グンジョウ・デルフィニウム・ブリリアント。
それが僕の名前だ。
リューネ国王、第14代国王である、ナズナ・エキザカム・ブリリアントと、シャルロット・マリアライト・ブリリアントの第二子に当たる。
そんな僕は今、頭を抱えていた。
「…なんで、お風呂に入ってきた10分かそこらで…君達はそこにいるんだよ…」
僕は現在、高等部一年生になったばかりだ。
幼等部から、双子の姉と共に寮で暮らしている。
長期休暇の度城に帰ってはいたが、大体はここで暮らしている…のだけど。
母親の友達の娘達…幼馴染と言っても過言ではない同い年の女の子が、何故か僕のベットを占領しているのだ。
いや、姉と一緒に暮らしているのだから、女子がこの部屋に入ってくる事は時々ある。
流石に僕の自室に入ってくる事はないが。
「なんで、シャナの部屋じゃないの…?」
隣の部屋が、姉であるシャナ・アジアンタム・ブリリアントの自室だ。
そこに彼女達がいるのは、まぁ、わからないでもない。
問題なのは、今が夜中に近い時間帯で、尚且つ王族であるが婚約者がいない僕の自室だという事だ。
「………」
僕はゆっくりドアを閉めて、隣の部屋のドアをノックする。
「ふぁーい…、何、どうしたの、グンジョウ?」
寝ぼけ眼を擦りながら、姉であるシャナがドアを開けてくれた。
僕は、姉の肩に両手を置いて頭を下げる。
「お願い、シャナ。僕、寝ぼけているかもしれないから、僕の部屋覗いてもらえない…?」
「お風呂上がりなのに何言ってるの? ちゃんと髪乾かさないと、風邪引くよ? まぁ、見るけど」
シャナは僕の部屋の扉を開け、暫し唖然とした後、ゆっくりと閉めた。
「なんで、ユエちゃんとユタカちゃんがいるの…?」
「それは僕が聞きたい」
母親の友達である、立花夏月。
その娘である、ユエとユタカ。
彼女らも双子だ。
そして僕は、彼女らから好意を寄せられている。
「アプローチの仕方、おかしいと思う。流石のあたしでもわかる」
「あー…やっぱり、そう…?」
シャナが大きく頷いた。
初めて会った5歳の頃から、彼女達から僕のお嫁さんになるのが夢だと、聞かされていた。
だから、カヅキおばさんがこちらに移住するという話の時に、彼女達もおばさんについてきたのだ。
「…シャナのとこで、寝ちゃ駄目かな…」
「別に良いけど、二人とも絶対騒ぐよね。うーん…おばさん、起きてると良いんだけど。グンジョウ、おばさんに連絡して。あたしが二人見とくから」
そう言って、シャナは僕の部屋に入っていく。
僕は部屋に備え付けの電話で、おばさんの部屋にコールをかけた。
おばさんはここの学校の教師をしている。
僕らが12歳の時に、僕達の世界とおばさん達の世界がくっつくという騒動が起こった。
その際、こちらの世界ではリューネ国王妃である母様が、あちらの世界ではカヅキおばさんが、世界が衝突して崩壊するのを防いだらしい。
今ではそれを、統合騒乱と呼んでいる。
前の地図を大きく書き換える事態にもなった。
小国だったリューネだけが無事で、他の国が消滅していたのだ。
そして国が消滅した後地面が隆起したのか、リューネは小国から大国へと変化した、と学園で教わった。
『誰だ、こんな夜中に』
少し不機嫌そうな女性の声が聞こえる。
おばさんの屋敷は王都の中にもあるけれど、この学園都市の中にも家を構えていた。
そこへ僕はコールしたのだ。
「夜分遅く申し訳ありません。グンジョウです、立花先生」
『グンジョウか、どうした? お前がこんな時間にかけてくるなど珍しい』
えぇ、僕だってかけたくてかけたわけじゃありませんよ。
そう言いかけて止める。
おばさんに喧嘩を売ってどうするのだ。
ただでさえ寝不足気味だからと、その寝不足も自業自得なのだが…だからと言って人に当たり散らすなど愚の骨頂も甚だしい。
「あの、ユエとユタカがこっちに来てるんですけど、回収お願いできないでしょうか?」
『何…? お前を疑うわけではないが、少し確認させて欲しい。少し保留をかけるぞ』
そう言って、何かの音楽が受話器から流れ始める。
単調なメロディに、意識が遠退きそうになるのを我慢する事、数分。
『すまん、今からそちらに行く』
そう言って通話が切れた。
途端、僕の影が文字通り膨れ上がり、破裂したかと思えばそこからカヅキおばさんが現れる。
「こんばんは、カヅキおばさん」
「こんばんは、グンジョウ。うちの馬鹿娘共はどこだ」
語気に若干の怒りをはらんだ声で、問いかけてきた。
僕は自分の自室を指差す。
僕としては早く寝たい所なのだが、今は壁に寄りかかるだけで精一杯だ。
指を差した僕の自室に、カヅキおばさんは突入する。
シャナの明るい声と、ユエ、ユタカの悲鳴じみた声が聞こえ、僕はため息をついて体を壁から離した。
部屋の中を覗き込むと、おばさんが得意としている影魔法で二人が縛られ、持ち上げられているのが視界に入る。
「お前ら、今日という今日は許さん。本国送りにしてやる…!」