my way of life   作:桜舞

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107話『まさか貴族とか仰るんですか』

言いそうだし、誰が言ったかなんてすぐにバレて、絶対に僕がカヅキおばさんに怒られる。

 

父様の失言癖、移ったかなぁ…。

 

少し肩を落とすと、シンクとシャナがドンマイと僕の肩を軽く叩いてきた。

 

「あ、そういえば…立花卿からだと、娘のユエから預かりました」

 

先程、ユエから渡されたケースに入ったディスクを思い出し、お祖父様に渡す。

受け取ったお祖父様は目を細め、何か考えているようだった。

 

「お祖父様?」

「…グンジョウ。シャルが倒した魔王の事は聞いていますか?」

 

僕はその問いに頷く。

シャナが俯いたのが分かったが、僕の位置からはどうする事も出来ない。

 

「シャルが魔王を討伐した後、当時殿下だった陛下の命を受けて、私達テスタロッサ家が魔王の居城を調べました。陛下とは懇意にさせてもらっていましたから、信頼して任せてくれたのでしょう。この書物の事も、陛下にはお伝えしてありましたから。それで調べた結果…何もありませんでした。魔王の塵一つ、遺物一つね」

 

そんな事があるのだろうか。

塵とかは知らないが、遺物が残されないなんて事、あり得ないはずだ。

今まで魔王が倒された後、その場に残されていたはずなのだから。

 

お祖父様はため息をつき、革張りのソファーに身を沈め、ポツリと呟くように言った。

 

「調査をしたのは、シャルが魔王を討伐した直後ではなく、数日後の事でした。安全確認が出来るまで、ギルドから立ち入りを禁止されていたのです」

「ギルドが持ち去ったという可能性は?」

 

僕が尋ねると、お祖父様は首をフルフルと横に振る。

 

「その可能性も考え、ターニャ他精鋭をその場に残しておきました。ギルド員に怪しい動きはなく、むしろ魔物討伐を早く終わらせようと躍起になっていたそうですよ。その後、調査はターニャ達に任せましたが、さっき言った通り遺物一つ見つからなかったそうです」

「……夜間は何をしていたんですか、お祖母様方やギルドの連中は」

 

シンクが尋ねたので、僕は彼の方に顔を向けた。

そしてその問いに合点がいって、まさかと僕はお祖父様の方に顔を戻す。

 

「人間誰しも、無限に活動できるわけではありません。ギルドや我々も交代で夜間も動いてはいましたが、闇夜です。誰が暗躍していたか、把握できていない部分もあります。ですが、一つだけ目撃情報がありましてね。身なりの良い者が、あの場を彷徨いていたそうです。夜目が良い者ではなかったので、誰だか把握は出来なかったと、報告を受けました」

「…身なりがいい…まさか貴族とか仰るんですか、お祖父様?」

 

僕の問いに、お祖父様は苦笑した。

何も返してこないが、それだけでわかる。

 

戦場に、身なりのいい服で来る貴族。

下流や中流では、絶対にない。

 

魔王が出現しているという情報は、リューネ国内全土に広まっていたはずだから。

下流や中流貴族では、自分の身を守る者を雇う金はないだろう。

金を積まれた所で、誰がその場に行きたいと言うのだろうか。

 

大金を積みに積んで、その場に行けるとしたら…21貴族のみ。

お祖父様もそれへ考えが至ったからこそ、返答しなかったのだろう。

 

「お祖父様は、誰が魔王の遺物を持っていったと推測していますか?」

「さて? 憶測で物事は語りたくありませんね。まぁ、長年の因縁で言えばテレジアですが。流石に、こんな馬鹿な事はしないでしょう。これで本当に魔王の遺物を奪取していたのだとしたら…国家反逆罪で、一族郎党皆殺しは確定でしょうね。おぉ、怖い怖い。そんな無謀な事、私には出来ませんね」

 

シャルにも迷惑がかかりますし、なんてお祖父様は言う。

お祖母様もだが、お祖父様も母様を大事に想ってくれているらしい。

その子供である、僕らの事も。

 

「…21貴族の家、家宅捜索した方がいいって父様に進言した方が良いと思う? シャナ」

「え、あ…うん。そうだね。そうした方がいいかも」

 

シャナの方に顔を向けると、少しボーッとしていたようで、僕への返答が少し遅れる。

 

「シャナ?」

「大丈夫。この後捜索しないといけないじゃない? ツルギ君達に任せっぱなしには、出来ないでしょ?」

 

確かに。

ルカさん手製の対魔王特化型アミュレットを身に付けているとはいえ、その効果は絶対とは言えない。

ユエやユタカ、ツルギが僕ら以上に危ないのは分かりきっている。

 

「お祖父様、大変申し訳ありませんが…」

「えぇ、わかっています。さて、私も喉が乾いたので、ターニャにお茶を淹れて貰うとしましょうかね」

 

よっこいしょ、とお祖父様は立ち上がった。

僕も立ち上がり、お祖父様に頭を下げて僕ら三人は執務室を辞する。

 

◆◆◆

 

精査をするため、僕にあてがわれた部屋へお祖父様が持ってきてくれた書物を運び込み、シャナとシンクも捜索に参加する。

僕も参加しようとしたのだが、二人にそれを熟読して考察しておけと言われてしまい、大人しく部屋に篭る事にした。

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