魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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今回は、前回とは打って変わって短めとなっております。そしてタイトルにもある通り、沙織お姉ちゃんから授かった秘密兵器のお披露目です!


第3章18話 沙織お姉ちゃんの秘密兵器

 ◆◆◆

 炎華は深呼吸して、白百合邸のインターホンを鳴らした。

 

『はい、どちら様でしょうか?』

 

 門の石柱に身を潜めた蒼蘭は、これが白百合 癒香(ゆか)の声である事に気がついた。反対側の石柱にいるステラに合図を送り、家主の動向を見守った。

 

「あーし、聖ちゃんのお友達の炎華っていいます! ひじりん、今日学園をお休みしていたので、お見舞いに来ました!」

 

『聖は、体調不良で欠席した訳ではありません。ご足労頂いたのに申し訳ありませんが、お引き取り願います』

 

(私の時よりかは、何か丁寧な対応してる気がするな……)

 

 蒼蘭は内に秘めた不満を押し込めつつ、インターホンと周囲を交互に注視する。

 

「まぁまぁ、そう言わずに、差し入れのポーションを持って来ましたので、これだけでも受け取ってくださいな!」

 

 炎華には『聖の友人』としての振る舞いを続けて貰っている。家主が門を開けてくれれば、それで良し。もし、無理にでも追い返そうとしたのなら、強引に門を破って白百合邸に乗り込むのみだ。

 

『申し訳ありませんが、私達は忙しいのです。聖の()()にも支障が出ますので、どうかお引き取りを』

 

(『施術』? 聖の家で、何が行われているんだ?)

 

「やっぱり、ひじりんは具合が悪いんですか?」

 

『いいから、お引き取りください! あの子が、やっと()()()()()に戻る事が出来るんですから! もし、お帰りにならないと言うのなら……』

 

「待って、ひじりんのお母さん! あーしの話を聞いて! 今、ひじりんの所に『シスター14』が居るんでしょ!?」

 

『なッ!? 貴女、一体何処でそれを……?」』

 

「ひじりんのお母さんは、その人に騙さ」

 

「炎華、危ないッ! 上から何か来る!」

 

 蒼蘭は咄嗟に叫び、危険を知らされた炎華は反射的に大きく飛び退いた。今まで炎華が居た場所を電撃が襲い、地面に大きな焦げ跡を作った。当然、門に取り付けられたインターホンは無惨に破壊され、火花を散らしながら燻っている。

 

 炎華を襲ったのは2匹の悪魔、身体に纏った電気で攻撃をする『グレムリン』だ。不意打ちに失敗したグレムリンだが、すぐに翼を広げて宙を旋回する。そして両手や額の(つの)から、3人の来客目掛けて雷魔法を放った。

 

「向こうから攻撃を仕掛けた以上、プランBへ移行って事で良いんですよね!? ステラさん!?」

 

「ええ、蒼蘭さん。先ずは門番の悪魔達を迎撃して、門を通らせて貰います!」

 

「だったらここは、あーしの出番! くらえ、『ファイア・ボール』!」

 

 炎華の手から放たれた火球が、2体のグレムリンの身体へ的確に直撃する。火炎魔法をその身に受けた悪魔は、断末魔と共に体内の電気を空中に撒き散らして絶命した。

 

「この悪魔達……聖のお母さんは知ってるのかな?」

 

 心に浮かんだ不安な気持ちが、蒼蘭の口から独り言として露呈する。その気持ちに対し、この場の年長者としてステラがフォローに回る

 

「確かに気になるところですが、今は置いておきましょう。どの道、家主の癒香さんからは、色々と話を聞く必要が出てくる訳ですし。気になる事を抱えすぎると、本当に解くべき問題に集中できませんからね」

 

「そうですよね……。ステラさんの言う通りでした。ただでさえ、私達にはやらなきゃいけない事が山ほどあるんですから!」

 

「では、気を取り直して頂いたところで……突撃です!」

 

 ステラが手のひらを門に向けると、石柱にルーン文字が浮かび上がる。すると鉄製の門が独りでに開きはじめた。ステラは身を隠すのと同時に、ルーン魔術で細工をしておいたのだ。炎華、蒼蘭、ステラの3人は、開いた門から白百合邸の正面玄関まで走る。途中、ステラは魔術道具を使い、空中に花火……否、信号弾を打ち上げた。裏口側の、アディラ達に伝える為に。

 

 ◆◆◆

 豪奢な洋館の玄関扉もまた、門と同様に固く閉ざされていた。先程は家主の動向を伺ったり、説得を試みたりする時間があった。故に、ステラは門にルーン文字を仕込む事が出来た。だが、今はその時間がない。穏便な手段が通じない以上、残るは強行突破のみだ。

 蒼蘭、炎華が各々どう扉を壊すか考えつつ走っていると、扉が突然開いた。それは即ち、白百合一家総出での、お客様のお出迎え……だったら、どれほど良かった事か。

 

 実際に出て来たのは、何も白い礼服を着た者だった。男性が3人、女性が1人。何も、禍々しいオーラを放つ宝珠を手にしている。

 彼等はアイン・ソフィア王国の『正教騎士』。『運命の女神-セフィリア』を奉る国家の正教が抱える戦力であり、『大神官』の下で働く剣士や魔術師の総称である。

 

「『運命因子』は極力生け取り、残りは生死を問わないとのご命令だ。我ら『正教騎士』の手で()()()()()()()使()()、女神様からの神託を全うするのだ!」

 

「了解!」

 

 この場に於けるリーダー格らしき男が号令を飛ばし、一斉に宝珠から悪魔が召喚される。それは、闇夜に溶け込んでいるかの様な、漆黒の身体をした悪魔であった。闇や影に擬態する悪魔というよりは、『影が悪魔の形をしている』と言った方が正しいのかもしれない。

 

「かかれ、『シャドウ・デーモン』!」

 

 4体の悪魔が素早い動きで来客に向かっていく。距離は目算で30mほど、蒼蘭達が何もしなければすぐに接敵する。

 

「こうなったら、出し惜しみはなしよ! 『秘密兵器』を力を味わいなさい!」

 

 蒼蘭は、自分が着ていたマントを脱ぎ捨てた。そして、『秘密兵器』の正体が判明する。

 

 それは、黒を基調とした『シスター服』であった。スリットが入ったその服は、動きやすさと通気性と製作者の好みを反映させた嗜好の一品、匠の技が反映された代物であった。その露出度を高めに改造されたシスター服に、それを発育良好な美少女が着用している事実に、敵味方問わずその場の全員が言葉を失った。肩や太もも、乳房の上側が顕になっており、館から出て来た聖職者一同は蒼蘭の身体から思わず一瞬だけ目を逸らした。

 

 だが、次の瞬間、皆は別の意味で言葉を失う事となる。

 

「『ウォーター・バレット』!」

 

 指鉄砲から放たれる水の弾丸が、シャドウ・デーモン2体の頭部を撃ち抜き、影の悪魔は粒子となって消え失せた。

 

「…………は?」

 

「た……()()()()()()()、シャドウ・デーモンを仕留めた……だと!?」

 

 全長こそ『ギガ・デーモン』より遥かに小さいが、スペック的にはシャドウ・デーモンの方が大きく上回る。その悪魔が、牽制技にしか見えない小さな水の弾丸で討伐された事実に、異世界人達は驚きを隠せない。

 

「狼狽えるな! 次に生じる隙を逃さず、魔法を叩き込め!」

 

 リーダー格の男は冷静に、部下達に命令を下す。撃たれた悪魔は2体、だが召喚したのは全部で4体だ。残りの2体は既に、運命因子の足元に迫っている。シャドウ・デーモンはその名の通り、『影に潜む事が出来る悪魔』である。日中は生物・物体問わずその影に潜み、影が動けば中に潜んだ悪魔も動く。だが日が落ちて地面全体が『影』となった時間帯なら、シャドウ・デーモンは闇夜に覆われた地面や壁を、縦横無尽に動く事が出来る。

 

(狙いは『足』だ……! 足元に攻撃をさせ、よろめいたところを魔法で拘束させる!)

 

 正教に仇なす罪人や異教徒を何度も捉え、討伐してきた必勝パターンである。ましてや相手は魔法が衰退した世界の住人、次の攻撃で必ず確保できると確信していた。

 

 その考えは決して間違いではない。だが単純に、今回はその必勝パターンが通じない相手だった。

 

「地面に隠れているのは分かっているわ! 『ウォーター・ボール・ギガント』!」

 

 蒼蘭は両手で作った巨大な水の球を使い、自分たちの足元を水浸しにした。

 

 正教騎士達には、直接攻撃をする訳でもない蒼蘭の行動について、まるで意図が理解出来なかった。だが数秒後、水面が盛り上がり、息も絶え絶えな悪魔達が、死にかけのモグラの様にゆっくりと這い出てきたのを見て、一斉に仰天した。

 

「な、何が起きた!? お前、一体何をした!? 何故、攻撃を加えていない悪魔達が死にかけている!?」

 

「『何故』も何も……『聖女の聖水』はこれ以上ないくらい、悪魔祓いにはうってつけのアイテムでしょう?」

 

 そう、異世界人達にとって『二つ』、想定していない事があった。

 

 一つ目は、蒼蘭が身につけているシスター服だ。これは単なる服でもなければ、コスプレ用途で着用する訳でもない。彼女の姉-沙織-による暗示魔法、『羽衣人形(ビスクドール)』が施されている。今回はかつてない程に強力な魔法が込められており、このシスター服を着て悪魔と戦ったのなら、悪魔ですら暗示にかかってしまうのだ。

 

『自分は今、聖なる力を宿した聖女(シスター)と戦っているのだ』、と。

 

 速い話が、雨海沙織の最高傑作であるこの服は、最早付与魔法(エンチャント)の域に達しているのだ。その状態で水魔法を扱えば、そのすべてが『聖女の聖水』となり、悪魔達には効果抜群という訳である。

 

 加えてもう一つ、蒼蘭には『影魔法』の知識があった事だ。彼女は、地面に潜り込むシャドウ・デーモンを見逃さなかった。そしてその時、彼女は影子(えいこ)と初めて出会った時のことを思い出したのだ。茜の姿でチラシを配っていた時の事を、そして影子が使った影魔法、『地面から這い出て来た影の手』にチラシを弾き飛ばされた時の事を。

 

(影子ちゃんの魔法と、シチュエーションは同じだった。影子ちゃん、貴女のお陰で相手の攻撃手段を見破る事が出来たわ、ありがとう)

 

 自分は本当に縁に恵まれている、蒼蘭はその事実を噛み締めていた。

 

「その服、その魔法! お前は付与魔法まで使えるのか!? 魔法が衰えた世界で、こんな事が……!?」

 

「それは、貴方達が知る必要のない事です」

 

 冷淡な声色と共に、雷撃が正教騎士に襲いかかる。それは、ステラが手にした杖から、厳密には杖の先端に取り付けられた宝珠から放たれた。

 

「ぐ……は……」

 

「身体が……痺れ……て……」

 

 4人の正教騎士は全員、身体を麻痺させて地に伏した。

 

「『雷光のルーン』、死なない程度には調節してあるのでご安心を」

 

「やっぱり、ステラさんのルーンって凄いですね! 扉も開けられるし、何でも出来るじゃないですか!」

 

 蒼蘭の言葉に、普段は表情筋の固いステラも心なしが雰囲気が明るくなる。だが、それも当然だ。自分の魔法を褒められて、喜ばない魔女は居ない。そして後天的な魔女である蒼蘭は、自分の出会った魔女達へは、心からの称賛と敬意を送っている。だからこそ、彼女はカラ友の明星や美雪とすぐに打ち解ける事が出来たのだ。

 

「さて、これで門番は全て倒し終えました。お二人とも、いよいよ突入です! 気を引き締めつつ、危なくなったら私を頼ってくださいね」

 

「はい!」

 

 蒼蘭と炎華は、気を引き締めて返事をする。

 これからが本番、白百合邸への突入だ。




謎の教祖様S.A.「蒼の聖典、第2条。天より舞い降りし蒼の天使、世を忍ぶべく聖女となる。されど、その身に宿す溢れんばかりの浄化の力、悪き者の悉くを天へと還す」
※前書き・後書きの内容は必ずしも本編と地続きとは限りません。

次回は白百合邸突入編、ゴールデンウィーク中の何れかの日に投稿します! 『蒼の聖女』の活躍、乞うご期待!
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