「大体さぁ、グンジョウ兄さん達来たんなら教えてくれてもいいじゃんか。兄さんに会えるの、義姉様の誕生日か、兄さん達の誕生日しかないじゃん。俺、兄さんみたいな男になりたいんだよなぁ」
「ならそのヤンチャぶり、少し治めなさいよ…」
シャナが呆れた目でルージェを見る。
見られた彼は、すぐにムッとした。
まだ10歳。
年相応の反応なんだけど、君将来テスタロッサを継ぐの理解して…なさそうだなぁ。
「姉さんには関係ねぇだろ!」
「グンジョウが10歳の時はもう少し大人しかったし、知識だってルージェより有ったよ。グンジョウ目指すなら、少し勉強とマナーを覚えた方が良いよ、ルージェ」
うんうん、とユエとユタカは頷いているが、君達僕と再会したの12歳の時だったよね?
10歳の頃の僕なんて知らなかったよね?
なんでそんな自信満々に頷いてるわけ?
シャナがルージェと同じ目線で口喧嘩を始めたので、姉を宥めようとした矢先、ゴンと痛そうな音がしてルージェが蹲った。
彼と同じ銀の髪をしたお祖母様が、拳を握り締め仁王立ちしていたので、音の正体は彼の頭が殴られたからだとわかる。
「何をしているのです、ルージェ。殿下方がまだお食事をなさっている最中でしょう。まさか、邪魔をしていたわけではありませんね?」
「げ、母様…」
ルージェが頭を押さえながら、お祖母様に対してそんな事を呟く。
途端、お祖母様の眉が吊り上がった。
「げ、とは何ですか、げ、とは。そうですか、そんなに私の教育は甘かったのですか。ルージェ? 明日から毎日帰ってきなさい。更に厳しく養育するとしましょう」
あぁ、最初から謝っておけば良かったのに。
お祖母様は自分の非を認めた者に関しては、寛容的だ。
何が悪かったのか懇々とお説教をした後、許してくれる優しい人だ。
それ以外の者がどうなるかなど…目の前の光景を見ればわかる。
「母様怖いって!! 何だよ、別に良いじゃんかよ!!」
「良くないから言っているのです。殿下方、愚息が失礼を致しました。よく言って聞かせますので、ご容赦を」
お祖母様はルージェの頭を掴み、下げさせた。
その際、グギッと痛そうな音が鳴る。
それを見ていたユエとユタカは、顔面蒼白になっていた。
多分、淑女教育の時を思い出しているのだろう。
「先生怖い…」
「容赦無い…」
お互い手を繋ぎ、カタカタ震えている。
少し見ていられなくなって、僕はお祖母様に声をかけた。
「お祖母様。仰る通り食事中ですので、退出して頂けると有難いのですが」
「はい。失礼致します」
お祖母様がルージェを引っ張っていき、彼付きのメイドが僕らに頭を下げて扉を閉める。
僕はシンクと目配せして立ち上がると、それぞれの恋人の元に行った。
「ユタカ、もう大丈夫だからなー」
「ユエ、僕の為に頑張ってくれたんだね。今も、頑張ってくれている君が好きだよ」
シンクはユタカを横抱き…所謂お姫様抱っこをして慰め、僕はユエの手を取り、手の甲へキスをしながら微笑む。
その様子を、シャナが呆れた目で見ていた。
「そういうの、二人きりの時にやってくれないかな弟達? 食事中だって言ったの、グンジョウでしょ?」
「恋人のケアをして何が悪い」
シンクの言葉に、僕も頷く。
だから二人きりの時にやれ、とシャナは怒鳴った。
ツルギとそういう関係になれてないから、嫉妬してるんだな。
なんて思った瞬間、ナイフが僕の目の前を通過して壁に突き刺さる。
それに対して、僕は怒りよりも血の気が引くのを感じた。
シャナのスイッチは、姫モードだけではない。
ユーラ王国に行く時にも見せたあの顔。
本気で怒った母様に匹敵するくらいの、あのドスの効いた声。
激怒した姉に、僕は逆らえるはずがない。
「グンジョウ、今なんて思った? 声に出して言ってみろ。さぁ、早く」
「申し訳ありませんでした!!」
僕はテーブルを飛び越え、姉の足元で土下座する。
その動作とシャナの様子に、僕と姉以外の皆が驚いていた。
いつも、のほほんとしているシャナが、足を組んで僕を見下ろしているのだから、それはそうだろう。
それに対して怯えている僕も見た事がないから、ツルギも戸惑っているはずだ。
「私は、何を思ったか言ってみろと言ったんだ。お前の頭は脳無しか? なぁ、グンジョウ。私がなんだと言うんだ? ん? 私とお前はリンクが繋がっている上に、双子だ。お前が思った事はこちらに筒抜けだと、前にも言ったな? 壁も作れない上に、何を戯けた事を言っている」
「申し訳ありません、姉上。仰る通りです。弁明も致しません。姉上のお好きなように処罰して下さい」
ユタカが慌ててシンクの名前を呼ぶ。
そちらを見る事は叶わないが、もしかしたらトラウマを抉られているんじゃないだろうか。
あの航空艦の中でも、シャナの様子に青ざめていたし。
「シャ、シャナちゃん…あの…」
「これは愚弟共が悪い。ユタカ、口を出すな」
いつもちゃん付けで呼んでいるシャナが、彼女を呼び捨てにしている。