魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

12 / 100
第12話 改めてよろしく!

「ん……うう……ん……」

 

 あれ? 俺はどうしたんだっけ? 

 確か、操られた炎華と戦って、何とか魔力生物を倒して……

 そうしたらデカい蜘蛛が校庭に出てきて……

 

 そうだ、俺は魔力切れで気を失ったんだ。

 だが、意識は徐々に覚醒している。

 ぼやけていた視界が段々と良好になってくる。

 

「あ……れ? 白百合さん?」

 

「あッ!? 

 えっと……目が覚めたんだよね、瑠璃海さん!」

 

 目の前には黒髪のおさげ少女、聖の顔があった。

 

 …………

 ……ッ!? 

 気のせいだろうか、顔が物凄く近い。

 いや、めっちゃ近い。気のせいじゃない。

 聖は一見地味目の印象があるが、顔立ちは整っているし、肌もかなりきめ細かい。もしここが共学の学校なら、隠れファンが相当数付きそうな程に美人だ。

 

 その黒髪美少女が、至近距離で俺の顔を覗き込んでいた。まぶたが二重である事が認識できる程に、だ。

 しかもよく見ると、顔が若干赤い。目元も少し蕩けている様に見える。

 

 意識が覚醒しきると早速、心臓の鼓動が加速する。

 マズい! 

 魔力が無い今、未来予知が発動すると今度こそ魔力切れに……! 

 

 ……あれ、ならない? 

 というか、身体の力が戻っている。心なしか、気分も良い。

 

「もしかして、白百合さんが私の魔力を回復させてくれたの?」

 

「う、うん! 

 厳密には、私は自分の魔力を相手に分ける事が出来るの! 

 あ、でもコレは最後の手段というか……緊急措置的な物で……

 決して邪な気持ちとかは無くて……!」

 

 何故彼女が赤面しているのか分からないが、兎にも角にも聖のお陰で助かったようだ。

 

「ありがとう、白百合さん! 貴女が居なかったら、私は今頃危なかったんだよね。本当にありがとう」

 

「ううん、お礼を言うのは私の方だよ。

 だって、炎華ちゃんを取り戻してくれて、私の命も救ってくれたんだよ? 私の魔力ぐらい、安いぐらいだよ!」

 

「そっか、どういたしまして。

 それじゃ、下に降りた炎華と錫宮さんの所へ行こう? 

 

 もうすぐ、決着がつくみたいだから」

 

 先程ハッキリと見えた未来のビジョン。

 今夜の事件は、もう解決したような物だった。

 

 ◆

「では、早急に片付けるとしましょう。

 私が注意を引きますので、葡萄染さんはトドメをお願いします」

 

「おっけ、任せて!」

 

 炎華のサムズアップを合図に、菊梨花は愛刀の菊一文字を『突き』の形に構えた。

 そのまま地を蹴り、巨大蜘蛛目掛けて突進する。

 当然、相手も黙って突っ立っている訳がない。口からは毒液、足からは糸を出して菊梨花を攻撃する。

 帯刀少女は直進しているのだから、それで倒せるのだ。

 本来なら。

 

 それが出来なかった理由は、彼女がいきなり加速したからだ。菊梨花の『物体の硬さを自在に変える魔法』で、右足で踏み込んだ地面を陥没させたのだ。それでも身体の進む勢いは前方のままであり、そのベクトルのままに地面の陥没を『解除』したのだ。地面は元に戻り、その力が前進するベクトルと合わさり、菊梨花を前へと押し上げたのだ。彼女の魔法を応用すれば、トランポリンの要領で加速する事も可能と言う訳だ。

 

 当然、柔らかくするだけの魔法ではない。手にした菊一文字は真剣ではなく模造刀だ。だが、その硬さを極限まで高めれば? ダイヤモンドよりも硬い鉄の刃を、猛スピードで突き立てたらどうなるか? 

 言うまでもなく、巨大タランチュラの身体を刀が貫通した。

 だが、これは魔力生物。通常の蜘蛛とは異なり、これでも生き絶えた訳ではない。しかも、大きさは25m以上ある。この大きさだと再生能力も有しているはずだ。

 

 だから確実に仕留める一手を打つ必要がある。

 

 菊梨花のお陰で、炎華には十分な準備時間があった。炎が彼女の両手に集まり、円の軌跡を描いている。その回転は次第に早まり、まるで高速で回転する水車のようだった。

 

緋色に燃る炎の水車(ムーラン・ルージュ)!!』

 

 炎華は詠唱と共に両手に集った回転する炎の輪を、巨大タランチュラ目掛けて投げ飛ばす。宛らチェーンソーの刃の如く火花をあげて切り裂き、炎の熱で瞬く間に魔力生物の身体は塵と化した。

 

「はぁ……はぁ……クソッ! クソがッ!」

 

 木の陰から何者かが出てきた。恐らくは今回の事件を引き起こした張本人だ。年齢は40代半ばといった具合だろう。

 

「お前の、お前の所為でウチの娘は! 魔女の道を閉ざされたんだ!」

 

 黒幕は炎華を指差してがなり立てる。暗闇でも目が血走っているのが分かった。彼女は正気ではないのだろう。

 

「おばさん、もしかしてだけど……ひじりんを虐めてた先輩達の親?」

 

 炎華は心底軽蔑する様な表情で黒幕を見つめる。だとしたら逆恨みもいい所だ。

 

「ひじりん、凄く困ってたよ? カツアゲされたり、体育館裏で服脱がされそうになったりさ……

 友達が泣いているのを、放って置けっていうの? どう考えても、悪いの先輩達じゃん?」

 

「黙りなさい! あの娘は勉強でちょっとストレスが溜まってただけよ! それに、相手は白百合家の出来損ないでしょう!? 

 落ちこぼれの小娘で発散したところで……」

 

「「「お前が黙れ」」」

 

 顔面に炎が、胸には水球が、腹には鞘の打撃が炸裂した。

 中年女性は宙を舞い、校庭の木に叩きつけられた。

 

 炎華が振り向くと、そこには聖と蒼蘭が立っていた。

 

 ◆

「ごめん、白百合さん……。やっぱり、先に帰ってた方が良かったね。こんな……胸糞悪い場面に遭遇するなんて、思ってなくて……」

 

 俺が見たのは、魔力生物が撃破される所までだ。その後で黒幕が開き直る事も、身勝手極まりない言い分を口にする事も見えていなかった。

 その所為で、彼女を傷つけてしまった。

 

「ううん、大丈夫……。私が家の落ちこぼれなのは事実だし……」

 

「そんな事は無いよ。私が断言する。だって、白百合さんのお陰で私は復活できたんだよ? 怪我の治療だけじゃなくて、魔力まで回復できるのって凄い事なんでしょう?」

 

「瑠璃海さん……

 ありがとう、瑠璃海さんって優しいのね」

 

 瞳を潤ませながら、彼女は礼を述べた。

 

「全く、実に気分が悪くなる事件でしたね。

 白百合さん。どうかこんな下劣な無法者の言う事など、気になさらないでください。貴女はこの学園の生徒であり、ここでの勉学に励む権利も資格もあるのです。

 そして貴女が学んで積み重ねてきた事は、誰にも否定する資格など無いのです」

 

「錫宮さん……」

 

「ほんっと、腹立つよね! 

 あーしが虐めてた先輩達と戦った時だって、ひじりんが回復してくれたお陰でやっつけられたんだし!

 ひじりんは十分凄いよ、本当に!」

 

「炎華ちゃん……!!」

 

 聖は泣きながら、炎華に抱きついた。

 見ているこっちまで目頭が熱くなる。

 

「ありがとう、みんな……。

 上手く言えないけど、本当にありがとう! 

 

 あと、瑠璃海さん……」

 

「な、何かな?」

 

 いきなり名指しで呼ばれてビックリした。

 

「もしよかったら、私と友達になってくれませんか!?」

 

「え、いいけど……

 そんな畏まって言われると、なんか照れるな……」

 

「ご、ごめん! 何か、変だったかな?」

 

「あ、ううん! 大丈夫! 

 それじゃ……改めてよろしくね! 聖!」

 

「うん! 

 これからよろしくね、蒼蘭ちゃん!!」

 

 ◆

 こうして、転校初日の長い一日は終わった。

 ひょんな事から繋がりを持った彼女達とは、当然良好な関係を築いていきたい。

 

 ……

 その為にも、俺が『男』だってバレない様にしないとな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。