小さい頃から本を読むのが好きだった僕は、一回だけと母様にお願いして、司書の免許試験を受けたのだ。
本来なら大学とかに行って勉強しなければならないはずの問題を、難なくすらすら解いてしまった僕は、最年少記録を叩き出したようだ。
免許を貰いに行った時、周りから驚かれた記憶がある。
バラバラと物凄い勢いでページが捲られていく。
お祖父様から渡されていた書物も持ってきていたので、同じく周りを浮遊していた。
立っているのも怠くなってきたので、椅子を創造魔法で創り出し、それに座る。
自分で創っておいて何だが、座り心地がとてもいい。
足を組んでも、無理なく座れる。
本当、僕にシンクみたいな魔力があればなぁ…。
「とりあえず、遺物の一覧は複写しておばさんに送っておこう。こっちは記録に、伝説…関係ないな」
僕は表示枠を出し、魔王の遺物が書かれている一覧の本を、複写するという項目を選択してから、カヅキおばさんに送る。
オートで篩にかけ、関係無いものは本棚に戻していく作業を続けた。
魔王の消滅方法という項目が書いてある本を見つけ、それを読んでみるが全く実行できる内容ではなく、むしろ胸糞が悪くなって僕はそれを本棚に戻す。
「何だ、清き乙女と魔王を一緒に殺すって。魔王が女性だったら使えない手じゃないか。当時の魔術師は、何考えてるんだ全く…」
検証して書に記したのだろうが、先程僕が言ったような事を考えておいた方がいいと思う。
ため息をついた時に眼鏡がずれたので、元の位置に戻した。
シャツの胸ポケットに入れておいた携帯が鳴り出して、僕はそれを取り出し見る。
着信相手はカヅキおばさんで、僕はどうしたのだろうと首を傾げた。
「おはようございます、カヅキおばさん。どうかしました?」
『おはよう。グンジョウすまんな、仕事中だろうに。魔王の遺物の一覧、確かに受け取った。後、今テスタロッサの地下図書館にいるな? ユエが来たらすぐにそこを離れろと、ナツキからの伝言だ。自分で伝えられれば良かったのだが、ナズナの奴がな…』
おばさんが頭痛そうな口調で言い淀んでいるのを聞いた僕は、またかと察する他なかった。
躯体になってから、そちらの方が急に無くなった父様の鬱憤は、僕には計り知れないが…母様、寿命縮んでない?
大丈夫?
本体で相手しなくてもいいんじゃないの?
母様も父様を愛しているからこそ、求められれば応えたくなるのはわかるんだけどさ。
浮気されたくないっていう葛藤もあるんだろうな、なんて思うのだが。
別に拒否った所で父様は浮気しないだろうし、子供云々言われる事もないだろう。
だって、僕を含めて6人もいるのだから。
「父様がすみません…」
『お前が謝る必要性はない。アレが堪え性がないのが悪いんだ』
舌打ちしそうなくらいイライラしているのが分かる。
カヅキおばさんも母様を大事に思うからこそ、無理をさせている父様が腹立たしいのだろう。
しかし、母様もそれを望んでいるから口出し出来ない、って感じかなぁ。
ユエの声がして、僕は下の方を見る。
薄暗いから、僕が上空にいるとは思っていないようで辺りを見回していた。
「カヅキおばさん、ユエが来ました。切りますね」
『あぁ、またなグンジョウ』
僕は通話を切り、魔法陣はそのままに飛び降りる。
いきなり目の前に降り立った僕に、ユエは驚いていたようだった。
「え? アオ? 何処から?」
「上見てみて」
僕が指を上に差し、彼女もその方向を見上げた。
僕が残した魔法陣を見たユエは、僕と魔法陣を交互に見る。
その動作が面白くて、僕は笑いを堪えた。
「アオ、あれ…」
「…シンクに魔力借りて、発動させた。一応僕だって、魔力があれば使えるんだよ? いやぁ、渡されたけど、僕だから魔力馴染むのが早い早い」
言いつつ、彼女の背後に回って両肩に手を置き、押していく。
母様からの話は、星読みの力で見た光景だ。
なら、ユエが来た後に、何かが起こるという事に違いなかった。
「うわぁ。朝から逢引きしてるとか、雪那節操なくね? そこまで淫乱だなんて、お兄ちゃんの妹としては悲しいなぁ…」
「誰が淫乱か!! 節操ないって、私はアオにしかしていないっつーの!! ふざけんのも大概にしやがれ!!」
桃華が地上に続く道に現れ、ユエを挑発する。
それに乗った彼女は、桃華に対して暴言を吐いた。
「ユエ、落ち着いて…桃華、何故ここにいる。一応理由は聞いてあげるよ。聞くだけだけど」
「やだ、お兄ちゃん。その睨む顔も格好いい…!! うーん、アタシがいる理由ねぇ…そのまま渡すのも癪だから、邪魔して来いって魔王からのお達しなの。だから、お兄ちゃん。遊ぼ?」
僕はノワールとブランシュを呼び出し、ユエへ聞く。
「ユエ、転移門は開けるね? 僕があいつに斬りかかったら…」
「わかってる、任せて」
流石、僕の未来の奥さん。
少し言っただけで理解してくれるとは。
愛してる、ユエ。
僕は脚力強化を自分に施し、桃華に斬りかかる。