シンクを真似して、ポケットの中でシャナにコールしていたのだ。
電話口から姉の声は聞こえてこない。
ただ、時々嗚咽が聞こえるので、ちゃんと聞いてはいたようだ。
僕の方も、まさかそんな事をしているとは思っていなかったツルギが、顔を真っ赤にしていた。
『あらあら。後のフォローは貴方達がしなさいよ、シンク、グンジョウ? お母様は関与しませんからね?』
「分かってるよ。んじゃまた、母様。で、グンジョウ。シャナの様子は?」
母様に短い挨拶をして通話を切ったシンクは、姉の様子を聞いてくる。
僕は肩を竦め、苦笑いをした。
「シャナ、泣かないで。なんならツルギ向かわせるけど」
『絶対来ちゃダメだからっ!!』
いきなり大声を出して、シャナは通話を切る。
耳が痛くなったが、その声はツルギにも届いていたようで、彼は慌てて部屋を出ていった。
「なんであんな怒鳴るかねぇ」
「泣いてるの見られたくないのと、なんでこんな状況になってるのかわからなくて、困惑してるんでしょ。あとツルギからの言葉も、夢だと思ってる可能性は大だね」
僕はティーセットを持ち、部屋の扉を開ける。
どこ行くんだと、シンクから問われて僕は弟を呆れた目で見た。
「帰るんだよ、泊まってる部屋に。ここツルギの部屋だろ? シャナ連れて帰ってきたら、どうするんだよ。居た堪れないだろ」
「確かに」
今まで椅子に座って喋ってたシンクは立ち上がり、僕の横に並ぶ。
そして僕に対して言った。
「ユエに夜這いかけるなよ?」
「そっくりそのまま返してやるよ」
くっくっと笑ったシンクは、僕からティーセットをひったくり、早く寝ちまえと僕の頭を一撫でしてから、泊まっている部屋とは逆方向に進み出す。
同い年のくせに、なんか兄っぽいのがムカつく。
順番的に言えば、僕の方が兄なのに。
「…やめよ。不毛だ…」
今度嫌がらせで兄様と呼んでやろうと決め、僕は客室へと向かった。
◆◆◆
グンジョウからの通話を一方的に切ったあたしは、止まらない涙を拭う。
一体何が起こっているのだろうか。
わからない。
ツルギ君があたしを好き?
そんな馬鹿な。
だってツルギ君は、日本に帰ってお墓を弔う為に帰りたがっていたはずだ。
あたしの護衛なんて、その方法を聞き出すためだけの手段でしかない。
あたしが勝手に、彼を好きになっていただけなのだ。
「わかんない…わかんないよ…っ!」
王族として生まれたからには、将来誰かに嫁ぐんだろうとは思っていた。
母様みたいに、好きな人と婚姻を結べれば幸せだろうな、って。
それが叶わない事なんて、貴族の友達とか、その親を見てればわかっていた事だった。
あたしに告白してくる人達もいたけど、みんな父様から聞いてたような感じの人ばっかりで。
あたしの顔か、プロポーションか、地位か。
グンジョウは気付いていなかったし、弟が女の子に言い寄られていても、ユエちゃんやユタカちゃんが牽制していた。
たまにツェリとか。
あたしには、誰もいなかったけど。
だから、彼氏なんて作る気が起きなかった。
仲が良いだけの友達に留めさせておいた。
襲われた時もあったけど、グンジョウが返り討ちにしてくれたし、その事は父様達の耳にも入って、その子達とはそれっきり。
ツルギ君と初めて会った時、誰かに囁かれた気がした。
彼を逃したら、ダメだよって。
あんな突拍子もない事をしたのも、その為だった。
その声に従って良かったと思ったのは、彼の人となりに触れてから。
仏頂面だけど、とても気を遣ってくれる所。
結構口下手だけど、ちゃんとあたし個人として話してくれる所。
目も、真っ直ぐにあたしを見てくれる所。
あとは、たまに見せてくれる笑顔が素敵な所。
それでも、一線は引かれているなとは感じていた。
だから、彼に告白したのだ。
その一線の、内側に入りたくて。
結局、駄目だったけど。
それからのあたしは、ツルギ君が無事に日本に帰れるように、ちゃんと護衛をされてますよと体裁を整えていた。
常に傍にいてくれる彼が嬉しかったし、ツルギ君が日本に帰れるようになったら、この恋心を楽しかった思い出として、他の人に嫁ごうと決めていたのに。
「なんで、ツルギ君…っ?!」
告白した時、あたしなんて眼中にないと、言っていたじゃないか。
自分には目的があるからって。
悪いけどって、申し訳なさそうにしていたのは覚えているけれど。
「シャナ!!」
鍵をかけ忘れていた。
扉を大きく開け放って、ツルギ君が飛び込んでくる。
彼はあたしの泣き顔を見て、辛そうな顔をした。
そんな彼の顔を、そして自分の姿を見られたくなくて、あたしは転移する。
とは言え、そこまで遠い所へ飛ぶわけにはいかない。
ここから王都の自分の部屋まで、結構な距離があるし、その分魔力の消費が激しい。
明日からまた魔王の遺物を探さなければいけないのに、こんな事で消耗するわけにはいかないのだ。
あたしはテスタロッサの温室に飛ぶ。
裸足だったが、気にしない事にした。
早めにシャナとツルギをくっつけてしまった
あと、この文章デジャビュなんですけど
もしかして、非公開にしてた前の小説に
同じ文書いてたか、自分…