魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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第30話 vs『柘榴石(ガーネット)の魔女』!②

「さぁ、覚悟なさい!私の可愛いゴーレムで、押し潰して差し上げますわ!」

 

 アディラの高らかな声に合わせて、ゴーレムが起動した。地響きを立てて、此方に迫ってくる。

 

(図体の割に、足が速い!)

 

 咄嗟に後方へ飛び退き、振り下ろされる拳を躱す。

 そして攻撃後にできる隙を狙い、魔法を撃ち込む。

 

「『ウォーター・ボール』!」

 

 だが砂の巨人は、片手で悠然と攻撃を受け止めた。水が腕に染み込んでいく……。此方の攻撃は吸収されたようだ。

 

「私のゴーレムにとって、水は強化材料でしか無いわ!もう一度、拳の一撃を喰らいなさい!」

 

『ウォーター・ボール』を受け止めたその手で、再び殴りかかってくる。再びその攻撃を避けたが、地面の砂と土が凄まじい勢いで飛び散った。

 

「うわッ!?」

 

 思いがけない攻撃の余波に、度肝を抜かれてしまった。拳の攻撃が、先ほどより強化されている!

 そう言えば、菊梨花が言っていた……。砂の魔法は水を吸って、土や泥になると。水を吸収した分だけ、ゴーレムが固くなっているのだ。

 

(このまま水魔法で攻撃をするのはマズいか?

 ……いや、待て!もしかしたら……)

 

「どう、分かったかしら?貴女より私の方が、優秀で、才能があって、特別な存在だと言う事が!」

 

「それを否定するつもりは無いけど……勝負はまだ終わってないよ!」

 

 俺はアディラ嬢に啖呵を切ると、両手に水の魔力を込める。より大きな水の球体を出す為に、だ。

 

「『ツイン・ウォーター・ボール・ギガント』!」

 

 狙いは巨人の両脚だ。そして、それぞれ片方ずつに命中する。

 

「どうやら貴女、察しも物覚えも悪いようね。砂は水を吸収して、更に頑丈になるのよ。

 ……まぁ、言って分からないなら身体で教えて差し上げますわ!踏み潰しなさい、『砂漠の傀儡(デザート・ゴーレム)』!」

 

 巨人は水が浸透した脚で、大地を踏みしめ迫って来る。

 ()()()()()()()()()()()で。

 故に、俺は余裕を持って巨人と距離を取る。

 

「そう……そして吸収したら、()()()()()()()()()って事!」

 

「なッ……!?」

 

 さっきの魔法は、相手の足を奪う為のモノだ。動きを遅くして、狙いやすくする必要があった。

 

 修行で身につけた『必殺技』を、確実に当てる為に。

 

 控室で行った魔力の活性化も、そろそろ効き目が切れてくる頃だ。何発もは撃てない。そして、アディラも手の内を知らない『初撃』に全てを賭ける!

 

「足を止めた今がチャンス!これで決めるわ!

『ツイン・ウォーター・トルネード』!」

 

 高さ2m弱の水の竜巻が二つ、俺の斜め左右の前方に出現する。

 

「セイラ、それが貴女の本気かしら?

 なら、余裕を持って受け止めてあげるわ!」

 

 アディラが指を鳴らすと、ゴーレムの片腕が地に落ちた。そして、新しい腕が生える。水を吸った方の腕を切り捨て、乾燥した両腕で迎え撃つようだ。

 

「まだまだ!もっと強力な魔力で、私は貴女に勝つ!」

 

 俺が込めた魔力に応じて、竜巻は徐々に巨大化する。

 そう、ポイントは『そこ』だ。

 アディラはまだ気づいていない。竜巻が大きくなるにつれて、()()()()()()()()()()()事に。遠近法を利用した、簡単なトリックだ。全てはこの竜巻に、意識を集中させる為だ。

 

 突如として、竜巻が弾けた。その後、飛沫となった水の魔法は、瞬く間に一箇所へ吸収される。

 

 藍色の少女が(つが)える、水の弓矢にだ。

 

「これが、今の私のオリジナル魔法!そして、全身全霊の必殺技!

 穿(うが)て、『蒼石の流星(サファイア・ミーティア)』!」

 

「ッッ!?

 受け止めなさい!」

 

 令嬢は咄嗟に命ずるが、少しだけ遅かった。ゴーレムの両腕は、左右に展開した竜巻を受け止める為に広げられていた。一本の矢を受け止める構えではない。

 狙いはゴーレムの背後に居るアディラだ。砂の巨人は、辛うじて右手を使い、矢を防ごうとした。

 だが、蒼色の矢は手のひらを貫通し、『柘榴石(ガーネット)の魔女』に命中した。彼女は5メートル程後方に吹っ飛び、尻餅をつく。そして、ゴーレムはボロボロと崩れ落ち、砂に戻ってしまった。当然、演習試合用の安全装置が作動して彼女に怪我はなかった。

 

「……勝敗は、決しましたね。」

 

 どよめく会場の中、審判役の菊梨花は旗を持って前に出ようとする。

 

「……ッ、まだよッ!まだ、勝負は終わってないわ!!」

 

 アディラは飛び起き、此方を睨んだ。

 

「何を言うのです?今の瑠璃海さんの一撃は決定的でしょう。ここは引き下がって頂かないと……」

 

「何を言っているのかしら……?

 まだ、私は!本気を出してないんだから!!」

 

 次の瞬間、アディラの身体から膨大な魔力が迸る。

 そして彼女の全身を、煌びやかな光が包み込んでいく。

 

魔術衣装(マギア・クロス)、『絢爛なる女王(マハー・ラーニー)』!」

 

 光が弾け、豪華な衣服を纏ったアディラが姿を現す。頭には純白のベール、首には豪華なネックレスをしている。そして宝石を埋め込んだ杖を携えており、その姿は正に『東洋の女王様』と言える。

 

魔術衣装(マギア・クロス)』……マギナさんが見せてくれた、魔法技術の一つだ。自らの心象(イメージ)を、衣装として身に(まと)う事で一時的に魔力の放出量を増幅させる技。早い話が、膨大な魔力消費と引き換えにした『パワーアップ・モード』だ。

「ある程度魔法を極めれば、誰でも出来る」などと、アゲハの大魔女は嘯いていたが……授業で聞いた限りだと、結構な難易度の技術だ。そもそも、この学園内で教師含めて魔術衣装(マギア・クロス)を使える者は数える程しか存在しない。その力を、まさか目の前の財閥令嬢が使って来るとは夢にも思わなかった。

 

 アディラが杖を天に掲げると、コロシアムの地面が揺れはじめた。砂が隆起し、大地から砂漠の守護神、巨大なスフィンクスが姿を現した。

 

「喰らいなさい、これが私の本気の一撃よ!」

 

 彼女はスフィンクスの上に乗り、杖を振り下ろして使い魔に命令を下す。その前足で、瑠璃海 蒼蘭を踏み潰せ、と。

 

 ◆

 アディラ・ナヴァラトナにとって、この試合での敗北はあり得ない出来事だった。そもそも今日の決闘は、生意気な転校生に実力差を分からせる為の物だ。自分より経験が浅い……否、無いに等しいポッと出の愛玩動物(マスコット)が、魔法史に名を刻んだ『大魔女』に目をかけられているのだ。確かに彼女自身は、魔女の家系ではない。だが、それでもアディラは歴史に己の名を残す事が夢だったのだ。そして、それは人とは違う彼女の才能……『魔法』という分野であるべきだと考えていた。

 

 水の矢をその身に受けた時、彼女の中で起こった衝撃は計り知れない。

 あり得るか、あってたまるか。

 菊梨花の制止する声を振り切り、彼女が身に付けた最大の魔法を展開した。この圧倒的な力でもって、本当の実力者はどちらかを知らしめてやるのだ。蒼蘭に、学園の生徒と教師達に。

 事実、会場は大騒ぎだ。中には、「反則じゃないのか?」、「やり過ぎだ!」と言った声もあった。実際、魔術衣装(マギア・クロス)を使えない生徒との演習試合では、使える生徒側も『使わない』のが暗黙のルールだ。それでも、そのルールや会場の声を持ってしても、彼女の暴走を止める事は出来なかった。

 

 だが、次の瞬間、アディラは攻撃の手を止めた。

 その理由は、彼女自身も説明できなかった。

 強いて言えば……目の前にいる少女が、目を逸らさずにアディラを見続けていたから……だろう。

 

 圧倒的な魔力差を、自分が身につけていない技術を前にしながらも、藍色の少女はアディラから目を背けず、真っ直ぐに見つめていた。

 もしかしたら、人はそれを『勇気』や『覚悟』と表現するのだろう。蒼蘭の瞳に宿る、あの『光』の事を。

 

「……降参。降参、するわ……。」

 

 菊梨花が放った制止の一太刀より早く、彼女は敗北を認めた。他人から無理矢理止められるより、自ら敗北を認めた方がマシだからだ。潔いとはとても言えないが、最後の最後でプライドを選んだのだった。

 

 ◆

「ふぅ……。

 では改めて。勝者、瑠璃海 蒼蘭!」

 

 主審が旗をあげ、勝敗の判定を下す。コロシアム備え付けの水晶玉からは画面が浮かび上がり、『WINNER SEIRA!!』の文字と花火のエフェクトが映し出された。

 

『決まったァァ!!白熱の魔法演習、ここにて決着!ちょっとハプニングもあったけど、今日のイベントはこれにて終了!会場のみんな、両選手の健闘に、惜しみない拍手をしてくれよな!!』

 

 MCの風歌が、最後に良い感じの纏めをしてくれている。だが、まだ俺には実感が無かった。

 

「私……勝った、の?」

 

 呆然としたまま、誰へ問いかけているかも曖昧な呟きを溢す。すると、客席から飛び降り、駆け寄ってくる二人の人影があった。

 

「やったね、蒼蘭ちゃん!おめでとう!!」

 

「セーラ、凄いじゃん!いつの間に、あんなカッコいい魔法を身につけてたの!?」

 

 聖と炎華にハグ頭を撫でられたり、ハグをされたりされて、少しずつ実感が湧いてきた。どうやら、本当に勝ったみたいだ。いや、これは勝利と言って良いのだろうか?相手が降参した、つまりは『勝ちを譲られた』状態ではなかろうか?

 そんな事を考えていると、魔術衣装(マギア・クロス)を解いた令嬢が歩み寄って来た。

 

「勝利の余韻に浸っている所で悪いけど、一つ聞かせてくれないかしら?」

 

 アディラの問いかけに、両隣の女子高生二人は身構えた。

 

「大丈夫だよ。」

 

 俺は小声で友人に告げ、対戦相手だった少女に向き直る。

 

「どうしたの、アディラ?」

 

「最後の攻撃の時……どうして貴女は、避けもせずにただ見つめてたの?」

 

「それはね……貴女が攻撃を止めるのが分かっていたから、だよ。私はあの時、未来を予知したの。そうしたら、攻撃を止めるアディラの姿が見えたんだ。」

 

「な……」

 

「なんか、その……ごめん……。

 これじゃ、『私の勝利』とは言えないよね。」

 

「……追加でもう一つ、聞かせなさい。

 貴女は、恐怖を感じていなかったの?未来が分かっていても、私が目の前で膨大な魔力を使っているのよ?貴女に出来ない魔法を使っているのよ?いくら未来が分かっていても、目を逸らさずにいるなんて事、出来るわけないじゃない!?」

 

「それは、上手く説明できないけど……。多分、()()()()()()()()()()()()んだと思う。私、今日の為にマギナさんに修行をつけてもらったり、みんなにアドバイスや応援を受けてたから……。だから、私も自信が付いたし、みんなの応援に応えたいって思ったの。その為に今の私が出来ることは、自分の魔法に賭ける事だった…それだけの話だよ。」

 

「そう……。なら、やっぱり私の負けね。」

 

「え?」

 

「勘違いしないで!『今日のところは』って意味よ!確かに試合では負けたわ!でも、実力や魔力では私の方が遥かに格上なんだから!」

 

 アディラは一昨日と同じように、指をビシィッと突き立てた。

 

「『柘榴石(ガーネット)の魔女』、アディラ・ナヴァラトナが、いつの日か貴女を打ち負かすわ!それまで、首を洗って待っておきなさい!」

 

 再戦の申し込み、という事か?正直、今日の試合を乗り切るだけで精一杯だったのだが……。

 いや、彼女は俺に全力でぶつかって来たのだ。それに、学園での目標も出来た。なら、その熱い気持ちに応えるべきだろう。

 

「分かった。でも、今度は私が魔術衣装(マギア・クロス)を使えるようになってからね。その時は……」

 

 俺はアディラを真似て、腰に手を当て指をビシィッと突き立てた。

 

「この『蒼石(サファイア)の魔女』、瑠璃海(るりうみ) 蒼蘭(せいら)が相手になるわ!」

 

 会場に拍手と声援が満ち溢れる。少し照れくさいが、学園の生徒達から認められたみたいで、俺はかなり気分が高揚していた。




ライバルとの対決、ひとまずはここにて決着です。
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