魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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第13話 遠くの大魔女(きけん)と近くの博士(きけん)

 この学園で初めての友達ができた翌日、俺は授業を休む事になった。午前中は魔法警察(※魔法関連の事件を取り締まる機関)からの取り調べ、午後は胡桃沢(くるみざわ)博士によるバイタルチェックがあるからだ。

 

 昨夜の事件に関しては背後関係やら学園への侵入方法など、まだまだ調べないといけない事があるらしい。故に、午前中丸ごと使っての事情聴取を受けたのだ。

 結構疲れたが、良いニュースもあった。操られていた炎華(ほのか)は精密検査を受けた結果、無事に『健康異常無し』と診断されたとの事だ。モンペの逆恨みで後遺症の一つでも出来ていたら、それこそ絶大な不幸だ。

 ……『魔法』という人智を超えた力を身につける以上、こう言った事件や悪意にも触れるのだろう。少し気が滅入るが、今は炎華と(ひじり)の無事を喜ぼう。

 

 ◆

 そして俺は、学園内の研究施設にいる。

 ここは胡桃沢博士に与えられた研究ラボであり、関係者以外立入禁止の場所である。そして、天才的頭脳を有する変態の住処でもあった。彼女は普段、ここで寝泊まりしているらしい。

 

 バイタルチェックの為、俺は服を脱いだ。

 着替えにも大分慣れて来ており、下着の脱ぎ着も今ではスムーズに行える。ある意味では貴重な経験だが、未だにこの状況にモヤモヤした気持ちもある。

 

 そして博士は銀色のジッパーを取り出し、一糸纏わぬ少女の背中に貼り付けた。セロハンテープの様に端からゆっくりと取り付けられ、金属の冷たさが肌をくすぐる。そして完全に貼り終えた所で、俺は頸部分の持ち手を摘んだ。

 

 ジ……ジジ……

 

 持ち手を背中から腰にかけて下ろし切り、両手で首の後ろの皮を掴む。

 

 ベリ……ベリベリ……

 

 肌に張り付いたもう一つの『肌』が剥がれる感触。決して痛くは無い。寧ろ、本来の身体が久々に外気に触れる感覚が心地良い。

 

 鏡には少女の身体の上に男の頭を乗せた、奇妙な人間が映った。蒼蘭(せいら)の顔の皮は、彼女の豊満な乳房の前でダランと垂れ下がっている。一呼吸開いた後、すぐさま手足を脱ぎに掛かる。

 この皮は本当に不思議だ。男子大学生の腕や脚が、背の低い女子高生のソレになるのだから。今脱いだ右腕と、まだ皮を着たままの左腕を比べると違いがよく分かる。

 そして何より……上半身を脱ぎ終わった後に来る肩の解放感。日常的にずっしりと重いものを抱えているのだ。男の身体に戻った時の解放感は別格だ。

 

 そして俺は元の身体、雨海(あまがい) (しずく)の姿となった。バイタルチェックは淡々と実行され、身長や体重の測定や電子機器による身体のスキャンが行われる。

 他にも身体に吸盤状の機械を取り付けたりとか、健康状態のカウンセリングとか、健康診断で行うようなひと通りの調査が行われた。

 

 ◆

 バイタルチェックの結果、「異常無し」との診断がおりた。

 取り敢えずは安心だ。

 そして俺は再び皮を着て、蒼蘭の身体となり……博士の『お願い』を聞く事になった。

 

 具体的に言うと、蒼蘭の身体で夕食を作る事だ。

 

 まぁ、この身体での料理にも慣れて来たので、別に良いのだが……。

 可愛いピンク色のエプロンまで用意されていると、苦言の一つでも述べたくなる。まぁ、申し立てたところでどうせ取り合ってくれないので黙って料理するが。

 

 冷蔵庫には人参、ジャガイモ、タマネギ、糸こんにゃく、牛肉が入っていた。……こんなの「肉じゃがを作れ」と暗に言っているような物だ。とはいえこの具材で炒飯とかを作る反骨精神も無いので、大人しく肉じゃがの調理に取り掛かる。

 

 ◆

「いや〜、本当に助かるよ! 日々の疲れを癒すには、『可愛い女の子の手料理』が一番だね!」

 

 ピンク色のエプロンを着て肉じゃがを配膳すると、魔法の研究者はとてもご機嫌になった。健康診断時の淡々としたリアクションが嘘のようだ。

 

「……味付けはそんなに変わらないと思いますけど」

 

「何を言うか。愛らしい女子高生、蒼蘭ちゃんの手料理だぞ? 君だって、可愛い女の子が料理を作ってくれたら嬉しいだろう?」

 

 ちくしょう、否定できねえ。

 

「兎に角、私は食べ終わったら女子寮に帰りますよ! 鍋に残っている肉じゃがは博士がタッパーに詰めて、後片付けも自分でやってくださいね!」

 

「ああ、本当にありがとう。

 ……デザートにシュークリームを買ってあるんだが、食べるかい?」

 

「食べます」

 

「わお、素早くキッパリとした良い返事だ」

 

「この身体になると、甘い物が普段より美味しく感じるんです。やっぱり、食べ物の趣向も女の子寄りになるんですかね……?」

 

「その通りだ。キミの身も心も、段々と『女の子』に染まって来たと言うことさ」

 

「言い方!」

 

 ◆

 デザートを食べ終えた蒼蘭は、女子寮へ帰って行った。

 私は一人このラボで、学園や国家機関への報告を纏めていた。

 

『未来予知』

 

 タロットや水晶を用いた漠然とした『占い』でも、未来演算の様に人の頭脳や経験による『予測』でもない。

 未来のハッキリとした光景を、直接見る魔法だ。

 

 そしてこの魔法は蒼蘭の物ではない。彼女の皮を製作した自分だから分かる。蒼蘭は水の魔法使いとして設定した。

 なら必然的に、未来予知は『惺の魔法』という事になる。

 

 男性を後天的に性転換させ、魔法を扱えるようにする。当初の研究目標を考えれば、彼は大いなる成果をもたらしたと言える。

 だが、ここまで貴重な魔法に目覚めるとは思わなかった。

 

 これから起こり得る事を予知して、それを回避する行動を取る。要は『運命を変化させる』魔法だ。

 かつて神話に語られる力であり、使い方次第では途轍もない効果を発揮する魔法だ。それ故に扱い方を違えてはならず、悪用される事があってはならない。

 

 正直、報告はまだ先延ばしにしたかった。

 惺、もとい蒼蘭はまだこの力を制御しきれていない。身体の負担も懸念すべきだし、不確定要素も大きい。

 

 だが、学園で起きた事件も気がかりだ。本当に暴走した母親一人が起こした事件なのだろうか? 学園内のセキュリティをどう掻い潜った? 彼女の魔法は『魔力で産み出した蜘蛛を操る』物だ。なら黒板の文字は? 聖に読心術を示唆したのはハッタリか? それとも、何かしらの『魔術道具』を用いたのか? なら、その出所は? 

 

 ……何か良くない事が起ころうとしている。そんな気がしてならない。ひとまず、報告書を纏めて送信する事にした。無論、蒼蘭はまだ予知を上手く扱えない事と、引き続き経過観察が必須である事を強調した上で、だ。

 

 …………

 ……

 疲れた。

 報告も終えた事だし、本格的なストレス発散と行こうではないか。

 

 厳重に施錠された地下室、ここが胡桃沢百花(ももか)の憩いの部屋だ。自分の他には何人たりとも立ち入る事ができない。

 

 明かりをつけて、部屋中に張り巡らされた『癒しの写真』を目に焼き付ける。

 

 エプロン姿の蒼蘭。

 制服姿の蒼蘭。

 寝巻き姿の蒼蘭。

 

 ……そして、バイタルチェックを受けている惺の写真だ。

 

 身体中に活力が漲る。もうこうしては居られない。

 私は服を脱ぎ、一糸纏わぬ身体となる。そして、ベッドの下に隠した『金属製のジッパー』を背中に貼り付けた。

 

 ジ……ジジジ……

 

 私は胡桃沢博士の『皮』を脱ぎ捨て、本来の姿に戻った。

 惺という可愛い弟を愛して止まない姉、雨海 沙織(さおり)の姿にだ。

 

「ああッ、しずくん! しずくん! しずくん!」

 

 私はお手製の『惺ぬいぐるみ』と『蒼蘭ぬいぐるみ』を抱きしめて、ベッドに横たわる。

 

 そう、魔法の研究というのに偽りはない。だが、一番の目的は可愛い自分の弟、惺を陰から守る為だ。

 その過程で弟が可愛い女の子になったりしたが、自分の好みが存分に盛り込まれた身体になったりもしたが、これも弟への想いがあればこそ。

 良いじゃないか。弟の安全を確保し、魔法の発展に繋がる研究を進め、女の子の身体になってドギマギする弟を陰ながら観察する。それを一度にこなせるのが、沙織お姉ちゃんという天才なのだから。

 

 取り敢えず今この瞬間だけは、先の事を忘れてじっくり癒されよう。

 ああ……身体中を駆け巡る幸せが止まらない……

 

 ◆

 薄暗い部屋の中、漆黒のローブに身を包んだ魔女が水晶玉を眺めていた。

 

「……現れた、運命を操る『鍵』が」

 

 彼女はドアを開け、足早に駆ける。

 

 未来の見通す者が現れた。

 魔法の学び舎を何百年も観察した甲斐があった。

 知らせなくては、自分の主に。

 千年以上の時を生きる、大魔女達に。




ひとまず、キリのいい序章部分まで投稿します。
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