my way of life   作:桜舞

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113話『居た堪れないだろ』

シンクを真似して、ポケットの中でシャナにコールしていたのだ。

電話口から姉の声は聞こえてこない。

ただ、時々嗚咽が聞こえるので、ちゃんと聞いてはいたようだ。

僕の方も、まさかそんな事をしているとは思っていなかったツルギが、顔を真っ赤にしていた。

 

『あらあら。後のフォローは貴方達がしなさいよ、シンク、グンジョウ? お母様は関与しませんからね?』

「分かってるよ。んじゃまた、母様。で、グンジョウ。シャナの様子は?」

 

母様に短い挨拶をして通話を切ったシンクは、姉の様子を聞いてくる。

僕は肩を竦め、苦笑いをした。

 

「シャナ、泣かないで。なんならツルギ向かわせるけど」

『絶対来ちゃダメだからっ!!』

 

いきなり大声を出して、シャナは通話を切る。

耳が痛くなったが、その声はツルギにも届いていたようで、彼は慌てて部屋を出ていった。

 

「なんであんな怒鳴るかねぇ」

「泣いてるの見られたくないのと、なんでこんな状況になってるのかわからなくて、困惑してるんでしょ。あとツルギからの言葉も、夢だと思ってる可能性は大だね」

 

僕はティーセットを持ち、部屋の扉を開ける。

どこ行くんだと、シンクから問われて僕は弟を呆れた目で見た。

 

「帰るんだよ、泊まってる部屋に。ここツルギの部屋だろ? シャナ連れて帰ってきたら、どうするんだよ。居た堪れないだろ」

「確かに」

 

今まで椅子に座って喋ってたシンクは立ち上がり、僕の横に並ぶ。

そして僕に対して言った。

 

「ユエに夜這いかけるなよ?」

「そっくりそのまま返してやるよ」

 

くっくっと笑ったシンクは、僕からティーセットをひったくり、早く寝ちまえと僕の頭を一撫でしてから、泊まっている部屋とは逆方向に進み出す。

 

同い年のくせに、なんか兄っぽいのがムカつく。

順番的に言えば、僕の方が兄なのに。

 

「…やめよ。不毛だ…」

 

今度嫌がらせで兄様と呼んでやろうと決め、僕は客室へと向かった。

 

◆◆◆

 

グンジョウからの通話を一方的に切ったあたしは、止まらない涙を拭う。

 

一体何が起こっているのだろうか。

わからない。

ツルギ君があたしを好き?

そんな馬鹿な。

だってツルギ君は、日本に帰ってお墓を弔う為に帰りたがっていたはずだ。

 

あたしの護衛なんて、その方法を聞き出すためだけの手段でしかない。

あたしが勝手に、彼を好きになっていただけなのだ。

 

「わかんない…わかんないよ…っ!」

 

王族として生まれたからには、将来誰かに嫁ぐんだろうとは思っていた。

母様みたいに、好きな人と婚姻を結べれば幸せだろうな、って。

それが叶わない事なんて、貴族の友達とか、その親を見てればわかっていた事だった。

 

あたしに告白してくる人達もいたけど、みんな父様から聞いてたような感じの人ばっかりで。

あたしの顔か、プロポーションか、地位か。

グンジョウは気付いていなかったし、弟が女の子に言い寄られていても、ユエちゃんやユタカちゃんが牽制していた。

たまにツェリとか。

 

あたしには、誰もいなかったけど。

 

だから、彼氏なんて作る気が起きなかった。

仲が良いだけの友達に留めさせておいた。

襲われた時もあったけど、グンジョウが返り討ちにしてくれたし、その事は父様達の耳にも入って、その子達とはそれっきり。

 

ツルギ君と初めて会った時、誰かに囁かれた気がした。

 

彼を逃したら、ダメだよって。

 

あんな突拍子もない事をしたのも、その為だった。

その声に従って良かったと思ったのは、彼の人となりに触れてから。

 

仏頂面だけど、とても気を遣ってくれる所。

結構口下手だけど、ちゃんとあたし個人として話してくれる所。

目も、真っ直ぐにあたしを見てくれる所。

あとは、たまに見せてくれる笑顔が素敵な所。

 

それでも、一線は引かれているなとは感じていた。

だから、彼に告白したのだ。

その一線の、内側に入りたくて。

 

結局、駄目だったけど。

 

それからのあたしは、ツルギ君が無事に日本に帰れるように、ちゃんと護衛をされてますよと体裁を整えていた。

常に傍にいてくれる彼が嬉しかったし、ツルギ君が日本に帰れるようになったら、この恋心を楽しかった思い出として、他の人に嫁ごうと決めていたのに。

 

「なんで、ツルギ君…っ?!」

 

告白した時、あたしなんて眼中にないと、言っていたじゃないか。

自分には目的があるからって。

悪いけどって、申し訳なさそうにしていたのは覚えているけれど。

 

「シャナ!!」

 

鍵をかけ忘れていた。

扉を大きく開け放って、ツルギ君が飛び込んでくる。

 

彼はあたしの泣き顔を見て、辛そうな顔をした。

 

そんな彼の顔を、そして自分の姿を見られたくなくて、あたしは転移する。

とは言え、そこまで遠い所へ飛ぶわけにはいかない。

ここから王都の自分の部屋まで、結構な距離があるし、その分魔力の消費が激しい。

 

明日からまた魔王の遺物を探さなければいけないのに、こんな事で消耗するわけにはいかないのだ。

 

あたしはテスタロッサの温室に飛ぶ。

裸足だったが、気にしない事にした。




早めにシャナとツルギをくっつけてしまった
あと、この文章デジャビュなんですけど
もしかして、非公開にしてた前の小説に
同じ文書いてたか、自分…
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