「シャナ…?」
「…信じてもいい…? あたし、馬鹿だから…本気にしちゃうよ…? 違うなら違うって、今言って…っ!!」
彼の服を握りしめ、縋り付き泣くあたしを、ツルギ君は片腕で抱きしめてくれた。
とても優しい声音で、でも嬉しいと、とてもわかる声で。
彼は言った。
「違わない。俺はシャナを愛している。共に生涯を歩みたい…本気にしてくれ。ずっと…ずっと、一緒にいよう、シャナ。君が逝く時まで、ずっと傍にいるよ」
「ツルギ君…っ!!」
小さい子供のように、あたしは泣いた。
片腕で、彼は力強く抱きしめてくれる。
これが夢なら、醒めないでほしいと願った。
◆◆◆
朝の日差しで目が覚める。
あの後すぐにベッドへ入った僕は、夢も見ずに寝入っていたらしい。
「珍しい。ユエが夢渡りして来ないなんて」
起き上がり、伸びをしながら呟いた。
寮の部屋にいる時や、帰れなくて城の部屋で寝ている時。
頻繁に、彼女は夢渡りをしてきて他愛も無い話をしていくのに。
まぁ、テスタロッサの屋敷だから憚られたのかもしれないが。
寝巻きから普段着に着替え、僕はお祖父様が所蔵している地下図書館に向かう。
道中、テスタロッサの庭の一部。
開けた場所で、ユエとユタカが組み手をしているのが窓から見えた。
近くにはシンクもいたので、怪我をしてもなんとかなるかと、僕は彼らに声をかけず長い廊下を歩く。
お祖父様の執務室前に着き、扉をノックする。
朝早いにも関わらず返事があったので、僕は失礼しますと言いつつ中に入った。
「おはようございます、お祖父様。お早いんですね」
「おはようございます、グンジョウ。いや何、昨日勝手に入って良いですよ、と言うのを忘れていたものですから。律儀な君の事です。私がここに来るまで、待ちぼうけをしてしまうと思いましてね。それを食らわすのも些か可哀想になりまして。朝5時からスタンバイしていましたとも」
壁時計を見ると、今は朝の7時。
2時間も前から待っていてくれたらしい。
「ありがとうございます、お祖父様。なんかすみません…」
「いえいえ。では、私はこれで。好きに調べると良いでしょう」
ニコリと笑んだお祖父様は、そのまま執務室を出ていく。
昨日お祖父様がやった動作をして、地下図書館への道を開けた。
階段を降りきった先、見た事もない蔵書量に僕は目を輝かせる。
地下だからと、結構広いスペースに等間隔で本棚が置いてあり、びっしりと本がその棚を埋め尽くしていた。
確かにベルゼビュートからの神託の通りだが、それ以上にあるかもしれない。
うわぁ…読み漁りたいなぁ…。
こんな騒動でもなければ、見せてもらえなかったんだろうけど。
読書欲に火が付きそうになるが、落ち着こうと深呼吸した所で、古書の匂いで更に読み漁りたいと考えてしまい、僕は首を思い切り横に振る。
「仕事ー…仕事だぞー、僕ー…よし」
シャナとリンクを繋ごうとして出来ず、僕は昨夜の事を思い出し、シンクに念話を繋いだ。
〈おはよ、シンク。悪いけどリンク繋いで魔力貸してもらえない? シャナとリンク繋げなくて。昨日の今日で、ツルギとどうなったかわかんないし〉
〈はよ。まぁ、上手くいったんじゃねぇ? もしかしたら、俺らより早く経験してるかもだけどな〉
朝から何言ってんだこいつ。
下世話好きなおじさんみたいだな。
と思っていると、僕と同質の魔力が流れ込んできて、やっぱり僕だなと思う。
シャナとは双子だけど、魔力の性質上馴染むまで少し時間がかかる。
その点、シンクは僕であるが故に、馴染むのも早かった。
〈どれくらい魔力いるんだ?〉
〈充分だよ。流石僕だね、シンク。僕がどこにいて、何をやろうとしているかなんて、すぐ考えが及ぶなんてさ。本当、君の方がお兄様って感じだよね〉
やめろ、と少し不機嫌な声を彼は出して、念話を切られる。
多分今頃、ユタカあたりからなんでそんな不機嫌になっているのか、と問われている事だろう。
「さて」
僕は自分の下に魔法陣を出現させ、それを球体に展開し、天井付近まで浮遊する。
展開しているのは、おばさんが開発した検索魔法だ。
これを習得してからは、本当に仕事の進みがスムーズになった気がする。
お祖父様の古書達が反応してくれれば良いが、あのお祖父様だ。
これに関して、抜かりはないだろう。
僕は息を吸い込み、片手を上げ、魔法陣に向かって宣言する。
「
本棚から本達が飛び出し、僕の周りを浮遊し始めた。
昨日お祖父様から渡された書物は、ほんの一部だったらしい。
それよりも多くの書物が浮遊している。
「流石に多いな…。まぁ、国立図書館の司書免許持ってるから、別にこれくらいは普通だけど」