魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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【注意!】
今回は温泉回となっております。
そして、「TSして女の子になった子は、作中の誰よりも可愛く、誰よりもセクシーであるべき」という作者の偏った思想・信条に基づいて執筆された回となります。

以上の事をご留意頂いた上で、温泉回を読み進めて頂ければ幸いです……。


第62話 湯けむり大パニック

 私は玄関から旅館の廊下に飛び出し、人通りの少ない場所に隠れ、スマホで保護者代理の胡桃沢博士に電話をかける。

 

『おや、蒼蘭ちゃん。一体どうし』

 

 博士の返答を待たずして、私は電話に声を張り上げた。

 

「博士ェェ! 風呂ォ、風呂ねぇぞ!?」

 

『落ち着きたまえ』

 

 私は深呼吸し、小声で電話を続けた。

 

「りょかっ、この旅館、お風呂が大浴場しかないですよ?」

 

『うん、それで?』

 

「『それで?』じゃないでしょ!? ()が、その……みんなとお風呂に入るなんて絶対マズいですって!」

 

『いや、だって……今の君は、立派な()()()だろう? 『瑠璃海 蒼蘭』ちゃんも、そして『雨海 惺』ちゃんも』

 

「それは……まぁ、そうですけど……」

 

『そもそも、君に他の選択肢があるのかい? まぁそれが無いから、或いは()()()()()()()()()()()()()私に連絡したんだろうけど』

 

 博士の言う事は真実だ。

 厳密に言えば、蒼蘭ちゃんには残り二つの選択肢がある。

 

 まず、風呂に入らない選択肢。

 所謂『風呂キャン』だ。

 だが、仮にも年頃の女の子と、一つ屋根の下で一晩過ごすのだ。気温高まる向暑の候、そして日中の工場見学で私の身体は少なからず汗ばんでいる。大なり小なり匂う筈だ。そんな身体で華の女子高生達と同じ部屋で過ごすのは、流石に如何なものだろうか? 

 

 次に、『男湯』へ入る選択肢。

 

 ……余りにナンセンスである。

 そんな事をすれば、クラスメイトからは変態の烙印を押されるか、頭がおかしくなったと勘違いされるかするだろう。明日からの学園生活に支障が出るどころではない。私だって、(いたずら)に波風立てる事はするつもりはない。

 

 それに、だ。この【身長:148cm、カップ数:Jカップ】の低身長発育良好美少女(トランジスタグラマー)の裸体を見た他の男性客はどうなるか? 

 それはそれは凄い事になるだろう。現状にしたって、学園外へお出かけすれば男性からは蒼蘭ちゃんの身体、取り分け豊満な乳房への視線が惜しみなく注がれるのだから。

 

 無論、そんな彼らの心境は理解できる。男であれば、見るなと言う方が酷であろう。だが、その視線が私に取って慣れない物である事もまた真実だ。男性からの視線にも種類があり、特に湿度を帯びた様に『ねっとりとした視線』は苦手だ。向けられれば背中が粟立ち、蟻走感が全身を駆け巡る。

 

 それに最悪、視線だけでは済まなくなる可能性だって……。いや、ここから先の想定は止めて置こう。頭痛くなってきた……。

 

 私の頭痛を知ってか知らずか、電話の向こうからクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。

 

「笑い事じゃないですよ! 何か、良いアイデアは無いんですか!?」

 

『ふむ……実を言うと、君の為に用意したとっておきのアイテムがある』

 

「アイテム!? それは、一体何処に!?」

 

『君が泊まる部屋にある、押し入れの下の段さ』

 

「分かりました! 電話はこのまま、切らずに待っててください!」

 

 私はダッシュで部屋へ戻る。急に飛び出したルームメイトへ向けられる、友人達の心配そうな表情を尻目に、私は押し入れを物色した。

 

 確かに、そこには存在した。

『蒼蘭ちゃんへ』と書かれた付箋を貼った、風呂敷の包みが。

 

 一縷の望みをかけて、私は風呂敷を解く。

 そこにあったのは…………

 

 洗面器に、水色のシャンプーハット、そして発条(ゼンマイ)で動くアヒルさんのオモチャであった。

 

『これなら怪しまれない所か、蒼蘭ちゃんの見た目にとても良くマッチするだろう? 差し詰め、《編入以来初めての大浴場にウキウキになる、可愛い蒼蘭ちゃん》といった……』

 

 私はスマホを切り、

 

「クソッタレがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 スマホを座布団の上に叩きつけた。

 

 ◆

(大浴場、『女湯脱衣所』にて)

 

「蒼蘭ちゃん、大丈夫だった?」

 

「な、何がでしょうか……?」

 

「さっきの電話、凄い怒ってたけど……」

 

「あー……うん、大丈夫! タダの悪質なセールス……そう、ウォーターサーバーの営業電話だったから!」

 

「それマジ? 水使いのセーラに『ウォーターサーバー』とか、ガチのマジで要らないヤツじゃん。ウケる」

 

 炎華は身体を震わせてクスクスと笑っている。私は存在しないウォーターサーバーの営業マンに、冤罪をでっち上げた事を心の中で謝罪した。

 

 さて、問題はここからである。

 結局、ここまで来てしまったのだ。

 私に出来るのはせめてもの抵抗である。

 目線は天井か床下、斜め上か斜め下が望ましい。極力、学友達の姿を瞳に入れない様に努めるのだ。全力で。

 私達同室四人組は固まって脱衣所のロッカーへ行き、運良く端っこを陣取ることが出来た。

 

(落ち着け、平静を保て……)

 

 私は焦る気持ちを何とか抑えつけようとする。この雨海 惺、慌てたり狼狽えると碌な事にならないのはよく知っている。というか、焦ったところで第二関門の大浴場が待っているのだ。前門の虎と後門の狼、二つの苦難に対処する為にも、心は少しでも落ち着けておくべきだろう。

 

 私は制服のスカートを下ろし、ワイシャツを脱ぎ……学友達の目の前で初めて、ブラジャーのホックを外した。今まで優しく支えてくれた物が外れ、胸部の果実が重力に引っ張られる。

 

 重い。

 

 肩の皮膚が引っ張られる程の、ずっしりと重みだ。だが、今は手で支えている暇はない。後一つ、パンツを脱がないといけないからだ。両手を腰に回し、下着を脱ごうとした段階で……

 

 私は気づいた。

 学友達の視線に。

 彼女らの視線はただ一箇所に集められていた。

 蒼蘭ちゃんが携えている、色香を放つ肌色の巨大な果実に。

 

(え、ウソ……大きくない?)

 

(何であの転校生、ちっちゃいクセに特大サイズの物を持ってるのよ……!?)

 

 普段顔を合わせる事のないA組の皆様は、初めて見る蒼蘭ちゃんの洋服脱衣状態(キャストオフ・モード)に目を丸くしながら、

 

(瑠璃海さん、やっぱり大きくなってるよね?)

 

(何を食ったらあんなに育つんだよ……? おっぱいを育てる魔法でも習得してんのか?)

 

 見慣れている筈のD組のクラスメイト達もまた、蒼蘭ちゃんの発育に視線が釘付けになりながら、ヒソヒソと話していた。

 

 ……正直、こういった反応はまだマシな方である。何故なら、驚いているだけだからだ。

 蒼蘭ちゃんの乳房に刺さる視線には、少数ながら敵意や殺意を想起させる様な、鋭くトゲトゲしい物が混ざっている。というか今まさに、(くだん)の財閥令嬢が至近距離でその視線を送ってきているのだ。逆に、宛らカタツムリやナメクジが這い回るかの様な、ねっとりとした視線も無くはなかった……気がする。

 

 これ以上、ここに留まるのはマズい。

 私は手早くパンツを脱いで、追い立てられる様に大浴場へ入った。

 

 だが、急いで入ったのは良く無かった。

 

 目に飛び込んできた沢山の()()が、脳を一瞬ショートさせた。一瞬置いて、入浴中の魔女達もまた、蒼蘭ちゃんの溢れんばかりの発育ボディ目掛けて一斉に視線を突き刺してくる。

 

 完全なる挟み撃ちにより、動転した私は、足を滑らせて尻餅をついてしまった。

 

(いて)ててて……」

 

 何とも恥ずかしい光景だ。思わず痛覚と羞恥心で顔を歪めてしまった。

 

「もし……大丈夫でしょうか?」

 

 背後からどんよりとした声がする。振り向くと、そこには一般客と思しき女性が立っていた。

 

「あ……大丈夫です。すみません、お騒がせしてしまって……」

 

 あー、も──、めっちゃ恥ずかしい……。

 赤の他人にこんな滑稽な姿を晒して、あまつさえ心配されるとは……穴があったら入りたい……。

 

 が、そんな私の羞恥心とは裏腹に、その女性は私へ手を伸ばす。起き上がるのに手を貸してくれるのだろう。親切な人だ……。

 

 

 

 ヌルリ。

 

「ヒッ!」

 

 肌を襲ったその感触に、私は思わず身を硬直させてしまった。女性の手が、異常な程にヌメヌメとしていたからだ。その粘液めいた触感は、ショッピングモールでスライムに纏わりつかれた体験を想起させた。

 

「どうされました……? 気分が優れない様子ですが?」

 

 一般客の口調も、声色も優しげなものだった。しかし、その表情には何処か不気味なものがある。私の身体を頭からつま先まで、品定めでもするかの様に、舐め回す様な視線でじっくりと見てきた。

 一体、この人は何を考えているんだ……!? 

 

「蒼蘭ちゃん、大丈夫!?」

 

 聖の声で、私はハッと我に返った。気がつけば、心配した友人達がこっちへ向かっている。いつまでも床にへたり込んでいる場合ではない。

 

「あはは、ちょっとドジしちゃった……」

 

「セーラ、あーしの手掴んで良いから、立ち上がれる?」

 

「そこまでは大丈夫……よっこいしょ」

 

 自力で立ち上がった時には、不審な一般客は踵を返して脱衣所へと向かっていた。

 

「ねぇ、あの女の人に変な事されなかった?」

 

 そう尋ねる聖の声には、先の女性に対する敵意と不信感があった。

 

「あれは……あの人の手がヤケにヌメヌメしてたから、ちょっとビックリしただけ。ごめん、心配かけたね」

 

「んー……じゃ、取り敢えずは大丈夫そ? なら、早いとこ身体洗って温泉入っちゃおっか? あ、せっかくセーラと初めてのお風呂なんだし……

 

 三人で身体の洗いっこしちゃう? 

『裸の付き合い』ってヤツ♪」

 

 ……………………。

『裸の付き合い』、とな…………? 

 

「あっ」

 

 尻餅の痛みと恥ずかしさ、その他諸々で頭から抜けていたが、私の目の前にいるのは、タオル一枚しか身につけていない華の女子高生たる友人達だ。

 …………。

 

「あっ……あっ」

 

「セーラ?」

 

「蒼蘭ちゃん?」

 

 ……………………。

 

「あばばばばばばばばばばばばばば」

 

「え、どした!? バグった!?」

 

「わぁぁッ、蒼蘭ちゃん落ち着いて!」

 

 ◆

 落ち着いた。

 厳密に言えば、聖の『リラクゼーション・オーラ』のお陰で落ち着きを取り戻す事が出来た。

 

 だが、まだ危機は去っていない。炎華の提案により、私達は互いに背中を流す事となったのだ。

 ……そりゃ良心の呵責は大いにある。が、ここで再びパニックに陥れば、先程から送られる周囲の心配そうな視線が更にその威力を増すだろう。『魔女学園の一生徒』として穏便に済ます為には、出来る限り波風立てず、学友の背中を洗浄するより他は無い。

 

(冷静になれ、スポンジ越しなら多少罪は軽くなる筈だ……)

 

 私は持ち込んだスポンジにボディソープを付けて、

 

「おりゃああああ!」

 

 意を決して炎属性のギャルの背中を洗いはじめた。

 

「お客様ぁぁ!? 力加減はどうですかぁ!? 痒いところはございませんかぁぁ!?」

 

「おぉ、気合い入ってんね! でも、声の割に力弱めじゃね? もうちょい強くして良いよ?」

 

「……本当に大丈夫? 肌が傷付いたりしない?」

 

「平気へーき♪ 寧ろセーラには、しっかりお肌を磨いて貰わなきゃ!」

 

「分かった、ちょっとずつ力入れてみるね?」

 

 ゴシゴシと私は友人の背を洗う。

 ……分かっていた事だが、彼女の肌は綺麗だ。日頃見ている炎華の顔の良さから推測できる事だったが、いざ目にしてみると息を呑んでしまう……。

 いや、今は磨くことに集中しろ! 今の私は……そう、研ぎ師だ! 美しい刀や包丁を磨く研ぎ師、或いは原石を磨いて絢爛たる宝石にする職人! そこに邪な感情などあってはならない! 目覚めろ、私の職人魂! 

 

「そそ、いい感じ、いい感じ。背中終わったら、腕や肩もお願いね」

 

 お客様からのお墨付きも頂けた。不肖私、感涙の極みでござる……。では、次なる場所の洗浄をば……。

 あー、炎華の二の腕、柔らけぇ……。すべすべでスポンジがよく滑るし、筋肉と脂肪が程よく付いているな……。

 

 ええい気をしっかり持て、惺! 邪念滅殺、邪念滅殺! そうだ、羊の数を数えて落ち着くのだ。羊は私に勇気と冷静さと眠気を与えてくれる……。

 

 羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹……

 

 ……あれ、そう言えば……。

 私の背中には何の感触も無いぞ? 

 

「聖、どうかした?」

 

「ふえっ?」

 

 聖の大層ビックリした様な声が返って来た。

 

「もしかして……私の背中、汗臭かった?」

 

「ううん! 寧ろ逆、逆だから! ちょっと『綺麗な背中だな〜』って見ちゃってただけで……」

 

「……へ?」

 

「ごめん、蒼蘭ちゃん! 今のナシ、ナシで!」

 

 その後すぐに、背中にスポンジの感触を覚えた。心地良い力加減である。彼女はマッサージも上手かったし、人をリラックスさせたり、『気持ち良くさせる』技術に秀でている。

 

 そうだ、聖の動きや力加減を真似させて貰おう。

 

 肩甲骨の周りを円を描く様に擦ったり、頸を弱い力でグリグリと押してみたり、後は脇腹を洗ったりした。

 

「あ〜気持ちいい〜〜」

 

「やっぱり? 聖の洗い方を真似してるの。私も凄く気持ちよくてさー、ふにゃふにゃになりそう」

 

「そう? 蒼蘭ちゃん、気持ちいい?」

 

「うん、めっちゃ」

 

「えへへ、良かった」

 

「よーし、そんじゃそろそろ交代しよっか?」

 

 急に炎華が後ろを向いたので、私は咄嗟に視線を逸らした。因みに、さっき聖に声をかけた時も、私は後ろを振り返っていない。

 

 何故かって? 

 

 背面より、正面を見る方が犯罪度が高いからだ! 

 女子高生のおっぱいをガン見する事が、しかもこの発育が良好過ぎる友人二名の、一糸纏わぬ身体を目にする事がどれほどの犯罪度数を叩き出す行為なのか、言うまでもあるまい! いやもう既に、私は年下の少女に身体を洗わせ、身体を洗っている全身有罪人間の立場で言えた事ではないが……。

 

「こ、交代って何の事でしょうか?」

 

「えー、そんなの決まってんじゃん? 

 今度はあーしが、セーラの『前』を洗ったげるね♪」

 

「え、いや、身体の前側は自分で洗えるから……」

 

「いーから、遠慮しないの♪」

 

 もにゅん。

 

「ほにゃっ!?」

 

「ほら、最近暑いじゃん? だからおっぱいの谷間とか、下とかに汗が溜まっちゃうんだよね〜。セーラだって、夏場は大変っしょ? こーんなに大っきいのぶら下げてるんだし、さ?」

 

 泡立てたスポンジが、私のおっぱいの谷間や乳房の下側を滑っていく。身体を洗いつつも、炎華は蒼蘭ちゃんが持つ乳房の重みを堪能するかの様に弄んでいる。

 

「うりうり〜♪ 

 あ〜、やっぱりセーラの重くて柔らかいな〜」

 

「ちょっと……炎華、あんまり激しくしないで……」

 

 息がかかりそうな程の近距離で、端正な顔立ちの友人は、その美少女フェイスをイタズラっぽい笑みで彩りながら、蒼蘭ちゃんの豊満な乳房を優しく洗っていく。顔の良い女子高生に、面と向かって顔を合わせながらお風呂に入るとか、来世からどれだけの徳を前借りをすれば味わえる体験だろうか? しかも、今の私も美少女高校生の身体なのだ。見目麗しい美少女が同じく可憐な美少女の身体を丁寧に洗う。この光景を第三者が見たら、さぞ眼福な景色として映るだろう。

 

「てか、まじで柔らかさがヤバい、スライムみたい! 手やスポンジがセーラのおっぱいに吸い込まれそう、てかお胸のスライムに食べられちゃいそう!」

 

「ちょっと、炎華! 人の胸を……んっ、ほ、捕食スライム見たいに……言うにゃぁ……」

 

 胸を弄ばれる感覚に悶えていると、後ろから髪を持ち上げられた。

 

「聖?」

 

「わ、私は髪を洗ってあげるから! ほら、蒼蘭ちゃんが持って来たシャンプーハット、付けるね!」

 

 私が返事をする間もなく、聖は私の頭にシャンプーハットを装着して、ワシャワシャと髪を洗い始める。

 ……正直に言うと、物凄く気持ちよかった。爪ではなく指の腹で髪を洗浄し、頭皮を揉んでくれたのだから。頭部が心地良く解され、シャワーで洗い流された後はとてもスッキリとした気分になった。少しの間、ボーッとしてしまう程に、だ。

 

「セーラ、先に温泉入っておいでよ」

 

「私達も後から行くからさ」

 

「え、でも……私、聖に何もしてあげられてないよ?」

 

「ほえ?」

 

 数秒ほどの沈黙の後、聖はおずおずと風呂の椅子に座り、

 

「じゃあ……私もお背中、流して貰おうかな」

 

 きめ細やかな肌をコチラに向けたのだった。

 

 ………………………………………………………………。

 

(うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! やっちまったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!)

 

 女子高生の背中を進んで洗おうとするとか、これは紛れもなく犯罪行為! 何の罪に問われるのか分かんねえけど、ほぼ間違いなく何らかの法に抵触するヤツだ! 

 いや、だが、弁明させて欲しい! 聖の洗髪と背中流しは、とても気持ちよかったのだ! それこそ、一流の美容師やエステティシャン顔負けの技術力だった! 私は美容には全ッッ然詳しくないが、多分東京の美容業界で天下を狙える逸材だ! それを無料(ただ)で、それも『女子高生』にやって貰ったんだぞ!? 『何の対価も払わずに、女の子に自分の身体を洗わせる』なんて、それも十分に罪深い行為だろうが!? 

 

 そう、私はただ、『聖にばっかり洗って貰っちゃって悪いな……何かお返しをしないとな……』って思っただけで、決して下心とかは無かったんだ!! 

 でも、どうしよう……。ここで引いたらそれはそれで不自然だし……。

 

(ええい、もう既に炎華の背中を流しているんだ! ここまで来たら一人も二人も変わらねえ!!)

 

 意を決した私はスポンジにボディソープをつけて、聖の背中を洗い始める。

 

「どう、気持ちいい?」

 

「…………」

 

 返事がない。

 

 ……あれ、あんまり気持ちよくない感じか? 

 まぁ、聖の神の手腕(ゴット・ハンド)に比べりゃ、私のなんて素人も素人か……。

 いや、やると言った手前、せめて最善を尽くすべきだろう。

 

「お客様ー? 痒いところはございませんかー?」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

「うわ、ビックリした!」

 

「あ、ごめん! 痒いところとかは、何です、大丈夫です……」

 

「じゃあ、重点的に洗って欲しいところとかは?」

 

「それも、大丈夫。お任せでお願いします」

 

『お任せ』って、美容院じゃないんだから……。

 いや冷静に考えたら、『痒いところございませんか?』って言ったのは私だった。

 なので、聖にやって貰った事を意識して、彼女の背中を洗い流す。肩甲骨、脇腹、二の腕、肩、その他諸々を入念に洗う。

 

「ちゃんと汚れ落とせてるかな? 聖、本当に大丈夫?」

 

「うん、だ、大丈夫! 大丈夫でひゅ!」

 

「そっか、なら良かった。

 ……えーっと、お客様のご職業は」

 

「え、高校生ですけど……」

 

「あ、今のはジョーク! 美容院ジョークだから!」

 

「あ、うん! よく美容師さんって、そういう話題振るよね!」

 

 ぎこちない会話が洗い場で交わされる。

 が、これは仕方のない事なのだ。私の視線は今、聖の身体に固定されている。そして彼女の肌もまた、繊細さと瑞々しさを兼ね備えている。故に、会話で気を紛らわねば、邪念が頭をもたげそうで怖いのだ。

 視線を逸らすことが出来ない理由は、『身体を洗っているから』という事以外にもある。

 

「ふんふんふふ〜ん♪」

 

 炎華が聖の前に立って、聖の髪を洗い始めたからだ! 

 ちょっとでも視線を上に逸らしてみろ。都会のハツラツギャルの無防備な身体が視界に入ってしまう! そして、意識して視線を固定しようとすると、力が入るせいでかえって首が痛くなる! 

 いや、これは仕方ない。受け入れよう。女子高生達の楽園(テルマエ)に土足で踏み込んだのは私の方だ。文句を言う資格はない。私に出来ることは、聖の身体をルネサンス時代の彫刻もかくやと言われるレベルに磨き上げる事だ。聖は素材が良いのだから、決して不可能な事ではない筈だ。……美術の成績万年『3』の私が言っても説得力がないかもしれないが……。

 

(兎に角、汚れは全て落としてしまおう! そうだ、耳の裏側も洗っておかないと! あそこは汚れが溜まりやすいから……)

 

「聖?」

 

「どうしたの、蒼蘭ちゃん?」

 

「もしかして、のぼせてる? それとも、熱中症?」

 

「え、どうして?」

 

「耳、めっちゃ赤いけど……?」

 

 すると、象牙の様な美肌が小刻みに震えた。気のせいか、聖の身体が熱くなっている様な気もする。

 

「大丈夫、大丈夫だから! ほら、今日暑かったし、汗いっぱいかいちゃって!」

 

「そっか、それじゃ、手早く洗って、シャワーで流しちゃうね!」

 

 無事に聖の身体を洗い終えた私は、一仕事終えた達成感と、それを遥かに上回る罪悪感に包まれながら湯船に向かった。聖は身体を冷ます為にぬるま湯へ、炎華はサウナへと向かったので、一先ずは一人で温泉に浸かれる事になった。

 

 ◆

「ふぅー……」

 

 こんな広いお風呂に入るのは、編入以来初めての事だ。個室の浴槽とは違い、手足を伸ばして思いっきり伸び伸びとした入浴が……

 

 出来たらどれほど良かっただろうか……。

 

 私は浴槽の端っこで皆に背を向け、縮こまって入浴している。幼気(いたいけ)な女子高生達の入浴姿を、極力見ないようにする為だ。それと、蒼蘭ちゃんの胸部に備わっている、破壊力抜群のおっぱいのせいだ。少しでも気を抜くと、Jカップを誇る特大の浮袋が、浮力に負けて浮き上がってしまうのだ。手足を伸ばして堂々と入るのであれば、この浮袋はとても役に立つだろう。プカプカと浮いて、さぞリラックスできるに違いない。しかし、私はこの入浴タイムを平穏にやり過ごす必要があるのだ。

 

(私は壁、私はタイル、私は露天風呂とかに沈んでいる岩的なモノ……)

 

 再びの自己暗示。しかし私は擬態能力などを有していない為……

 

「おーい、どうした? こんな所で縮こまって?」

 

「瑠璃海ちゃん、どうしたの? ダンゴムシごっこ?」

 

 あっっっさりと生徒会所属の知人二名、風歌と雷葉に見つかってしまった。

 

「折角の温泉なんだから、もっと手足伸ばして入んなって!」

 

「そーそ、このままだと瑠璃海ちゃん、茹でタニシになっちゃう」

 

「わ、ちょ、待っ……!」

 

 ぐるり、と身体を方向転換され、私はバランスを崩した。

 

「あわわわわ!」

 

 ざぶん。

 

 蒼蘭ちゃんの発育良好な身体が、大浴場内に露になった。女湯内にはどよめきが発生し、同時に身体が振り返った勢いで、豊満な乳房が波を発生させた。

 

 そして運の悪いことに……温泉で発生した津波は、肩まで使っていた財閥令嬢の顔面に直撃したのだ。

 

「あ……、ごめ……」

 

 私とて謝ろうとはした。したのだ。

 だが、その言葉が彼女の耳に届くより先に、

 

「こんの……ッ、駄肉ウサギがァァ!!」

 

 彼女の繊細な指が、私の胸を鷲掴みにするほうが早かった。

 

「ひゃあああッ!」

 

「ここぞとばかりに見せつけて来て! 何、何のつもりなのかしら!? 当てつけ、当てつけなの!?」

 

「そんな事は……ひゃうんッ……」

 

 もにゅんッ、もにゅんッ、もにゅんッ、と激しく揉みしだかれる度に、身体中に得も言われぬ感覚が駆け巡る。これまで優しく揉まれた事しかなく、このように乱暴に扱われる事はなかった。故に、今まで味わった事のない感触に身悶えしてしまったのだ。

 

 確かに、乱暴に揉まれているため痛みは多少ある。

 だが、その痛みを凌ぐ『快感』があるのだ。

 肌の触感だけでは、この快感を説明できない。

 気こそ強いが、容姿端麗なオリエンタル美少女-アディラ・ナヴァラトナに、

 自分の身体を攻められているという倒錯的状況が、私の脳に毒々しい背徳の甘露を垂れ流す。

 

「何? まさか貴女、感じている訳?」

 

「いや、これは……その……」

 

「たわわに実ったモノを見せつけるだけじゃ飽き足らず、よくもまぁ……さっきはお友達に弄られて、随分と幸せ気分だったのかしら?」

 

「そんな……大体、私の発育は私の所為じゃないじゃん! これは勝手に育ったというか、元々こうなっていただけだもん!」

 

 そうだ、文句なら蒼蘭ちゃんの体型を設定した変態研究者に言って欲しい。客観的に見て、私の否は間違いなくゼロだ。

 

 が、私の切実な訴えは、アディラを筆頭とするスレンダーな体型を持つ魔女達からの眼光で滅殺されてしまった。

 

「だまらっしゃい、この万年発情期贅肉愛玩動物がぁッ! 大体何で、前にぶら下がっている駄肉が背中から見えるのよッ!」

 

「ひやあああああッ!!」

 

 そのままアディラの繊細な指がさらに激しく動き、何度も何度も双丘にめり込んでは浮上する。私は財閥令嬢の手によって、『女の子の悲鳴』を上げながら意識を手放した……。

 

 ◆

 ……………………

 …………

 

「…………ハッ!!」

 

 気が付くと、私は仰向けで横たわっていた。どうやら魔力活性化の反動と温泉で逆上(のぼ)せた事で、意識を失っていたようだ。

 背中が固い……この感触は、木材……ということは、脱衣所のベンチか。

 

「お、セーラ気が付いた!」

 

 頭上から安心した様子の声が聞こえるが、声の主の顔は見えない……。

 いや、待て。天井すら見えてねえじゃん……。

 ……冷静に考えると、なんで背中に硬い感触があるのに、頭の感触は柔らかいんだ……? 

 

「……ッ!?」

 

 私の視界を遮っていたモノが、炎華の乳房だと言う事を漸く理解した。そして私は今、彼女に膝枕をされていることも、条件反射で起き上がれば私の頭部が炎華山脈にぶつかることも

 

「あ、あの、あのっ、炎華さん? 私はどうやって起き上がればよろしいのでしょうか…………?」

 

「あ、起きれる? 無理しなくて大丈夫だかんね?」

 

『よっと』の掛け声と共に、炎華は上体を反らし、視界が広がった。私はその隙を逃さず、貧弱な腹筋に出来る限りの力を込めて起き上がる。

 

「蒼蘭ちゃん、これ飲める?」

 

 側で様子を見ていた聖が、自販機で購入したスポーツドリンクを渡してくれた。確かに温泉に浸かっていたので、非常に喉が渇いている。私は彼女からペットボトルを受け取り、中身を一気に飲み干した。

 

「ご……ご心配とご迷惑をお掛けいたしました……。それと、ありがとうございます」

 

 私は深々と彼女らにお辞儀をする。

 

「いいえ、気にする必要はありません。寧ろ、『迷惑』と言うのなら彼女の方でしょう?」

 

 声のした方へ顔を向けると、正座させられているアディラ嬢と、冷ややかな視線を令嬢へ向ける我らが生徒会副会長、菊梨花がいた。

 

「さて、瑠璃海さんは目を覚ましました。……ナヴァラトナさん、何か言うべき事があるのではないですか?」

 

「…………なさい」

 

「声が小さい!」

 

「わ、私が悪かったわよ! ごめんなさいね!」

 

「心が籠っていない! ちゃんと反省しているんですか!?」

 

「待って、大丈夫! 私なら大丈夫だから!」

 

 声を荒げるA組女子二人に対し、私も負けじと声を張り上げる。

 

「本当に良いのですか?」

 

 菊梨花は怪訝な表情を浮かべているが、私とて少女達の湯浴みに土足で踏み入れた身である。彼女に対して咎める資格などないだろう。

 

「はい……私は楽園に踏み入った『罪人』……己が咎を少しでも濯ぐべき存在であります故……」

 

「え、セーラまたバグってない? 大丈夫?」

 

「ごめん皆、今のは忘れて。兎に角、大丈夫だから。菊梨花も、心配かけてごめん」

 

「いえいえ、それこそお気になさらず」

 

 周りを見れば、脱衣所にいるのは私達5人だけだ。しかも、着替えていないのは私だけ。なので早急に着替えた後、私達は食堂へと足を運んだ。




今後も作者の偏った思想・信条が物語に反映されていきますが、何卒ご容赦くださいませ……。

それと、『どの辺までの描写までなら運営からお叱りを受けないか?』というのが私には分からず、もしかしたら過激とも思える描写をしてしまったかもしれません……。もしお叱りを受けた場合、何らかの修正を加えるつもりですので、ご了承頂ければ幸いです。

様子見も兼ねて、次回の更新は明後日以降とさせて頂きます。此方もご了承頂ければ幸いです。
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