「そっか。ごめんね、話が終わったら僕らも加わるから」
「大丈夫。久し振りに会ったんでしょう? ゆっくりでも構わないからね」
ニコ、と微笑むユエの手を握る。
気遣いが出来る僕の彼女可愛い!
ここが城の中なら、抱きしめてキスしてるのに!!
「アオ、顔に出てる」
「…ごめん」
僕の心情が表情に出ていたのだろう。
ユエが呆れた目を向けてくる。
彼女と離れて少ししか経っていないのに、久し振りに会ったような感覚に陥ったから、気が高ぶってしまった。
握っていた手をユエに引っ張られ、身を屈めると頬にキスをされる。
驚いて目を丸くする僕に、彼女が小声で
「これくらいで我慢してね」
というものだから、抱きしめたくなる衝動に駆られた。
彼女の肩に頭を乗せ、ため息をつく。
「グンジョウ、いい加減に戻ってきなさい。ユエちゃん、苦労かけるけど弟見捨てないでやってね」
「見捨てるわけないじゃん。それに、アオにかけられる苦労なら、どんと来いだよ」
かけるつもり全くないんだけど、その意気込みはありがたい。
僕の彼女可愛いし愛らしいし、気遣いも出来てこんな覚悟あるなんて…僕恵まれすぎじゃない?
「はいはい、戻るよ。デカい図体してるんだから、あんまりユエちゃんに寄りかかると、ユエちゃんが潰れちゃうでしょ。ごめんね、捜索お願いね?」
「シャナちゃんが、ちゃんとお姉さんしてる…。うん、わかってるよ。じゃあ、また」
僕から手を離し、ユエは手を振った後、駆けていく。
その後ろ姿を名残惜しげに見ていたのだが、シャナに腕を掴まれ部屋の中に引き戻された。
「ユエちゃんが大好きなのはわかるんだけど、今はお仕事中なの忘れないでよ?」
「わかってる…」
こういう時の姉に対してイラっとしないのは、大体正論をシャナの方が言っているからである。
寧ろ苛立たせているのは、僕の方ではないかとも思ってしまう。
「おにーさま羨ましー」
「…ごめん」
ソファーに座りながら言ってくるシンクに、僕は謝る。
僕もソファーに座ると、両側から頭を撫でられた。
別に落ち込んでるつもりないんだけど。
あと、そうされると僕が末っ子な気がしてくるからやめてほしい。
気遣ってくれるのはありがたいけれども。
「お待たせしました。一応、これで全てですね」
大量の書物を浮かせながら、お祖父様が地下図書館から戻ってくる。
応接机の上にそれらを乗せ、向かい側のソファーにお祖父様は座った。
「ありがとうございます。後程、地下図書館の方も捜索したいと思いますが、宜しいでしょうか?」
「勿論構いませんよ。先程の動作は見て覚えましたね、グンジョウ? 一週間という短い期間ではありますが、存分に探すといいでしょう。見つからない場合でも、うちの使用人達に探させますので、ご心配なく」
それはありがたいけど、僕ら以外が触って大丈夫なんだろうか?
ルカさんの調査によると、僕ら王族の血と魔王の遺物は相性がすこぶる悪いらしい。
取り憑こうとしても、血が反発して王族には取り憑けないんだとか。
僕は一番上にあった書物を手に取り、ページを捲る。
両側からシャナとシンクも覗き込んできたので、少し見辛く感じた。
「二人とも、覗くなら後ろからにしてくれない? 見えない」
「ごめん」
「悪い」
二人は立ち上がり僕の後ろに回ったようなので、僕はページを何回か捲る。
そしてある一節に、捲る手が止まった。
「この記述って…」
「今までの魔王の遺物の一覧じゃねぇか。うっわ、えっぐ。こんなにもあるのかよ」
シャナが驚き、シンクが嫌そうな声をあげる。
判明した異物は、
魔玉・魔剣・魔弓・魔爪・魔刀・魔棍・魔杖
魔槍・魔斧・魔眼・魔符・魔手・魔銃・魔重盾
魔扇・魔足・魔本・魔鎧・魔兜・魔の指輪
魔のチョーカー・魔のピアス・魔の腕輪
魔のアンクレット
以上、24個。
魔玉は昔、母様達が破壊したと言っていた。
魔剣も、この間僕達が破壊している。
「魔槍は…敵の手に渡ってるよね…」
「母様が傷を負った原因がそれなら…そうだね…」
残り21個。
魔王との争奪戦ではないが、相手方に取られる数が多ければ、こちらに不利となるかもしれない。
「シャルが遅れを取ったのですか? あのシャルが?」
「あぁ、はい。ご存知なかったのですか、お祖父様?」
全く知らなかったと、驚いたお祖父様は首を振った。
これまずい事言ったかな。
母様、もしかしたら隠したかったんじゃないだろうか。
お祖母様の耳に入ったら、とんでも無い事になりそうだ。
「あの、お祖父様。お祖母様には内密にお願いします。流石に、お祖母様が突然来たら、母様が驚くと思うので…」
「そうですね。ターニャの行動理念はシャルが第一ですから。あと、立花卿が叱責されるでしょうねぇ。おおよそ推測は立てられますが、その時シャルは一人だったのではないでしょうか? 立花卿が傍にあれば、シャルに傷一つつける事など叶わないでしょう。お嬢様を一人にするとは何事ですか、とかターニャ言いそうじゃないですか?」