魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜   作:海神アリア

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お待たせ致しました。何とか、ゴールデンウィーク中に続きを投稿出来ました。
そして、この連休中に本作を見てくださっている読者の皆様には、感謝を申し上げます。それでは聖奪還作戦の続き、今回は白百合邸へ突入します。残りのゴールデンウィークのお供に、どうぞご覧ください。


第3章19話 蒼の聖女、『シスター・セイラ』参上!

 ◆

「広ッ!?」

 

 玄関を潜り、親友の実家へに踏み入った女子高生二名は、思わず驚きの声を上げる。だが、無理もない。外から見た白百合邸は、確かに『豪邸』と呼ぶに相応しい大きさだった。だが実際に入ってみると、その広さは外見からのイメージを遥かに凌駕していた。これは家というより、最早『城』と言って差し支えない大きさだ。

 

「廊下の幅に天井の高さ……どうも普通の家では無さそうですね。何やら、得体の知れない魔力を感じます」

 

 ステラは冷静に、手にした杖で壁を軽く叩いて分析する。

 

「あのさ、もしかしてなんだけど……これ、家が大きいんじゃなくて、あーしらが小さくなってるパターンじゃない?」

 

 炎華は幼い頃に見たアニメや絵本、特に『不思議の国のアリス』を思い浮かべながら言った。

 

「だって、この廊下とか凄い長いじゃん? 幅もめっちゃ広いし、歩いても中々奥まで着かないよ?」

 

「多分だけど、それは違うと思う」

 

 蒼蘭は友人の予想をやんわりと否定する。

 

「どして?」

 

「だって天井の広さに対して、シャンデリアの大きさはそのまんまじゃない? それに、ドアの取手の位置や、階段の高さも変わっていなかったわ。私達が小さくなっているなら、()()()()()()()()大きく見えなきゃ辻褄が合わないんじゃない?」

 

「あー、確かに。言われてみれば、セーラの言う通りかも」

 

 炎華は、友人の推察に納得の表情を示した。

 

(ひじりんもだけど、セーラって結構観察力あるんだよね……。普段はちょっぴり天然だけど、やる時はやる子ってのは、あーしも分かって来たもんね)

 

「蒼蘭さんの推測通り、どうやらこの家の一部分だけが、意図的に大きくされているみたいですね」

 

「でもさ、不便じゃないですか? こんなに廊下が長いと、トイレとかめっちゃ大変じゃん。これも、ひじりんママがやったのかな、ステラさん?」

 

「いいえ。炎華さんのおっしゃる通り、この状態は日常生活に支障を来たします。なので、これは異世界人の仕業でしょう。そして、何故このような魔法を使ったのかと言えば……」

 

 次に続くステラの言葉は、廊下の奥から聞こえる声により遮られた。

 

「居たぞ、『運命因子』とその仲間、更には忌々しい妖精の従者だ!」

 

「全員、召喚した悪魔達を(けしか)けろ!」

 

 廊下の奥からは、白い礼服や黒いローブを着た者達が向かって来ている。礼服の者らは正教騎士、黒いローブの者らは七夕祭りで蒼蘭が出会った『魔術師組合』に所属する魔法使いだ。目算で20人前後、更に彼らが召喚した悪魔達が、幅広い廊下を駆けて接近して来ている。

 

「室内戦を容易にする為、更には召喚した悪魔を暴れさせ易くする為、と言う訳ですね」

 

「ステラさんの言う通り、かなり入念な迎撃準備です。でも……!」

 

 蒼蘭、否、『シスター・セイラ』は先陣を切りに前へ出る。

 

「今の()()なら戦えます! ここを突破して、聖を助けに行かないと! 炎華、力を貸して!」

 

「もち! 別働隊のすずみー達の為にも、あーしら2人で一杯やっつけよ!」

 

 迫り来る悪魔の軍団に、魔女の卵らが勇敢に挑む。

 

「『運命因子』は水魔法の使い手、つまり水属性に耐性のある悪魔こそが任務達成の鍵!」

 

「かかれ、『ケルピー』!」

 

「やってしまえ、『レヴィアタン』!」

 

 異世界人達の命令により、魚の様なヒレと鋭利なツノを有した馬型の悪魔『ケルピー』と、巨大な海蛇めいた悪魔『レヴィアタン』が、少女達に襲いかかる。彼らの判断は適切だ。蒼蘭の水魔法は通じず、炎華の魔法も悪魔達が操る水魔法によって消火されてしまうからだ。

 

 だがそれは、今の装備を身につけた蒼蘭には通じない策だった。

 

「えいやっ!」

 

 シスター・セイラは懐から取り出した白銀のナイフを悪魔達目掛けて投擲する。ケルピーの腹とレヴィアタンの頭部に、『聖女のナイフ』が正確に命中した。

 

 異世界の悪魔達は、予想だにしなかった負傷に苦悶の叫びを上げる。()()()()()宿()()()()()()()()()()そのナイフによって、身体は淡い光を発しながら徐々に浄化されていく。

 

「今だ、『ファイア・ボール』!」

 

 ダメージを負って動きが止まった悪魔達に、炎華がすかさず火炎魔法を叩き込む。本来なら火炎魔法を消火する事など、水を操るこの悪魔達には朝飯前である。だが、今の彼らにそんな余裕がある筈もなく、あえなく悪魔の丸焼きと相成った。

 

「馬鹿な……『対運命因子用の悪魔』が、瞬殺だと……!?」

 

「当然でしょう? 悪魔退治に効果的なのは、魔を浄化する『光属性・聖属性』の魔法と!」

 

「魔を焼き払う『炎属性』の魔法ってコト! ひじりんママの特別授業で勉強したもんね!」

 

 蒼蘭は内心複雑だったが、先日の特別授業は確かに役に立っている。そして、悪魔退治における切り札、『シスター服と聖女のナイフ』についても、露出度の高さには全力で目を瞑りつつ姉に感謝をしていた。

 

「怯むな! 所詮は小手先、数で押せばどうとでもなる!」

 

「言われなくても! 『ヘルハウンド』、先に金髪の娘を仕留めろ!」

 

「ならこっちは力押しだ! 行け、『バフォメット』!」

 

「貴様も続け、『レオナール』!」

 

 鋭い牙を持つ炎の番犬2匹と、魔力の鳩走る杖を有した山羊の悪魔達、オマケと言わんばかりにコボルトやインプといった下級悪魔までもが召喚されて追撃にかかる。蒼蘭と炎華は目配せをして、互いに迎撃準備に入る。

 

「『ウォーター・バレット』!」

 

 先陣を切り迫り来る猛犬の足元目掛けて、蒼の聖女は聖水の銃撃をお見舞いする。だが、魔犬達は素早い動きで床から跳び、壁を駆け、続く弾丸は壁から大きく跳躍して回避する。ヘルハウンドは主人の命令通り、そのまま炎華の喉笛を噛み切ろうとした。

 

 だが、炎の魔犬は気が付かなかった。『ウォーター・バレット』は単なる囮で、自分達が空中へ誘い込まれていたことに。

 

「今だ、切り刻めッ! 『サファイア・ソーサー』!」

 

 蒼蘭が放った水の円盤が、鋭利な回転刃と化してヘルハウンドを2匹とも両断した。

 

「セーラ、ナイス! 火を吹くワンちゃんが居なければ……あーしの魔法の出番! 『緋色に燃る炎の水車(ムーラン・ルージュ)』!」

 

 轟々と燃え盛る炎の車輪が、異形の悪魔目掛けて突進する。下級悪魔では太刀打ちできず、コボルトもインプも逃げる事すら叶わず、炎に焼かれて塵と化した。

 

 だが、山羊を模った上級悪魔達は動じない。手にした杖を用いて、赤く光るバリアを展開した。緋色に燃る炎の水車(ムーラン・ルージュ)は、悪魔が行使した防御魔法に受け止められてしまった。恐らくは炎系の魔法を防ぐためのバリア。流石に、バフォメットやレオナールといった上級悪魔は一筋縄では倒せない。

 

 無論、親友を連れ戻す為に『悪魔騒動の黒幕』と戦うつもりで来た炎華達が、一筋縄しか用意していない訳もないのだが。

 

「本命はこっちよ、悪魔さん達! 『熱情の口付け(キス・オブ・ファイア)♡』!」

 

 美少女ギャルの投げキッスには、悪魔達も主人たる魔法使い達も呆気に取られて、ほんの数瞬だけ動きが止まる。だが、それが文字通りの命取りだ。炎華の口から放たれた、ハートを模った魔力の塊が、見る見る内に膨張している。ギャルの投げキッス、その正体は魔法を圧縮して解き放つ熱エネルギーのプラズマ砲だ。そしてこれも立派な『炎属性』の魔法なのである。事実、慌てて展開した先程の赤色バリアでは防ぎきれず、バフォメット、レオナール共々、熱魔法の塊に焼かれて絶命した。

 

「凄い、あんな強そうな悪魔をアッサリ倒しちゃうなんて! 一緒に来てくれて本当にありがとう。やっぱり炎華って頼りになる!」

 

「セーラだって、初めて会った時よりだいぶ強くなっているじゃん? さっきのワンちゃんみたく、あーしも頼りにしてっから!」

 

 少女達による息の合ったコンビネーションと、友人同士の爽やかな笑顔を前に、異邦の魔術師達は只々呆然としていた。

 

「何なんだ、コイツら……? 本当にこの、魔法が衰えた世界の人間なのか!?」

 

 口に出したのは1人だが、正教騎士も魔術師組合の者も抱く思いは同じだった。そして、先刻の大賢者ラジエルからの言葉が皆の脳裏に過った。

 

『勿論、運命因子を捕まえられるならそれがベスト。でもキミ達は最悪、時間稼ぎさえしてくれれば良いからさ。あんまり無茶をしないでね』

 

 無論、これはラジエルなりの『気遣いの言葉』である。が、異邦の魔術師達にとって、少々気に障る物言いであった。まるで、『自分達が異世界の魔女達相手に時間稼ぎしか出来ない』と言っている様なものだからだ。故にこそ、彼女達自身が運命因子の魔女を捕えなければならなかった。大賢者に己の実力を認めて貰う為に、聖女ショコラが自分達を連れて来た事が間違いでなかったと証明するために。

 

 が、結果はこの有様である。自分達が召喚した悪魔達は、まだ少女達に傷一つ負わせていないではないか。その焦りが(どよ)めきと化し、その場に不協和音が生まれつつあった。

 

「待て、慌てるな。私に考えがある!」

 

 この班を取り纏める正教騎士の女性が、純白の杖を手に前へ出る。彼女には、この状況を打開する考えがあった。

 

「悪魔への対策はしているようだが……果たして"天使"への対策は用意しているか!?」

 

 彼女の声に、各々が失いかけた士気を取り戻した。

 

「召喚可能な者は天使を呼び出せ! それ以外の者は魔法で支援に回れ!」

 

「了解です! その清浄なる光で我らが敵を照らし給え! 出でよ、『上位天使(アークエンジェル)』!」

 

 地上に舞い降りたその天使は、おおよそ人とはかけ離れた外見をしていた。具体的には無機質な純白の肢体に正八面体の結晶の頭部、しかし頭部に浮かぶ天使の輪と背中に生えた白い翼、何より身体から放たれる神々しいオーラが、その無機質な人型が『天使』であると物語っていた。それが全部で15体、この光景だけでも圧巻の一言である。

 

「運命の女神に仇成す者らよ、天の威光に裁かれるが良い! 舞い降りよ、『執行の(エグゼキュート)権天使(プリンシパリティ)』!」

 

 上位天使(アークエンジェル)より一回り大きな、光り輝く聖杖を手にした3体の天使が、魔女達の目の前に顕現する。後ろの上位天使達が、威光を放つ権天使を目にして、規則正しく整列する。悪魔の軍団の次は、天使の分隊だ。確かに、青髪の聖女は悪魔に対して強い特効能力があるが、天使には悪魔ほど通用するとは限らない。第一、これだけの天使達による一斉攻撃を凌ぐ手段を、目の前に居る少女2人が持っている筈が無い。そう判断するのは自然な事だ。使役する対象を冷静に切り替えた、その策自体は賢い選択と言えよう。

 

 権天使の(あるじ)は、額に汗を滲ませながらも勝利を確信した。強力な天使の3体同時召喚、当然ながら魔力は底をついてしまった。だが、運命因子と残り2人の魔女を倒し、聖女ショコラとその師匠に差し出せばお釣りが来る。それも大量に。

 

「汝らの身を、聖女ショコラ様に捧げよう! さぁ、光属性の最上級魔法、『エンライトメント・ジャッジメント』を放て!」

 

 3体の権天使がそれぞれ自分が持つ杖を重ね合わせ、膨大な光属性の魔力を集約させる。後ろでは上位天使と魔術師達が、自身の魔力を権天使に送っている。このまま魔力の融合が完了すれば、途轍もない威力の魔法が放たれてしまう。

 

 ならば、その前に止めるしかない。

 

「炎華さんは、魔力の消費が大きいので後ろに下がってください」

 

「はーい!」

 

「蒼蘭さん。少しだけ時間を稼いでください。あの権天使の注意を逸らして頂くだけでも大丈夫ですので」

 

「分かりました、ステラさん!」

 

 蒼蘭は水の魔力を自身の両手に集約させる。右手に作った水の矢を、左手の弓に(つが)えて(つる)を目一杯引き絞る。白百合邸の正門前からずっと、露出度の高いシスター服姿を衆目に晒していたのだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「穿て、『蒼石の流星(サファイア・ミーティア)』!」

 

 狙いは中央の権天使。的が小さい頭部は当てづらいので、蒼蘭は胴体に狙いを定めて矢を放つ。土手っ腹に固有魔法を撃ち込まれた無機質な人型は、八面体の頭部を僅かに下げ、電源を切られたロボットの如くそのまま稼働を停止した。

 

 15歳の見習い魔女が、上位天使(アークエンジェル)すら上回る天使を仕留めた。その事実に、廊下の響めきはより一層強くなる。

 

「『執行の(エグゼキュート)権天使(プリンシパリティ)』が、やられてしまいました!」

 

「権天使ですら、運命因子には敵わないのですか!?」

 

「落ち着け! 天使に打ち勝つとは予想外だったが……運命因子の魔力消費もかなりの物だ! このまま残りの天使で総攻撃を仕掛けろ!」

 

 残り2体の権天使は仲間の死に動揺する事なく、主人の命に従い粛々と魔力を統合させる。

 

「ありがとうございます、蒼蘭さん。お陰で準備が整いました」

 

 ステラは先程の戦いで使った杖を手に、天使達の前に現れた。厳密には杖の先端の宝珠が、『雷光のルーン』が刻まれたものから、『烈火のルーン』が刻まれた宝珠に付け替えられていた。

 

「燃え盛り焼き尽くせ、『スパイラル・インフェルノ』!」

 

 宝珠が紅く輝き、螺旋状に渦巻く赤黒い業火が放たれる。轟々と燃え盛る地獄の焔は、権天使と上位天使を瞬く間に焼き尽くし、灰燼に変えてしまった。

 

「………………は?」

 

 この呆気に取られた声は、誰の口から発せられた物かは分からない。何故なら、天使軍団が瞬く間に焼失する事など、魔法を使った本人以外誰にも予想がつかなかったからだ。

 

「『天使』とお聞きしましたので、事前に用意していた『烈火のルーン』が刻まれた宝珠に、闇属性の『冥闇のルーン』を加えてました。地獄の炎は、聖なる天使にはよく効いた事でしょう」

 

 口調こそ淡々としているが、ステラが纏う雰囲気には自信満々で誇らしげな感情が混じっていた。だが、この光景を目の当たりにしても尚『胸を張るな』と言う方が無茶だというものだ。

 

「凄い……というより、凄まじいですね……」

 

「ルーン文字って、マジで何でも出来ちゃうんだ……」

 

「万能ではありますが、決して全能ではありません。事実、予めルーン文字を刻む必要があるのですから。故に、蒼蘭さんに時間稼ぎをお願いしたのです。尤も、天使の数まで減らして頂けるとは予想外でしたが。勿論、炎華さんが悪魔討伐を引き受けて頂いたからこそ、私も魔力を温存できました。お二人とも、ありがとうございます。流石、我が(あるじ)が一目置いている魔女の卵達ですね」

 

「えっと……お褒めに預かり、光栄です」

 

「でも……一番すんごいのはステラさんじゃね?」

 

 暁虹学園側の和気藹々としたムードとは対照的に、異世界陣営は顔面蒼白、戦々恐々だった。

 

「くっ……私達だけでは勝てない。通信用の魔術道具で援軍を呼べ! 裏口側に配備した正教騎士達に連絡を取るのだ、早く!」

 

「隊長、誠に申し上げ難いのですが……裏口側の部隊もほぼ全滅したそうです」

 

 補佐役(サブリーダー)と思しき礼服の男が、通信用の魔術道具を手に、おずおずと前に出て来た。

 

「……は?」

 

「ゴーレム使いの少女と刀で戦う少女によって、壊滅状態との事です。唯一逃げ延びた魔術師組合の者から、先程連絡が届いたのですが……

 

 あ、通信が切れました……」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「ま、まだだ! 総員、攻撃魔法を放て! 我々の得意分野は召喚魔法だが、攻撃魔法も防御魔法も」

 

「どちらも使われては困りますね。暫く大人しくしてください」

 

 杖の宝珠を『氷結のルーン』に取り替えたステラが、

 

「『グレイシャル・ラビリンス』」

 

 廊下一帯を凍て付かせる程の氷魔法で、敵の魔法使い達を封じ込める。異邦の魔術師はほぼ全員が頭部まで氷に閉じ込められ、物言わぬオブジェクトと化した。

 

「さて、貴女が隊長さんでしたっけ? 早速ですが、聖さんの居場所を教えてください。それと、シスター14さんとラジエルさんの目的についても教えて頂きましょうか」

 

「私達を見くびるな、異世界人め。敵に渡す情報など持ち合わせてない。殺すなら殺せ」

 

 取り付く島もない物言いに、ステラは溜息をついた。

 

「分かりました。では、部下の皆さんと一緒に、暫く氷漬けになっていてください」

 

 再び発動した『氷結のルーン』により、隊長格の女性も白銀の檻に閉じ込められる。そして、もう1人。頭部までは凍っていない、ローブ姿の男性にステラは近付いた。

 

「ま、待て! 俺も情報は持ってないぞ!?」

 

「いえ、貴方については別件です。我が主にして師匠に対して、貴方は何と言ってましたっけ? 私の記憶が確かなら、『忌々しい妖精』と口にしてましたよね?」

 

「あ……」

 

 次の瞬間、腰の入ったフルスイングが魔術師の顔面に炸裂し、彼はそのまま夢の世界へ旅立った。

 

 ◆

 

「さて……少々お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございません」

 

「あ、大丈夫デス。あーしら、別にステラさんの事見苦しいとか全然思ってません」

 

 蒼蘭も首をコクコクと動かし、無言の肯定をした。

 

「直接聞くのが一番手っ取り早いと思ったのですが……仕方ありません。次なる手段を取りましょう」

 

「次の手、ですか?」

 

「はい、蒼蘭さん。こんな事も有ろうかと、用意していた魔術道具がありまして」

 

 そう言いながら、ステラが鞄から取り出したのは、L字型に折れ曲がった金属の棒だった。

 

「もしかして、『ダウジングマシーン』ですか?」

 

「その通り、ですが唯のダウジングマシーンではありません。この虫眼鏡で、よく見てくださいな」

 

 渡された虫眼鏡を使い、蒼蘭と炎華はダウジングマシーンを覗き込む。するとそこには、小さなルーン文字が刻まれていたのだ。

 

「これ、あーし見た事あるヤツだ。米粒に文字や絵を書く筆の達人、テレビでやってた」

 

「お米にルーン文字を刻む事は流石に出来ませんが、このルーン魔術を用いたダウジングマシーンは、手にした人間の探し物や探している人の方向を示してくれるのです」

 

「めちゃくちゃ便利じゃないですか!」

 

「ですが、探しものが複数存在する場合、位置の近い方から示す様になっています」

 

「複数……?」

 

「お忘れですか、蒼蘭さん。主様の『第二の助言』を」

 

「あっ……!」

 

 蒼蘭は思い出した。この家にある書物を用いて、『リリス』という名の人物について調べる事。それが、アゲハの大魔女が提示した二つ目の助言だ。

 

「聖さんの居場所も当然大事ですが、態々『助言』として口にした以上、その『リリス』という人物の調査も重要な筈です」

 

「でも、それだと……ひじりん、大丈夫かな……?」

 

 正直なところ、蒼蘭も同じ気持ちだ。一刻も早く、聖の元へ駆けつけたい気持ちが強い。しかし、自分達の危機を幾度も助けてくれた大魔女の助言を無碍にする事も出来ない。第一、その助言に従う事で、何らかの危険を回避できる可能性だってあるのだから。

 

「炎華、順番にこなして行こう。助言をくれたのが、他でもないマギナさんな訳だし。それに、いざって時に私達を助ける為に、別行動をするって言ってたじゃない。だから、大丈夫よ」

 

「セーラ……。分かった、順番にやってこ!」

 

「では、ダウジングを起動します」

 

 ルーンが刻まれた金属の棒は、階段の上を差し示した。シャンデリアが照らす豪奢な館の階段を、魔女達は急いで駆け上がっていった。




謎の教祖S.A.「そもそも本物の天使が偽物の天使に負ける筈がないじゃないの」

【ちょっとした補足】
沙織お姉ちゃんプレゼンツなシスター服も勿論強力ですが、それ抜きでも蒼蘭ちゃん自身、格段に強くなっています。炎華ちゃんも同様、異世界人絡みの事件を解決すべく、蒼蘭ちゃんと奔走している仲ですので。

次回の投稿ですが…未定です。5月中旬までには投稿するつもりですが、気長に待って頂けますと幸いです。

また、本作の感想や評価、ここすき、そして蒼の天使に対する礼賛の言葉などを頂けますと、今後の励みになります。是非、お気軽にお聞かせくださいませ。

……正直なところ、今の章は色々と攻めたお話なので、読者の皆様にどう映っているのか、非常に気になるところなのです。その為、賛否に関わらず、そして遠慮なく、話を読んで感じた事を是非是非感想や評価として記載頂きたいのです。どうか、よろしくお願いします。
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