波攻撃と考えられます!! 空間に質量、急激に増大中!!」
「センサーの測定限界を超えつつあります……空の底が、抜ける!?」
・120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲
ミレニアムサイエンススクール超電磁研究部謹製、試作電磁投射砲。
通称「パワーオブドリーム君」、力と夢の名を冠されるに足る、キヴォトス史上最強最大の火砲。これを超える破壊力を持つ兵器はキヴォトスに……空崎ヒナとかがいるか、まあでもいかにヒナちゃんでも秒速6キロとかで飛んでいって大破壊はできないし……。
コンセプトは対宙レールガン、もうお察しの通り……ダチョウが前で覚えてた超絶凄い対空砲ことストーンヘンジのアレがアイデア元。実体弾なので弾道射撃もできるので、対地攻撃もお手の物。つまるところキヴォトス全域を大破壊可能な超兵器である。当然連邦法違反兵器……と思いきや、誘導能力がない質量投射兵器は規模がデカかろうと特に違反というわけではない、ということに連邦役員はリン以外誰も気づいていない。
この法律の穴をついてGOサインしたのは生塩ノア、卑劣な法務部の罠だ。
実体弾を電磁加速し発射するため、砲弾は規格ケースにさえ収まっていればなんでもいいという利点がある、発射時の加速Gに耐えられるならば……。
そう、なんでもよいのだ、加速Gに耐えられさえすれば……。
・移動要塞スピリット・オブ・エリドゥ
大破壊されて残骸になったエリドゥだけど、資材勿体ないし何かに使えないかな? なら今研究開発試作中のレールガン、でっかくしてエリドゥに据え付けたら? コントロールタワー含めて中央ブロック健在だし……天才ね、ということで再建された、ミニマムエリドゥ。
コンパクトにまとめられた鋼鉄の城となる予定だったが、ウタハのパッションで高まりすぎたテンションの結果、足が生えた。そのウタハにスピリットなインスピレーションを与えたのは勿論ダチョウである、よけいなことしかしねぇだろこいつらはよ。
パワーオブドリーム君の運用プラットフォームのため、移動要塞とはいうが、オリジナルやそのコピーのように強大な物理防御力は有していない、しかしこれだけのサイズの物体が移動するインパクトは絶大である。勿論電磁装甲装備でAPS展開可能なためビーム兵器での破壊は困難。
ミレニアムサイエンススクール中、実に8割の部活の活動費を水増しの上かすめて建造されており、しかもミレニアム中の自動建設システムを総動員されたため、レールカノン共々実におよそ一ヶ月半で形になってしまった、脅威のメカニズムである。
一体何と戦うつもりでこんなもの建造して…………。