my way of life   作:桜舞

118 / 408
118話『逝かれては困る』

「これの力を少し使ったまでですよ。魔術教本だと思っていたのですが、いやはや…カモフラージュが驚くほど上手かったようで。今まで気付きませんでした」

 

お祖父様は軽く本を叩き、僕に投げ渡して来た。

中身を見てみるが、確かにお祖父様の言う通りただの魔術教本だ。

パーティメンバーが僕の周りに集まり、本を見ているが、みんな首を傾げている。

 

一体この本に、何があるというのか。

 

「…シャナ?」

 

ツルギが心配そうにシャナを呼ぶが、姉はボーッとして反応しない。

その目はずっと、僕が持っている本を見ている。

姉はスッと軽く手を挙げ、本に手を置いた。

途端、強力な魔力風が吹き荒れ、僕らは予想だにしていなかった為、吹っ飛ばされる。

 

「シャナ?!」

「我、この本に自らの意思を宿す。我は魔王、カルロタ・ダヴィド・エドゥアルド。我の意思を継ぐ者よ、我に応えよ」

 

シャナの声に重なるように、男性の声が聞こえた。

マズいと感じた僕は、瞬時に脚力強化をしてシャナから本を奪おうとする。

だが、それより早く、シャナから攻撃された。

 

五重元素(フィフス・エレメント)五重奏鎮魂歌(クインテット・レクイエム)発射(フォイア)

 

四大元素と無属性の攻撃魔法が僕を襲う。

シンクが魔盾(マジックシールド)を張ってくれるが、無属性はそれを通り抜け、ブランシュを呼び出し受け止めるが、勢いが強すぎて殺しきれない。

 

「ぐぅっ?!」

 

僕は勢いそのままに、テスタロッサの屋敷の壁に叩きつけられた。

シャナが本を掴み、僕へ向けて更に魔法を放とうとして、ツルギに腕を掴まれ止められる。

彼は姉の手から本を奪い、問いかけた。

 

「シャナ?! 一体どうしたんだ!!」

「………」

 

シャナはそれにすら反応せず、ツルギの手にある本を見つめている。

そして、ポツリと呟くように言った。

 

「煩い…あたしを支配しようとするな、魔王。あたしは、あたしの道を行く。お前の道はもう途絶えてるのよ!!」

 

姉の目に生気が戻る。

シャナはツルギが持っている本に手を翳した。

 

「我に所有者を変更せよ!! 我はシャナ・アジアンタム・ブリリアント!! リューネ国第一王女にして魔王、ミヤヅカアサトの魂を持つ者也!!」

 

魔本がバラバラと音を立てて捲られていく。

最後のページまで行き着くと、魔本から声がした。

 

【所有者変更確認。名称を】

「ファルスーナフト・リブロ。愛称はリブロ」

 

承知しました、と魔本は言い、消える。

魔本の気配もなくなり、吹き荒れていた魔力風もなくなって、僕らはシャナを見た。

 

「あー…みんなごめんね。一瞬意識乗っ取られちゃって。って、グンジョウ大丈夫?! ちょ、ツルギ君離して! あたしもう平気だから!!」

 

いつもの騒がしいシャナに戻ったようで、ツルギからの抱擁から抜け出そうと踠いていて、僕は安心して体の力を抜く。

 

「アオ、大丈夫?」

 

心配したユエが走り寄ってきて、僕の傍に座る。

 

「まぁ…何とか。シャナ、自分で治すから魔力頂戴」

 

僕が言うと、ツルギに抱きしめられて身動きが取れないシャナは、僕の方へ手を差し出した。

リンクが繋がれ、姉の魔力が僕に入ってくる。

馴染むまで時間がかかるが、魔力を自分で行使するためには仕方ない。

 

「アオ、私治すよ?」

「大丈夫だよ。これくらいで君の手を煩わせる必要はない……あぁ、泣きそうにならないでユエ。鍛えてるから平気だって、言いたかっただけだから」

 

実際、吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた所で、打撲程度のダメージしかなかった。

毎日母様達の訓練を受けているからこそ、最早これくらいでは傷つかなくなってきているようだ。

 

「お祖父様、お祖母様、大丈夫ですか?」

 

シャナから渡された魔力で自分自身を治療していると、シンクが二人にそう聞いている。

そういえば、あの場には二人もいたのだとすっかり忘れていた僕は、そちらの方を見た。

 

「えぇ、大丈夫ですよ。ターニャが咄嗟に、私の前に立ってシールドを張ってくれたのでね。私の妻は生涯現役のようだ」

「何を当たり前な。ルージェが育つ前に、旦那様に逝かれては困るのです。育った後は、どうでも宜しいのですが」

 

お祖母様…効率重視だからってそんな言い方…。

だからカヅキおばさんから、人の心がないんですかってたまに言われるんですよ…。

 

しかしそう言われたお祖父様はニコニコと笑って、

 

「そうですね。貴女は少し、言葉が足りない人ですから。今のに少し言葉を足すなら、『私が生涯現役なのは当たり前です。ルージェが後継者として育つ前に、貴方に死なれたら困ります。育った後は、ルージェに後を任せて二人でのんびりしましょう』ですかね?」

 

そう言った。

お祖母様の方を見ると、少し頬を染め困ったように眉を下げて、目をお祖父様から逸らしている。

そんなお祖母様を見た事がなかった僕は、驚いて目を丸くした。

 

「え、本当に?」

「ターニャが愛情深い人なのは、貴方も知っているでしょう? グンジョウ。誤解されやすいだけで、ターニャはお義父様を愛しているのよ?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。