my way of life   作:桜舞

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126話『脱出がんばー!』

「シンク、ユタカちゃんが見たら嫉妬されるから離してよ?」

「そんな狭量な女じゃねぇよ。あん時だって、嫉妬なんざしてなかったぞ」

 

あの時といえば、先月シンクが初めてシャナを抱きしめていた時か。

確かに、僕の時は嫉妬に駆られたような顔をしていたのに、シンクと付き合ってからは結構穏やかな顔をしている事が多いな。

 

ユタカが不安になるような事を、シンクはしていないのだろう。

僕はどうだろうかと、自問自答してみる。

 

ユエが不安になるような事ばかり、している気がした。

僕は彼女の手を握る。

そうされたユエは、少し驚いた後フワッと笑った。

 

「アオ、何考えてるか分かるけど。私は、何も不安に思った事はないよ? 確かに、アオに対して不満だと思った事は沢山あるけど。それも、言わなくても察してくれてるアオが、私は大好きだよ」

「…うん、ごめんね。不満、沢山あるんだ…本当にごめん…」

 

僕らがそんな会話をしていても、シンクはシャナから離れようとしない。

とても姉の事を心配していたようだ。

死にかけていたのだから当然ではある。

 

「…姉弟じゃなかったら、絵になるよねぇ」

「ユエ、それ僕に対しても思った事あるだろ。シンク、結界の強度はまだ保つのか? 確か二人共、フリーデリーケ家の宝物庫に行ってるんじゃないのか?」

 

シャナが眼鏡を投げて寄越して来たのをキャッチして、かけながらシンクに尋ねる。

瞬間、弟はフリーデリーケの宝物庫の方を見た後、シャナを離して駆け出した。

 

「ユタカ…? ユタカっ!!」

 

自分の恋人の名を叫びながら。

尋常じゃない慌てように、僕らは顔を見合わせた後、弟の後を追った。

 

◆◆◆

 

宝物庫に辿り着いた僕らが見たものは、物語の中でしか見た事がないような金銀財宝が、所狭しと部屋の中に山積みにされている場所だった。

その中央、開けた場所にツルギとユタカが倒れている。

 

「ユタカ!!」

「ツルギ君っ!!」

 

二人の姿を見たシャナとシンクが、名前を呼んだ。

 

「遅かったね、お兄ちゃん達」

 

財宝の山の上。

足を組んで、自分の膝に頬杖をついた桃華が僕らを見下ろしていた。

 

「…やったのはお前か、桃華」

 

シンクが低い声で尋ねる。

シャナもリブロを出し、桃華を睨みつけていた。

 

「アタシ? 違う違う。やったのはそこの、お・じ・さ・ん。アタシはただの監視役だよ。魔王の因子を、素養もない普通の人間に植え付けたらどうなるか、っていう実験。あ、町の人達にも植え付けてあるから、ゾンビ映画よろしく脱出がんばー!」

 

ケラケラ笑う桃華から、僕は正面に顔を向ける。

目が虚になって、口の端から涎を垂らしたフリーデリーケ卿の姿があった。

 

正気を失っているのは、見れば分かる。

それに、町の人にもだって?

いつからだ?

まさか、あの異様な笑顔は…僕らが来る前からだっていうのか?

 

「なんて事を…」

 

僕はフリーデリーケ卿を見ながら、唖然とする。

これは、街が一つ壊滅したと言ってもいい事態だ。

 

「アタシだってしたく無かったんだよ、お兄ちゃん? でも魔王がさぁ。人で遊ぶのも、少しは余興になるだろうってさ。それに、そいつらまだ死んでないから、許してくれないかなぁ? まぁ、今から死んじゃうかもだけど!」

 

桃華がそう言い、その手に魔銃を呼び出した。

それをユタカとツルギに向けて、撃つ。

シンクがシールドを張るよりも早く、桃華の弾丸はユタカとツルギを貫いた。

 

「うっ…!」

「ぐっ…」

 

傷が深かったようで、貫かれた場所から血が滲む速度が早く、衣服が血に染まっていく。

それに対して、シンクとシャナがキレた。

シャナも普段の怒り方ではない、本当にキレた状態だし、シンクがキレるのも初めて見た。

桃華の相手は二人に任せ、僕はユエに言う。

 

「ユエ、回復魔法(ヒール)使えたよね? 二人の治療よろしく。僕はフリーデリーケ卿の相手をする」

「わかった。気を付けてね、アオ」

 

僕はブランシュとノワールを呼び出し、フリーデリーケ卿を見た。

そしてシャナに問う。

 

「シャナ、リンク切った方がいい?」

「そのままで構わない。私が、お前と繋いだままであれに劣るとでも思うのか?」

 

あのモード、女帝とでも名付けようかな。

 

シャナの方を見ず、僕は姉に言葉を返した。

 

「いいえ、姉君。僕より魔法の扱いが上手い姉君が、あいつに劣るとは思えません。お力、お借りします」

「当然だ。存分に持っていけ、グンジョウ。シンク、行くぞ」

 

僕が脚力強化を施し床を蹴るのと同時に、シンクが桃華に突っ込んでいくのを横目で見る。

珍しいと思うが、ユタカがあの状態だ。

頭に血が昇っているのだろう。

 

シンク達の方は、自分達で何とか出来ると思い、僕はフリーデリーケ卿へ剣を振り下ろした。

それは肩に当たったが、普通ならそのまま切り裂かれるはずの体は、金属に当たったかのように手に痺れを伝えてくる。

 

フリーデリーケ卿が、僕に向けて腕を振り抜く。

咄嗟にブランシュを盾にして防ぐが、僕は吹っ飛ばされた。

 

「アオっ!!」

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