イフリート1の月後半。
夏季休暇に入り、僕らはトリスタン領にある王家の避暑地に来ていた。
ツルギに教えてもらったおかげで、シャナは赤点を回避して今回はいい成績で終われたようだ。
ツルギも結構上の方の順位だったらしく、シャナが褒め称えており、彼は少し照れているようだった。
ユエとユタカも、僕らが教えたので順位が上がったと喜んでいて。
そして、僕はと言えば。
「首席が2人とか、そんなのあり得るわけ?」
「全教科満点だったんだから、仕方なくね?」
避暑地にあるプライベートビーチで、おばさんが用意してくれた日除けのビーチパラソルの下、飲み物を飲みながら僕は少し愚痴る。
そんな僕を見ながら、シンクは苦笑した。
シンクと問題を作りあって解いていたおかげか、その範囲がテストに出て、難なく解いていったらシンクも同様だったようで、異例の首席が二人という事態になったらしい。
次席がおらず、三席の人の名前が載っていて、少し申し訳ないと思った。
「だからって、せめて何かでケチ付ければいいのに…僕が次席でも文句は言わないんだけど」
「んなの王族に限らずやったら、その先公クビだろ」
まぁ、それはそう。
ビーチパラソルの下、机と椅子も用意されており、僕はそこに頬杖をつく。
海に来たんだから水着を着ろとおばさんに言われ、僕とシンクは水着を着て自分達の恋人を待っていたわけなのだが。
「アオー! お待たせー!」
ユエの姿を視認した瞬間、僕は羽織ってたラッシュガードを脱いで彼女に着せた。
「…? アオ? どうかしたの?」
「ごめん、ユエ。これ着ててくれない? あとそれ誰チョイス? 刺激的すぎるよ…」
青色のビキニを着てきた彼女だったがプロポーションもよく、他の人の目に触れさせたくなくてラッシュガードを羽織らせた、のだが。
ユエは少し不満そうに、僕を見上げていた。
「私が選んだんだけど。何? 可愛くない? 刺激的って…普通のなんだけど、おかしい?」
「違う。似合い過ぎて、僕の理性が揺らぐから着てってお願いしてるだけ。それに、その扇状的な姿、他の男の人の目に触れさせたくない。いくら家族でもだ。ユエ、可愛いよ……本当、あの宣言がなければ君を抱き潰したい。ね、君もそう思うだろユエ…?」
彼女の肩に手を置き話していたが、最後の方は耳元で囁く。
少し体を離して彼女の表情を見ると、顔を真っ赤にし狼狽えていた。
「なんで口説くと、そんなになるの君…いつも誘ってくるの、君の方なのに」
「だ、だって…アオ、自分が凄く格好いいって…自覚ないじゃん…。そんな人に口説かれたり…その…欲望を口に出されると…私…」
フイッと、口元に手を当て顔を背ける彼女が可愛すぎて、思わず抱きしめてしまう。
可愛い、ユエ本当に可愛い。
このまま二人で消えたい…。
「襲うなよ、グンジョウ」
ユエと一緒に来ていたユタカを膝に乗せながら、シンクが釘を刺してくる。
「……襲わないよ…でもありがとう、シンク。ちょっと頭冷やしてくるね、ユエ」
彼女を離し、僕は海に入っていく。
シンクが指を鳴らしたのと同時に、僕に魔法がかかった感覚がして弟を見る。
「海の中でも呼吸できるようにしてやっただけだよ。あと、眼鏡外さなくても良いようにな。お前動揺し過ぎじゃね? 俺がかけなきゃ、そのまま入るつもりだったろ? 錆びるぜ、眼鏡」
コンコンと、自分の目元を叩いてシンクはニヤリと笑った。
僕はそれに苦笑を返し、弟にまた礼を言って海に入っていった。
◆◆◆
結構深いところまでいってから、僕は海面を見上げた。
太陽の光が入り、キラキラと光る海面が揺らいでいて、とても綺麗だと思う。
それに、水の中だから水音以外は何も聞こえない。
シンクから水中でも呼吸が出来るようにしてもらったおかげで、別に息苦しくもなく、結構快適だった。
「…危なかった…」
僕らから結構離れた場所だったが、あのビーチにはうちの両親とカヅキおばさんがいた。
三人で何か話していたから、こちらに気が向かなかったのは不幸中の幸いである。
シンクが声をかけて止めてくれたのも大きかった。
もし、ユエと二人きりだったなら。
もう僕は、彼女を襲ってしまっていただろう。
「結構綱渡りじゃない…? これ…」
毎日彼女を見ているが、理性が揺らぐ事が増えてきたように思う。
あと一年ちょっと、僕は耐えられるのだろうか…?
「アオ?」
「幻聴も聞こえ始めた…って、なんでいるのユエ」
彼女から離れて頭を冷やすため、海に入ったというのに。
僕のその言い方に、ユエはまたムッとする。
「いちゃ悪い? アオが心配で追いかけてきたんだけど。いない方が良かった?」
「いや、ごめん。言い方が悪かった。ここにいないはずの君がいて、驚いただけ…だから、何処か行こうとしないでユエ?! 僕が悪かったから!!」
ムッとしたまま、僕から離れるように泳ごうとした彼女の腕を掴んだ。
そのまま引っ張り、腕の中に閉じ込める。
「…アオの馬鹿」