魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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アディラ嬢との共闘回です。
一話に収まり切らなかったため、二分割させて頂きます。後編は近日中に上げます。


第44話 いざ共闘、『宝石の魔女』!①

 ◆

 さて、俺は会長の組み分け通りにアディラ嬢と行動を共にしているわけだが……。

 

「ほら、もっと速く歩きなさいな!」

 

 財閥令嬢は物凄く張り切っておられる。身長や歩幅の差も相まって、少しでも気を抜くと置いて行かれてしまいそうだ。

 

「ま、待ってよ〜! 

 早歩きなんかしないで体力を残しておこうよ〜!」

 

 目的地に到着するだけではダメだ。俺たちは異世界人と相対する必要がある。だから少しでも体力の温存は必要だし、そもそも俺はショッピングモールには初めて行くのだ。通った事のない道と言うのは、どうしても歩くのが遅くなってしまう。

 

「全く……情けないわね、セイラ」

 

 柘榴石(ガーネット)の魔女は、肩をすくめて溜め息を吐いた。

 

「まぁ、『どんな危険が待っているか』の予知をした時点で、貴女の役目は終わったも同然ね。

蒼石(サファイア)の魔女』に残された仕事は私達特進生、特にこの『アディラ・ナヴァラトナ』の活躍を目に焼き付ける事、それと私の活躍に惜しみない称賛と喝采を送る事くらいだわ。分かったら、私の後を着いてくる事だけに専念なさい」

 

 彼女は腰に手を当て、「フンッ」と見下す様に鼻を鳴らした。

 ……いや、ここは一緒に戦う流れでは? でないと、チーム分けの意味が消滅しないか? 俺、そんな頼りない? 

 そりゃまあ、あの場にいた魔女達の中で、一番頼りないのは俺だろうけどさ……。

 

「私だって……私に出来る事は全部やるつもりよ! このお仕事を通して、私は自分を変えるんだから!」

 

 そうだ。この仕事を受けたのは、自分自身を成長させるためでもある。それに、マギナさんの依頼を見事に達成出来たのなら……俺は自分にもっと自信が持てる筈だ。何故なら大魔女が求める『運命の鍵』という存在に一歩、或いは数歩近づける訳なのだから。

 故に俺は、小柄な蒼蘭ちゃんの足に力を込めて、前を歩く財閥令嬢に追いつく。アディラ嬢はそんな藍色の少女を見て、更にズンズンと歩みを加速させる。

 俺たちはそのまま、大きな河川を渡る橋へ差し掛かった。片側二車線で、交通量も夕方にかけて徐々に増えている道路橋だ。ここを渡って5分程歩けばショッピングモールだ。

 

 だが、橋を渡る直前に異変が起きた。

 

「うわあああっ!!」

 

「な、何なんだよ!? お前らは!!」

 

 突如として河川敷の方から、恐怖と驚愕が入り混じった悲鳴が上がる。

 反射的に、俺達は声のした方に視線を向けた。

 そこに居たのは男子高校生四人、怯えた表情でエアガンを構える二人と、腕から大量に血を流している一人、少し離れた場所で尻餅を着いている一人。そして彼らと向かい合っているのが……中世ヨーロッパ風の服装をした三人組の、『冒険者』だ。

 

 ◆

(時間は少し遡る)

 

『この河川敷は、穴場である』

 

 ある高校生、優斗はそう考えていた。彼が通う高校の隣町にあり、この街のお嬢様学校からも離れた場所にある。故に、一人で過ごすにはちょうど良い場所だ。

 学校での嫌な事を忘れて、のんびりと過ごせる。彼にとって、ここは憩いの場所なのだ。休み時間に食べられなかった弁当を広げ、誰にも邪魔されずに食事をするのが最近の習慣だ。

 だが、ほんの些細な平穏も、かけがえのない安寧も、彼の様な弱者には許されないらしい。

 

「よぉ、こんな所で何してんだ?」

 

 下卑た笑みを浮かべる三人の高校生が、彼の背後に立っていた。手に持っているのは、エアガンだ。

 

「いい場所だよな、ココ。車通りが多くて、多少の騒ぎじゃ誰も気づきやしねぇ」

 

 一人がそういうと、手にしたエアガンで優斗の弁当を撃った。続けて残りの二人が、優斗の手や頬にプラスチックの弾丸を当てる。

 

「痛ッ…………」

 

「こんな寂しい所じゃなくてよぉ、俺らと『いつもみたいに』遊ぼうぜ?」

 

「ま、遊ぶには金が必要だからよ、取り敢えず今あるだけ出せよ」

 

「あ、あぁ……」

 

 また、だ。いじめっ子に虐げられる毎日。高校に居場所がない優斗が、頑張って見つけた安らぎの場所さえ、彼らは土足で踏み躙るのだ。

 だと言うのに、自分は彼らに対して何もできないし、誰かに相談する事もできない。勇気が無いのだ。自分より力のある者に立ち向かう、勇気が。

 何も持たない優斗がやる事と言えば、祈る事だけだった。『誰か、助けてください』と。

 それが馬鹿馬鹿しい行いである事は、優斗自身が一番知っている。誰がこんな軟弱な自分を助けてくれると言うのだろうか? あり得ない事だ。

 

 そして、それとは別のベクトルで『あり得ない事』が、彼の身に起こってしまった。

 

「よぉ、兄ちゃん達! ちょいと俺様の話に付き合えよ」

 

 何処から現れたのか知らないが、いつの間にか三人の男が彼らの近くに立っていた。筋肉質の大男と、両脇には細身の男と小柄な男が居た。彼らは中世ヨーロッパ風、いや『異世界風』と言った方が良いのだろうか? そんな服装をしている、とアニメ好きな優斗はそう考えた。

 

「あぁん? 何だオッサン?」

 

 いじめっ子の一人が、男達にメンチを切った。手にした武器が、彼の心を増長させているのだろう。

 

「今取り込み中なんだよ。あっち行け、シッシッ!」

 

「おいおい、随分と冷てえじゃねえか」

 

「ザリックの兄貴に対して、生意気でやんすね!」

 

『ザリック』と呼ばれた大男が笑い飛ばし、小柄な男が睨みを効かせる。

 

「ザリック兄さん、ヘリック、油断するなよ。コイツらが持っているの、多分『銃』だぜ」

 

 細身の男が仲間に注意を促した。

 

「確か異世界の武器だったか。…………ってェ事は、この兄ちゃん達も衛兵や冒険者か! こりゃ話が早くて済むぜ!」

 

 ザリックは背負った斧を取り出して、武器を構えた高校生に切先を向ける。

 

「俺たちは『運命因子の魔女』を探している。運命を変える魔女って事は、相当強ェ魔女な筈だ。

 なら、片っ端から強そうなヤツをぶっ倒していって、そいつより強いヤツの居場所を聞き出す! そうして強い奴を辿っていけば、目当ての魔女に行き着くってェ訳だ!!」

 

「さっすが兄貴、頭が良いぜ!!」

 

「だろぉ!? さて、異世界での記念すべき初仕事だ! エレック、ヘリック、手ェ出すなよ! 先ずは俺様が小手調べをしてやらァ!!」

 

 ザリックは斧を構えたまま、高校生達に歩みを進める。

 

「な、何だよ!? その斧で何する気だよ!?」

 

「あん? 武器を向けたって事は、喧嘩と決闘の合図だろうがよ? 

 怖気付いてんじゃねえッ!!」

 

 大男が斧を大きく振りかぶる。

 

「ヒィッ!!」

 

 いじめっ子の一人が、ザリックに引き金を引いた。

 プラスチックの弾丸が、ザリックの剥き出しの肌に何発も命中する。

 だが、男は樹脂の銃撃など意に介さなかった。

 

「オラァッ!」

 

 振りかざされた斧は不良の腕ごと、エアガンを叩き潰した。

 

「う、うわああああああ!!」

 

 血が大量に流れ出ている腕を抑え、銃の持ち主は悲鳴をあげた。恐怖が痛みを遥かに凌駕しており、不良は全身を震わせながらその場で膝をついた。

 

「何だァ、随分とあっけねえな? それとも、俺様が強すぎたかァ!?」

 

「待ってくれ、ザリック兄さん。ひょっとしたら、そいつらが持ってるのはとんでもない粗悪品かもしれないぞ」

 

 細身のエレックは腰のレイピアを引き抜き、残り二人の不良と対峙する。

 

「く、来るなぁ!」

 

 恐怖に駆られた高校生は、細身の男に次々と弾丸を浴びせる。エレックのレイピアは緑色に輝き、風を纏っている。彼は自身の相棒を無造作に振るい、巻き起こした風で弾丸を振り払ってみせた。

 

「何……何だよ、今の……」

 

「『疾風剣』」

 

 怯えた若者への応えは、風の刃によって返された。宛ら鎌鼬(かまいたち)の様に、出血はさせずに痛覚のみを与えている。呻き声と共に手から取りこぼした玩具の一つを、小柄な盗賊が鞭を使って奪い取る。

 

「うわっ、何だこれ? 鉄でも銅でもねぇ、軽すぎる!」

 

 手にした銃の素材に対して素っ頓狂なリアクションを取った盗賊ヘリックだが、次の瞬間には青年達を指差し大笑いした。

 

「コイツら安物を掴まされたみたいですぜ、兄貴達! 目利きの『め』の字もねぇ、とんだ節穴冒険者だ! アッヒャヒャヒャヒャ!」

 

「ダッハッハ! ソイツは災難だったな、兄ちゃん達! だが、そんなんじゃどの道、長くは生きていけねぇな。ま、仲間を呼ばれても面倒だし、程々に痛めつけてから『魔女』の居場所を聞き出すとするかァ!」

 

 再び大男が斧を振りかぶる。

 三人の不良高校生も、最初にこの場所にいた優斗も、ザリック達の言っている事が何一つ分からなかった。

 

 何故、彼らはエアガンを本物の武器と勘違いしているのか? 

『魔女』とは、一体何の事なのか? 

 何故、彼らは何の躊躇いも無く人を傷つける事が出来るのだろうか? 

 

 否、理解できる事が一つだけ存在する。

 恐らくかなりの確率で……『自分達が殺される』という事だ。何の前触れもなく、唐突に、理不尽な理由で。

 

 だがその時、突如として地面から砂埃が巻き上がった。

 一瞬の間を置いて、川の水面から水飛沫が巻き上がる。

 すぐさま冒険者達は、背後を確認した。

 

「そこまでよ、『異世界人』! 

 この『柘榴石(ガーネット)の魔女』の目の前で、好き勝手に振る舞えると思わない事ね!!」

 

 そこに立っていたのは、二人の女子高生だ。

 一人は、良く通る声で高らかに啖呵を切った見せた、オレンジ色の髪の女子高生。

 もう一人は、少し怯えた表情を見せながらも、キッと男達を睨みつける藍色の髪の少女。

 

 襟元に付けた学生証から理解できる。彼女らはこの街のお嬢様学校、暁虹学園の生徒である。

 

 そして彼女らこそが、ザリックら冒険者が求める『魔女』である。先程の砂埃は、柘榴石の魔女が放った『サンド・ニードル』、そして水飛沫を起こしたのは蒼石の魔女の『ウォーター・バレット』による威嚇射撃だったのだ。

 

 最も、魔法を認識できない男子高校生達には知る由も無い事である。

 そして、彼方の世界から訪れた客人らにとっては……早々に獲物にあり付ける、願っても無い展開であった。

 

 ◆

 クソッ、迂闊だった!! 

 この街に来る冒険者が、1チームだけとは限らないじゃないか! 

 実際、会議室での情報交換で雷葉が言っていたように、外国では異世界人らしき存在が複数人確認されていた。だというのに、俺は『予知で見た放火』の事しか考えていなかった。

 

 それに以前、マギナさんが言っていたじゃないか。『未来が完全に確定するのは稀であり、未来の事象とは本来、朧げな存在である』と。

 多分、アゲハの大魔女ですら冒険者の正確な人数は把握できていない。だからこそ彼女は映像の中で、人数や場所について具体的な情報を明かさなかったのだろう。

 

 そして予想外の出来事に、しかも人が血を流す光景を前に、俺は少し茫然としてしまった。真っ先にアディラが動いたお陰で、俺も自失状態から抜け出せたのだ。アディラが居なかったら、河川敷の高校生達はもっと悲惨な傷を負っていた可能性が高い。

 

 ……つくづくダメな奴だな、俺って。

 いや、反省は彼らを助けてからだ!! 

 

「おおっ、向こうからやってくるとはな! こりゃァいよいよ、俺様達にもツキが回って来たってモンだ!」

 

 斧を手にした大男……確か『ザリック』と呼ばれていた奴が豪快に笑っている。

 

「よぉし、エレック、ヘリック! いよいよ『魔女狩り』の時間だ! 気ィ引き締めていくぞ!」

 

「さっきのヘボ銃士よりは骨がありそうだもんな。本物の魔女がお出ましなら、俺たちも楽しめそうだ!」

 

「兄貴! 異世界での初戦、派手勝利を収めましょうぜぇ!」

 

 彼らは魔法の威嚇射撃にも怯まず、寧ろ嬉しそうにしている。……つまり、それほど腕に自信があるのか? 

 

「随分と無礼(なめ)られた物ね。『柘榴石の魔女』相手に、その余裕がいつまで続くのかしら!?」

 

 言うが早いか、アディラは走り出す。射程距離を見極めつつ、『サンド・ニードル』で攻撃を仕掛ける。

 

「ふんッ!」

 

 だが、ザリックが振り回した斧で、砂の針は叩き落とされた。

 

「ならこれはどう? 『デザート・ランス』!」

 

 針がダメなら、より強固な槍を使えば良い。アディラは瞬時にそう考え、砂の槍を喰らわせた。当然、大男も腕にかなりの力を込めて迎え打つ。

 

 ガキンッ! と、大岩に刃物が激突する音が河原に響く。『デザート・ランス』と冒険者の斧は、互いに拮抗しているようだ。

 

「おい、俺たちはこっちの弱そうなヤツを仕留めるぞ」

 

「分かりやしたぜ、エレックの兄貴!」

 

 細身の剣士はレイピアを、小柄な盗賊は毒々しい紫の短剣をこちらに向ける。

 ……一番強そうなザリックは、アディラに任せた方が良さそうだ。故に、俺はコイツらの相手だ! 

 

「先手必勝、『ウォーター・バレット』!」

 

 指鉄砲から水の弾を発射し、冒険者二名の眉間を狙う。当然、すんなり当たってくれる訳がない。相手の出方を見る為の小技だ。

 

「唸れ、『疾風剣』!」

 

 (みどり)に輝く剣が風を巻き起こし、水の弾丸を弾き飛ばした。

 

「『毒ダガー』の餌食になりな! 異世界の魔女さんよぉ!」

 

「……ッ!」

 

 俺は直感的にその場から飛び退いた。狙いの外れた紫色の短剣が、河原に咲くタンポポへ飛び込んだ。

 瞬間、青々とした葉と茎は一瞬で萎れ、黄色の花は毒々しい紫へ変色した。花が茎からベチョッと音を立てて落ちたのを見て、俺は背筋が凍りつく感覚に襲われた。

 

 あのダガーは危険だ。喰らえば毒が身体を蝕んでいく。しかも今この場には、いつも頼りになる回復役(ヒーラー)、白百合 聖が居ないのだ。一度たりとも攻撃が当たってはいけない。

 そして、風の剣もかなり厄介だ。『ウォーター・バレット』程度なら易々と凌いでしまう。

 

 俺は深呼吸をして、心を落ち着かせる。魔力測定の前に聖から貰ったアドバイス、精神安定のルーティンだ。単純故に何処でも出来る、侮れない方法だ。

 そして俺の脳内に、ある『作戦』が思い浮かぶ。シンプルな発想だが、試す価値はある筈だ。

 

「なら、次の魔法はどうかしら?」

 

 俺は先程飛び退いた場所から、更に後退した。陸地ではなく、浅瀬の河原で勝負に挑む。

 

「水魔法の大技を見せてあげる! 『ウォーター・トルネード』!」

 

 水の竜巻は川の水を巻き上げ、瞬時に大きさを3m程にまで成長させた。俺が川に入ったのはその為だ。魔力の節約と、攻撃の強化の為である。

 

「甘いな、『疾風剣』の最大出力なら!」

 

 エレックの剣が輝きと魔力を増し、彼の周囲に風が集まって来た。魔法剣の担い手が剣を振るうと、翠緑の竜巻が顕現し、水の竜巻と激突した。

 二つの竜巻は互いに相殺して、周囲に水飛沫が巻き上がった。

 

「はぁ……はぁッ…………これが、魔法剣の力だ!」

 

 剣士エレックは、大技を使った事で少し疲れているみたいだ。

 ……これこそが俺の狙いである。

 河原での『ウォーター・トルネード』、メインの目的は魔力の節約だ。

 本命の弾に魔力を回す為に。

 

「今だ、『ウォーター・バレット・リボルバー』!」

 

 俺は指鉄砲の周囲に、水の弾を6発装填する。簡易的な固有魔法、それを『両手で』行使した。

 

「『二丁拳銃』だッ!」

 

 水の弾丸を冒険者二名の、ある一点目掛けて浴びせまくる。

 狙いは武器を握っている、彼らの『手』だ。

 

(いて)ッ!」

 

 水魔法のダメージで、エレックは手からレイピアを取りこぼした。

 その隙を逃さず、今度は剣に照準を切り替えた。

 

「はぁぁぁッ!」

 

 そのまま剣を遠くへ弾き飛ばし、丸腰になった剣士エレックに二丁拳銃の弾幕を喰らわせる。

 

「グハァッ……!」

 

 呻き声を上げて、剣士は岸まで飛ばされた。まずは一人、異世界の刺客を倒した! 

 ……が、その余韻に浸る間は無かった。

 

「余所見をしてるんじゃねえぜ、水の魔女!」

 

 盗賊ヘリックの声と同時に、俺の左手に激痛が走る。

 

「ウッ……!」

 

 手の甲に青痣が浮かび上がり、思わず顔をしかめた。相手は新たな武器として、鞭を取り出していたのだ。

 

「ダガーはどっかいっちまったが、代わりにコイツで痛めつけてやるぜ! 良い声で泣きな、お嬢さんよぉ!」

 

 再び鞭が唸りを上げて襲いかかる。俺は前方で腕を交差して、防御の姿勢を取る。

 

 が、結果論ではあるがその必要はなかった。

 

「痛い目を見るのは貴方の方よ!」

 

 小柄な盗賊に、巨大な手のひらによるビンタが直撃したのだ。彼は叫び声や呻き声を上げる暇も無く、気絶したまま岸に吹っ飛んで行く。

 いつの間にか、砂の巨人が川の中に佇んでいた。アディラもまた川に入り、砂漠の傀儡(デザート・ゴーレム)に水を吸わせて強度を上げていたのだ。

 

「あ、ありがとう、アディラ!」

 

「フンッ、偉大なる魔女として当然の事をしたまでよ。礼を言われる事じゃないわ! 

 ……それより、気を引き締めなさい! あと一人残っているんだから」

 

 アディラの叱咤を受けて、俺はもう一人の冒険者に向き直る。

 

「…………中々強ェじゃねえか、異世界の魔女」

 

 ザリックの表情はやや険しくなり、斧を握る手も力を増している。

 

「兄……さん、俺たちは大丈夫だ。けど、悪い……後は任せて良いか?」

 

「おうよ、お前らはそこで休んでな!」

 

 息切れした剣士エレックの頼みを受け、筋骨隆々の冒険者ザリックは俺たちと対峙する。

 

 …………多分、ここからが戦いの本番なのだろう。

 だが、負けるわけにはいかない。そして出来る限り早く蹴りをつけねば、あちらの男子高校生が危ない。

 緊張と大男から向けられる殺気により、心臓の鼓動が加速していった……。




慢心さえしなければ、アディラ嬢は強くて頼りになる子なのです。
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