ユエとユタカもそれに倣い、カヅキおばさんと同じく跪き頭を垂れた。
「よく来た、立花卿。先日はお前の娘達が、我が息子に迷惑をかけたと、我が妃から聞き及んでいるが」
僕らしかいないが、一応公式の場という扱いなので、カヅキおばさんも傍若無人さを潜めて父様に挨拶する。
「陛下、王妃殿下、王子殿下、姫殿下におかれましては、ご機嫌麗しく存じます。我が娘達の不徳の致す所、大変申し訳なく思っております。テスタロッサ夫人の元で再教育を施して頂きましたが、陛下達のご不興を買ったのも事実。如何様にも、罰して下さいませ」
父様が僕を見た。
お前が迷惑を被ったのだから、お前が判断しろ、という事らしい。
僕は少し深呼吸をして、カヅキおばさんに話しかける。
「立花卿、陛下に代わり王子であり次期王である私が判断致します。私は普段の彼女達を知っています。ならば、テスタロッサ夫人の元でどれくらい成長したか見、変わりないようなら処罰を下します。それで宜しいでしょうか、陛下?」
父様の方を見上げると、頷きが返ってきた。
僕は父様に頭を下げ、二人を見る。
カヅキおばさんに促され、二人が前に出てきた。
「陛下、王妃殿下、王子殿下、姫殿下にご挨拶申し上げます。
「陛下、王妃殿下、王子殿下、姫殿下にご挨拶申し上げます。立花夏月の娘、第二子である立花
そう言い、二人はカーテシーをしながら深く頭を下げる。
その態度にもだが、所作が綺麗になっている事に僕は驚いた。
流石お祖母様、どれくらい二人に厳しい教育を施したのか。
僕が声をかけるまで二人はそのままなので、少し考えるフリをして、二人を眺める。
ちょっと教育を受けた令嬢だとカーテシーをしている最中、軸がブレて体が揺れてしまう事が常だが、二人にはそれがない。
スカートを摘んでいる腕の角度も綺麗だ。
僕は父様を見上げ、言う。
「二人とも成長したようです。私への不敬は不問としても良いでしょう。陛下、宜しいですね?」
「お前の判断に任せる」
ありがとうございます、と頭を下げた。
そこでふと、僕は父様に尋ねる。
「ところで陛下、私と姉君の専属護衛の件ですが。この二人にお願いしたいと思うのですが、宜しいでしょうか? 二人は王妃殿下の護衛も務めております、立花卿の娘です。実力は申し分ないかと」
「でも、グンジョウ。二人は貴方のお嫁さんになりたいと、頑張った結果がこれでしょう? それは酷な事ではなくて?」
母様が、二人を少し可哀想な物を見る目で見ながら、言ってきた。
いや、うん。
その通りなんだけど。
「しかし、姉君と私だけが専属護衛がいない状況です。そろそろ決めねば…」
「別に焦る必要はないではないですか、グンジョウ。それよりは…婚約者問題をどうするかの方が最優先では?」
シャナも微笑みながらそう言ってくる。
そこへ、ユエが声をあげた。
「不敬を承知で、進言致します。私達姉妹は、王子殿下のご判断に従います。如何様にも、私達をお使いくださいませ」
顔を上げ、ユエは僕を見つめてくる。
ユエとユタカは一卵性双生児だ。
違いはその瞳の色だけ。
ユタカは金、ユエは紅だ。
その紅色の瞳が、僕を射抜く。
芯の強さを秘めた、瞳で。
ドクンと、僕の胸が高鳴る。
「…なら、本日より立花裕は姉君の護衛に。月は私の護衛に入ってもらう。立花卿、宜しいですね?」
「は。王子殿下のご厚情、有り難く存じます」
カヅキおばさんは立ち上がり僕達に一礼して、二人を連れて謁見室を辞した。
なんだ、今の感覚…。
僕は自分の心臓あたりを掴み、俯く。
まだ心臓がドクドクと脈打っている感覚がしていた。
「グンジョウ、どうした?」
父様が玉座から声をかけてくる。
僕は首を振って応えた。
「分からない…」
「緊張しただけじゃない? あー、肩凝ったー」
シャナは伸びをして、欠伸をしている。
今の今まで淑女然としていたはずの姉の姿を見、僕は力が抜けたのかその場にへたり込んだ。
「あらあらまぁ。二人とも気を抜きすぎじゃなくて? お父様の前だというのに」
母様が苦笑しているが、父様は気にしていないようだった。
「頑張ったな、グンジョウ。成長しているようで、俺も嬉しく思うぞ」
玉座から降りてきた父様が僕の隣へかがみ込み、頭を乱暴に撫でてくる。
シャナや母様にするみたいな物ではなく、同性だから出来るような撫で方で、僕は少し嬉しく思った。
「と、父様、眼鏡、眼鏡飛ぶ!」
嬉しいが、あまりにも乱暴に撫でるから、眼鏡がズレかける。
これ無くなったら、ルカさんの所に発注しに行かなくてはならないのに。
そうか、と父様は手を離した。
「また成長した姿を見せてくれ、我が子達。行くぞ、シャル」