魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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第36話 密着、瑠璃海 蒼蘭の学園生活!②

 ◆

 二時間目は『魔法の世界』における歴史の授業、三時間目は『魔法系統学』の授業だった。

 

 前者については日本史や世界史と余り変わらない。過去に発生した魔法関連の事件や出来事、魔法の研究における偉人を学ぶ授業だ。

 

 そして後者については、あらゆる系統の魔法についての知識を養う授業である。

 例えば、炎魔法の初級魔法や中級魔法にはどんな魔法があるか、というものである。勿論、学ぶのは炎だけではない。水、土、風、他にも色々な魔法の知識を身につけるのだ。

 

 俺は炎の魔法も風の魔法も扱えないが、知識を身につけるのは大切だ。転校初日の事件にしたって、魔力生物の性質を博士から教わったからこそ、無事に対処出来たのだ。

 

 加えて、ここの生徒達は卒業後、国の機関に所属する者も多い。要は、魔法関係の犯罪を取り締まる『魔法警察』と言うべき存在だ。ならば、今のうちから魔法の知見を広めておけば、魔法犯罪者の逮捕などにおいて、大いに役立つという物だ。

 

 勿論、生涯を魔法の研究に捧げる魔女にとっても、知識を深めるのは重要な事である。そして、その事を実感できたのが、四時間目の授業。

 

 今日から試験的にはじまる、『術式魔法学』の授業だ。

 

 ◆

『術式魔法』とは文字や魔法陣を用いた魔法であり、マギナさんの家へ通じる渋谷の魔法陣、アレも術式魔法なのだ。また、ステラさんが使う『ルーン魔術』は、『原初の術式魔法』とも言われている。

 この魔法は『特殊な文字を書く』、或いは『その文字を繋げて魔法陣を作り出す』という所作が必要な、比較的大掛かりな魔法である。大規模な儀式に用いたり、物体に刻む事で『魔術道具(マジック・アイテム)』を作り出したり、『下準備』が必要な分、様々な事に使える技術だ。

 

 この授業は、教室から実習室へ移動して行われる。なんだか、理科の実験みたいだ。教師も早苗先生ではなく、より術式に詳しい先生へバトンタッチした。

 

「さて、全員に見本の魔法陣は行き届いているな? では各自、専用のインクで魔法陣を模写するように!」

 

 各々の席には既に、羽ペンとインク、そして見本の魔法陣が用意されている。ボールペンや万年筆ではなく、インクを付けるペンとは中々にレトロである。正に『ファンタジー世界の授業』といった感じだ。

 

 そして何より印象的なのは、『見本の種類がバラバラである』という点だ。生徒の魔法に合わせた魔法陣が、見本として用意されているのだ。

 

 さてと、早速模写に取り掛かろう。

 

 先ずは、見本の確認だ。外側は帯状の円であり、中心には大きな文字が一つ、上下左右には小さな文字が、帯の内部に書かれている。ルーン文字と同様に見た事のない言語だ。そして何となくだが、恐らくルーン文字それ自体とも違う代物だと思う。

 

 俺は羽ペンにインクをつけて、外側の円から書き写す。多少歪んでしまったが、正確な円形でなくても大丈夫らしい。取り敢えず続行だ。

 

 続いて文字を書き記す。中央の文字は魔法の系統・属性を表す。俺の魔法陣に刻むのは、当然『水』の文字だ。見本には、それぞれの文字の解説も載っていた。先ずは大元になる文字を刻み、四方の文字で魔法に『特徴』を与えるのだ。俺の場合は大きさ、形、動き、そして用いる魔力量の四つだ。

 

 魔法陣の上側には『握り拳大』の意味を持つ文字を。

 右側には『竜巻状』の文字を。

 下側には『左回転』の文字を。

 最後に、左側には『初級魔法と同程度』の文字を刻む。

 

「よし、出来た!!」

 

 後はインクを少し乾かして、実際に魔力を込めるだけだ。しかし、これが魔法陣か……。模写とはいえ、初めて自分が書いた代物だ。なんだか感慨深い。

 授業の冒頭で先生が言っていた事だが、専用の紙や羊皮紙に魔法陣を書いた物を、『スクロール』と言うらしい。今書いた魔法陣は、一時間もしない内に効力を無くす簡易的な物だ。それに対してスクロールは、術式魔法を極めた魔女が書く、更に複雑な魔法陣だ。何でも強力且つ長期間の保管が可能な、魔術道具の一種との事だ。とは言え、作るための手間や材料費といった諸々の問題や時代の流れにより、術式魔法の使い手は年々減少している。

 

 ひょっとして、原初の術式(ルーン)を扱えるステラさんなら、スクロールの作成も出来るのだろうか? いや、きっと彼女程の魔女なら、サ◯ダガやメラ◯ーマ級の強力な魔法スクロールも作れてしまうだろう。もしそうなら、折角俺も魔女になったんだし、一生の内に一つぐらい作って貰えないだろうか。恐らく値が張る逸品になるだろうから、今から貯金をする必要が出てくるかもな。

 

 そんな考えに耽っていると、すっかりインクが乾いた。俺は紙の端に触れて、魔法陣に魔力を流す。

 

 すると、魔法陣に記した特色通りに握り拳サイズの、水の竜巻が出現した! 

 

「おお!! 

 おおおおおおおおおッ!! 

 スゲ──ッッ! 本当にちっちゃな『ウォーター・トルネード』が出た!! 

 しかも、ちゃんと左回転になってる!」

 

 俺は興奮と感動のあまり、『女子高生』らしからぬセリフを大声で発してしまった。

 

「こら、瑠璃海! 

 私語は慎め! 授業中だぞ!」

 

「あ! 

 ……す、すみませんでした!」

 

 先生に怒られてしまい、俺は即座に頭を下げた。

 クラスメイト達は、はしゃいで怒られる蒼蘭ちゃんを見てクスクスと笑っている。

 

 恥ずかしい……。

 何が恥ずかしいって、彼女らは『バカにするような嘲り』と言うよりは、『電車でお出かけをする時に、嬉しくて走り回る子供とそれを叱る母親のやり取り』を見て笑う乗客のソレだったのだ。

 

 マジで穴があったら入りたい……。

 

 とはいえ、この授業は本当に面白かった。術式用の文字を覚えれば、より複雑な魔法も扱える。更に『魔法に様々な要素・特徴を加える』事を積み重ねれば、固有魔法のアイデアにも繋がるというものだ。

 

『魔女の学校』、素晴らしい場所じゃないか。

 

 ◆

 昼食は軽めにして、俺たちは午後の授業中に備えた。何故なら五時間目は演習の授業だからだ。しかも、今日は年に一度の『魔力測定』の日だと聞いた。

 立ち位置的には、普通の学校が行う『体力測定』に近い。だが、項目は『魔力量測定』と『出力測定』の二つである。ソフトボール投げも握力測定も、長座体前屈も音と疲れの両方でメンタルを折りに来る種目ー『20mシャトルラン』も無い。運動が苦手な日陰者にとっては有り難い限りだ。準備運動とランニングを終えた俺は、呼吸を整えつつ心からそう考えた。

 

 さて、まずは『魔力量測定』からだ。方法はシンプルで、一人ずつ順番に専用の水晶玉に手をかざして、体内に蓄えられている魔力量を計測するのだ。因みに、『出力測定』も大体同じで、こちらは別の水晶に魔力を放って、どれだけ魔力を強く出力できるかを計測する。ゲームで例えると前者はMPで、後者は魔法の威力や体力の回復量だと考えておけば良い。

 

 ちなみに俺は学園に入学する前に、胡桃沢博士の元で魔力量測定は一度行っている。

 その時の数値は『196』だった。

 博士の話だと、15歳の平均魔力量は200前後であり、20歳になると300くらいが平均値となるそうだ。成長期よろしく、高校生の時期に魔力が伸びるのが通説らしい。

 

「これより測定を開始する! 順番は決まっていないから、誰からでも良いぞ!」

 

 演習の先生が声を張り上げるが、ここは様子見をさせて頂こうと思う。間も無くして、トップバッターのクラスメイトが水晶に手をかざした。

 

「魔力量、『247』!」

 

 おお、結構高いな! 

 流石に先陣を切るだけの事はある、平均よりかなり高いじゃないか。

 

「次、どんどん行け!」

 

 先生の掛け声に合わせるように、次々にクラスメイト達が測定に掛かる。

 

「魔力量、『252』!」

 

 ん? 

 

「魔力量、『239』!」

 

 んんん? 

 

「魔力量、『261』!」

 

 おいおいおいおい、待て待て待て待て! 

 なんか、全体的に数値が高くねぇか!? 

 

「次は葡萄染(えびぞめ)だな! 

 魔力量は……『330』!」

 

 同級生の記録に驚愕する俺を他所に、友人のギャルは現時点でのクラス内最高記録を叩き出した。

 

「やった! 去年よりめっちゃ伸びてる! 

 セーラ、あーしの記録見てた!?」

 

「……あ、うん! 見てたよ! 300超えとか、炎華の記録めっちゃ凄いじゃん!」

 

 余りの記録に一瞬我を忘れていたが、炎華のお陰で正気に戻れた。

 

「……ところでさ、なんか全体的に魔力が高くない? 

 私、胡桃沢博士からは平均は200ぐらいって聞いてたんだけど?」

 

「そうなの? あんま気にしてなかったから、あーしには分かんないや!」

 

 炎属性のギャルは明るく笑うと、俺の背中をポンと叩いた。

 

「さ、そろそろセーラの番っしょ!?」

 

「いや、ちょっと待って! 私、まだ心の準備が出来てないよ!?」

 

 実際、俺の心は乱れに乱れまくってる。

 何これ、話が違うじゃん。

 今年は当たり年か何かなのか? 農作物見たいに、魔女にも豊作的な概念があるのか? 

 

 いや、それよりも、だ。D組の学友達が全員こっちを見ている。しかも、気のせいだろうか。何か彼女らの眼差しに期待感めいた物があるような……。

 

 いや、あるに決まっているだろうが! 

 曲がりなりにも、A組の生徒との演習に勝った生徒だぞ!? しかも、何か大魔女に期待されているっぽい娘だぞ!? 

 そりゃ、見るさ! 

 俺だって、立場が逆なら目が離せないさ! 

 でも、その視線は止めてくれ、プレッシャーがヤバい……。

 

「あれ、セーラ緊張してる? 

 大丈夫だって、そんなガチガチにならなくてもさ!」

 

 炎華の励ましは有り難いが、ワガママを言えば記録を測る前にその言葉を聞きたかった……。君、15歳で成人魔女の平均値を軽く超えてるのよ? 

 

「蒼蘭ちゃん、こういう時は深呼吸すると良いよ」

 

 緊張する俺を見かねたのか、聖が側に寄ってアドバイスを送ってくれた。

 

「はい、息を吸って」

 

 彼女の声に合わせて、肺に酸素を取り込む。

 

「はい、息を吐いて」

 

 続いて大きく息を吐く。これを二、三回繰り返すと、少し気が楽になった。

 

「……よし、行ってくる!」

 

 俺は意を決して、測定用水晶の前に立つ。

 

「次は瑠璃海か。では、測定を開始する!」

 

「はい!」

 

 俺は勢いよく返事をして、水晶に手をかざして力を込める。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 

 水晶玉が輝き、数字が浮かび上がる。

 

「魔力量は……『270』!」

 

 これは……結構良いスコアじゃないか!? 

 正直、200台の後半まで行くか不安だったが、予想以上の結果となった。

 後ろのクラスメイト達からも、どよめきの声が上がっている。

 

「それと……すまん、瑠璃海。

 説明し忘れていたが、力む必要は無いぞ。力を入れたところで、身体に蓄えられている魔力量は変わらんからな」

 

「あっ……」

 

 しまった、思いっきり声を張り上げてたわ……。

 どよめきは瞬時に、クスクスとした笑い声に変化する。

 

「だが、この数値は中々だぞ! 胸を張れ、瑠璃海!」

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 俺は一礼して、後ろに下がる。

 

「やるじゃん、セーラ! 

 マギナさんとの特訓が活きたね!」

 

 炎華は聖と共に駆け寄り、労いの言葉をかけてくれた。

 

「ありがとう、炎華。それと、聖も。

 貴女のおかげで、無事に測定を乗り越えられたわ」

 

「ううん、私はただ緊張を解しただけだよ」

 

 その後は三人一緒に、クラスメイト達の様子を見守る。大体250前後がD組の平均のようだ。そして俺以外にも、270台を叩き出した生徒がちらほら出ていた。

 とは言え、俺はマギナさんの(色んな意味で)ハードな特訓のおかげでこの記録なのだ。学園の魔女達は、もっと前からコツコツと積み重ねて来たのだろう。だからこそ、例年の記録を大きく上回る魔力を有しているのだと思う。故に、彼女らは本当に凄いと思う。

 

「さて、最後は白百合だな!」

 

 大トリを飾るのは、頼れる治癒魔術師(ヒーラー) 、白百合(しらゆり) (ひじり)だ。

 

「ねぇ、蒼蘭ちゃん?」

 

 突然、聖はヒソヒソ声で話しかけてきた。

 

「何?」

 

「私の測定だけど……

 なるべく、大きなリアクションは取らないで欲しいな」

 

 そういや、ちょっとだけ聞いた事がある。白百合家は、人より魔力量が多い家系の一族らしい。

 俺が皆んなの記録を見て驚いていたのが、彼女にも伝わっていたようだ。そして、聖はあまり驚いて欲しくないらしい。理由は恐らく彼女本人が言っていた、魔法の出力が家族と比べて苦手な事だろう。

 

「分かった。私はただ黙って見守っているね」

 

 俺は聖だって、頼れる魔女だと思うのだが……友人の頼みなので、静かに見守る事にした。

 

 聖は前に出て、水晶に手をかざす。

 すると、水晶は今日一番の輝きを見せた。

 

「……ッ!?」

 

 俺は声を抑えるために、両手で口を塞ぐ。驚くべき事に、周りはこの輝きに驚いていない。中等部以前からの学友達は、この魔力量を知っているからだ。

 

「記録は……『900』!!」

 

「…………ッッッ!?」

 

 口を抑えて置いて良かった。声に出して凄まじいリアクションを取るところだった……。

 

 いや、900って! 

 炎華より多いのは予想していたし、もしかしたら400とか500とか叩き出すのかな〜、とは考えていた。

 だがその予想を、黒髪のメガネっ娘は遥かに超えてきた。もしかして、俺はとんでもない逸材と交友関係を結んだのではないか!? 

 

 戻ってくる聖へのリアクションに、俺は一瞬迷ってしまった。

 だが、取り敢えず無言で力強く、サムズアップのポーズを取る。賞賛と尊敬、そして畏敬の念を込めつつの、無言且つオーバーではないリアクションだ。

 

 聖は少し戸惑っていたが、サムズアップを返してくれた。

 俺は確信する。被験体に過ぎない筈の俺は、この学園で思いがけず良い友人を得たのだと。




学園の授業風景、その2です。
次で蒼蘭ちゃんのデイリールーティン紹介は終わりです。
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