my way of life   作:桜舞

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103話『火傷しない程度のチョコ』

ノーム2の月。

母様達の時代にはなかったゴールデンウィークというものを使って、僕らはテスタロッサ領へ向かっていた。

 

ルカさんが作った魔王の遺物の反応が、テスタロッサ領から出たらしい。

それを確かめる為に、僕らが調査に向かう事になったのだ。

 

リムジンにいつものパーティが乗り込んで暫く経った頃。

シンクがユタカの肩に頭を乗せ、ぐったりし始めた。

 

「シンク? 車酔いした?」

「あんま揺れてねーのに…車酔いなんか…するかよ…戦術書…遅くまで読んでて…眠…」

 

シンクの向かいに座ってたシャナの問いかけに、そう言いつつ弟は寝落ちする。

ユタカは仕方ないなと笑いながら、彼に膝枕をしてあげていた。

少し幅をとる事になったので、ユタカの隣に座っていたユエが、僕の隣に移動してくる。

 

「羨ましいならしようか?」

 

小声で僕に耳打ちしてくるユエに、僕は苦笑いを返す。

流石に背が180を越している僕まで横になってしまったら、シャナ達の迷惑になるだろう。

 

「というか、お祖父様には許可取ってるんだよね?」

「一応、事情は母様の方からしてある、って聞いてはいるけど」

 

でなければ、お祖母様の叱責が飛んでくるだろう。

マナーや礼儀に厳しいお祖母様を怒らせるような事、母様がするはずないし。

事前にアポは取ってくれているはずだ。

 

「シンクが増えたって事は?」

「知ってるって。あの時の子ですか、ってお祖母様から言われて、覚えてたんだって母様笑いながら話してたけど…何の事だろうね?」

 

僕らが生まれる前に何かあったのだろうが、シンクに会う事態ってどういう事?

 

少し首を捻るが、考えた所で答えなんて出るわけもなく。

そのうち、シャナが持ってきていたお菓子やらなんやらを取り出し、リムジンに設置されている机の上に広げ始めた。

若干甘ったるい匂いがして、少し気分が悪くなる。

 

「アオ、大丈夫?」

「吐くほどじゃないから大丈夫…。僕の事は気にせず、食べなよユエ」

 

彼女の頭を撫でると、フルフルと首を横に振られた。

シャナに許可を取り、ユエは少し窓を開ける。

甘ったるい匂いが軽減されて、僕は少しホッと胸を撫でおろした。

 

「ごめん、グンジョウ。甘いの少ししかなかったから平気だと思ってた…」

「いや、こっちこそごめん。密閉空間なの、忘れてた。事前に窓開けとけば良かったね。気を遣わせてごめん、シャナ」

 

姉に謝ると、苦笑いが返ってくる。

ツルギが不思議そうに、僕を見ながら尋ねてきた。

 

「あの、殿下は…なんでそんなに…甘いものが、苦手なんですか?」

「あー…」

 

僕は目を逸らし、ユエとユタカが苦笑する。

僕らの様子に首を傾げるツルギだったが、シャナが放った言葉に固まった。

 

「あたしが小さい頃…グンジョウに、試食と称してチョコとか甘いものを大量に食べさせて…吐かれたものだから頭に来て…火傷しない程度のチョコを頭から被せたから…かな…」

 

香辛料事件から少ししてからだっけ、それ。

あれ以来、本当に甘いものダメになって、ユエとユタカからのチョコも受け付けなくなったんだよなぁ。

流石に苦手なものがあるの、自分で自分を許せなくて、何とかした結果がビターなチョコなら食べられる、だった。

 

「姫…」

 

ツルギが少し、呆れた目をシャナに向ける。

姉は頭を抱えて蹲った。

 

「わかってるよぉ…! あたしが悪いのはわかってるよぉ…っ!!」

「シャナちゃん、ほんっ…とうに、余計な事しかしないよね」

 

ユエの笑顔が若干怒りを帯びている気がして、僕はまぁまぁ、と彼女を宥める。

 

「……うるせぇ」

 

寝ていたはずのシンクがそう呟き、ユタカの腰に腕を回して抱きついた。

その行動にユタカ自身が慌て始め、声には出さなかったが、表情が恥ずかしいと物語っている。

そんな事は気にも止めず、シンクはまた寝始めた。

 

「……なんか既視感…」

「ユエちゃん、グンジョウの事言ってるなら…うん。血筋だと思ってね。父様もこんな感じだし」

 

家族のそんな話しないほうがいいと思うけど。

後で母様に叱られるの、僕じゃなくてシャナだから別に良いけどさ。

あと察しいいな、ちくしょう。

 

僕は窓の外を見る。

景色が流れていく中、見覚えのある街が見えてきた。

テスタロッサ領の中心、僕らの祖父であるベルファ・ジェイド・テスタロッサが治めている街だ。

 

あと10分くらいかな。

シャナ達に片付けるよう言わないと。

あとシンク起こさなきゃな。

 

そう思った僕は姉に声をかけ、ユタカにもシンクを起こすよう伝える。

ギリギリまで寝かせてあげたいと返答されたので、弟の事はユタカに任せる事にした。

 

◆◆◆

 

街をぐるりと囲むような高い塀と、その入り口である門がある。

そこを通り、リムジンでテスタロッサ邸に向かった。

 

「街の方は見てなかったけど、結構活気があるんだね」

 

ユエが街並みを見ながら、目を輝かせている。

彼女がテスタロッサに来たのは、おばさんに連れて来られ、淑女教育を施された時だ。

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