魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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第7話 破廉恥なのは御禁則!

「そういえばさ〜、

 セーラって彼ピ居るの?」

 

 軽快な音楽が流れる学食にて、その爆弾発言は投下された。

 

「んぐブハァッッ!?」

 

 俺は飲んでいた水を吹き出してしまった。

 

「瑠璃海さん、大丈夫!?」

 

 心配した聖が俺の背中をポンポンと叩いてくれる。

 

「ゲッホ、ケホケホッ!」

 

 やっべぇ、気管に入った……。

 息が出来なくて一瞬焦ったぞ。

 

「もう、炎華ちゃんが変な事聞くから!」

 

「ごめん! セーラを咽せさすつもりはなかったの! 

 ごめんて!」

 

 聖に叱られた炎華は、素直に手を合わせて謝罪してきた。

 

「う、うん……。大丈夫。

 私もちょっと……予想外の質問にビックリしただけ……」

 

 いやまぁ、今の俺は『年頃の女子高生』なのだから、そういう話題を振られてもおかしくは無いのだけども。

 ちょっといきなり過ぎて取り乱してしまった。

 

「私に彼氏とか恋人とかはいないわ。

 と言うより、この学園って高等部までは()()()()じゃなかった?」

 

「そうだけどさ、あーしが聞きたいのはセーラが転校する前よ。中学まで付き合ってた男の子とか居ないの〜? それか、告られたけどフッた相手とかさ♪」

 

 若干ニヤニヤしながら、金髪のギャルは俺を揶揄うように話題を振ってくる。

 

「そ……そういうのは、私には縁が無かった……かな。うん、ナイナイ」

 

「え〜、流石に告られた回数ゼロはあり得ないっしょ? 

 こんなに可愛いセーラちゃんを、年頃の男子が本当に放って置くのかな〜?」

 

 紫色の瞳を光らせながら、炎華は更に追及してくる。宛らウサギを追い回すオオカミのような眼光だ。

 だが、そう言われても無いものはない。この雨海惺、自慢じゃないが今までの人生で恋人どころか女の子に告白した事も、された事もない。ましてや男からなんてある訳がない。

 ……だが、そんな事口が裂けても言える訳がない。どうしたものか……。

 

「炎華ちゃんってば! あんまりそういう話は……」

 

 聖が友人を再び嗜めようとした時、

 

「ええ、白百合さんの言う通りですね。そういう下世話な話題は、この暁虹学園に相応しくありません」

 

 凛とした声が聞こえた。

 いつの間にか、炎華の背後に一人の生徒が立っていたのだ。

 グレーの髪をショートボブにし、前髪は水平にバッサリ切った所謂『姫カット』の少女。キリッとした灰色の瞳は堅物な、或いは委員長気質なオーラを醸し出している。

 だが顔立ち以上に目を引いたのは、左腕に付けられた『生徒会副会長』の腕章、そして……腰に下げた日本刀だった。

 

錫宮(すずみや)さん? いつの間に!?」

 

 聖はこの帯刀少女の事を知っているようだ。

 推定副会長は俺達3人を一瞥し、再度俺に視線を戻した。

 

「おや、初めて見る顔ですね。

 ……成程、貴女が話題の転校生ですか」

 

「はい、瑠璃海 蒼蘭と申します!」

 

 ほぼ反射的に椅子から立ち上がり、自己紹介と共にペコリとお辞儀をした。

 そこまで改まる必要は無いかもしれないが、俺の心境は江戸の街でお侍様にバッタリ出くわした町人そのものだった。

 

「これはご丁寧な挨拶、痛み入ります。

 ではこちらも自己紹介を。

 私は錫宮(すずみや) 菊梨花(きりか)、所属は高等部1年A組。若輩者ながら、この学園の生徒会副会長を務めている者です。もし学園生活でお困りの方が御座いましたら、是非生徒会にご相談頂ければと思います」

 

 自己紹介の後、菊梨花は深々とお辞儀をした。

 かなり礼儀正しい少女のようだ。心なしか、同学年の聖や炎華とは醸し出すオーラが違って見える。

 

「それと……瑠璃海さんもご存知かと思いますが、高等部生徒は恋愛禁止が校則で定められています。

 発覚した場合……貴女にも我が愛刀を向ける必要があるかもしれません。くれぐれもお気をつけて」

 

 腰に下げた刀に目をやりながら、菊梨花は忠告してくる。

 

「はい、肝に銘じておきます……」

 

 自然と声が震えてしまった。

 

「でもさ〜、転校前の事も聞いちゃダメなの? セーラが魔女になる前の話じゃん? それなら、別に良くない?」

 

「いけません。

 思春期……特に中学生から高校生の魔女にとって、()()()()()()()()は劇薬となります。

 魔力の暴走・暴発を未然に防ぐ事は国の魔法機関から直々に命じられているのです。少しでもそういった話に繋がりそうな事は慎むように」

 

 金髪ギャルが口を尖らせながら溢した不満を、灰色の副会長が叩き切る。

 

 だが、菊梨花の話した言葉は真実だ。

 眉唾な話に聞こえるが、魔女の魔力は『男性との恋愛感情や性的感情』で()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 特に思春期の少女にはこの傾向が強く、魔力の暴走による事故・或いは魔女本人の寿命低下を防ぐために、『男女間の恋愛禁止』の校則が定められているのだ。そして、菊梨花を初めとする生徒会役員は、校則違反者が居ないか常に目を光らせている……のだとか。

 

「えーっと……

 そうだ、せっかくだし錫宮さんにも話を聞きたいのだけれど……良いかしら?」

 

 俺は半ば強引に話題を変える。

 

「最近、変わった事とかないかしら? 不思議な出来事とか、気になる事とか?」

 

「随分抽象的な質問ですね。具体的にはどういった事ですか?」

 

 菊梨花が最もな疑問を投げ返してくる。

 しまった、話題の運び方が無理矢理過ぎた……。だが、今夜の予知に関する情報は少しでも集めておきたかった。

 

「その……例えば……

 放課後に女子トイレをノックしたら幽霊が返事をしたとか、学園の像が一人でに動いたとか、悪い霊に取り憑かれて肩が凝ってるとか、図書室の隠し扉が異空間に繋がっていた……とか?」

 

「何それ? 学校の怪談? 

 ウチの学園、別にユーレイ学校じゃないよ」

 

 炎華はケラケラと笑いながら答える。

 

「でも魔法の学校なんだし、そういうオカルト系の出来事だってあるんじゃない? 白百合さんは、お化けにあった事はないの? 幽霊からの呪いの手紙とか」

 

「え!? な、無いよ? 無い無い!」

 

 否定する声が大きかったので、一瞬ビックリしてしまった。

 聖は俺がビクッと身体を震わせたのを見て、大声を出した事を謝罪した。

 

「ごめん、ビックリさせちゃって。

 私は初等部から通っているけど、今まで見た事ないかな……」

 

「ええ、全くです! 

 ゆ、ゆ、幽霊だとかそんなスピリチュアルで非科学的で非魔法的な存在を信じるだなんて、馬鹿馬鹿しい!」

 

 菊梨花もやや大きめの声で否定する。気のせいか、声色が震えている。

 

「でも、降霊術とか死者の復活とか、ゲームやファンタジーの世界だと定番でしょう? そういうのもあるのかなって、私は思ったんだけど……」

 

「大昔の魔法ならいざ知らず、そんな代物とっくに廃れてますよ! 

 兎に角、みなさん5限目の授業に間に合うように昼休みを過ごしてくださいね! それでは!」

 

 菊梨花はそそくさと退散する。

 魔女学園の生徒会副会長でも、幽霊は怖いのだろうか? 

 

「あ、そうだ。図書館で思い出したんだけど、ひじりんに借りてた本……ていうか漫画! 借りっぱなしだったから返すね!」

 

 炎華はカバンから一冊の単行本を取り出し、聖に渡した。

 この二人は漫画の貸し借りをする仲なのか。結構親密なんだな。

 

「ホントは停学前に返すつもりだったんだけど、遅くなってごめんね?」

 

「ううん、大丈夫。

 ところで、この漫画面白かった?」

 

「うん、あーし続きが気になって3巻まで買っちゃった! 昨日2巻読み終わったトコ」

 

「そっか、オススメして良かった」

 

 聖はにこやかな顔で漫画を受け取った。

 ……本を手にした瞬間、彼女の顔が一瞬強張ったのに俺は気づいてしまった。

 

 とは言え、時間も押している。転校初日から授業に遅刻するのはマズい。詳しい聞き取りは放課後に回す事にして、俺は昼食のカレーを食べ切る事にした。

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