my way of life   作:桜舞

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13話『久しぶりだった』

夜中になる時間帯、僕は体を揺さぶられて起こされた。

 

「ん…何…」

 

寝ぼけ眼を擦り、僕はサイドテーブルにあるライトの紐を引っ張る。

目の前に映る金色に、僕はため息をついた。

 

「…シャナ…今何時だと思って…」

「……っぐ…ひ…っ…ぅ…」

 

ポタポタと、服に何か落ちる。

半覚醒状態で文句を言った僕だったが、シャナのその声に飛び起きた。

そして置いてあった眼鏡を取り、かける。

 

シャナが、大粒の涙を溢しながら僕を見つめていた。

 

「えっ? 何、どうしたの? なんで泣いてるの?」

「うぇ…え…グンジョウ…ふぇえ…っ」

 

床に座り込んで本格的に泣き始めてしまった姉を、僕は抱きしめる。

 

「どうしたって言うんだよ、シャナ。何? 賊でも入ってきた?」

 

僕の問いかけに、シャナは首を横に振った。

抱きしめる僕の服を握りしめてくる。

 

「怖い…怖い夢、見た…現実なんじゃ、ないかって…怖いよ、グンジョウ…」

 

怖いと呟く姉の背中を撫でながら、僕は言う。

 

「大丈夫だよ、シャナ。僕がいる。母様や、カヅキおばさんだっているじゃないか。ユーリおじさんや、父様だって。シャナが怖がる事なんて、何もないから」

「でも…」

 

さらに続ける姉に、僕は額をくっつけた。

そして目を閉じる。

 

「大丈夫。何に怖がっているか、僕には分からないけど。シャナが笑える明日は、ちゃんと来るよ。だから、眠ろう。今度は僕も一緒にいるから。昔みたいに、手を繋いで」

「……うん」

 

僕のベッドに潜り込んで、シャナはこちらを見た。

その様子に苦笑し、僕も姉の隣に寝そべる。

ちゃんと約束通り、手を繋いで。

 

「おやすみ、シャナ」

「うん…おやすみ、グンジョウ…」

 

目を閉じ、シャナはすぐに寝息を立て始める。

 

しかし、あれは久しぶりだった。

幼い頃はよく、怖い夢を見たと泣きながら僕のベッドに潜り込んできていたシャナ。

普通、母様達の方に行くだろうと思うのだが、母様達の寝室と僕らの寝室は遠い。

あんな光量が少ない廊下なんて、怖い夢を見たのに行けるはずがなく、シャナは仕方なしに僕のベッドに来ていたのだ。

 

「怖い夢、ねぇ…」

 

成長してそんな事はなくなっていたのに、なんで急にまたそんな夢を見たのか。

 

考えた所で分からないし、僕も眠かったので目を閉じて眠りに落ちていった。

 

◆◆◆

 

「昨日はごめんね、グンジョウ。狭かったでしょ」

 

朝起きたらシャナの姿はなく、リビングに行くと朝食をちょうどテーブルに並べている所だった。

 

「まぁ…あれ、一応一人用だしね。成長してるから、僕ら」

 

欠伸をしつつ、僕は伸びをする。

幼等部の頃からここで生活しているから、幼い頃はお互いのベッドで一緒に寝ていたものだ。

流石に、初等部の半ば頃でやめたが。

 

仲が良すぎるのも考えものである。

 

「母様に習って、料理の腕も成長してるみたいだしね」

「朝から嫌味言われる筋合い……あるわ、ごめん」

 

テーブルには和食が並んでいた。

吾妻ノ国の調味料を、カヅキおばさんが再現して販売しているため、こういう料理も食べられるようなって来ている。

まぁ、好みは分かれるかもしれないが、僕は結構好きだ。

 

「良いんじゃない? 花嫁修行になってるだろ?」

「貴族に嫁入りしたら、ご飯作る事絶対ないと思うんだけど」

 

シャナがお盆を持ちながら、僕を見ている。

昨日の事が気まずいんだろう。

僕は苦笑し、姉の頭を撫でた。

 

「味噌汁、ちゃんと味見した?」

「したもん! 前みたく、しょっぱくは…ないと思う」

 

なんでそこ自信なさげなの。

塩辛すぎて驚いた事があるんだけど、あれの再現はやめてほしい。

 

顔を洗い、身支度を整えた僕は食卓につきシャナの朝ご飯を食べる。

腕は上達しているようで、味噌汁の塩分もちょうど良い。

 

「美味しいよ、シャナ」

「…未来の旦那さんに言われてみたい」

 

僕だって、未来の奥さんに言いたいよこのセリフ。

 

なんて言い始めたら、不毛な喧嘩になる事請け合いなので黙っておく。

皿洗いは僕の担当なので、シャナが身支度を整えるまでに終わらせておいた。

 

部屋から出るとユエとユタカが待機していて、二人と一緒に登校する。

いつもなら僕の両腕に引っ付いて離れないのに、今日は大人しく後ろを歩いていた。

 

すっごい違和感しかない…。

 

後ろの二人を見るが、ユタカは少し節目がちに、ユエはまっすぐ前を見ていて、僕と目が合う。

 

「どうかしましたか、殿下?」

「いや、あの…」

 

違和感しかなさすぎて、逆に困ってるんだと伝えてみるべきか。

それは、彼女達の努力を踏み躙る結果になるとはわかっているけれど。

 

「グンジョウ…」

「わかってる…」

 

僕はため息をついて、前を見る。

目の前に見慣れたオレンジ色を見かけ、声をかけた。

 

「ツェリ、おはよう」

「あ、お、おはよう…」

 

ツェリは僕の背後、ユエとユタカを見て、少しがっかりした顔をしたように見える。

多分気のせいだろうけど。

 

「お、おはよう、ユエちゃん、ユタカちゃん…」

「「おはようございます、ツェツィーリエ様」」

 

ツェリは何事かと僕を見る。

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