ノーム3の月。
この間母様に一太刀入れられた後から、一対多ではなく、多対多での戦闘訓練に変わった。
今日の深夜の狂化訓練で、僕は自分の顔が引き攣るのを感じてしまう。
「なんで、父様が…?」
「なんだグンジョウ、俺が相手では不満か?」
準備運動をしている父様の横で、母様はニコニコ笑っていた。
どうやら今回は三人が相手らしく、僕はシンクを見る。
「父様に対処出来る?」
「すんのはお前だろ、グンジョウ。俺が対処すんのは…」
シンクはチラリと母様を見るが、すぐにギョッとなった。
僕もシンクから母様の方に視線を動かし、同じようにギョッとする。
いつの間にか母様の服が、いつものゆったりしたドレスから、親衛隊の服に変わっていたからだ。
腰には刀を履いていて、髪もポニーテールになっている。
「え、嘘…」
「今日の後衛は私だ。さて、始めようじゃないか」
カヅキおばさんがぱんぱんと手を鳴らし、僕達に開始を告げた。
僕らはいつものフォーメーションを組む。
「ナズナ。貴方との共闘、何年振りかしらね?」
「結婚式の時以来じゃないか? お前のその服も、久々に見たな。お前は何を着ても美しい。まぁ、息子達に俺達の実力を見せてやるとしようじゃないか」
お互いを見ず、両親は拳を合わせた後消えた。
マズいと思った僕は、気配を察して回避行動をとる。
「ふむ、流石は俺達の子だ。反射速度は良いな、グンジョウ」
僕がいた場所に、父様が切先を振り下ろしながら僕を褒めた。
ユエがすかさず父様に銃弾を撃ち込むが、それすらも持っていた刀で全て叩き落とす。
「うっそ……陛下、転生者じゃないよねアオ?!」
「リューネのレオーネって、異名持ってるんだよ父様は!!」
僕は父様と斬り結ぶ。
二本の剣で父様と斬り結んでいるのに、それを父様は全て一本の刀で、受けたり、斬り払ったりしている。
しかも全て片手で。
母様はとそちらに少し視線を向けると、ユタカとツルギの攻撃をいなしながら、シンクとシャナの所へ向かっていた。
「ユエ、二人のサポートに回れ!!」
「それを許すと思うか?」
父様が左手で刀を扱いながら、右手でユエに向けて魔法を放つ。
父様の属性は、雷と重力。
光と同等のスピードを誇る雷魔法は、止めようにも止められないし、重力は身動きが取れなくなる。
「
父様が重力魔法を使った。
少しは情けをかけてくれているようだが、ユエが重力で押し潰され、戦闘不能になってしまう。
シンクとシャナの所に母様が到達し、二人と戦闘に入っている。
ユタカとツルギは、カヅキおばさんの影魔法で翻弄されているようだ。
「さて、どうするグンジョウ? 政務で腕が衰えている俺に、負けるのか?」
「何処が衰えてるって言うんだよ?!」
たまに母様と模擬戦してるの、知ってるんだからな?!
「そう言えるだけの余力はあるんだな。シャル、潰していいか?」
「好きにすればいいわよ。死なない程度にしてね。治すの大変なんだから」
善処しよう、そう言って父様は刀を鞘にしまい、身を低くする。
まさかと思った瞬間、僕は父様にもう斬られていた。
血が腹から流れ落ち、口からも血を吐き、その場に崩れ落ちる。
1時間もしない内に、戦闘訓練が終了した。
◆◆◆
傷を治してもらった僕が起き上がって見たものは、母様に説教されている父様の姿だった。
「死なない程度にしなさいって、あたし言ったわよね? 特にグンジョウの傷が一番深かったんだけど? 貴方、加減というものを忘れたのかしら?」
「すまなかった…。峰打ちにしておけば良かったと思っている…」
正座して項垂れている父様を見つつ、カヅキおばさんが呆れた口調で母様を嗜める。
「お前、人の事言えねぇだろうが。グンジョウの肩の骨、盛大に折ったのはどこのどいつだ」
「そんな昔の事忘れたわよ」
あれ、昔に数えられるんだ…。
結構痛かったんだけどな…。
「流石に、父様と母様のコンビネーションには、勝てねぇわ…」
僕の傍に来たシンクが、二人を見ながらそう言う。
「で、あの後どうなったの?」
弟に、僕が倒れた後の話を聞いてみた。
「お前が倒れた後? 母様の攻撃プラス、父様が参戦して即ダウンだよ。ユタカとツルギも、おばさんの影魔法にとっ捕まって、終わり。こん中で一番慈悲あんの、おばさんだと思うわ俺」
うちの両親、戦闘に関して無慈悲だった事が、今日の戦闘訓練でよくわかった。
これ、今後も続けるつもりなのだろうか。
「流石に身がもたない…」
「陛下も忙しいから、そう頻繁に来ないと思うんだけど…むしろ、パパの方が陛下よりヤバいと思う。次元斬使えるはずだし…」
父様の魔法で骨が折れて動けなくなっていたユエが、やっと回復したようで、彼女も僕の傍に来てそう言った。
確かに、ユーリおじさんが来たら僕ら瞬殺だろうなぁ…。
「…今度は裕里も呼ぶか」
「やめてください、カヅキおばさん。いや、
僕らの話を聞いていたカヅキおばさんがポツリと呟き、シンクが拝み倒してやめてもらうよう懇願する。