my way of life   作:桜舞

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12話『そうなるかもね』

父様は母様を伴って、謁見室を出て行く。

その際、父様が横を向き、次いで僕を見てニヤリと笑った。

 

一体なんだというのか。

 

僕とシャナも、この場の主人がいなくなった事で謁見室を辞す。

扉を潜ると影になって見えていなかったが、ユエとユタカが頭を下げて僕らを待っていた。

 

「………」

 

ユエから目を離せない。

そんな僕を見かねたのか、シャナが僕の脇腹をつついてくる。

 

「えーと、ユエちゃん、ユタカちゃん。うちのグンジョウが勝手に決めてごめんね。そのぉ…お嫁さんになりたいんだって、強く言えなかったんだよね? 父様達の前だったから。あたし口添えしておこうか?」

「「いえ」」

 

二人は顔を上げて、少し困ったように笑った。

 

「私達は、殿下方のご判断に従います」

「それがご迷惑をかけた故の贖罪です」

 

シャナが恨みがましそうに僕を見上げる。

何とかしろ、とでも言いたげだ。

僕はため息をついて、手を横に振る。

 

「公式の場ではそれで良いけど、普段はいつも通りでいいから。どれだけお祖母様に扱かれたの、君達」

 

その言葉に、二人は目を潤ませて僕に抱きついてきた。

 

「グンちゃん、めっちゃ厳しかったよぉ…」

「死ぬかと思ったよ、アオちゃん…」

 

あー、はいはい。

あの様子の君達ならそうなるかもね。

 

僕は仕方なしに二人の頭を撫でる。

シャナも二人の様子にホッとしたのか、苦笑していた。

 

◆◆◆

 

二人と別れ、シャナと寮の部屋に帰る。

ソファーに座りだらけていると、目の前にマグカップが差し出された。

見れば、シャナが差し出していたので僕はありがたく受け取る。

 

「でさ、聞いて良い?」

「何?」

 

シャナが入れてくれたのは冷たいココアだったようで、緊張でほてった体が冷やされていく感覚が心地良い。

次に姉が放った言葉がなければ、その感覚のまま穏やかに過ごせただろうに。

 

「なんでユエちゃんの方選んだの? ユタカちゃんでも良かったハズだよね? 惚れた?」

「ぶふっ?!」

 

気管にココアが入り込みむせる。

シャナはティッシュを取り出し、差し出してきた。

ありがたく受け取り、口周りとか服とかについたココアを拭く。

 

「いきなり何言ってんの?! なんっでそんな発想になるかなぁ?!」

「いや、実力的にはユタカちゃんの方が上じゃない。グンジョウは次期国王で、今は王太子でしょ? 自分の身を守るには、実力者が側にいてくれた方が良くない?」

 

それはそうなんだけど。

なんで僕もそう言ったか、わからない。

確かに、実力から見ればユタカの方が力量は上だ。

だが、頭の才能の方はユエに軍配が上がる。

 

それに、上は上同士、下は下同士で組んだ方が良いかな、なんてチラッと考えないでもなかった。

 

シャナの言う通り、自分の身は守れるが、更に守ってくれる力のある者が側にいた方が良いに決まっている。

 

「…わかんない」

「グンジョウ、あたしより頭いいのに、そこら辺疎いよね」

 

呆れた目で見てくる姉にカチンと来て、僕は言い返した。

 

「シャナだって、彼氏出来たことないくせによく言うよ」

「はぁ?! 確かに出来たことないけど、モテはするんだよ?!」

 

それは知ってる。

シャナの快活さと性格の良さ、それに加えて母様からの遺伝の賜物である顔の良さ。

それで少し優しくされたら惚れない男はいないと思う。

僕も兄弟じゃなかったら、惚れてた可能性はある。

 

…いや、ないな。

たまに天然発揮して、何しでかすかわかんない所は見ててハラハラするし。

本気で怒ったら大出力の魔法ぶっ放そうとしてくるし。

 

これ、シャナと付き合おうとした男は苦労するんじゃないだろうか。

 

「…はぁ…僕は心配だよ。姉が行き遅れるんじゃないかって」

「まだ16なのに何の心配してんのよ?!」

 

この喧しい所も、苦労するポイントだろうなぁ…。

将来の義兄が可哀想だ。

 

僕の服を掴み、シャナが揺さぶってきたが、僕は半笑いを返す他ない。

とりあえず、ココアは机に避難させておく。

 

「はいはい、僕が悪かったって。そろそろお風呂入ってきたら?」

「その言い方絶対悪いって思ってないでしょ! まぁ、入ってくるけど」

 

僕から手を離し、シャナは自室に入っていった。

かと思えば、顔を出し

 

「一緒入る?」

 

と宣ってきた。

 

「……ばっかじゃないの?! 何、僕に本気で喧嘩売ってる?! なんで年頃の姉弟が、一緒にお風呂入んなきゃいけないの?! 馬鹿なの?!」

「冗談じゃん、そんな怒んなくても。軽いジョークだって」

 

ニシシ、と笑ったシャナは、お風呂道具一式持って風呂場へ入っていく。

勘弁してくれよ、と僕は自分の手で顔を覆った。

 

「…シャナ、まさか他の男の子達にも同じ事言ってないだろうな…」

 

だとしたら姉の身が危険すぎる。

あのポンコツ、軽い気持ちでそんな事言うから勘違いした男達が一回襲いに来た事があるくらいなのに。

僕が側にいたから良かったものの…いや、一人でも撃退できたな、あれは。

シャナより弱すぎたし。

 

姉の将来が心配になった夜になった。

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