魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜 作:海神アリア
「さぁ、覚悟なさい!私の可愛いゴーレムで、押し潰して差し上げますわ!」
アディラの高らかな声に合わせて、ゴーレムが起動した。地響きを立てて、此方に迫ってくる。
(図体の割に、足が速い!)
咄嗟に後方へ飛び退き、振り下ろされる拳を躱す。
そして攻撃後にできる隙を狙い、魔法を撃ち込む。
「『ウォーター・ボール』!」
だが砂の巨人は、片手で悠然と攻撃を受け止めた。水が腕に染み込んでいく……。此方の攻撃は吸収されたようだ。
「私のゴーレムにとって、水は強化材料でしか無いわ!もう一度、拳の一撃を喰らいなさい!」
『ウォーター・ボール』を受け止めたその手で、再び殴りかかってくる。再びその攻撃を避けたが、地面の砂と土が凄まじい勢いで飛び散った。
「うわッ!?」
思いがけない攻撃の余波に、度肝を抜かれてしまった。拳の攻撃が、先ほどより強化されている!
そう言えば、菊梨花が言っていた……。砂の魔法は水を吸って、土や泥になると。水を吸収した分だけ、ゴーレムが固くなっているのだ。
(このまま水魔法で攻撃をするのはマズいか?
……いや、待て!もしかしたら……)
「どう、分かったかしら?貴女より私の方が、優秀で、才能があって、特別な存在だと言う事が!」
「それを否定するつもりは無いけど……勝負はまだ終わってないよ!」
俺はアディラ嬢に啖呵を切ると、両手に水の魔力を込める。より大きな水の球体を出す為に、だ。
「『ツイン・ウォーター・ボール・ギガント』!」
狙いは巨人の両脚だ。そして、それぞれ片方ずつに命中する。
「どうやら貴女、察しも物覚えも悪いようね。砂は水を吸収して、更に頑丈になるのよ。
……まぁ、言って分からないなら身体で教えて差し上げますわ!踏み潰しなさい、『
巨人は水が浸透した脚で、大地を踏みしめ迫って来る。
故に、俺は余裕を持って巨人と距離を取る。
「そう……そして吸収したら、
「なッ……!?」
さっきの魔法は、相手の足を奪う為のモノだ。動きを遅くして、狙いやすくする必要があった。
修行で身につけた『必殺技』を、確実に当てる為に。
控室で行った魔力の活性化も、そろそろ効き目が切れてくる頃だ。何発もは撃てない。そして、アディラも手の内を知らない『初撃』に全てを賭ける!
「足を止めた今がチャンス!これで決めるわ!
『ツイン・ウォーター・トルネード』!」
高さ2m弱の水の竜巻が二つ、俺の斜め左右の前方に出現する。
「セイラ、それが貴女の本気かしら?
なら、余裕を持って受け止めてあげるわ!」
アディラが指を鳴らすと、ゴーレムの片腕が地に落ちた。そして、新しい腕が生える。水を吸った方の腕を切り捨て、乾燥した両腕で迎え撃つようだ。
「まだまだ!もっと強力な魔力で、私は貴女に勝つ!」
俺が込めた魔力に応じて、竜巻は徐々に巨大化する。
そう、ポイントは『そこ』だ。
アディラはまだ気づいていない。竜巻が大きくなるにつれて、
突如として、竜巻が弾けた。その後、飛沫となった水の魔法は、瞬く間に一箇所へ吸収される。
藍色の少女が
「これが、今の私のオリジナル魔法!そして、全身全霊の必殺技!
「ッッ!?
受け止めなさい!」
令嬢は咄嗟に命ずるが、少しだけ遅かった。ゴーレムの両腕は、左右に展開した竜巻を受け止める為に広げられていた。一本の矢を受け止める構えではない。
狙いはゴーレムの背後に居るアディラだ。砂の巨人は、辛うじて右手を使い、矢を防ごうとした。
だが、蒼色の矢は手のひらを貫通し、『
「……勝敗は、決しましたね。」
どよめく会場の中、審判役の菊梨花は旗を持って前に出ようとする。
「……ッ、まだよッ!まだ、勝負は終わってないわ!!」
アディラは飛び起き、此方を睨んだ。
「何を言うのです?今の瑠璃海さんの一撃は決定的でしょう。ここは引き下がって頂かないと……」
「何を言っているのかしら……?
まだ、私は!本気を出してないんだから!!」
次の瞬間、アディラの身体から膨大な魔力が迸る。
そして彼女の全身を、煌びやかな光が包み込んでいく。
「
光が弾け、豪華な衣服を纏ったアディラが姿を現す。頭には純白のベール、首には豪華なネックレスをしている。そして宝石を埋め込んだ杖を携えており、その姿は正に『東洋の女王様』と言える。
『
「ある程度魔法を極めれば、誰でも出来る」などと、アゲハの大魔女は嘯いていたが……授業で聞いた限りだと、結構な難易度の技術だ。そもそも、この学園内で教師含めて
アディラが杖を天に掲げると、コロシアムの地面が揺れはじめた。砂が隆起し、大地から砂漠の守護神、巨大なスフィンクスが姿を現した。
「喰らいなさい、これが私の本気の一撃よ!」
彼女はスフィンクスの上に乗り、杖を振り下ろして使い魔に命令を下す。その前足で、瑠璃海 蒼蘭を踏み潰せ、と。
◆
アディラ・ナヴァラトナにとって、この試合での敗北はあり得ない出来事だった。そもそも今日の決闘は、生意気な転校生に実力差を分からせる為の物だ。自分より経験が浅い……否、無いに等しいポッと出の
水の矢をその身に受けた時、彼女の中で起こった衝撃は計り知れない。
あり得るか、あってたまるか。
菊梨花の制止する声を振り切り、彼女が身に付けた最大の魔法を展開した。この圧倒的な力でもって、本当の実力者はどちらかを知らしめてやるのだ。蒼蘭に、学園の生徒と教師達に。
事実、会場は大騒ぎだ。中には、「反則じゃないのか?」、「やり過ぎだ!」と言った声もあった。実際、
だが、次の瞬間、アディラは攻撃の手を止めた。
その理由は、彼女自身も説明できなかった。
強いて言えば……目の前にいる少女が、目を逸らさずにアディラを見続けていたから……だろう。
圧倒的な魔力差を、自分が身につけていない技術を前にしながらも、藍色の少女はアディラから目を背けず、真っ直ぐに見つめていた。
もしかしたら、人はそれを『勇気』や『覚悟』と表現するのだろう。蒼蘭の瞳に宿る、あの『光』の事を。
「……降参。降参、するわ……。」
菊梨花が放った制止の一太刀より早く、彼女は敗北を認めた。他人から無理矢理止められるより、自ら敗北を認めた方がマシだからだ。潔いとはとても言えないが、最後の最後でプライドを選んだのだった。
◆
「ふぅ……。
では改めて。勝者、瑠璃海 蒼蘭!」
主審が旗をあげ、勝敗の判定を下す。コロシアム備え付けの水晶玉からは画面が浮かび上がり、『WINNER SEIRA!!』の文字と花火のエフェクトが映し出された。
『決まったァァ!!白熱の魔法演習、ここにて決着!ちょっとハプニングもあったけど、今日のイベントはこれにて終了!会場のみんな、両選手の健闘に、惜しみない拍手をしてくれよな!!』
MCの風歌が、最後に良い感じの纏めをしてくれている。だが、まだ俺には実感が無かった。
「私……勝った、の?」
呆然としたまま、誰へ問いかけているかも曖昧な呟きを溢す。すると、客席から飛び降り、駆け寄ってくる二人の人影があった。
「やったね、蒼蘭ちゃん!おめでとう!!」
「セーラ、凄いじゃん!いつの間に、あんなカッコいい魔法を身につけてたの!?」
聖と炎華にハグ頭を撫でられたり、ハグをされたりされて、少しずつ実感が湧いてきた。どうやら、本当に勝ったみたいだ。いや、これは勝利と言って良いのだろうか?相手が降参した、つまりは『勝ちを譲られた』状態ではなかろうか?
そんな事を考えていると、
「勝利の余韻に浸っている所で悪いけど、一つ聞かせてくれないかしら?」
アディラの問いかけに、両隣の女子高生二人は身構えた。
「大丈夫だよ。」
俺は小声で友人に告げ、対戦相手だった少女に向き直る。
「どうしたの、アディラ?」
「最後の攻撃の時……どうして貴女は、避けもせずにただ見つめてたの?」
「それはね……貴女が攻撃を止めるのが分かっていたから、だよ。私はあの時、未来を予知したの。そうしたら、攻撃を止めるアディラの姿が見えたんだ。」
「な……」
「なんか、その……ごめん……。
これじゃ、『私の勝利』とは言えないよね。」
「……追加でもう一つ、聞かせなさい。
貴女は、恐怖を感じていなかったの?未来が分かっていても、私が目の前で膨大な魔力を使っているのよ?貴女に出来ない魔法を使っているのよ?いくら未来が分かっていても、目を逸らさずにいるなんて事、出来るわけないじゃない!?」
「それは、上手く説明できないけど……。多分、
「そう……。なら、やっぱり私の負けね。」
「え?」
「勘違いしないで!『今日のところは』って意味よ!確かに試合では負けたわ!でも、実力や魔力では私の方が遥かに格上なんだから!」
アディラは一昨日と同じように、指をビシィッと突き立てた。
「『
再戦の申し込み、という事か?正直、今日の試合を乗り切るだけで精一杯だったのだが……。
いや、彼女は俺に全力でぶつかって来たのだ。それに、学園での目標も出来た。なら、その熱い気持ちに応えるべきだろう。
「分かった。でも、今度は私が
俺はアディラを真似て、腰に手を当て指をビシィッと突き立てた。
「この『
会場に拍手と声援が満ち溢れる。少し照れくさいが、学園の生徒達から認められたみたいで、俺はかなり気分が高揚していた。
ライバルとの対決、ひとまずはここにて決着です。