my way of life   作:桜舞

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101話『あたし達の可愛い子』

前は、彼女の気持ちを確かめる為に死ぬと偽った時。

そして、絶対今回も僕が悪い。

 

「しっかりしてよ、アオ!! あんなの、姿似せてるだけでしょう?!」

「わかってる…わかってるけど…」

 

わかってない、とユエは叫ぶ。

 

あぁ、やっぱり前世なんて思い出さない方が良かったのかもしれない。

目の前の彼女を傷つけるなんて、最低じゃないか。

別人として、考えればいいものを。

 

「ごめん、ユエ…」

「………」

 

僕の謝罪をどう思ったのか、ユエは無言で吹っ飛ばした僕の眼鏡を拾いに行き、渡してくる。

途中で壊されるかと思っていたが、それはしなかったようだ。

ありがたく眼鏡を受け取りかける。

 

目の前にはユエではなく、黒髪の、僕が知る雪那がいた。

 

「…は?」

 

訳がわからなくて、僕は間抜けな声を出してしまう。

 

「幻術、私も使えるんだよ? ねぇ、夕陽君。あっちの私とこっちの私、どっちが本物でしょうか?」

 

ニコリと、あの頃と同じ笑顔で、彼女はそう聞いてくる。

僕の目からは、涙が一筋零れ落ちた。

 

「ゆ、じゃなかった! アオ?!」

 

雪那の姿のまま狼狽え出すユエを見て、僕は涙を流し続ける。

 

「…君に決まってるだろ…僕の…俺の、雪那は…お前だけだ…っ!」

 

夕陽の頃の気持ちが止まらない。

彼女を掻き抱き、咽び泣く。

僕が落ち着くまで、彼女は背中をポンポンと軽く叩いて宥めてくれていた。

 

次の授業開始のチャイムが鳴ったが、僕は彼女を離せず、しがみつく事しか出来ない。

離れたくないし、離したくないと思ってしまう。

 

「アオ? 大丈夫?」

 

ユエが戸惑ったような声で僕の名前を呼ぶが、返答の代わりに彼女を抱きしめる腕に力を込めた。

 

こんな情けない姿、カヅキおばさんが見たら怒るんだろうなぁ。

何自分の娘に縋り付いているんだ、馬鹿者がって。

 

そう思った瞬間、感じた覚えのある魔力が僕を包み、僕だけ転移させられた。

芝生に転がされた僕はユエの姿を探すが、彼女が遠くに見え、離された事を知る。

 

「ママ?!」

 

ユエが驚いてカヅキおばさんの事を呼ぶが、なるほどと納得した。

桃華の仕業かと思ったら、おばさんだったとは。

危険性がないなら良いけど、ユエが傍にいない。

 

僕は焦りや寂しさ、悲しさや彼女に対する愛しさ、全ての感情がないまぜになりながら起き上がる。

 

思考が纏まらない。

雪那が、ユエがいないと僕は。

 

「本当親子揃って手間のかかる…」

 

ユエが走ってくる。

僕は彼女に手を伸ばすがそれより先に、おばさんに顔を押さえつけられた。

 

「寝てろ」

「ママぁっ!!」

 

カヅキおばさんの声と、ユエの悲痛な声を最後に、僕の意識は暗転した。

 

◆◆◆

 

次に目を覚ましたら、寮の自室のベッドの上だった。

ぼんやりとした視界に、眼鏡を外しているのだとわかる。

起き上がった僕は、妙に思考がスッキリしている事に気付いた。

 

「…何かされたな、これ」

 

精神的に不安定になりやすい僕を見兼ねたのか、それとも自分の娘に対して不安がらせるとは何事だという、叱責のつもりなのか。

多分前者だろうけど。

 

いつも置いてある所に眼鏡がなく、そして部屋が暗い事から、あれから半日が経っているのかもしれなかった。

 

「…眼鏡どこ?」

 

気配を頼りに立ち上がり、自室のドアノブを手探りで見つけて、ドアを開ける。

途端誰かにぶつかった。

 

隣のリビングも暗いので、シャナは部屋にいるのだろう。

寝てるかどうかは知らないけど。

じゃあ、ぶつかった人は誰だと思って目線を下げれば、暗闇でもわかる蒼色。

少し甘い匂いは、父様から贈られたという香水の匂い。 

 

「なんでここにいるの、母様。父様が拗ねるんじゃないの? というか、いるなら明かりくらい付けたら?」

「グンジョウ…心配してきた母親に、なんて言い草なの。全く、この子は…」

 

ペチリと頭を軽く叩かれる。

そして、言われた。

 

「あまり、カヅキの手を煩わさないであげてちょうだい」

「今現在煩わせてる母様が、それ言う?」

 

反射的に言った瞬間、僕は頭を殴られる。

 

かなり痛いのに、これで手加減をしているというのだから、本当に怖い。

母様が本気を出したら、僕の頭などすぐ陥没するだろう。

 

それで、親だからと口答えする僕も中々肝が座っている。

怖いもの知らずかよ、と自分で自分にツッコミを入れてしまう。

 

「心配してくれるのはありがたいんだけど、カヅキおばさんが何かしてくれたみたいなんだ。今すごい思考がクリアになってる。視界はあれだけど」

 

本当に、眼鏡はどこに行ってしまったのか。

こう暗いと、部屋のスイッチを探すのも一苦労なのだが。

 

「…眼鏡の事はユエちゃんに言いなさい」

「携帯どこ…」

 

母様はため息をついて僕の自室に入り、少ししてから僕の手に携帯を握らせてくる。

そして頭を撫でられた。

 

「頑張りなさい、グンジョウ。貴方は責任感の強い子だけれど、無茶はしちゃ駄目よ? 貴方は、王太子である以前に、あたし達の可愛い子なのだから」

「…うん、わかってるよ母様」

 

母様の気配が消える。

頭を撫でられる感触も消えた。

どうやら城に帰ったらしい。

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