魔王の遺物の一覧の中にあった、
兜、弓、鎧、具足、銃、籠手、眼、槍、刀、爪。
以上10種は、魔王の手に落ちたとカヅキおばさんは言っていたけれど。
僕は魔王の遺物を思い出して、指折り数える。
魔本であるリブロはシャナの使役下だし、剣は破壊した。
魔玉も、もうない。
24種類のうち、こちらの手で破壊や奪取出来たのは3種類だけ。
「結構持ってかれてるよなぁ…」
「何が?」
三人に追いついてから、シャナは僕の手を離し、ツルギの腕に抱きついていた。
ツルギが少し慌てていたが、シャナの様子に彼は姉の頭を撫で始める。
そんな二人を眺めながら呟くと、僕の隣にいつの間にか来ていたユエが、首を傾げながら問いかけてきた。
「ん? あぁ、魔王の遺物。敵に結構取られてるよな、って」
「ママ達が今、遺物を使って逆探知して、魔王の居場所探してるらしいよ。次元の狭間に対してもやってるみたいだけど、なかなか成果が上がらないって、この間夕飯作ってる時にパパと話してた」
そんな重要な話、夕飯時に話すのかカヅキおばさん…。
いや、関係者しかいないし、おばさんの屋敷には対魔力対防御の結界が張られている。
防音の魔法も組み込まれているはずだから、内部の音が外に漏れる事は無いんだろうけど。
「本当にこの戦い、いつになったら終わるのやら…」
僕はため息をつく。
高等部の間、この状態なんて。
もしかしたら、卒業してからも終わらない可能性もあるんだけど。
「ユエとデートしたい…なんで高等部生なのに、こう青春ってものが感じられないんだ…」
「アオ、発言が…」
ユエが僕の言葉に苦笑する。
老けてるって言いたいんだろ。
わかってるよ。
趣味もアウトドアじゃなくて、インドアだし。
でもさぁ…ユエとデートしたいのも本当だし、本だって読みたいんだよ。
王になったらそんな事も出来なくなるんだから。
「シンク」
「嫌だ」
名前を呼ぶと即答でそう返ってくる。
こいつ、やっぱり僕の思考読んでるな。
僕の代わりに王太子にならない? って聞こうと思ったのに。
「おにーさまよぉ…それで父様達が納得すると思ってる?」
「思ってないし、思考しただけだろ。ユエだって頑張って、学校が終わった後、訓練が始まるまで妃教育受けてくれてるんだから…。僕だって、我慢しなくちゃいけないのはわかってるよ…はぁ…」
肩を落とした僕に対して、ユエとシンクが慰めるように背中を軽く叩いてきた。
◆◆◆
屋敷内に案内され、そこから捜索を開始してから1時間。
客室を探していた僕だったが、目ぼしいものは全くと言っていいほど見つからない。
そして、昼食は車内で取ってきたから別段お腹は空いてないはずなのだが、空腹を感じてしまう。
「…これが、シャナとシンクが言ってたやつかな」
魔力が吸われているのだろうか?
でも、フリーデリーケにそんな結界なんて、張られてはいなかったはずだし、むしろ張っていたのならこれは危ないものだ。
フリーデリーケ卿があんなに痩せ細っていたのも、それが原因なのではないだろうか?
〈シンク、今何処にいる?〉
念話を飛ばしてみるが、何かに妨害されている感覚がする。
携帯を開いてみたら、圏外になっていた。
「…散らばったのは、マズかったかな」
一つの仮説を立て、僕は客室から出る。
僕らは訓練を積んでいるとは言え、実戦経験は然程ない。
無くても蹴散らせるのが、母様達転生者である。
僕らの中で何かあっても生き残れるとしたら、ツルギと僕以外だけだ。
物理で来られたらそうでもないが、殊魔法に関してだけは、僕とツルギには分が悪い。
僕は客室がある部屋の扉を、全て開けていく。
確か、ここの捜索は僕とシャナだったはずだ。
姉を見つければ、多少は状況を打破できるかもしれない。
そう踏んだ。
何部屋目かの扉を開け、中を確認した時だった。
シャナが客室中央で倒れているの見つける。
「シャナ!!」
「う…グンジョウ…入っちゃ、ダメ…っ!!」
部屋に入ろうとした僕を、姉は制止してきた。
シャナは少しずつ、部屋から出ようとしているみたいだったが、それでも微々たる進みだった。
「…ごめん、シャナ」
何かがあって、僕に部屋へ入るなと言ってきたのは理解している。
だが、僕の半身をそのままにして置けるほど、僕はそこまで利口ではない。
僕は脚力強化を施し、床を蹴ってシャナを抱き抱える。
瞬間、魔力と共に生命力も抜け落ちていく感覚がした。
「ぐ…ぅ…っ!!」
渾身の力を振り絞り、シャナを抱き抱えたまま扉の外に向かって、また床を蹴る。
その状態で受け身を取れるはずもなく、僕は壁に体を叩きつける羽目になった。
「いっ…つ…ぅ……っ!」
「……ごめ……グンジョ…大…丈夫…?」
僕の腕の中で、シャナがぐったりしながら心配してくる。
まずは自分の心配をしてくれないだろうか。
「シャナこそ…何があったの…」
「…わかん、ない…遺物…探してたら、いきなり…。魔力とか吸われて、動けなくなっちゃって……グンジョウ…無茶な事したね…? 本当に、シスコン…なんだから。でも…ありがとう…助かったよ…」