「意地悪なのは認めるけど、僕を馬鹿だと言うのなら、学年主席取ってみたら? 今度のテスト、手を貸さないからね。それでも良いなら、僕を馬鹿と言い続ければいいんじゃない?」
言い過ぎだとシャナから注意を受けるが、最初にそう言ってきたのはユエなので、僕は謝る気など無い。
うー、とユエが唸り声を上げるが、僕は本から顔を上げる気もなかったので、そのまま唸らせておく。
「グンちゃん、結構言うね…。私も言われた方だけど、あそこまでキツくなかったかな…」
ユタカの呟きに対して、僕はページを捲りながら返した。
「君の場合、纏わりついてきて鬱陶しかったから、あぁ言っただけ。適度な距離感だったなら、そこまで言うつもりは全くなかったよ」
シャナがため息をつき、僕から本を奪った。
いい加減にしろ、とドスの聞いた声で、僕の頭を叩く。
「グンジョウ、少し冷静になったら? 本を読むの邪魔されたくないのは分かるんだけど、ちょっとは周りを見なさい」
シャナの言葉に周囲を見るが、周りが少し引いてるのを見て、やらかした、と心の中で頭を抱えた。
本を読んでいる間の僕の応答は、結構冷たいというかなんというか。
いつも話すような態度ではなく、棘がふんだんに盛り込まれているような態度を取るので、二重人格かとエミル君に言われていたりしたのに。
「……みんな、ごめん。城に帰ってから読む事にするよ…ユエもごめんね。もっと、馬鹿って言ってくれていいよ…」
収納魔法に本をしまい、ユエに頭を下げる。
彼女は少し涙目になりつつ、シャナにまた抱きついた。
「アオのバーカ。本当にバカ。死なれたら困るから婚約解消しないけど、いい加減にして」
「…はい、すみませんでした。いや、本当に嫌ならしてくれてもいいんだけど…死のうとしても絶対蘇生させられるし…」
そういう所だと、ユエからも叩かれる。
シンクも呆れた目を向けるし。
うん、僕が悪いので甘んじて受けるとしよう。
◆◆◆
半日…約6時間経って、フリーデリーケの領地に辿り着く。
車で屋敷に向かっている途中、僕は窓の外から見える民の笑顔に違和感を覚えた。
普通に見れば、談笑したりしているだけに見えるのに、それが作り物の笑顔に見えてしまったのだ。
「…なんか異様」
「グンちゃんもそう思う?」
僕と同じく、反対側の窓から外を見ていたユタカが、僕の呟きに同意してくる。
彼女も違和感を感じているようで、シンクの服を掴みながら不安そうな顔をしていた。
「大丈夫だって、ユタカ。何かあっても、お前だけは絶対守るから」
「シンク……君、本当にブレないよね…」
ユタカの頭を抱き、そこへ口付けを落とすシンクを見て、僕は苦笑する。
何を当たり前な、という顔をされたので、さらに苦笑を深める他ない。
車が屋敷に着く。
僕らが降りると、屋敷の方から痩身の男性が走ってきた。
「お待ちしておりました、グンジョウ殿下」
「お久しぶりです、フリーデリーケ卿。陛下から通達はいっている事かと思いますが…」
えぇ、えぇ、とフリーデリーケ卿は頷く。
そんなに首を振ったら頭が取れそうだと思うくらい、彼の体は痩せ細っていた。
「…フリーデリーケ卿、失礼を承知でお尋ねしますが…ちゃんと食事はなさってますか?」
「勿論でございます。食べても何故か痩せてしまって…お恥ずかしい限りです…」
はは、と笑う彼へ、僕らが帰った後病院にかかった方がいいと勧める。
食べても痩せていくなんて、何らかの病気を疑った方がいい。
「どうぞ、我が家へ。何もなくて恐縮の限りですが…存分にお調べになっていただければ…。それに、王都からの長旅でお疲れの事でしょう。お部屋も用意しましたので…」
「何から何まで、ありがとうございます。明日には帰りますが、お世話になります」
僕はフリーデリーケ卿に礼を言い、敷地内に足を踏み入れる。
シャナとシンクも僕同様に足を踏み入れ、同時くらいにその足が止まった。
「? 二人共、どうかした?」
ユエやユタカ、ツルギは案内されるまま歩いて行っているが、僕は二人の様子に首を傾げる。
「何か、気持ち悪い…」
「これを感じれないおにーさまが羨ましいぜ。今回はちょっと、マズいかもしんねぇな…」
一体何があったんだと問いかけるが二人共、感覚で感じてるから説明出来ない、と返してきた。
シャナは寒そうに腕を擦ってるし、シンクは冷や汗が浮かんでいる。
別に寒いわけでも暑いわけでもなく、過ごしやすい季節であるのにも関わらずだ。
「二人共、魔力量は人並み以上だから、転移で帰る?」
「こんな所にグンジョウ達残して、帰れるわけないでしょうが。さっさと見つけ出して帰るよ!」
シャナが僕の手を掴んで、先へ行ってしまった三人に追いつくように歩き出す。
その後をシンクが付いて来るが、弟は一言も喋らなかった。
本当、ここには何があると言うんだろうか?
今回も魔王の遺物の反応はあったが、それが何かまでは特定できなかった。