my way of life   作:桜舞

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10話『黒歴史』

「我が主の子供達だ、貴様らを悪いようはせぬ。まぁ、せいぜい役に立てるよう精進する事だな」

 

カカカ、と笑いながらレヴィは母様の後を追って行った。

その後ろ姿を見送って、僕は目の前のマモンに振り返る。

 

「じゃあ、主従契約を…」

〔格好いい名でなければ、認めぬ〕

 

フイッと首を横に向けられてしまった。

シャナの方を見れば、ルシファーだからルシィだと安直な名前を付けている。

それで良いのか、とも思ったが、レヴィやルティの名前の理由を母様に聞いた事があり、あぁ血筋か、なんて納得した。

 

あんなので良いなら、僕も悩まなくて済むんだけど。

実は、僕のネーミングセンスは壊滅的なのだ。

子供の頃の黒歴史は思い出したくもない。

 

マモンの前に座り、僕は頭を捻る。

流石に思いついた名前は何個かあるけれど、判定役のシャナがあの調子なので、呼ぶのも憚れた。

 

ツェリに話すのは…少し恥ずかしい。

僕の黒歴史を知るのは、兄弟姉妹だけで良い。

あぁ、あとユエとユタカも知ってたっけ…。

 

〔早く決めてくれぬか。退屈で仕方ない〕

 

耳の裏を後ろ足で搔き、マモンは欠伸をする。

七罪の悪魔、マモンは確か強欲の悪魔だった気がして僕は彼に尋ねた。

 

「君、強欲の悪魔だよね? 確か」

〔だからなんだ。我は貴様みたいな下等な生物に使役される存在ではないというに〕

 

何を当たり前な、みたいなニュアンスで尻尾を地面に叩きつけ、マモンは怒りを露わにしている。

それが確認出来ただけでも良しとしよう。

 

僕は立ち上がり、カヅキおばさんと話している母様の所へ行く。

 

「母様、何か良い案ない?」

〔困った時は母親頼りか…マザコンか貴様〕

 

とりあえず無視。

あと、僕はマザコンではない。

母様にべったりなんて、気持ち悪いだけでしょ。

信頼しているし、尊敬出来る存在なだけだ。

母親として愛情を注いでもらっているのが、僕もシャナもわかっているからこそ、同じだけ返せているかはわからないけれど…母様の事が大好きなだけだ。

それをマザコンと言われたら…まぁ、それまでなんだけど。

 

「自分で考えなさい、って言いたい所なんだけれど…」

 

母様が苦笑する。

僕のネーミングセンスが壊滅的なのは、母様も知る所だ。

だからこそ、母様に頼る。

 

「グンジョウ、変な名前ばっかつけるもんね」

 

使い魔との戯れが終わったのか、ルシィを還したシャナが母様に抱きついた。

そんな姉の頭を、母様は仕方ないと笑いながら撫でている。

 

〔そんなに酷いのか…?〕

 

マモンが、恐る恐るといった風に聞いてきた。

姉は大きく頷く。

 

「君、母様に名前つけてもらった方がいいよ。グンジョウは昔から、変な名前しか思いつかないんだから」

〔た、例えば?〕

 

母様は空中を見上げ、知識を総動員しているようで少し上の空だ。

そんな母様を手伝ってくれても良いだろうに、カヅキおばさんは無視を決め込んでいる。

 

「えーと…確か、食器棚にシャンティーニャ、城の名前をギルガメッツファンタスティックに変えた方がいい、って言ってたっけ? リヒト城って名前がちゃんとついてるのに」

「うわぁぁぁぁぁぁあっ!!!?」

 

思わずシャナを母様から引き剥がし、その口を塞ぐ。

モゴモゴと、僕の腕の中で暴れる姉に苦情を言った。

 

「そんな大声で言わないでくれない?! それにそれ、何歳の時の話だよ!! かなり小さい時だろう?!」

「ぷはっ! それでも六年前でしょう?」

 

非難めいた目を向けられるが、僕の黒歴史を暴露したんだから、これぐらいどうという事はないだろう。

 

〔まぁ…将来子供が生まれた時は、妻に付けてもらうと良いのではないか?〕

 

マモンが憐れみの目で僕を見る。

使い魔にまで憐れまれる僕って…。

 

シャナを後ろから軽く抱きしめ、ため息をつきつつ姉の肩に頭を乗せる。

そんな僕の頭を、シャナは慰めるように撫でてくれた。

原因、シャナなんだけど。

 

「強欲なら、グリードってどうかしら。レヴィもレヴィアタンから取ったし」

「良いではないか、強欲の。グンジョウに付けてもらうよりは、遥かにマシであろう?」

 

有無を言わせぬ、と言った感じで、レヴィはマモンを見ている。

彼は仕方ない、といった感じで尻尾を振った。

その後は何事もなく、魔武器と使い魔の召喚の授業は終わったのだった。

 

◆◆◆

 

さらに数日後、僕とシャナは城に呼び出されていた。

どうやら、ユエとユタカの再教育が終わったらしい、との事で僕に判断してほしいそうだ。

 

謁見室に入ると玉座に父様、その隣に母様が立っていた。

僕とシャナは玉座へ登るための階段に数段登り、入口の方を向く。

 

暫くして、カヅキおばさんとその後ろ、ユエとユタカが大人しく入ってきた。

いつもなら、僕の姿を認めた瞬間目を輝かせていた二人が、大人しい事に違和感を覚える。

 

いや、これが普通なんだ僕。

異常に慣れすぎていただけだって。

 

軽く頭を振って、雑念を追い出した。

玉座の下方、階段の数歩手前でカヅキおばさんは止まり、僕らに跪いて臣下の礼を取る。

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