「だよね」
さて、どうしたものか。
「雷系でコイン飛ばして弾丸にする?」
「そんな芸当出来るの、シャナかシンクくらいでしょ。君出来るの?」
ユエも僕の隣で考えながら、そう呟いたものだから尋ねてみる。
答えはノーだった。
「私も一応全属性使えるけど、ママの娘だからコントロールが…」
「デバイス持ってきてないの?」
遺跡の時に、おばさんが開発したデバイスをユエは持っていたはずだ。
だが彼女は、目を横に滑らせる。
「…ただの捜索だと思って…フリーデリーケ卿のとこだしって…」
「ユエ…」
どうやら収納魔法にも入れてなかったようだ。
雷魔法を使おうと思えばできる。
ただし、シャナ頼りだが。
リンクを繋いでるといっても、シャナの魔力を使うからそう連発出来るものでもない。
先程の戦闘で、シャナの魔力量も削れているだろうし。
「月曜になっても、俺達が戻って来なかったら…先生達が、異変を感じて…来てくれないでしょうか…?」
「その前に、シャナとシンクの結界が保たない。籠城するには、ここは不向きすぎる…んー…別に噛まれても、感染するわけじゃないと思うし…良し、いくか」
ブランシュとノワールを掴み、僕は扉の方へ歩き出した。
いやいやいや、とシャナとユエから服を掴まれ、止められる。
「なんで感染しないって思うわけ?! 魔王の因子が埋め込まれてるんでしょ?! 十分感染する要因あるじゃん?!」
「アオが行くなら、私も行くからね?! なんで一人で行こうとするの馬鹿!!」
女性陣の圧凄い…。
あと、またユエから馬鹿って言われた…。
どうやって宥めようと思っていると、シンクの結界が弾けて消えた。
「何痴話喧嘩してんだ、お前ら」
「痴話喧嘩ではないんだけど…この場からどうやって出ようかって話をしてるんだよ」
「ちょっと聞いてよシンク!!」
先程の僕の行動をシャナから聞いたシンクは、あー、と納得する。
「それは怒られるわ、お前。まぁ、俺が来たからにはって事で。シャナ、まだ魔力量は平気か?」
「え、うん。一日くらいだったら、守りの結界は張り続けられるけど…何する気?」
シンクの発言に、シャナは首を傾げた。
「じゃあ、全員分よろしく。ユタカ、無理させるけど…」
「良いよ、存分に使って」
シンクと手を繋いでいたユタカが微笑む。
一体何をする気なのか、と思った所で、シンクとユタカの間でリンクが繋がったのがわかった。
魔力回路が二人の間で、高速で回り始めているのを感じる。
「シンク! 一体何をするんだ?!」
「母様程じゃねぇが、俺だってこれくらいは出来るんだよ!!」
シンクが魔武器であろう大きな杖を出し、扉に向けて振り下ろした。
「
光魔法最大級の、神罰。
昔戦争があった際、母様がこれを使って死にかけたらしい。
それ以来、母様がこれを使う事はなく、僕も見た事がなかった。
シンクが神罰を使った直後から扉の外の音が無くなり、静寂が訪れる。
ドサッ、と背後から音がして振り向くと、シンクとユタカが倒れていた。
「シンク!! ユタカ!!」
「ごめ…ユタカ…シャナ、すぐ屋敷に、結界張れ…魂喰らいのも、壊したから…あと、グンジョ…ちょっと寝れば、回復するから…心配すんな…」
そう言って、シンクは目を閉じる。
二人のバイタルをシャナがすぐ確認するが、シンクの言葉通りのようで胸を撫で下ろしていた。
シャナが指を鳴らし、屋敷全体に結界を張る。
僕はそっと、宝物庫の扉を開けた。
暗い廊下が続くばかりで、人影は見当たらない。
「…とりあえず、移動しようか」
僕の提案に、三人が頷いた。
◆◆◆
ユタカとシンクを抱えて、客室のベッドに寝かせる。
窓から庭が見えたのでそちらを見ると、結界の境に人が殺到しているのが見えた。
「いや、怖っ…」
本当にホラー映画じゃん。
観るのは良いけど、実際体験するとこんなに怖いものなんだな…。
是非ともシャナには結界を維持してもらわねば。
魔力量がやばい場合は、ユエとツルギに謝り倒してまたアレをやらなければ…仕方ない、本当に仕方ない、出来ればしたくない。
「アオ、ご飯出来たよ」
ユエが扉を少し開けて、部屋の中を覗き込んできた。
屋敷の中は誰一人おらず、食材だけは残っていたので、それを拝借して三人が夕飯を作っていたのだ。
僕は料理作れないし、ユタカとシンクが心配だったから、ここに残らせてもらっていたが。
「ありがとう。二人を残していくの心配だから、僕はここで頂くよ」
そう言うと思った、とユエは夕飯が乗ったトレーを僕に渡してくる。
本当に、僕の事を理解してくれてて有難い。
「ユエ、ありがとう。こんな僕と付き合ってくれて」
「やめて、死亡フラグに聞こえる」
普通に感謝を伝えただけなのに、死亡フラグって言われてしまった…。
ユエからトレーを受け取り、客室の机に置く。
視線を感じて振り返ると、ユエがまだそこに立っていた。
「? どうかした?」
「……察してよ」
プイッ、と顔を横に向けた彼女に苦笑する。