my way of life   作:桜舞

102 / 408
102話『当たり前だよね』

僕は携帯を開き、目を近づけて通話履歴からユエの名前を見つけたが、同時に今の時刻を知る。

 

「午前1時…やっぱり半日経ってるじゃん」

 

この時間にユエへ電話をかけるなど、彼女に迷惑でしかない。

僕は諦めて自室に逆戻りする。

 

が。

ベッドの上の気配に、僕は驚いて固まってしまった。

 

「…ユエ? なんでいるの?」

 

暗くてよく見えないが、僕のベッドに腰掛けたユエがいる。

彼女はこちらを見て、少し拗ねているような気配がした。

 

「王妃様の魔力を感知したから。アオ、そのままの状態で登校できるの?」

 

遅くても良いから、連絡して欲しいと思っているようだった。

いやそれ、君だから良いって話でもないんだけど。

こんな夜中に電話かけるなんて、迷惑以外なんでもないと思うんだよなぁ。

 

「シャナにお願いすれば、君に会うまでは誘導してもらえると思ってたんだけど。ユエ? 今午前1時なんだけど、男の部屋に来るのどういう意味か分かっててやってる? ユーリおじさんに怒られるよ?」

 

怒られるならマシな方で、ユエをここに留まらせたと、彼女の両親から説教受けるのは僕だと思うのだが。

それはユエもわかっているようで、彼女は肩を竦めた後、何かを投げて寄越してくる。

それを気配で受け止めると、眼鏡ケースだった。

 

開けてみると僕の眼鏡が入っていて、それをかける。

暗闇だけどユエの顔はちゃんとわかって、彼女はやはり少しムッとしていた。

 

「ユエ…」

「わかってますー。もう帰るよ」

 

プイッ、と顔を横に背けてしまった彼女に、僕は苦笑する。

そして彼女に近付き、肩に手をかけて押し倒した。

僕にそうされると思ってなかったユエは、驚いた顔で僕を見上げている。

 

「アオ…?」

「心配かけさせてごめん。あの後何があったか、僕には分からないけど。君と雪那は、別の人間だってもう納得してるから。ユエ、こんな情けない僕を、まだ愛してくれる?」

 

問いかけると、目を丸くして驚いていたユエが、ふっと笑った。

 

「当たり前だよ、アオ。逆に聞くけど、こんな気の強い私を、貴方はこれからも愛してくれる?」

「それこそ、当たり前だよね」

 

顔を近付け、彼女にキスを落とす。

唇を離した後、僕らは笑い合った。

 

「また明日、アオ」

「うん、また明日。おやすみ、ユエ。愛してるよ」

 

彼女はニコリと笑った後、転移していく。

ユエがいなくなったベッドに寝転がり、彼女の温もりを感じながら、僕は眠りに落ちた。

 

◆◆◆

 

朝起きて、シャナに朝の挨拶をした後、姉から僕があの後どうなったのか聞かされた。

 

ユエから離れられなかった僕を引き離し、おばさんは僕に催眠をかけたらしい。

ユエと雪那を混同している事、雪那が死んだ時のトラウマ、全てに心を動かされないようにと。

 

僕をここに運んだのもシャナで、後日何か奢るように言われた。

それは勿論させていただく所存なので、僕は姉に頭を下げる。

 

ちゃんと僕が眠っている間のノートも取ってくれていたようで、あとで書き写させてもらおうと思った。

 

「グンジョウがどれだけ辛い事を思い出したのか、あたしには分からないけどさ。たまにはお姉ちゃんに寄りかかってもいいからね。姉弟なんだから、彼女に言いづらい事も、お姉ちゃんになら言えるでしょ?」

「…シャナには、凄い頼らせてもらってるよ。僕の姉君がシャナで良かったと、本気で思ってる。ありがとう」

 

シャナ手製の朝ご飯を食べつつ、感謝を述べる。

僕の言葉を聞いてシャナが、ニコッと笑った。

 

いつも通りの朝。

違ったのは登校した時。

他のパーティメンバーと合流して、シンクに昨日の事について茶々を入れられ、歩いている最中。

 

目の前、ツェリと雪那に化けた桃華が歩いていて、僕は目を細めた。

 

「アオ…」

「大丈夫」

 

僕を心配そうに見てくるユエに微笑む。

桃華が僕に気付いたようで、振り向き様に微笑んできたので、僕も侮蔑を込めた笑みを返した。

 

僕の動揺をまた引き出せなかった事に驚いたのか、桃華は目を見開き、そして悔しそうに顔を歪めた。

それに対して、僕はユエの目の前にも関わらず舌打ちをする。

桃華を見てもう動揺はしないが、雪那の顔でそんな顔をするなんて。

 

「ここが学園内じゃなきゃ、すぐに殺してるのに…次会ったら絶対殺す…!」

「グンジョウ。ユエの方が動揺してるから、ちょっと落ち着け」

 

僕の背を軽く叩き、シンクが困ったように笑っていた。

言われてユエの方を見ると、僕を見上げながら不安そうな顔をしている。

 

「…えーと…なんかごめん。思い出の中の雪那は、あんな顔してなかったから…こう、汚されたような気になって…」

「夕陽君の前ではしてなかっただけで、模試とか順位落としたとかで、あんな顔してたと思うよ私。良かった、ママの催眠外れたのかと思った…」

 

そう簡単に外れないと思うんだけど。

 

ホッとしているユエの頭を撫でながら、春の陽気の中僕らは歩く。

僕だけ、目の前の桃華に殺気を飛ばしてはいたが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。