アンブロシア本校舎内に設けられるレギオン控室はリビングの大部屋と、仮眠用のベッドが六台ほど置かれた仮眠室から構成される。間取りに多少の差異はあるが、基本的に同じような作りになっていた。リリィ各々が私物を持ち込み模様替えを施すため、中は当然変わってくるのだが。
LGディオネはフルメンバー十七名の大型レギオンだ。九人フォーメーションを採用するレギオンの理想人数が十三名――これは百合ヶ丘女学院の伝説的レギオン初代アールヴヘイムに因む――であることを考えると、結構な大所帯になる。そんなディオネのメンバーが一堂に会すると、如何に控室が大部屋とはいえ、手狭に感じられてもおかしくはないだろう。
部屋の真ん中、背の低いリビングテーブルの前に立つリリィは石本華。彼女は腰を屈めて白いテーブルクロスの上へ平皿を置いた。
「ここに切り分けたパイナップルがあります」
おもむろに口を開いて言う。
思い思いに時間を潰していたリリィやアーセナルたちは、大なり小なり気を引かれたのか、華の方へと視線を向ける。
「台湾産ですわ」
「台湾産っ!?」
一瞬で部屋の中が色めき立った。温度が0.5℃ぐらい上がったかもしれない。
「実家の伝手で手に入れたのですが。これを皆さんと分け合おうと思います」
一般家庭ではあまり拝見できなさそうな大きな平皿の上へ、鮮やかな黄色の果肉が所狭しと並べられている。その魅惑の光景に、この場の誰もが目を奪われた。
台湾は農作物のブランド化を以前にも増して推し進めている。特にバナナとパイナップルは隣国日本で大人気であり、台湾情勢による入手のし難さも相まって高値が付く。最前線に立ち航海に出ることの多い彼女らにとって、気軽に口へ入れられるものではなかったのだ。缶詰なら別として。
「やった! ありがとーっ!」
「さっすが、華様!」
「一人四切れね、人数的に」
デザートの持つ魔力は絶大。テーブル周りが一気にごちゃっとなった。その光景を現出させた本人は一歩下がったところでニコニコと微笑んでいる。
「しかしよくこんな新鮮なのが手に入ったわねえ」
「ふふふふふ。神戸港に上がったばかりのものです。早めに召し上がってくださいね」
ちゃっかり自分の小皿に自分の取り分を確保した美月が瑞々しい果肉をフォークでつつく。彼女の言葉に、華は満足感を隠さず頷いた。
ガーデンの中でもアンブロシアは特に恵まれた方である。高級スイーツを食す機会はある。ただ物流に問題を抱えたこのご時世、金があればいつでもどこでも欲しい物が手に入るとは限らなかった。
「皆、揃ってる!?」
突然に控室の扉が開き、いつになく慌ただしい様子の隊長が現れた。
「そんなに心配しなくても、真緒様の分はちゃんと取ってありますよ」
「何の話?」
華の諭すような口振りに真緒は首を傾げた。それで多少落ち着いたのか、改めて室内を見回し話を続ける。
「総員、出撃準備。あのジュージェ型の巣が見つかったよ」
◇
海上機動戦隊旗艦ルヴェリエ、食堂。机と椅子が多数並び一度に大人数が利用できる食堂は、戦隊の作戦会議にもよく使われる。部屋の壁にホワイトボードや電子モニターが設置されているのはそのためだ。今もボードの横に立った九鬼司令官が、主だった人員を前にガーデンから下された作戦について説いている。
「皆も知っての通り、ヒュージはネストを同じくする群れの仲間と戦法を共有することがある。シャチがグループ内で狩りの仕方を伝授するように。逆に異なるネスト間においては情報の共有が遅れがちだ」
六人掛けテーブルの一つに真緒の姿もあった。戦隊の攻撃力を担うレギオンの隊長なのだから、当然である。
「アンブロシアは各所に働き掛けて、前回の海戦で生き残ったジュージェ型の動向を追っていた。その結果、当該ヒュージの拠点であるヒュージネストを特定することに成功した。……ここだ」
電子モニターが映し出す瀬戸内海と中四国の地図。司令の握る指示棒がその地図上の一点を指す。香川県の北西部から突き出た細長い半島を。
「この荘内半島の中央部、南岸に巣食う鴨之越海岸ネスト。ギガント級を主とするA級ネストだが、瀬戸内海の海上交通を奇襲するには打って付けの、嫌らしい位置にあるネストだ」
そこは半島の南岸と丸山島という名の小島に挟まれた狭い海域だった。四国自体が陥落指定地域であるため、空路で東から攻めようと思えば半島内陸に展開しているであろうヒュージ群とぶつかることになり、海路で西から攻める場合は半島を北回りに大きく迂回する必要がある。どちらにせよ一筋縄ではいかないだろう。
「情報は、中国地方奪還に当たっている西方ガーデン統合司令部や国防軍にも共有された。ネスト攻略に際してはアンブロシアに加え、統合部隊のレギオンと国防海軍の護衛隊も参加することになる」
アンブロシア女学苑高等學校は鎌倉の百合ヶ丘女学院とも並び称される、西日本屈指の強豪ガーデンだ。しかし現在は中国地方を陸路進撃しているガーデン統合部隊にも戦力を出しているし、地元周辺の守りもある。単独での大規模作戦にはどうしても限界があった。
「作戦の第一段階として、まず我々海上機動戦隊が荘内半島を迂回してネスト西方の海域に進出する。その際、海空から迎撃に出てきたヒュージは戦隊と海軍の護衛隊が対処する。続いて第二段階、LGディオネをネスト西の丸山島に上陸させて敵戦力の誘引を図る。無論、島を確保する必要は無い。必要に応じて海中へ退いてくれ。そして第三段階、北東空域からアンブロシアと統合部隊から成る五個レギオンが降下、ネストを叩く。ネスト撃破後は全部隊速やかに同地から撤退せよ」
敵前での強襲上陸と降下作戦の陽動。ディオネ結成の趣旨に沿った任務だ。もっとも、今回は敵勢力圏深くでの作戦の上、難敵との戦闘が想定される。
「何か質問は? ……下村真緒」
「はい。例のジュージェ型はどれだけ確認できますか?」
「総数も、ネストに帰還後の動向も不明だ。既に荘内半島北方の海域にヒュージ群が展開しているが、これらはジュージェ型ではない」
所在が分からないのは不安要素だ。ネスト自体は動かないため攻略手段を熟慮できるが、海の中を縦横無尽に泳ぎ回る敵は厄介極まりない。
「他に質問は……。無いようなら、以上で解散とする。出港は翌05:00。各員、準備を済ませておくように」
ネスト発見から、外部との調整に作戦立案に出撃準備と忙しない。しかしそれも無理からぬことだ。あのジュージェ型の行動が単一のネスト内に留まっている内に倒さなければ。もし他のネストにまで拡散してしまえば、世界中の海で通商路が襲われる事態になりかねないのだから。
◇
翌日。まだ陽が昇り始める前の払暁。ほの暗い灰色の空の下、出港を間近に控えた三隻の艦艇はその主機から静かな唸りを上げ続けている。
ルヴェリエ内では、排水量6000tの船体を動かす前に慌ただしくなっていた。だがそれは出陣に伴う多忙とは違う。不測な事態による不都合な状況に対する動揺であった。
「これじゃあ出撃できませんよ!」
チャームを背負ったリリィがルヴェリエの広い前部甲板に立って叫んだ。彼女らの進行方向、左右を埋立地に囲まれた中から大阪湾へと抜け出る出入り口に、三隻の船が横一列となって立ち塞がっていたのだ。
甲板にディオネのリリィたちがぞろぞろと出てきて騒ぎ出す。一番最後に真緒が続き、持ち出してきた双眼鏡を覗き込んで不審船の様子を窺う。
「漁船にクルーザーに、最後のは……タグボートかあ。なんかバラバラ」
統一感の無い陣容に真緒は違和感を覚えた。しかしあの三隻が共通の目的を持ち連携しているのは明白。三隻ともマストの天辺に赤丸と放射状のデザインが描かれた旗を掲げている。更に隣の仲間と船体を鎖で繋げており、船同士の間隔は広くとも立派な封鎖線が出来ていた。
「アハハ、
「ねえ、これどうするの? ねえー」
双眼鏡片手に暢気な真緒の袖を、横からユニカが引っ張る。狭い水域ゆえにこんな状態では沖に出られないし、沖に出なければ当然作戦地域に向かえない。
「そもそも何者なのって話だよね。いや、大体の予想はつくけど」
するとあたかも真緒の言葉に応じるかの如く、前方の船団から大音量が轟いた。
「皆っ、マスゴミのプロパガンダに踊らされるな! このアンブロシアの連中は、市民社会の守り手なんかじゃない! 高価な玩具を手に武人ごっこで悦に浸っている、ガキの集団だ! こいつらの無能のせいで、いつまでもヒュージがのさばっている! 神戸市民よ目を醒ませっ! 市民社会に仇なす軍閥政治にノーを突き付け、我らの自由と民主主義を守るのだ!!!!!」
「ヘイトガーデン、アンブロシアを許すな!」
「最強監査請求で、ヘイト野郎を殲滅だ!」
ガーデン体制と明日の国防政策を憂う良心的な市民たちだ。彼らの船上に据え付けられた拡声器は小政党が街頭演説で使うようなチャチなものではなく、遠く離れた海の上からでも十二分に届く。これが陸地の住宅街なら、苦情が殺到していただろう。
「あぁ~、ひょっとしてアンブロシアの武装制限解除の報道で刺激されちゃったのかも」
「ヒュージを倒せない無能と罵りながら、武装強化に憤る。彼らは自身の言行の矛盾に気が付かないのでしょうか」
「そこなんだよね、問題は。彼らは旧来の形式と根回しのようなものに強く拘ってる。何故ならこの手の人たちは、法治主義の擁護者だと自負しているから。だから海戦は国軍がやるべきだし、リソースも海軍に回さなければいけないと思ってる。実際の運用については全く考えずにね」
隣にやって来たディミトラの疑問へ、真緒が自分なりの考えを交えて答えた。他のガーデンと比べても重装備なアンブロシアは、こういった問題を避けてはいられないのである。
「ねえー、どうする? どうするの?」
「まあまあ、ここは一つ落ち着いて構えよう」
制服の袖を引っ張り揺らしてくるユニカを真緒は宥めすかせる。
「まあヘイト云々は今更ですが。それよりもこういった手合いが好む、軍閥という単語も謎です」
「軍閥……根拠地となる地方と後援勢力によって分かれる地方軍、武装組織。規模こそ違うけど、彼らが想像してるのはそっちの意味での軍閥だろうね。言いたいことは分かるけど、現行のガーデン制度は国法で定められたって事実がすっぽり抜け落ちてるからねえ」
「高い独立性を持った私立校が中心なのは、米国・英国式ですね」
「そうそう。日本はリリィの運用やノインヴェルト戦術には一日の長があっても、ガーデン制度に関してはあちらさんを参考にしてるんだよ」
戦術的要素の判断ならともかくとして、政治的な要素が強く、なおかつ既存の常識を大きく塗り替える判断を下す場合、外部の先例を参考にしたと説明するのは悪くない手法だ。同盟国で先進国のやり方に倣ったと主張すれば、下手な理由では糾弾され難いだろう。彼の国に何か含みを持つ相手なら、その限りではないが。
「彼らにとっては、外から押し付けられた制度に映っていると……」
「こればかりは、今になってうちらに言われても。国同士で話してもらうか、国会前でシュプレヒコール上げてもらわないと」
「その認知の歪みを抜きにしても、国を被害者扱いしている時点で噴飯ものですが」
中等部からアンブロシアに居るためか、ディミトラも日本の事情を中々分かっているようだ。近傍で声の大きな者が騒ぎ続けてきた結果なので、素直に喜べないことではあるが。
「もうこのまま突っ切っればいいんじゃない?」
動かない状況に飽きてきたのか、二人の間に入ってきたユニカが強硬策を主張し出した。
「まあまあ、そんなことしたら余計に拗れるから。ここはプロに任せておこう」
「プロ?」
「ほら、そろそろ来るよ」
真緒はそう言って包囲線の外側の海へ視線を向ける。そこにはもう一隻、新たな船が近付いていた。軽快なエンジンを唸らせ、白い波濤を派手に掻き分け進む白塗りの船体だ。
「こちらは神戸海上保安部。貴船団の行為は往路妨害並びに港湾法違反に該当する。ただちに当海域より退去しなさい」
颯爽と現れた海上保安庁の巡視船。神戸には彼らの基地の一つが存在した。それもアンブロシアの校舎からそう遠くない位置に。
海の警察の到来に、腐敗を誅せんと燃え上がっていた勇士たちは更に熱くなる。
「国交省は、活動家に乗っ取られてしまったぁ!」
「言論の弾圧だ!」
「チン騎士! チン騎士!」
巡視船に向けてあらん限りの罵声が浴びせられる。しかし当然ながら、それで海保が怯むはずもなく。数度の警告と最後通告を経て、巡視船の船首前甲板に据えられた
「放水開始!」
合図の直後、銃口から高圧の水流が放たれる。巡視船より数段小振りな船体に大量の水が情け容赦なく降り注ぐと、船外にて中指を突き立てていた烈士たちは堪らず船内へと避難した。固定されず船上に放置されていた物は勢いのままに洗い流されていく。
そして言うまでもなく、船の中にも逃げ場は無い。巡視船から海面上に降ろされた短艇が包囲線の一角である漁船に近寄り横付けすると、紺色の制服に鉄帽や防刃防弾チョッキを身に着けた集団が乗り移ったのだ。彼らは漁船内でずぶ濡れとなり青い顔を強張らせた義士たちを捕捉するや否や、銃床を振るい警棒を打ち下ろして制圧し始めた。こちらの方も放水に負けず劣らず容赦が無い。生々しさではむしろ上を行っている。
一連の光景をルヴェリエ上から見ていた真緒は、当然といった様子で首を左右に振る。
「そりゃあ海保の目の前で犯罪者だか海賊だかがあの旗を掲げたら、バチボコに怒られるよね」
また甲板に出ていた他のリリィたちも、ざわつきながら解散の雰囲気となる。
「この国いつも乗っ取られてるな」
「これ放水する必要あった?」
「銃とか迫撃砲とか隠し持ってるかもしれないし……」
大阪湾への出入り口を封鎖する船団はと言うと、制御を奪った海上保安官たちの手によって退避し始めていた。日本有数のコンテナ港が存在する神戸の海であんな暴挙に出られては、彼らとて手段を選ばないだろう。特に今は戦時なのだ。
「総員、所定の配置に戻れ。作戦を再開する」
無線から流れる司令の声を耳に入れつつ、真緒たちは甲板から艦内に戻っていった。
◇
多少のトラブルに見舞われたものの、無事に神戸を出立した海上機動戦隊。旗艦を先頭とする彼女らの単縦陣は大阪湾内にて、堺基地から出撃した国防海軍の護衛隊四隻と合流した。二本に増えた単縦陣は湾内を西進、本土と淡路島を繋ぐ明石海峡大橋の下を通過していく。淡路島もアンブロシアの担当守備範囲である。今も彼の地に残って戦っているであろう同窓に、戦隊のリリィたちは思いを馳せる。
そしてそんな戦隊の左舷前方を先行するのが海軍の艦だった。同型が四隻、見事な等間隔で水面を走る。凹凸の少ないのっぺりとした船体に、天高く突き出た通信線複合マストが特徴的だ。
自衛隊から国防軍へと改編するに当たり、日本は言葉遊びを止めた。即ち普通科は歩兵、特科は砲兵、施設科は工兵、そしてヘリ搭載護衛艦はヘリ空母となった。ただしそんな中でも変わらなかったものもある。ミサイル護衛艦や汎用護衛艦等、空母を除く打撃戦力の軍艦たちがそうだ。これらの艦種については、今更巡洋艦や駆逐艦にカテゴライズする方が不適当だと判断されたらしい。元々、巡洋艦は他の艦種に比して遠洋航海に優れていたため名付けられた名称であり、駆逐艦は敵の魚雷艇を駆逐する艦に付けられた名だ。現代の実情には即さないのである。そういうわけで、この
ルヴェリエの船体後部、LAC格納庫の一角では海上戦力と作戦に関して議論が及んでいた。
「流石にうちの哨戒艦の倍以上排水量があるから武装もそれなりだけど。ヒュージ相手に大丈夫?」
簡易のテーブルを囲うLACパイロットの内、ディミトラが不安要素を挙げた。作戦では、荘内半島北方の突破にはLACを投入せず艦隊戦力で敵の妨害を排除するとされている。
「もがみ型はその生産性から大量配備され多用途艦として運用されていますが、本来ならフリゲートに当たる船ですから。個艦戦闘力は決して高い方ではありませんわ」
そう答えたのは華だった。確かに戦闘艦として優れている艦型は他にある。しかしながら、意味も無く運用され続けているわけではない。
「ですが少人数で扱えるという点で、艦隊戦力の維持に一役買っているのです。軍艦以上に揃えるのが困難なのが、乗組員なので」
ルヴェリエの僚艦であるネレイドやナイアドは哨戒艦なので別として、もがみ型の乗員90名というのはこの規模の戦闘艦としては破格であった。装備・システムの自動化・合理化の賜物と言えよう。
「省人化はメリットばかりでもないでしょう。人が減ったら、どうしたってダメコンに悪影響が出る」
「それはディミの言う通りですわね。わたくしたちアンブロシアも他人ごとではありません」
あちら立てればこちらが立たず。だがそれでも、最低限の頭数を揃えなければ長い海岸線を守れない。悩ましいところであった。
「あっ、そうだ。いいこと思いついた。ちっさくて速い船にミサイルをガン積みすればいいんだよ」
唐突にそんな案を出したユニカに、ディミトラと華は首を少々傾けた。
「まあ、そういう考え方もあるにはあるけれど……」
「海上人海戦術、の一つでしょうか」
そこで、やや離れた所で格納庫の壁を背もたれにしていた真緒が面白がって口を開く。
「ヒュージなら航空戦力が貧弱だし、案外使える手かもね。でもうちじゃあ採用できないねえ」
「えーっ? 残念」
「小船だと波ですっごい揺れまくるけど、乗りたい?」
「乗りたくなーい」
格納庫の隅っこで艦船談義が繰り広げられていく。しかしここは船の中だが、LACの格納庫兼整備場でもある。そのLAC整備の主がタブレット端末と紙の束を抱えて四人の元にずんずんと近付いてくる。
「ちょっと貴方たち、暇なら新型機と新装備のマニュアル復習しておいてよ」
「もう見たよー」
「何回でも読み直すのよ」
「うっう~」
真緒とユニカが揃って梅干を舐めたかのような渋い顔をすると、美月は右手に持つ紙の束で二人の肩を軽く叩いた。
「船の外だと、私たちアーセナルは力になってあげられないから。何か要望があったら今の内に聞いておくわよ」
三年生で副隊長とはいえ、部隊の性質上、美月らアーセナルが矢面に立つのはいよいよ母艦が危うい時だ。それまでは裏方に徹することになる。なので
長年苦楽を共にしてきた幼馴染、彼女の意を理解している真緒は遠慮なく望みを言う。
「じゃあ腕を外して飛ばせるようにして」
「それは無理」
「そんなー」