魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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第24話 アゲハの大魔女と『運命の鍵』②

「それは……『異世界の魔女』を倒す為ですか?」

 

 微笑む大魔女に、俺は問いかける。

 

「あら、次は蒼蘭お姉様が質問する番って事で良いのかしら?」

 

 俺は一瞬炎華の方を見た。彼女は『お先にどうぞ』とジェスチャーで示してくれる。

 

「はい、マギナさん。

 貴女はさっきの蟲の魔女、アラキーネを『異世界の魔女』って呼んでましたよね? 

 そして実際に彼女はエルフで、本来なら世界中何処にも居ない種族……ですよね? なら、本当に『異世界』があるって事ですか? ファンタジーな世界が!? 

 更に言うと……アイツは『王』だの『宮廷魔術師』だの言ってましたけど、それはどういう存在なんですか? 異世界人達の目的は!? 一体、何のために……」

 

「ちょ、ちょ、セーラ! 一旦落ち着いて!」

 

 炎華の声で、俺はハッと気がついた。流石に、こうも矢継ぎ早に質問するのは良くなかった。

 

「すみません、つい熱が入って……」

 

「大丈夫よ。確かに貴女達にとっては、一番気になるところよね。でも炎華お姉様の言う通り、少し落ち着いて話しましょう?」

 

「はい、そうします……」

 

 俺はお冷を飲んで、体温を下げた。

 

「最初に言っておくと……私も全てを知っているわけではないの。彼女らの目的も、どうして魔女を集めるのかもね」

 

 ポツリ、ポツリと彼女は答え出す。表情も、先程とは打って変わって真剣な物になっていた。

 

「そして今から話すのは、とても信じ難いお話。お姉様方はきっと荒唐無稽な妄言に聞こえるでしょうね」

 

 声色が重い。多少は覚悟していたが、この先は衝撃的な話題が待ち受けているらしい。とは言え、『信じ難い話』とは何だろう? 今日一日だけでも、素人魔女にとっては信じられない出来事のオンパレードだった訳なのだが……? 

 

「ならば、実際に『見て貰う』のが手っ取り早いのでは?」

 

 背後から凛とした女性の声がした。

 

「うわッ!? 

 びっくりした!」

 

 いつの間にか、ネイビーの髪をした魔女が部屋の中に居た。

 確か彼女はマギナさんの側近、ステラさんだ。

 

「ちょうど良かったわ。ステラ、お姉様方に『例のビジョン』を見せてあげる事は出来る?」

 

「お望みとあれば。それが仕事ですので」

 

 クールな侍女は淡々と答えると、ローブの袖から水晶玉を取り出した。そのまま魔力を込めると、表面に光の文字が浮かび上がった。アルファベットでもギリシャ文字でもない、見慣れない言語だ。

 

「ひょっとして……『ルーン文字』?」

 

「ご明察」

 

 無表情だったステラさんは僅かに口角を上げて、俺の回答の答え合わせをしてくれた。

 ルーン文字……確か北欧神話に伝わる古代の魔法だった。何でも文字を刻むことで、様々な魔法を使う事ができるとか。

 そしてそのルーンが放つ輝きは更に眩くなり、部屋中を光で覆い尽くした。

 

 ◆

 気がつくと、俺たちは椅子に座ったまま屋外に出ていた。

 いや、違う。俺はこの景色や感覚に見覚えがある。これは、未来予知で見るビジョンだ。

 そして、世界がモノクロだ。あの時、『運命の楔』を引き抜いた時と同じように。もしかして、これは……。

 

「マギナさんが見た、『未来予知』ですか?」

 

「ええ、()()正確よ。

 そして、しっかりと見届けてちょうだい。私が見てしまった、最悪の未来を」

 

 大魔女の言葉に呼応する様に、俺たち全員が宙に浮かぶ。そして、どんどん高度が上がっていく。

 

「わ、わ、飛んでる!?」

 

「高ッ! しかも映像が凄いリアル!」

 

「落ち着いて、聖お姉様、炎華お姉様。これは私の記憶の映像、真っ逆さまに落ちる事はないわ。

 そうだ、こうすれば怖く無いわよね?」

 

 マギナさんが指を鳴らすと、虹色の蝶が三匹やってきた。各々が球体のバリアを展開し、浮遊する椅子を取り囲む。セーフティネット代わり、と言う訳だろう。これなら、うっかりバランスを崩しても大丈夫だ。無論、実際に椅子から落ちても問題はないのだが、視覚的な安心感が段違いだ。

 

「もうすぐですね。彼方の世界から、『滅び』がやって来ます……」

 

 虚空を指差して、ステラさんはつぶやいた。

 

 程なくして、空間に漆黒の穴が出現した。そこから這い出てきたのは無数のモンスターだ。

 ドラゴン、ワイバーン、ヒュドラ、悪魔やアンデッド。そして、先刻渋谷に現れた巨大な蟻の化け物、『大女王蟻(ミュルミドネス)』。その総数は一万を下らないだろう。他にも、エルフや獣人の兵士たちが次々に雪崩れ込んでくる。

 無作法な客人達は、思うがままに街を破壊していく。逃げ惑う人々を兵士らは甚振るように殺し、悪魔達は屍肉を貪っていた。ドラゴン達はひとしきり建物を破壊した後、次なる獲物を探すために遠くへ飛び立った。

 

 宛ら怪獣物やモンスターパニック物のB級映画だった。だが、分かる。俺は、曲がりなりにも『予知能力者』だ。これは作り物では無く、未来予知。これから起こる、最悪の破滅だ。見るに耐えない、無惨な光景。本来なら、恐怖心や嘔吐感で心が折れてもおかしくない。だが蝶が作ったバリアは、精神を安定させるフィルターの役目も果たしていた様だ。お陰で目を逸らす事なく、大魔女が予知した光景を見届ける事ができた。そう、何故か俺は、あの光景から目を逸らしてはいけない様な気がしたのだ。

 

 ◆

 ビジョンが終わると、元いた『魔女の隠れ家』に戻っていた。

 

「「「…………」」」

 

 誰一人声をあげる事ができずにいた。

 当然だ、あんな光景を見た直後なのだから。

 

 沈黙が続くに連れて、精神が少しずつ落ち着いて、心臓の鼓動は普段のペースを取り戻た。試しにカップに残っていた紅茶を飲み干したが、吐き気はしなかった。味もちゃんと感じる事ができた。

 

「今のは……一体……」

 

 聖が恐る恐る口を開く。

 

「私が見た、最悪の未来。異邦から訪れる『滅び』よ」

 

「それは……いつ起こるんですか!? 

 早く逃げないと、何処か遠くへ!」

 

「落ち着いて、聖お姉様。

 あれは、『予知であって予知では無い光景』なのよ」

 

「どう言う事……ですか?」

 

「私の未来予知は『並行世界の観測』、その延長線上でしかないの。つまり今のビジョンは、この世界と類似した並行世界の未来よ。

 それに、今日明日中に破滅が訪れる訳ではないわ。あの光景は、ざっと一年後ってところね」

 

「でも『類似した並行世界』って事は、私達の世界でも起こり得る未来なのでは?」

 

「よく思い出して。さっきのビジョン、何か気になる事が無かったかしら?」

 

 俺たちは顔を見合わせて、各々考え込む。

 

「そう言えばさ、何で誰も抵抗しなかったんだろ? 魔法機関には、こういう時の防衛魔法団がいるのにさ……あ、これが大魔女様の言う『おかしな点』ですか?」

 

「ええ正解よ、炎華お姉様。これは、『世界中の魔女が全員居なくなった世界線』よ。予め、みんな異世界に連れて行かれたようね」

 

「魔女を全員連れ去るって……そんな事が出来るんですか?」

 

「これも推測にはなるのだけど……事前に魔女達の居場所を突き止めて、一気に『転移』させれば不可能では無いと思うわ。

 蒼蘭お姉様も、『そういう事件』には覚えがあるでしょう?」

 

 居場所を丸ごと……転移させる……。

 

「もしかして、例の4月に起きた……大学が丸ごと消失した事件の事ですか!?」

 

 思わず声に出してしまった。

 

「それって、先月上旬の事件だよね? 学園でも話題になってたけど、蒼蘭ちゃんよく知ってたね?」

 

「えっと……『こういう恐ろしい事件も起こるのが魔法界だよ』って教わったのよ。胡桃沢博士にね」

 

 聖は「ふむふむ」と頷いてくれた。

 あっぶねぇ……。ついこの前まで魔法に馴染みのなかった蒼蘭が、あの事件を知っているのは確かに不自然だった。気をつけなければ……。

 

「コホン。

 話を戻すけど、事前に綿密な情報収集が行われた結果、魔女は一人も居なくなった……のだと私は推理しているわ。

 そして、違和感はもうひとつ。

 ワープホールから出てきた『お客様』に、お姉様方は見覚え無いかしら?」

 

 モンスターが次々に雪崩れ込んできた、あの光景だろう。そりゃ、ドラゴンやら悪魔やらはゲームとかで馴染みはあるけども……。

 

 いや、違う。

『実物を見た事のある』魔物が一種類だけいた。

 

「そうだよ、アラキーネ! デッカい蟻の上に何か居たの、あーし見てたよ! 顔までは、遠くで分からなかったけど、多分そうでしょ!?」

 

「ええ、正解ですね。こちらの水晶玉、静止画も映し出す事が出来ますので、是非答え合わせをば……」

 

 ステラさんが再び、ルーンが刻まれた水晶を差し出した。そこから小さな画面が浮かび上がる。画面の中には『大女王蟻(ミュルミドネス)』の頭部が拡大されて映っていた。そこには軍服姿で仁王立ちする、銀髪のエルフがいた。間違い無い。先程邂逅した蟲の魔女本人だ。彼女の胸には、煌びやかな勲章が幾つも付けられている。どうやら、一年後には大層出世していたようだ。

 

「彼女は優秀な諜報員で、既に私達の世界について様々な情報を得ていたわ。だから、彼女を野放しにしたままだと、あっという間に侵略の準備が整っていたでしょうね……」

 

 マギナさんの言う通りだ。アラキーネ、奴は強敵だった。既に「女性しか魔法を使えない」事を知っていたし、戦闘能力も高い。情報収集要員としては、とても優秀な人材なのだろう。

 

 でも、待てよ……? 

 

「そのエージェントを捕縛できたと言うことは……、

 未来が変わるんじゃないですか!? 一年後に起こる侵略が中止……或いはもっと先延ばしになるとか!」

 

「ええ、その通りよ。蒼蘭お姉様の活躍で、未来は確かに変わったわ。

 ただね……今度の未来はこうなっているのよ」

 

 マギナさんが水晶に手をかざした。

 画面の中にある惨劇のビジョンは、瞬く間に消失する。

 代わりに映し出されたのは、穏やかな街並み。そして、一定間隔で乱れる風景だ。

 

「これはたった今、この子が運んでくれた映像よ。時間はさっき見たビジョンと同じく、約一年後ね」

 

 大魔女は机に留まった虹色の蝶を、指で撫でながら言葉を紡ぐ。

 

「さっきのサイコロゲームで、また新しく生まれた並行世界があるの。基本世界とはそこまで乖離していない世界ね。其処では確固たる未来は確定していないけれど、一先ずの危機は去ったと思っていいわ」

 

 それを聞いた俺は、身体中の重りを外された感覚になった。先ずは目先の不幸を回避できたのだ。不安や緊張から解き放たれ、肩が軽くなった気がする。

 

「でもさ〜、これめっちゃ見え辛くないですか? おばあちゃん()の古いテレビみたいに、ザーザー言ってますよ? 最初に見た予知と、違い過ぎないですか?」

 

 炎華の言う通り、水晶から出力される未来の映像は、時々乱れている。

 

「流石に年単位の未来予知だと、中々正確には測れないのよ。未来は本来、幾らでも変わってしまう物なのだからね。

 そう……普通なら、あそこまで確固たる滅びの運命は浮かばない筈なの……」

 

 何処か遠くを見つめる表情で、大魔女は呟いた。が、直ぐに俺たちに向き直った。

 

「さて、改めて蒼蘭お姉様にはお願いがあります。

 この通り、破滅の未来を……運命を変える貴女の力が必要なの。

 どうか、私達に力を貸して貰えないかしら?」

 

 ………………。

 俺は、一度深呼吸をした後、彼女に返答した。

 

「正直に言っても良いですか?」

 

「ええ、勿論よ」

 

「滅茶苦茶に、自信ないです……」

 

 肩を竦めながら、言葉を絞り出した。

 

「と言うと?」

 

「いや、この世界を狙っているのが、あんな恐ろしい化け物を従える奴ら何ですよ!? 

 しかも異世界の魔法使い、凄く強かったですもん! 

 そんな連中と事を構えるなんて……、魔法の世界に足を踏み入れたばかりの私には荷が重すぎますよ! 

 そりゃ、仮に私が凄く魔法の才能に溢れていて、何でも出来る魔女だったら、それこそドラゴンを片手間に倒せるような魔女なら喜んで力になりますよ! 世界の危機ですもん、むしろ世界を救える力があるのに使わないのは薄情という物です。

 でも、今の私には……『世界の命運を背負え』と言われて、それを実現出来るだけの力は無いんですよ……」

 

 一息に言葉をついてしまった。しかも、余りにも情け無い断り文句だ。けれど、今の正直な気持ちでもある。俺に『世界を救え』なんて期待をするのは、お門違いも良い所だろう。

 

 ()()()()()()()()()()()()俺に、そんな大層な事を期待しないで欲しい。多分、がっかりする事になる。

 

 何より、立ち向かう相手が大きすぎる。力も、魔力も、規模もだ。

 

「何も、異世界からの刺客を片っ端からやっつけて欲しいとは言わないわ。貴女は普段通りに未来を見て、それを回避する事に全力を尽くしてくれれば良いのよ。そうした小さな積み重ねが、やがて大きな破滅を防ぐ事になるわ」

 

「そうは言っても、私には()()()()()()()()……」

 

「でも、()()()()()()()()?」

 

「……ッ、それは……」

 

 アゲハの大魔女は、宝石の様な双眸で俺を見つめている。まるで、俺の心を見透かすような目つきだ。

 

「貴女は何度も、襲いかかる危険に対して立ち向かった。抗った。折れかけた事はあっても、完全に受け入れた事は無かった筈よ」

 

「……過大評価ですよ。私は、そんなに強い人間では無いです」

 

「なら蒼蘭お姉様はあの夜、どうして聖お姉様を助けようと思ったの?」

 

「それは……」

 

 何故か。今一度、自分に問いかける。

 博士に頼まれたから? 聖がいい奴だから? 

 

 違う、もっと根本的な事だろう。

 

「多分、怖かったんだと思います」

 

「……怖かった?」

 

「私は学園に入る前、本来なら死んでいました。運命の気まぐれで、ほんの少し歯車がズレただけ。

 そして理不尽に命を、何も成さないまま無意味に死んでいた筈だった思うと……怖くなるんです。自分の人生に意味も持たせられずに、突然幕を下ろされるのが。

 そして、予知で見た聖の顔も……怖がっていました。たぶん、炎華だって怖かったんじゃないかなって……思います」

 

 俺はこの時気がついた。友人二人が、食い入るように聞いていた事に。

 

「あ、ごめん! 私が勝手に思ってただけだから! 

 勿論、二人は強くて勇敢な魔女だって、今日一日で分かったから! その……気を悪くしたら、ごめん……」

 

「ううん、そんな事はないよ」

 

 そういうと、聖は俺の手を取った。

 

「むしろ、蒼蘭ちゃんの気持ちが知れて良かったな。私は最初、蒼蘭ちゃんはカッコいいヒーロー気質な子だと思ってたの。でも段々と、可愛い所や『普通の女の子』なんだってのを知る事ができて……親近感が湧いてきたんだ」

 

 そっか……()、『普通の女の子』に見えてるのか……。

 いや、落ち着け。ショックを受けるな、俺。

 

「改めてありがとう、セーラ。セーラがいっぱい勇気を出してくれたから、あの夜も今日も、あーしら全員が笑顔でいれたんだよね」

 

 今度は炎華が優しく頭を撫でてきた。

 

「もう、みんなして私の事をおだて過ぎ、持ち上げすぎよ……」

 

「えへへ、ゴメンって。

 あ〜、でもセーラの頭は撫で心地が良いな〜」

 

 ギャルの魔女は手をわしゃわしゃするのを止めようとはしなかった。が、マギナさんが再び真剣な眼差しを向けると、彼女は頭から手を離してくれた。

 

「もう一度、お願いさせて。

 この世界には、貴女の魔法と勇気が必要なの。だから、私に力を貸してください!」

 

 大魔女は深々と頭を下げている。

 ……出来るのだろうか? 俺に、そんな大役が……。

 だが、本当に未来を救う手段がそれしか無いのなら……。海外にいる俺の両親、実家に居る過保護な姉、少ないながらも今までの人生で出来た友達。

 そして、学園で出来た新しい友達二人を助ける事が出来るなら……やるしか無いだろう。例え、身の丈に合わない役目でも。

 

「わかりました。やります、引き受けますよ。その役目」

 

「ああ……ありがとう、蒼蘭お姉様!」

 

 大魔女は両手で俺の手を掴み、ブンブンと激しい握手をしてきた。

 

「ところで、先当たって私は何をすれば良いのですか? 『運命の鍵』に、何かミッションはありますか?」

 

「ん〜、取り敢えずはこれまで通り、学園生活を送ってくれれば大丈夫よ。暁虹学園で魔法について、しっかり勉強してね。そうすれば、自ずとお姉様の魔法も鍛えられるから!」

 

「それで、大丈夫なんですか?」

 

「ええ、頼んでおいて何だけど、お姉様にはあまり無理をして欲しくはないの。流石に、いきなり難易度の高い事はして貰うつもりはないから。

 ……今のところはね」

 

 何か含みのある言い方だな……。

 

「それと無事に世界を救えたら、貴女達の願いを一つずつ叶えるわ。妖精らしく、それぐらいの見返りは用意させて?」

 

「「え、良いんですか?」」

 

 炎華と聖がダブルで食いついた。

 

「当然よ。蒼蘭お姉様に力を借りる以上、ほぼ必然的に二人の力も借りる訳だし」

 

「と言うか、二人は大丈夫なの? 私と同じく、マギナさんに協力するって事で良いの?」

 

 そりゃ、二人も協力してくれるなら心強い。だが、態々危険に首を突っ込む事も無いだろうに。

 

「ま〜、話聞いちゃった以上、他人事にはできないっしょ!」

 

「私達に出来る事があれば、遠慮なく言ってください!」

 

 先輩魔女は覚悟の決まり方が違った。凄い。

 

「本当にありがとう、お姉様方! 

 さて、話も纏まった訳だし、後はゆっくりお茶を楽しみましょうか♪」

 

「あ、最後にもうひとつ聞かせてください!」

 

 聞かねばならない事は最後に一つだけ残っていた。危うく、機会を逃すところだった。

 

「なぁに?」

 

「マギナさん、貴女は自分を『妖精』って言ってましたけど……絵本に出てくるような妖精って事で良いんですか? 人外の、魔女って事で間違い無いですか?」

 

「ええ、私は人間界に移り住んだ妖精よ。まぁ、私みたいな人の社会で暮らす『物好き妖精』は、他に居ないでしょうけれど」

 

 どうやら、マジに人外らしい。そりゃ千年以上も生きる訳だ。

 

「なら並行世界へ行く時に、羽が生えたり服装が変わったのは、妖精の力って事ですか?」

 

「ああ、魔術衣装(マギア・クロス)の事? あれは、ある程度魔法を極めたら人間でも可能な魔法技術よ。自分の心象(イメージ)を、衣装として身につけるの。

 まぁ、その辺はおいおい習得して貰えば大丈夫よ♪ 

 兎に角、まずは健やかな学園生活を楽しんでね。()()()()でね♪」

 

「……?」

 

「あれ、知らなかった? 私、お姉様方が通う暁虹学園の創設者なのよ?」

 

「ええ!? そうだったんですか!!

 あ、すみません! 失礼でしたよね……」

 

「平気よ、まだ見習い魔女ですもの」

 

 大魔女は俺の知識不足を、笑って流してくれた。まだまだ、学園で学ぶべき事は多そうだな……。

 

 ◆

 長い一日が終わった。あの後、最後にゲームセンターに寄って、プリクラを撮った。ステラさんは、やる事があると言って早々に何処かへ行ってしまった。なので、マギナさんを含めた4人で撮ったのだ。その後はクレーンゲームやエアーホッケーをして、楽しく遊んでいた。

 

 今日一日で、色んな事が起こった。

 だけど、取り敢えず……今日出掛けて良かったと思っている。改めて、聖と炎華には感謝だ。もうすぐ渋谷を去る今は、今だけは楽しく遊ぼうと思う。

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