my way of life   作:桜舞

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120話『大人に頼る事も考えなさい』

シンクの言葉に、う、と僕とユエは目を逸らす。

痴話喧嘩をしているつもりは全くないのだが、確かに周りを巻き込んでいる気がする。

 

「「すみません…」」

「話すなら、お互いが納得するまで話せよ。で、話変わるけど。シャナ、魔本どうした?」

 

シンクに対して二人同時に謝ると、弟は僕らの様子に少し苦笑してからシャナに話を振った。

 

「リブロ?」

【はい、マスター】

 

シャナが魔本を呼ぶと、直ぐに現れる。

それを見たシンクが目を細めた。

 

「お前、それ使ってて何か違和感は?」

「使ってはないけど、使役はしてるって意味なら全くないよ。むしろ、魔力の循環効率が良くなった気がする。あ、リブロは完璧にあたしの支配下にあるから、暴走する心配もないよ」

 

そこは心配してねーよ、とシンクは言う。

心配なのは、シャナが魔王にならないかという事だろう。

ただでさえ、初代の魔王が復活したっていうのに、更にシャナまで敵に回ってしまったら目も当てられない。

 

「なんだっけ、この子の前の主。ディアブロ? だっけ?」

「カルロタ・ダヴィド・エドゥアルド、って名乗ってたけど?」

 

そうそうと、シャナは頷く。

 

「あいつの記憶とか知識とか流れ込んできたけど、そんなの知ったこっちゃないって跳ね返したんだよね。あ、でも魔術の知識だけは役立ちそうだったから、それは頭に残してあるよ。これで魔王戦でも役に立ちそうだよね」

「お前…危ない事すんなよな」

 

シンクはため息をつきながら立ち上がり、シャナの隣に立つと姉を抱きしめた。

それにシャナとシンク以外、ギョッとする。

 

言っちゃ悪いけど、一匹狼というか、孤高を貫いているようなシンクが、別次元の姉を抱きしめるとか、あり得ないと思っていた。

僕は生まれた時からシャナと一緒だったから、そういう風に抱きついたりはしていたし、シャナもシンクや僕に対して、弟だからと抱きしめたりはしていたけど。

 

シャナも最初は驚いていたけど、嬉しそうに笑った。

 

「ふふふ。ありがとうシンク、心配してくれて。でも、お姉ちゃんは大丈夫だよ。魔王になったりなんかしないし、何なら弟二人ぐらい守ってみせるよ。あ、ユエちゃん達や、ツルギ君は自分でなんとかしてね。あたし、そこまで器用じゃないから」

 

ははは、と笑うシャナに場の空気が緩む。

ぽんぽん、とシンクの腕を軽く叩いて、シャナは離れるように促した。

 

「…何かあったらすぐ言えよ」

 

シンクは少し不満そうに、シャナに言いながら離れる。

 

「グンジョウ以上に心配性だなぁ、シンクは。大丈夫だってば。あたし、これでも丈夫なんだから。ね、グンジョウ?」

「そうだね…三歳くらいの時、城の最上階から飛び降りて無傷だった時は、流石に心臓が止まるくらい驚いたけど。ツルギ、こんな姉だけど宜しくね。返品は受け付けるから」

 

どういう意味だ、と怒っている姉に僕は笑う。

ツルギも、そんな事はしないと彼にしては珍しく笑っていた。

 

◆◆◆

 

ゴールデンウイーク最終日までテスタロッサの家にお世話になり、僕らは見送りに来てくれたお祖父様とお祖母様に挨拶する。

 

「お世話になりました、お祖父様、お祖母様。この騒動が終わったら、また会いに来ます。それまでどうか、お元気で」

「えぇ、貴方も。グンジョウ、久々に会えて嬉しかったですよ」

 

ニコニコと笑いながら、お祖父様は手を差し出してきた。

それに対して僕も手を差し出し、握る。

 

「たまには、城に遊びに来てくださいよお祖父様。俺ら以外にも孫は沢山いるんですから」

「そうですね。新しい孫も出来ましたし、ターニャと共に近々行きましょうかね」

 

シンクの頭を撫で、お祖父様は笑みを深くする。

頭を撫でられた弟は、少し照れくさそうに笑った。

 

「グンジョウ兄さん、シンク兄さん、暇になったら会いにきてくれよな! 何か、母様達から兄さん達忙しい事に巻き込まれてるから、我慢しろって言われてよぉ…って、痛いって母様!!」

「余計な事は言わなくて宜しい。グンジョウ、この本を貴方に」

 

ルージェの耳を引っ張り、お祖母様は僕に一冊の本を渡してくる。

受け取り、僕は首を傾げた。

 

「あの、これは…?」

「剣術に戦術を合わせた本です。これからの戦いに役立つ事でしょう。グンジョウ、辛い事もあるでしょうが…無理をせず。自分の手に負えないと判断したのなら、すぐに撤退をなさい。自分達で何とかしようとせず、大人に頼る事も考えなさい。良いですね?」

 

お祖母様は優しい目をしながら、僕の頬に手を添え撫でてくる。

 

「はい、お祖母様…ありがとうございます」

「お祖母様、また来るね!」

 

後ろからシャナがお祖母様に抱きつく。

少し目を丸くし、その後仕方ないと笑うお祖母様は、軽くシャナの頭を叩いた。

 

「不意打ちとはやりますね、シャナ。貴女も、無理はしないように。私の可愛い孫達とお嬢様が元気で過ごす事が、私の願いなのですから」

 

そこに父様が入っていない所が、お祖母様らしい。

僕らは迎えの車に乗り、テスタロッサ家に別れを告げた。

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