my way of life   作:桜舞

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127話『残念な事に真実』

「大丈夫! ユエは治療に専念しろ!!」

 

吹っ飛ばされた僕を心配して、ユエが叫ぶ。

だが、これくらいの衝撃で昏倒していたのは、訓練の初期だけだ。

今では、意識が飛ぶ事もない。

きちんと受け身も取れているから、致命傷を負う事もないし、すぐさま迎撃に移れる。

 

本当訓練様々だな。

 

フリーデリーケ卿が、ユエに狙いを定めて走り出したのを見て、僕は片手を上げる。

 

三重重力(トリプル・グラヴィティ)!!」

 

動きを止めるためには、僕の属性である炎では叶わない。

なら、重力を使うしかないと判断して、僕はフリーデリーケ卿に魔法を放つ。

 

卿は重力魔法に押し潰され、身動きが取れずそのまま地に伏せた。

 

僕は自分の属性以外は魔力もないせいで、ほぼ使えない。

一般人レベル以下にしか、使えないのだ。

そんな常識外の事が出来るのは、母様達転生者だけ。

なら、何故重力魔法が使えたか。

答えは単純だ。

 

シャナが、全属性使えるからだ。

姉は母様の血が濃かったようで、小さい時から全属性の魔法が使えた。

そのシャナとリンクを繋いでいるからこそ、できた芸当である。

 

それは説明してなかったので、ユエは治療を止める事なく、驚いて僕を見ていた。

 

「次元の狭間に、落ち、朽ちろ。闇渦(ブラックホール)!!」

 

重力魔法に加えて闇魔法も使い、フリーデリーケ卿を跡形も無く、文字通り姿を消し飛ばす。

 

「アオ…せめて正気に戻す方法とか…」

 

魔法を受けて亡くなった、フリーデリーケ卿がいた場所を見ながら、ユエが呟いた。

 

「無駄だと、判断したからこうした。これで叱責を受けるなら、仕方ないとは思っている。あのまま捕獲するために動いたなら、今度は君もツルギとユタカ同様、倒れる羽目になっていた。それに証拠とするなら、街の人を一人連れていけばいい。桃華の言を信じるなら、街の人も同じ状態になっているはずだ。あくまで、あれが真実を言っているという前提だけど」

 

まぁ、宝物庫の扉を叩く音や呻き声からして、残念な事に真実なんだろう。

シンク達の方を見ると、もう決着がついていた。

 

赤色の狼が、桃華を食い殺していたのだ。

 

「がは…っ!!」

 

胴体を真っ二つにされ、上半身だけになった桃華は血を吐きながら、シンクを見上げている。

所々、腕とかが無くなっているのは、シンクではなくシャナの仕業だろう。

リブロを浮かばせ、冷たい目で姉は桃華を見ていたのだから。

 

「いくらかつての妹といえども、容赦はしねぇぞ桃華」

「…あれも、雪那だから、かな…お兄ちゃん…? 傷つけられて…怒った系…?」

 

嫌な笑いを浮かべそう言う桃華の頭を、舌打ちしながら思い切りシンクは踏みつけて潰した。

ユエの治療で回復し、やっと起き上がれるようになったツルギとユタカだったが、桃華の言葉にユエとユタカが驚いている。

 

「え…?」

「ただの戯言だ。聞く価値もない。お前は誰でもないよ、ユタカ」

 

シンクが苦笑しながら、彼女に声をかけた。

その表情を見て、僕は理解する。

ユタカも、別次元の雪那。

シンクの恋人だったのだと。

 

なんの因果だと、僕は思う。

本当、将来何か起こるんじゃないか、この世界。

その時、僕は何が出来るのだろうかと考えてしまう。

 

「シンク…」

「ツルギ君、無事?!」

 

ユタカの呟きを掻き消すように、シャナが泣きそうになりながら、ツルギの名を呼び抱きつく。

そんな姉の頭を撫でながら、うん、とツルギはシャナを抱きしめた。

 

「シンク、それ使い魔?」

 

ぺっぺっと、桃華の血を吐き出している赤色の狼を見つつ、僕はシンクに尋ねる。

 

「そ。な、ラース」

〔いきなり呼び出して、小娘を食い殺させるとは…我が主は、使い魔遣いが荒い。嫉妬のが羨ましい〕

 

そう言うなよ、とシンクは笑う。

というか、いつの間に使い魔召喚していたんだこいつ。

僕の視線に気付いた弟は、前ちょっとな、と言った。

 

「シンク、ちょっと話があるんだけど」

 

ユタカがいつの間にか僕らの傍に来ていて、シンクの服を引っ張る。

彼女のその顔は真剣そのもので、いつものユタカへ向ける笑顔とはまた違う、少し困ったような笑顔をシンクは浮かべた。

 

「ユタカ…帰ってからじゃダメか?」

「そうしたら、シンクはぐらかして、聞いても惚けて忘れたって、話してくれなくなるじゃん。今じゃなきゃダメ」

 

僕は肩を竦め、二人から離れる。

ラースも元の場所に帰ったようで、その場からいなくなっていた。

 

とりあえず、僕はユエ達の方に歩いていく。

背後で魔法が発動する気配がしたが、聞かれたくない話だろうからと、気にする事はなかった。

 

◆◆◆

 

さて、どうやってはぐらかすかなぁ…。

 

グンジョウが離れた後、俺は防音と周囲から見えないように周囲二メートルくらいの結界を張る。

真剣な顔で俺を見てくるユタカに、俺は頭を掻きながら思考した。

 

桃華のやつ、余計な事を…。

 

グンジョウの方の妹である桃華を思い出し、舌打ちしたくなる。

ユタカは、雪那だと思う。

多分、俺の方の。

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