魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜 作:海神アリア
そして、ここから先の話ではちょくちょく出てくる感じです。
苦手な方はご注意ください。
先輩魔女のツバメさんと別れた俺たちは、休憩用のベンチに座り雑談をしていた。
「この後はどうしよっか?
そろそろ、このビル以外の場所に行く?」
正直に言うと、この複合施設以外の場所へも行ってみたい。ここは多種多様な店舗があるので、全ての店をじっくり巡るとそれだけで1日が過ぎてしまいそうだ。
「ん〜、あーし的には後一つ行きたいところあるんだよね」
「セーラってさ、あんまメイクした事ないっしょ?
ここのデパコスで、オススメしたいのあるんだよね〜♪」
「『デパコス』って確か……
デパートのコスメ……化粧品だよね?」
「そうそう!
可愛いセーラちゃんが、メイクで更にオシャレに可愛くなっちゃえば、もう無敵じゃね? ってコト!」
め、め、め、め、メイク!?
メイクって言ったのか? メイクって言ったよな!?
「あ、いや、メイクにそこまで興味は……」
「炎華ちゃん……流石にそれは……」
聖が言葉を紡ぐ。
助かった、止めてくれるのか。
「凄い名案だと思う!!
炎華ちゃん、メイクに結構詳しいでしょ!
何と聖は大賛成のようだ。少し高揚しながらギャルの友人の手を取り、ブンブン振っている。
「でしょ、でしょ? ひじりんなら賛成してくれると思った!
メイクのコトなら、この炎華ちゃんにお任せあれ!」
どうやら都会の女子高生達は、まだ蒼蘭ちゃんを着飾り足りないようだ……
マズい、めっちゃマズい。
とても、物凄くマズい。
このままでは、俺は本格的に、身も心も『女の子』になっちまう……!!
「よ〜し、そうと決まれば早速化粧品売り場に……」
そう言って炎華が立ちあがった瞬間、
「ぎゃあああああ!」
「あああああ!!」
周囲の人達が一斉に、苦悶の叫びをあげた。
「え、何、何事!?」
この奇怪な現象を前に、俺は混乱の声を溢してしまった。
行き交う客も、店員も、皆次々に倒れていく。
例外は、俺たち3人の『魔女』だけだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
聖が咄嗟に、倒れ込んだ女性に近づく。
彼女が肩を軽く叩いても、倒れた客からは反応がない。
聖は口元に耳を当てたり、脈を測って生死を確認する。
「良かった、まだ息がある……。
蒼蘭ちゃんは救急車を、炎華ちゃんは学園に連絡して!」
聖の指示を受け、俺と炎華は顔を見合わせた後、すぐさまスマホを取り出した。
この異常事態は十中八九、魔法による物だ。ならば魔女学園に連絡するのが最適解だ。また、もし魔法以外の治療が有効なら、救急車を呼んで事態を収束するのがベストだ。一般の医療技術で無理なら、病院に派遣されている治癒系の魔女が手を施してくれる。勿論、一般人には記憶操作や国の魔法機関による介入で、病院駐在の魔女は存在を認知されていない。
が、状況は更に最悪な方向へ転がっていった。
「ウソでしょ!?
何で電波が通じないの!?」
炎華はスマホを耳に当てながら、『信じられない』という表情で叫んだ。多分、今の俺も同じ顔をしているだろう。
電話が繋がらないのは、こっちも同じだ。バッテリーは十分あるし、オフラインのアプリは開ける。なのに、『通信手段だけ』が遮断されているのだ。
「……ッ」
額から汗が滲み出る。
俺の脳が、考え得る『最悪の状況』を予感し、心臓の鼓動が加速する。
「ねぇ、聖……
試しにさ、その人に回復魔法を使ってくれない?」
「え……?」
「ほら、周りには誰も人が居ないし!
今なら誰にも気づかれずに、回復魔法が使える筈でしょう?」
「あ、うん! そうだよね!」
聖は倒れている女性の身体に右手をかざし、左手で
「ヒーリング!」
が、反応が無い。
倒れた客の話ではない。
聖の魔法が発動していないのだ。
『ヒーリング』が発動した時、魔法をかけられた者は身体が白く光る。
それが起こらない、言う事は……。
「ヘイ、かーのじょ♪
倒れた人を心配するなんて、キミ優しいんだね?」
前方から、1人の男が近づいてきた。
頭は金髪と黒髪のグラデーション、服装は革ジャンというスタイルだ。
コイツも都会人なのだろうか、中々に小洒落た格好をして……
…………
……
いや、待て。
コイツ、何処かで見た事がある……?
「あれ、どしたん?
後ろの青髪のコ、俺の事めっちゃ見てない?」
革ジャン男がニヤニヤとした笑みを浮かべた。
その表情で、完全に思い出した!
コイツは、未来予知で見た男だ!
「聖、下がって!」
口も身体も、反射的に動いていた。
聖の腕を掴み、しゃがんだ状態から立ち上がらせる。
「え、え?
どうしたの、蒼蘭ちゃん?」
聖は戸惑いながらも立ち上がり、一歩後ろに下がってくれた。
「貴方……人攫いね」
「えっ!?」
俺が男を軽く睨みながら正体を明かすと、聖は驚いて更に三歩距離を取った。
「ちょいちょいちょい!
え、いきなり犯罪者認定とか酷すぎない?
キミもあれ? ナンパする男は全員、犯罪者予備軍とか思っているクチ?」
革ジャン男は半分驚きつつ、半分は
確かに
ならば……カマをかけるまでだ。
「お兄さん、お友達が2人いるよね?
服装は……片方が黒のパーカーで、もう1人が紺色のラガーシャツの人。
どう、当たっている?」
「なッ!?」
目の前の男は、完全に驚愕の表情になった。
そして、驚いているのは彼だけでは無い。
「セーラ……
あの人達の事、知っているの?」
炎華が右側の通路を指差す。
此方に向かう人影が二つ。
「ごめん、詳しくは知らない……。
知っているのは後二つ。
一つは今日の10時ちょっと前に、この三人のお兄さんが路地裏で私達を待ち伏せしてた事。
もう一つは……私達はお兄さん達から『逃げなきゃいけない』って事!
聖、炎華、走って!」
俺は二人の友人の手を取り、男達から逃亡しようとする。
だが、
「へ〜、俺たちの事、よく知ってるじゃん?
で、逃すと思ってるの?」
黒パーカーが指をパチンと鳴らした。
その瞬間、
「あぐッ……!」
脚に激痛が走り、俺はその場で膝をついてしまった。
「あ、脚が……!?
何で……?」
いつの間にか、脹脛が切り付けられていた。
幸いにもアキレス腱は無事であり、歩けない訳では無い。
だが、怪我の大きさよりも深刻な問題がある。
原因不明の怪我が、得体の知れない現象が、俺の心に暗い影を落とす。『恐怖』という名の影を。
その影は心臓の鼓動を早め、その動きに反比例するかの様に、身体から体温を奪っていく。
「セーラ、落ち着いて!
あーしの肩を貸すから!」
炎華が俺に手を差し伸べてくれた。
この時、彼女の気遣いが本当に嬉しく思った。
だが、炎華の手を取る前に……
「痛ッッ!」
彼女の手の甲は切り付けられ、血飛沫が飛んでいた。
「炎華ッ!!」
反射的に叫んだ。
手が、手から血が! 何者かに傷付けられて、炎華が……友達が怪我を……。
「大丈夫、心配しないで。
これぐらいなら……まだ何とかなるっしょ?」
そう言いながら、炎華はハンカチを自分の手に当てて止血を試みる。
「セーラ、ハンカチ持ってる?
無いなら、あーしの使う?」
「大丈夫! 自分のがあるから、炎華は自分の止血に専念して!」
この場で友人の止血を邪魔するわけにはいかない!
指の震えを抑えながら、ハンカチを取り出して傷口に当てる。
そして、いつまでも攻撃されっぱなしでいるわけにもいかない。
炎華も俺と同じ考えのようだ。彼女はハンカチを巻いてない手で、俺は傷口を押さえていない手で、攻撃魔法を試みる。
「ファイア・ボール!」
「ウォーター・ボール!」
だが手のひらに魔力を集めた瞬間、突如として騒音が鳴り響いた。
蚊の羽音と、歯医者のドリル音が合わさったかの様な、途轍もなく耳障りな音が鼓膜を支配した。
「ああああッ!」
「何……この音……ッ!」
手のひらに集めた魔力は霧散し、攻撃は不発となった。
騒音から逃れる為に、耳を塞ぐ。それでも、神経を掻き毟る不快音は止まらない。
『魔法が封じられた状況』……レストランで頭をよぎった最悪の予想が、今、現実になってしまった。
マズい、本当にマズい……!
「貴方達は、何が目的なんですか!?」
聖が勇敢にも、三人の男の前に出て対話を試みている。
「目的?
俺たちは唯の下っ端……
よーするに、俺たちがやってるのは『お仕事』な訳。
『使えそうな魔女を連れて来い』っていう仕事だけどね」
紺色のラガーシャツ男が、やや気怠げに言ってのける。
「友達に怪我をさせる人には、着いて行きたくないです!
第一、私達は暁虹学園の生徒です! こんな事をして、学園が黙っていると思っているんですか!!」
なんと、聖は相手に啖呵まで切ってみせた。
だが、聖の横顔と頬を伝う汗で、彼女の心境は察しがつく。
彼女は普段大人しい性格だが、今まさに、勇気を振り絞っている事が分かる。
俺の隣に居る炎華も、表情が少し強張っている。襲いかかる不可視の攻撃に、少なからず恐怖や危機感を感じているのだろう。
……
俺は何をやっているんだ?
女子高生二人が、懸命に立ち向かっているんだぞ?
落ち着け、そして考えろ!
相手の攻撃手段、魔法が封じられた理由、この場を切り抜ける方法を!
「だーかーらー、
その学園? ってのが動く前に君らを取っ捕まえるんだよ?
外部との連絡は取れないんでしょ?
なら、キミらの生殺与奪は俺たちが握ってるよね?」
黒パーカーの男は、余裕たっぷりといった態度だ。
「だから精々、俺たちの機嫌を取りなよ。
さも無いと、こんな感じで酷い目に遭うよ♪」
革ジャン男が天井に腕を掲げた瞬間、なんと……俺の服がビリビリに引き裂かれた!
「きゃああああ!?」
自分の口から無意識に、女の子の悲鳴が発せられる。
反射的に両手で、自分の胸部を覆い隠す。
「おー、
決めた、キミだけは
男達の表情が、少しずつ下卑た物に変わっていく。
反面、友人二人の表情は徐々に険しい物へと変貌していった。
最悪の気分だ。
服を破られた羞恥心と、いい様にされている屈辱感が、自分の心を更に重くする。コイツら、アパレルショップでも俺に目をつけていたのか……!
いや……待て。
『試着室で俺を見ていた』だと?
確かに、着替えている時に視線を感じていた。
それに、試着室では
『見えない攻撃』
『虫の羽音』
沈んでいた心は、水面目掛けて浮上していく。
あの野郎、墓穴を掘ってくれた!
俺はスマホを取り出して、カメラを起動する。
例え電波が届かなくとも、写真は撮れるからだ。
そして撮影した写真には、しっかりと写っていた。
この空間を飛び回るモノが、ハチ公像での待ち合わせからずっと俺たちを尾行していたモノが!
「分かったわ……、貴方達が使う、魔法の正体が!」
男達を指差し、その場にいる全員に聞こえるように、声を張り上げる。
友達に安心を、敵に驚愕を与える為に。
「肉眼では見えない、透明な蟲……
貴方達が
その羽音で集中力を削いで、『目に見えず、正体不明故の恐怖心』で、私達の魔法を封じていた……でしょう?」
「「「なッ……!?」」」
人攫い達は、『信じられない』と言わんばかりの、驚愕の表情で俺を見た。
「いつ……いつから気がついていた!?」
黒パーカーが、語気を強めて俺に問い詰める。
「さぁ……?
ひょっとしたら、『全部お見通し』だったのかもね?」
俺は『不敵な笑み』を意識して、相手に微笑みかける。
……こんな物は当然、ハッタリだ。
だが今日一緒に渋谷を案内してくれた、楽しい一日をくれた友達二人を助けられるなら、ハッタリでも何でも良い。
兎に角、この場を切り抜ける事が最優先なのだから。